「ちむどんどん」第117回:まだ弱気の虫に悩んでいた歌子。山小屋から懐中電灯も持たずに帰れるの?

続・朝ドライフ

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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第117回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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「ちむどんどん」第117回レビュー

暢子(黒島結菜)親子がやんばるに里帰りしたので、みんなで集まることになりました。

暢子はすっかり童心に帰った感じで、

「うち畑の野菜使っていろいろ作ってみたい」

「絶対忘れないでよ。約束だよ。いっぱいだからね」

暢子「あっ うち あれも食べたい オオタニワタリ」
優子「暢子 あんたばっかり」

などと子供みたいなしゃべり方をしながらはしゃいでいます。

暢子「砂川豆腐のゆし豆腐、これは東京では食べられないわけよ」

優子「昨日も食べたでしょ」

この会話もすごい。

暢子「ゆし豆腐今日も食べようね」

健彦「うん」

これもすごい。

ゆし豆腐推し、暢子はゆし豆腐が好きで好きでたまらないことを表すために繰り返しているんですね。

昭和のドラマだったら 砂川豆腐の経営状況やら智の家族の近況やら、ゆし豆腐を東京で食べたかったけど食べることができなかった顛末などをべらべらと説明的に語るのでしょうけれど、日常でそんなに意味のあることや情報量の多いことは言わないというリアリティーを追求はじめたのが00年代以降です。90年代にあった静かな演劇ブームが遅れてドラマにも影響を及ぼし始め、定着していきます。その結果、こういうセリフに変化していったのでしょう。ドラマにおけるセリフの歴史を考えさせる一例です。

さて、暢子がオオタニワタリを食べたいと言ったため、智(前田公輝)が山に行き、歌子(上白石萌歌)がついていき、また口喧嘩をして、智が怪我して……。

山小屋に入ったふたり。ここで歌子が心情を吐露する長ゼリフを語りだします。

ふいに心情吐露は、坂元裕二さんのドラマ「最高の離婚」(13年)で盛り上がって以降、多用されるようになりました。

歌子は東京ですっかり弱気の虫を克服したのかと思ったら、そうではなく、まだもやもやを抱えていました。

「もっと欲張りになれ」

と智は励ましますが、彼が思いきって歌子とつきあう、あるいはプロポーズすれば歌子の気持ちは落ち着くのですが、そこに気づいてなくて、理想論を吐く。

それでも不器用ながらようやくムードが盛り上がったとき、それをぶち壊したのはーー

まだ火曜日ですから、引っ張りますねえ。いや、しかし、何年こんなことをしているのか。もちろん、長い恋もありますけれど。智も歌子もさほど忙しそうでもないので恋どころじゃないってこともないし、東京で歌子が2年働いているうちに進展しても良さそうですよね。このシーン、演じている前田さんと上白石さん、どんなお気持ちだったでしょうか。

山小屋から出ていく歌子。懐中電灯も持たずに危ないですよー。

ところで、和彦(宮沢氷魚)。半分に切ったノートはお父さん・史彦(戸次重幸)のものでした。
沖縄をテーマにしたい和彦。沖縄に住みたい。

「僕の仕事は依頼を受け 原稿を書いて送ればいいから どこに住んでいてもいいけれど」

この頃はネットはまだ普及していませんが、原稿をFAXで送ればいいから、和彦の言ってることは間違いではないとはいえ、さほど売れていなそうなフリーライターが東京から離れ地方で取材して原稿を送るなんてことは通用したのかしら、というか仕事として成り立つのかしら……といささか疑問です。それとももう売れっ子に?

ドラマよりもっと先の00年代頃の筆者の思い出として、海外を飛び回っているベテランライターがパソコンを使わず手書きで外国からFAXを送ってきてそれを打ち込むのが面倒くさいと愚痴る編集の人がいました。しかもFAX料金をケチるためちまちま文字を書いていて判読しづらいとかで……。海外の貴重な取材をしてくれるから仕方なかったみたいですけれど。

民俗学者なんて実家が裕福かパトロンがいないとなかなか成り立たない気がしますが、和彦は重子の資産もありそうなので、テーマを沖縄のみに絞って、じっくり腰を据えて好きなことだけやっていきたいのでしょうね。

その頃暢子もやんばるに戻ってきたいと考えはじめていました。暢子と和彦って惹かれ合っただけあって、あまりベタベタはしないけれど、気が合っていますね。

(文:木俣冬)

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–{「ちむどんどん」第24週目のあらすじ}–

「ちむどんどん」第24週目のあらすじ

暢子(黒島結菜)は無事に男の子を出産した。和彦(宮沢氷魚)とふたりで、健やかに育つようにと「健彦(たけひこ)」と名付けた。時は流れて…1984年4月。暢子の沖縄料理店「ちむどんどん」は多くの客でにぎわい、健彦は名前の通りすくすく元気に成長していた。一方、和彦は仕事で少し不満があるようで…。そんな中、連休を使って暢子たちは沖縄やんばるに里帰りすることに。この里帰りがきっかけで暢子の人生は大きく変わることに…。

–{「ちむどんどん」作品情報}–

「ちむどんどん」作品情報

大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――

ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。

放送予定
2022年4月11日(月)~

<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。

日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。

<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。

出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人

作:
羽原大介

語り:
ジョン・カビラ

音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)

主題歌:
三浦大知「燦燦」

沖縄ことば指導:
藤木勇人

フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子

制作統括:
小林大児 藤並英樹

プロデューサー:
松田恭典

展開プロデューサー:
川口俊介

演出:
木村隆  松園武大 中野亮平 ほか