2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第118回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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「おとなしくしてくれない!」
山小屋から逃げ帰った歌子(上白石萌歌)が夜、眠れなくて優子(仲間由紀恵)と話しています。それを隣の寝室で聞いている和彦(宮沢氷魚)。
「好きだと言ったら同じ気持ちであってほしいと欲張ってしまう」
「今日はすごくいいことがあったわけ 人生で一番かもしれない」
智(前田公輝)は欲張りになれと言ったけれど、歌子はとても慎ましいのです。
そんな歌子の気持ちを聞いた和彦はなにかを決意したような顔になります。
翌日、和彦は暢子(黒島結菜)に話をしようとしますが言い出せず、代わりに暢子が自分の悩みを話しはじめます。
「まくとぅそーけー なんくるないさ……であるよね」
「ちむどんどんするかしないかだよね」
……さっぱりわからない話ですが、和彦はなぜか背中を押されたようで、智に沖縄角力を挑みます。
「僕が勝ったら今夜来て、歌子に正直な気持ちを伝えろ」と。
「好きなんだろ? 大好きなんだろ?」と言いながら全力でぶつかっていく和彦。智のほうが断然体力があるはずだけれど、そこは和彦がすきをついて技をかけます。
相撲でケリをつけること、智に勝てる秘技は、賢秀(竜星涼)から聞いたものでした。
賢秀も役に立ったようです。
ここで注目したいのは、賢秀の頭で考えずにカラダでぶつかる作戦と和彦の、智にこそっと話しかけて不意をつくという頭脳作戦を用いた、頭とカラダ、両方を使っていることです。
頭だけでもカラダだけでもだめ。両方が大事です。
だからちむどんどんするかしないかそれだけじゃないと思う。
そして、夜、暢子がやんばるの野菜で作った料理を囲む会が行われます。
地元の人ばかりなのに、観光客が地元料理を喜んでいるように見えますが、暢子が東京で学んだ料理人の技で地元料理をアレンジしそれが地元の人たちにも目からウロコで喜ばせているのでしょう。
素人目には、やんばるの野菜を使ってイタリア料理ふうにしてみるほうが、暢子が東京から何かを持ち帰ってきたことになっていいように感じますが、例えば「上京」という言葉は首都に行くことで、いまは東京に行くという意味が一般的ですが、かつて日本の中心であった京都の人は、東京に行くことを上京とは言わないと言われるようなもので、沖縄には沖縄の誇りがあり、外のものがいいわけでは決してない。その誇りと地元の結束力の強さの揺ぎなさだけは徹底して書かれているように感じます。
そんな理屈ぽい話はさておき。正装した智がやって来ます。ところが、暢子はゆし豆腐を持って来なかったことをわいわい責めます。
第117回から118回にかけての暢子のセリフは、子役の稲垣来泉さんが話せばお似合いなセリフで、20代後半の母になった人物にはそぐわないと感じます。全体的に子供たちを主役にした話だったらすんなり見られるような内容のものが多いんですよね。
だからこそちむどんどんどころかわじわじするわけですが……そこへ博夫(山田裕貴)が「おとなしくしてくれない!」と一喝。暢子はようやく歌子と智のただならぬ雰囲気に気づくのです。
あはは……お金がらみの話じゃないので寛容な気持ちで見ることができます。
山田裕貴さんの一喝する声の大きさと間合いが的確でした。恐怖を植え付けるような怒声ではなく、やや、困ったように、でも耐えかねて発した言葉に聞こえる塩梅もいい。たくさんの作品に出演している理由がわかる演技巧者であります。
山田さんはほんのちょっとの出番でもちゃんと参加しています。「なつぞら」からの朝ドラとのご縁もあるのかなとは思いますが。重宝されるのがよくわかる優秀な俳優だとつくづく感じます。
(文:木俣冬)
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–{「ちむどんどん」第24週目のあらすじ}–
「ちむどんどん」第24週目のあらすじ
暢子(黒島結菜)は無事に男の子を出産した。和彦(宮沢氷魚)とふたりで、健やかに育つようにと「健彦(たけひこ)」と名付けた。時は流れて…1984年4月。暢子の沖縄料理店「ちむどんどん」は多くの客でにぎわい、健彦は名前の通りすくすく元気に成長していた。一方、和彦は仕事で少し不満があるようで…。そんな中、連休を使って暢子たちは沖縄やんばるに里帰りすることに。この里帰りがきっかけで暢子の人生は大きく変わることに…。
–{「ちむどんどん」作品情報}–
「ちむどんどん」作品情報
大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――
ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。
放送予定
2022年4月11日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人
作:
羽原大介
語り:
ジョン・カビラ
音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)
主題歌:
三浦大知「燦燦」
沖縄ことば指導:
藤木勇人
フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子
制作統括:
小林大児 藤並英樹
プロデューサー:
松田恭典
展開プロデューサー:
川口俊介
演出:
木村隆 松園武大 中野亮平 ほか