山﨑賢人主演、岸井ゆきのや松下洸平が出演する日曜劇場「アトムの童(こ)」が、2022年10月16日より放送を開始。
山﨑賢人演じる安積那由他(あづみ・なゆた)は、凄腕の若きゲームクリエイター。とある事件をきっかけに開発から離れているが、企業や販売元を通さずに個人で制作していたスタイルは「ゲーム業界のバンクシー」「インディー」と呼ばれ、知る人ぞ知る存在だった。そんな彼を探しているのが、経営崖っぷちの老舗おもちゃメーカー・アトム。ゲーム業界の覇権争いを描くドラマが、始まる。
本記事では、第2話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
「アトムの童(こ)」第2話レビュー
深い優しさゆえに、裏切りとしか思えない行動に出る。人間は不可思議で、だからこそ愛おしく思えてならない。那由他(山﨑賢人)と隼人(松下洸平)のやりとりを見ていると、そう痛感する。
興津社長(オダギリジョー)との確執から、責任をとった公哉(柳俊太郎)が自死。この壮絶な現実を前にして、那由他と隼人が選んだ道はそれぞれ真逆だった。
那由他は、公哉への償いのためにゲーム制作をやめた。反して、隼人は因縁の敵・SAGASに入社してまでゲーム制作を続けた。やめた者と続けた者。二人の間にできた溝は、どこまでも深いように思われた。
なぜ、隼人はSAGASに入社したのか? 那由他だけではなく、アトム玩具の社長となった海(岸井ゆきの)にとっても、それは謎に思えた。多くの視聴者にとってもそうだったろう。何か意図があるはず、と信じたい気持ちと、どう見ても「地位や名誉や金のために」敵の懐に入ろうとしているようにしか見えない現実。相反する両面が迫ってくる。
隼人は、責任の重さゆえに自死した公哉の名誉を晴らすため、そして那由他自身の将来を慮ったゆえに、SAGASに身を捧げるような真似をしたのだ。
隼人が「ジョン・ドゥ」としてSAGASと契約すれば、SAGASに盗まれたゲーム「スマッシュスライド」を取り戻せる。しかし、その代わりに、隼人が企画・制作するゲームは今後すべてSAGASの名義となる。
隼人の行為は決して裏切りではない、と多くの視聴者が予想していたはずだが、まさかここまで自己犠牲的だったとは……。深すぎる優しさのように思うが、自由奔放に作りたいゲームを作る那由他と隼人のバランスは、この思いやりゆえに成り立っていたとも言えるのかもしれない。
隼人の意図に気付いた那由他は、契約直前の隼人をつかまえ、必死に説得する。
「バカだな、お前。俺がここにいんだろ? また一緒に作ればいい」
「あれ超える、もっと面白いもん、俺と一緒に作ろうぜ」
ここまで来て後戻りはできない、と拒否する隼人と、必死で言葉を尽くす那由他。二人の緊張と不安定な関係性が、少しだけ揺れる画角に表れているように見えた。
一度はSAGASの社内へ戻ってしまった隼人だが……。那由他の言葉が届いたのだろう。過去、一緒に対戦していたゲーセンで再会する二人。あの頃に戻ったように、軽妙なやりとりをしながらゲームをする二人の姿は、まさに「エモい」「少年漫画的熱さ」に満ちていた。
晴れてアトム玩具に仲間入りすることになった隼人。一難去ってまた一難というやつで、新しくやってきた財務顧問が新たな“災厄”を持ち込んできそうだ。
しかし、今はまだジョン・ドゥの復活と新生・アトム玩具の誕生を喜びたい。
(文:北村有)
–{「アトムの童(こ)」第2話ストーリー}–
「アトムの童(こ)」第2話ストーリー
新生「アトム玩具」がついに動き出した。ところが、那由他(山﨑賢人)から一向にゲームのアイデアが出てこない。社長の海(岸井ゆきの)は「ジョン・ドゥ」再結成を促すが、那由他は頑なに拒否する。
新たなパートナーを探すことになった那由他は、海に連れられゲームジャムのイベントに参加。その会場で隼人(松下洸平)とばったり会い…。
二人の態度に深い溝を感じた海は、ネットゲームカフェの森田(岡部大)を訪ねる。森田の口から語られたのは、那由他と隼人と公哉(栁俊太郎)の関係、そして興津(オダギリジョー)との因縁だった。
–{「アトムの童(こ)」作品情報}–
「アトムの童(こ)」作品情報
出演
山崎賢人
松下洸平
岸井ゆきの
岡部 大(ハナコ)
馬場徹
柳俊太郎
六角慎司
玄理
飯沼愛
戸田菜穂
皆川猿時
塚地武雅(ドランクドラゴン)
でんでん
風間杜夫
オダギリジョー
神田伯山
脚本
神森万里江
音楽
大間々昂
プロデューサー
中井芳彦
益田千愛
演出
岡本伸吾
山室大輔
大内舞子
多胡由章
制作著作
TBS