<解説&考察>「ウェアウルフ・バイ・ナイト」:マーベル新章開幕⁉次回作や過去作との繫がりを紐解く

映画コラム

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マーベルが送る初のクラシカルホラー作品「ウェアウルフ・バイ・ナイト」が2022年10月7日(金)より配信された。

闇に覆われた夜。怪しい豪邸に集められたハンターたちは、命懸けのモンスター討伐を始める。そこに紛れ込んだ人狼の正体とは……。

ヒーローが登場しない世界で繰り広げられる壮絶な争い。未だかつてないダークな世界観でマーベル作品に新たなる地平が切り拓かれる。

今回はミステリアスで謎に包まれた本作の魅力を徹底的に解説。シリーズ屈指の野心作になった本作の秘密や過去作との繫がりについて解説する!

そして後半には気になる次回作について考察をお届けしたいと思う。

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30秒で分かる「ウェアウルフ・バイ・ナイト」

「ウェアウルフ・バイ・ナイト」は、マーベル初の配信向け単発エピソード(54分)。ハロウィンシーズンに合わせて制作されたいわゆる特別番組だ。

ジャンルはホラー。1930, 40年代の古典映画にオマージュを捧げ、ほぼ全編が白黒で構成されている。

過去作と同一の世界観ながらも内容は独立しており、これまでのマーベルの作品を観たことがない人でも鑑賞できる。
これまでの作品とは違い、ヒーローが登場しない異色の物語となった。

原作の「ウェアウルフ・バイ・ナイト」

ウェアウルフ・バイ・ナイトは、1972年発行のコミックで初登場したマーベルキャラクター。

様々な神話や言い伝えに登場し、幾度も映画化されていた狼男をマーベルコミックの世界で語り直した存在と言えるだろう。

また、単独コミックではドラマ化もされた「ムーンナイト」が初登場している(そのため、「ムーンナイト」配信時にはファンの間で本作との繫がりが予想されていた)。

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「マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション」とは

今回のエピソードは、マーベル作品が取り組む新たな枠組み「マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション」の第1作となっている。

マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギいわく、アメリカのTV特有のシーズン特番をイメージした企画とのこと。

例として、彼は幼少期に放送された(スヌーピーで知られる)アニメ「ピーナッツ」のハロウィン特番や、「フロスティ・ザ・スノーマン〜温かい雪だるま」、「ルドルフ 赤鼻のトナカイ」といったクリスマス特番を挙げている。

ちなみに、過去にマーベルでは「マーベル・ワンショット」という短編スピンオフシリーズも制作。
主に映画のDVDやブルーレイの特典映像として、ドラマ「エージェント・オブ・シールド」などの原点にもなったシリーズがあった。

近年では、マーベル・スタジオがDisney+の配信ドラマに力を入れ始めたこともあり、制作されることがなくなったが、今回の枠組みは、まさしく、その発展形と言えるものだろう。

すでに続く短編コンテンツ「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/ホリデー・スペシャル」の公開も発表されている。

配信コンテンツとして長編も可能になったことで、これから表現の幅がどう広がっていくのかにも期待が高まる。

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白黒の意味

「ウェアウルフ・バイ・ナイト」では、ほぼ全編白黒という斬新な試みが行われた。
これには古典映画へのオマージュが捧げられている。

本作は1930~40年代の古典映画を参考にして制作された。
そのため、おどろおどろしい演出や物語では、フランケンシュタインや透明人間、狼男などが登場した「ユニバーサル・モンスターズ」の作品群、クライマックスの演出面では『オズの魔法使い』のオマージュも含まれている。

また、劇中では、グロテスクな表現が登場するが、白黒になっていることで衝撃を和らげることにも成功している。

ちなみに、過去にはR15指定(15歳未満の入場・鑑賞禁止)の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が、白黒版でPG12(小学生以下は保護者の助言・指導が必要)になったケースもある。

血などの色彩表現が白黒になることで年齢制限が引き下げられるとのことだ。

–{劇中に登場するあのキャラクターは…?}–

マンシングとは?

劇中に登場する怪物、マンシングに触れておこう。

1971年、原作コミックに登場したマンシングは、人間から樹木のような植物の怪物に変身してしまったキャラクターである。

実は過去には『巨大怪物 マンシング』というタイトルで実写映画化されている。
スパイダーマンやX-MENなどのマーベル作品がヒットする中、本作はテレビ映画として制作。
限られた予算ゆえになんともチープな雰囲気も感じるが、B級映画と割り切ってみると、かなり愛らしい一作となっている。

本作の監督「マイケル・ジアッキーノ」とは?

メガホンをとったマイケル・ジアッキーノ監督は、本作が長編作品初デビューとなった。

実はこの方、これまで、ピクサー作品や「ミッション:インポッシブル」シリーズ、「ジュラシック・ワールド」シリーズやマーベル作品の音楽を手掛けてきた作曲家としても知られる人物。

そのため、劇中では、こだわり抜かれたマーベルロゴや、過去の古典ホラー映画を彷彿とさせられる見事なスコアが作品を盛り上げている。

ちなみに、彼はキャリア初期からJ・J・エイブラムス監督と仕事を共にしてきた人物でもある。

そのため、初期の短編や本作の作風からは、J・J・エイブラムス監督に繋がる部分が感じられる。

マイケル・ジアッキーノが初期に手掛けた短編映画『monster challenge』は、日本にやってきた海外俳優が職を失い、ひょんなことから怪獣スーツでバラエティー番組に挑戦する一作(ちなみに本作のラストには”あのマーベル俳優”も登場)。

この作品で垣間見える「怪獣」や「日本」の描写には、どことなく、J・J・エイブラムス監督の『クローバーフィールド/HAKAISHA』に通ずる雰囲気を感じられる(本作の制作にあたり、J・J・エイブラムス監督からは助言も受けている)。

また、J・J・エイブラムス監督は、『M:i:III』や『スター・トレック』、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で、人気シリーズに新たな風を送りこむ手腕が高く評価されている。

「ウェアウルフ・バイ・ナイト」も古典ホラーというジャンルをマーベル作品に持ち込んだという点で、シリーズに新たな風を送りこんだと言えるだろう。

気になる次回作について考察する

独立した作品として完結しながらも、その後の物語も気になった本作。
果たして、物語のキャラクターたちはこれからのマーベル作品にも登場するのだろうか。

そのヒントが、先日、発表された米テーマパーク「アベンジャーズ・キャンパス」の新アトラクションに隠されている。

アトラクションでは、アベンジャーズ最強の悪役・サノスが別次元の存在「キングサノス」として復活。
公開されたコンセプトアートには、登場予定のキャラクターたちが写っており、その中には本作のウェアウルフ・バイ・ナイトとマンシングの姿も確認できるのだ。

このことからも、彼らが今後、何かしらの作品に登場する可能性はあるのではないか。

特に今後公開予定の映画『ブレイド』に繋がる可能性は高い。

ブレイドは吸血鬼と人間のハーフで「ヴァンパイア・ハンター」と名乗る人物。
本作でマーベル作品における「ヴァンパイア」や「ハンター」といった存在が明かされたことから、その布石があったのかもしれない。

『エターナルズ』でもその存在が示唆されており、今後のシリーズでの活躍も大いに期待されている。

ちなみに、今回登場したウェアウルフ・バイ・ナイト、マンシング、エルサ・ブラッドストーンは、原作でミッドナイト・サンズという集団に所属していた人物である。

悪魔と戦うこのグループには、その他にも、ドクター・ストレンジ、ウォン、モービウス、ゴーストライダー、アイアン・フィストといったキャラクターたちが参加していたため、今後はその誕生が描かれる可能性もあるだろう。

以上、マーベル屈指の異色作「ウェアウルフ・バイ・ナイト」を解説、そして考察をお届けした。

単独作品としての面白さを詰め込み、現時点では他のマーベル作品との繋がりは希薄に見えた本作。
しかし、今後のシリーズ展開によっては、かなり大きな意味を持つ作品になる可能性もある。

マーベルファンに限らず、ぜひ、古典ホラー好きの方にも観ていただきたいシリーズの新章であった。

(文:TETSU)

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