2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第106回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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「ちむどんどん」第106回レビュー
第22週「豚とニガナは海を超えて」(演出:木村隆文、内田貴史)はいや〜な感じではじまりました。
ちむどんどんの経営が思わしくなく、暢子(黒島結菜)の食欲も落ちてお腹の子のことも心配。
どうしてお客さんが入らないのか悩む一同。そりゃあ、開店2ヶ月経っているのに、店の前でチラシ配ってるだけではだめでしょう。駅前で配りなさいよと素人の筆者でも思います。もちろん撮影の都合なのはわかりますが。
とくに何も工夫しているように見えないにもかかわらず、ただただ落ち込んだ末、
智「矢作さんにも問題あるんじゃないですか」
暢子「うちは矢作さんとは違います」
などと協力的でない矢作(井之脇海)に当たるなんて、ひどすぎる。
「オーナーは料理もしないのに偉そうです」と言い放った若き日の暢子、健在でしたが、あとから反省して謝ります。矢作は謝ることができることを「たいしたもんだ」と褒めます。自分の店がだめになったとき、他人に当たり散らしたという矢作も変わりつつあるようです。
暢子も矢作もすこしずつ成長しているのを見せたいのでしょうけれど、「うちは矢作さんとは違います」はなあ……。あとから反省して謝ってもこんなこと口にしてしまう人、いやだなあ。
智(前田公輝)もなぜ矢作を敵対視するのか。
家族や仲間が大事なのはいいのですが、暢子たちは身内とそれ以外の差があからさまに違うんですよね。そうしないと生きていけない事情があるのもわかるのですが……。
ここで気になるのは、矢作はすでに身内のようなものになっているはずで、本来の暢子や智のような感覚の持ち主ならここで矢作に意地悪を言わないと思うんですよ。沖縄では一度会ったら誰でも身内のようなものみたいなこともドラマのなかで言ってましたよね。なのに、何かあったときは、まっさきに他人に冷たいなんて最もいやな感じですよ。
矢作が暢子をねぎらい、暢子が平謝りしたあと、なんの余韻もなくものすごい勢いで豚のアップに切り替わって、暢子が謝る場面がちっともいい場面じゃないと感じさせました。
豚は悪くないですけどね。そして、猪野養豚所では、豚の営業がうまくいきかかりますが、例の涌井(田邊和也)が現れて……。
絵に書いたようないやな展開です。緩急をつけたいのはわかるのですが、こんなベタベタな……。涌井がゆっくりたっぷり語ってる間に、ちょっと向こうで……と追い出せばいいのにとイライラしてしまうんですよね。そうしたら逆上して余計にひどいことになるのかもしれないけれど、まだそのほうが感情と状況がついていく。涌井が語っているのをぼんやり見ている時間がもどかしい。
二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)が、店を潰した先輩として助言したところは、高嶋さんの演技力で伝わるものがありました。
矢作や二ツ橋、失敗した人たちが暢子を応援してくれています。だから暢子は彼らの分まで輝かないといけないのです。それには決して得意にならず、謙虚で、純粋で、哀しみを背負って懸命に明るく強くなくてはならない。みんなの願いを抱えて高く飛ばないといけない。理想のヒロインってとても大変なんです。
「あさイチ」は朝ドラ受けしない代わりにカナダの事件をニュース速報で流したのではないかと勘ぐってしまいました。大事件ではありますが、番組の頭に速報で流す必要のあるニュースとは思えなかったので……。
筆者は以前著書「みんなの朝ドラ」で一時期、朝ドラが低迷した頃は、民放のドラマが面白かったので
朝ドラは退屈だったと書きました。とんでも展開の昼ドラがおもしろかったとも書きました。でもそれは
20年くらい前の話ですからねえ。時代はアップデートされているんですよね。というわけで、新しい朝ドラに関する本「ネットと朝ドラ」(9月12日発売)を書きました。この5年間の朝ドラを総ざらいしております。よろしければどうぞ。
(文:木俣冬)
–{「ちむどんどん」第22週目のあらすじ}–
「ちむどんどん」第22週目のあらすじ
暢子(黒島結菜)の沖縄料理店「ちむどんどん」がオープンして3か月。大盛況だったのは最初だけで、その後は客が減る一方。なんとか客を呼び込もうと、暢子はチラシを配ったり、二ツ橋(髙嶋政伸)に相談したりするのだが…。一方、賢秀(竜星 涼)と寛大(中原丈雄)は、言い争いの末家を飛び出した清恵(佐津川愛美)を探しに、東京へ出てきて…。
–{「ちむどんどん」作品情報}–
「ちむどんどん」作品情報
大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――
ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。
放送予定
2022年4月11日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人
作:
羽原大介
語り:
ジョン・カビラ
音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)
主題歌:
三浦大知「燦燦」
沖縄ことば指導:
藤木勇人
フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子
制作統括:
小林大児 藤並英樹
プロデューサー:
松田恭典
展開プロデューサー:
川口俊介
演出:
木村隆 松園武大 中野亮平 ほか