<ちむどんどん・独立編>96回~115回までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

続・朝ドライフ

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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事では暢子が沖縄料理のお店を開く96回~115回までの記事を集約。1記事で感想を読むことができる。

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もくじ

・第96回レビュー

・第97回レビュー

・第98回レビュー

・第99回レビュー

・第100回レビュー

・第101回レビュー

・第102回レビュー

・第103回レビュー

・第104回レビュー

・第105回レビュー

・第106回レビュー

・第107回レビュー

・第108回レビュー

・第109回レビュー

・第110回レビュー

・第111回レビュー

・第112回レビュー

・第113回レビュー

・第114回レビュー

・第115回レビュー

・「ちむどんどん」作品情報

第96回レビュー

第20週「青いパパイアを探しに」(演出:中野亮平)は暢子(黒島結菜)が妊娠していることがわかります。妊娠2ヶ月。結婚してすぐに赤ちゃんができたんですね。

それまで恋愛にまったく疎く、幼く見えた暢子が結婚と同時に妊娠。なんだかくすぐったい気持ちになります。

結婚指輪して「うちのおなかに赤ちゃんが 命が宿っていると思うと 涙が出るくらいうれしい」としみじみ優子(仲間由紀恵)に電話で語る暢子は、成長したのだなと思って微笑ましいのですが、問題は、独立して店を開店するときであること。

房子(原田美枝子)は、開店を延期するように言います。その間は、フォンターナで経理の仕事をするようにはからおうとするのですが、暢子はその好意を受け入れる気はありません。店も出産、子育ても両立すると言います。

暢子はフォンターナで10時まで働いたあと、あまゆで手伝いしたり、飲み食いしたりしていたくらいで、スーパー体力ありそうなので、なんとかできちゃうのかもしれません。優子も、朝から晩まで働いて(それも一時期、男性に混じって肉体労働もしていた)いたから、比嘉家は丈夫な家系なのでしょう。

さらに、多江(長野里美)も、戦時中に妊娠しながら、三郎のいない間、彼の仕事も代わりにやっていたというようなことを言います。「ちむどんどん」の世界は強い女性ばかりです。唯一、房子が慎重派になっています。

第20週まで来てようやく違う考え方にも耳を傾けようという考え方が提示されました。房子の心配を聞かず「反対された」と言う暢子に優子が「反対する人の話にもちゃんと耳を傾けて」と諭すのです(優子、だったら、賢秀の社会的にいささか問題な行動も全面的にゆるさず、反対する人の話にも耳を傾けて〜〜)。

勝手に話を先回りして想像すると、これまで自分、自分でやって来た暢子が、他者の意見に耳を傾けられるようになったとき、お店「ちむどんどん」は知らないお客さんでいっぱいになるのではないでしょうか。

いまは、暢子の思うようになる人たちの集まりという、狭い世界なのです。

視聴者としても、独立開店を前に、妊娠するなんて無謀だと思ってしまうのですが、それをやってはいけないわけではなくて。挑戦してみることもあっていいし、それで暢子がみごとにやってのけても、みんなができるわけではないので、やれない人もいていいというふうになるといいのですよね。

そういう考えはわかるのですが、いかんせん、物語が、そう冷静に考えるようにできてなくて、強引に暢子無双みたいになっているのが残念です。視聴者だって暢子の出産と開店を素直に応援したいですよ。ちょっとだけ常識に囚われている視聴者にも歩みよってほしい。ただそれだけなんですよね。

さて、やんばるでは、良子(川口春奈)が、優子の野菜生活に感化され、給食で地元の野菜を使った献立を出そうと考えます。こっちもこっちで、その発想はすてきなのですが、かなり短絡的で、根回しが丁寧でなく、面倒くさい人に見えてしまいます。

結局、うまいこといくのでしょうけれど、うまいこといく流れがチートぽいんですよね。こういうのが現代的でしょうと思ってやっているような節を常々感じるのですが、この手の現代性が朝ドラという伝統と相性が良くない。

筆者は朝ドラは歌舞伎のような伝統芸能だと拙著「みんなの朝ドラ」で書きましたが、歌舞伎は、古典をやりながら、「風の谷のナウシカ」や「ONE PIECE」や初音ミクを題材にした新作もやっていて、そこに古典の技術も巧みに組み合わせています。原作という他者でのリスペクトと自分たちの伝統への誇りをうまく両立させているのです。どっちが好きな人にもサービスがあるのです。

いまの「ちむどんどん」は朝ドラの伝統も、新しい現代的な物語性も、相殺されてしまっているように感じます。育児と仕事の両立がすてきにできるように、伝統と革新の両立だってすてきにできるはずと信じているのですが……。

※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第97回のレビュー}–

第97回:「悪いのは和彦」

和彦(宮沢氷魚)が新聞社を辞めたことを責める重子(鈴木保奈美)
「離婚しなさい」と言ったのは、暢子(黒島結菜)を心配してのことでした。
子供ができたと知ると、「夫が身重の妻をほうりだして好き勝手に日本中飛び回るなんて」とたしなめます。彼女が夫・史彦(戸次重幸)にそうされていたのでしょうね。

この感じだと暢子が育児とお店を立派に両立して、和彦のライフワーク(沖縄)を支えるようになるのではと想像が働きます。

和彦は新聞社で暢子と再会したときは、すてきに成長したように見えましたが、
そのあと、いいところがあまりありません。
記事の主題である質問を取材の終わりについでのようにしたり、6,7年経っても、取材の心得が身につかず、デリケートなことをずけずけ聞き出そうとしたり、新聞記者にもかかわらず、事件性の高い現場にのこのこ行って巻き込まれ、
会社に迷惑をかけてしまう。

そしてなぜか、辞めた新聞社で、田良島(山中崇)に仕事先を紹介してもらっています。こんなことあるかなあ……。売り込みしていたカフェバーみたいな場所を流用しても良かったのではないでしょうか。

ただ、こんなことありえないと思っても、辞めた会社の人が親切に仕事を紹介ーーしかも古巣の会社で、ということがありえてもいいのではないかとも考えられます。ありえない は いつの間にか刷り込まれたことであって、もっと自由に柔軟であってもいいですよね。盗みと詐欺と殺人以外は、あってもいいのかもしれません。

なんでもありのようだった暢子も、引き抜きはしてはいけないと自覚しています。

新店舗の料理人を探すにあたって、フォンターナの二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)を引き抜くというアイデアをあまゆの順次(志ぃさー)が口にするのも、アウトな気がします。

思うのは自由とはいえ、お世話になったフォンターナから引き抜きはあってはならないでしょう。なんで、こんな会話をわざわざ……

食い逃げもあってはいけないことのひとつでしょう。

沖縄なまりの強い、料理人としての腕も期待できない人(諸見里大介)や、魚さばきの得意な高齢者(元木鴈二朗)などしか面接に来なくて、困っているところへ現れた食い逃げ犯はーー

ありえないは、重子が、店名「ちむどんどん」を生まれてくる子供の名前と勘違いするところ。「LIFE」的なコントと思えばあっていいですが、房子(原田美枝子)のパートはシリアスで(妹の流産)、15分のなかで重子のコントと房子の深刻が並行して描かれるので、ついていきづらいのです。こういう番組ってなかなかないです。見せ方は違いますが、どちらも若い暢子と和彦をそれぞれの表現方法で心配しているんですよね。

「禍福は糾える縄の如し」「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という人生を表現する挑戦なのかもしれないです。でもある意味商品(受信料でできている)として世に出すにはもうすこし練ったものを見せていただきたい。

優れたドラマとは何か。NHKの番組の基準とは何か。朝ドラとは何か。正しさとは何か……。
「ちむどんどん」は問いかけているようにも思います。

「ちむどんどん」のような実験を国民的ドラマ枠・朝ドラでやるのはありえない。深夜やBSでやるべき。と思ったとしても、何を根拠にそう思うのか。「ちむどんどん」を見ていると既存の価値観がどんどん崩壊していきます。

※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第98回のレビュー}–

第98回:矢作、再登場

鶴見の商店街で食い逃げ事件、発生。犯人は矢作(井之脇海)でした。

このとき矢作が口にした「まさかやー」は、まさに「まさかやー」。
暢子の口癖からあだ名にしていた「まさかや」と、こんなところでまさか再会するとはの「まさかや」がかかっているんでしょうね。

食い逃げと言っても、働いて返そうとしたようで、でもそんなの無理ということになって揉めたようです。情状酌量の余地を残した描き方です。

逃亡の際、包丁を落としたものだから、騒然となります。それを拾った暢子(黒島結菜)は思うところあったようで、矢作にお店を手伝ってほしいと持ちかけます。

包丁を大事にしているのは料理人としての魂を失っていないと思ったのでしょう。

「料理なんてこりごりだよ」と毒づきながら、包丁を持ち歩いている。なんてベタなんだ……。

いっそ、包丁を持ち歩いて、飲食店で食べた分働くという、さすらいの料理人として生きていけばいいと思います。

包丁を風呂敷に包んだだけってちょっとこわいですよね。しかもどこから包丁が落ちたのか。懐に入れていたのか。せめてかばんの中にしまっておいてほしい。なんかあったら彼自身に刺さるのではと思うと、もうちょっと慎重に持ち歩いてほしいものです。

それはともかく、乱闘に巻き込まれた暢子が流産ーーそんな昼ドラ的展開になったらどうしようかとハラハラしました。

矢作、奥さんとも別れたそうですが、暢子がフォンターナに相談に行くと、入れ違いで、奥さん・佳代(藤間爽子)が来ていました。

なんだかんだで矢作がお店を手伝うことは想像に難くありません。が、大事に至らなかったとはいえ、権利書を盗んだことはかなりのことだと思うんですが、許してしまうんですかね。

けろっと矢作を受け入れようとしている暢子の横で、和彦(宮沢氷魚)がこわい目をしているのは、宮沢さんなりの、和彦の警戒心の演技なのでしょう。

赦す、ことは大事だけれど、権利書を盗んだり借金取りに追われたりした人と関わったらやばいと思うんですよね。赦す、ことばかり先立って、行いの問題点を曖昧にすることが、このドラマの特徴です。これが受け入れ難い視聴者が少なくありません。

賢秀の関わっている詐欺的な行為、矢作の窃盗、食い逃げ、暴力的な人たちの恫喝、暴力等々、犯罪やら物騒なことばかりで、なぜそんなことばかり描くのかと
思いましたが、夜のドラマなら、刑事もの、ミステリーは、犯罪ばかりが当たり前。それが解決するものがカタルシスです。「ちむどんどん」は解決しないでなんでも赦すことで曖昧化されている。それが奇妙です。

さて、やんばるでは、良子(川口春奈)が、給食に沖縄の野菜を取り入れようと奮闘中。最初は反対していた安室のおばぁ(あめくみちこ)が協力してくれます。この手のいい話も、なんだか駆け足なので拍子抜け。

優子(仲間由紀恵)が急に他者との関係を大事にするよう娘たちに教育をはじめました。暢子には反対意見にも耳を傾けるように諭し、良子には近隣の人たちの協力を仰ぐこと、井戸端会議から解決策が浮かぶことを教えます。

なぜ、いまさら、そんな教育を……とも思いますが、父の遺言の自分らしくに囚われて、どうやら生きづらい娘たちに、優子がいよいよ、別の視点を与えようと思い始めたのでしょう。戦争体験を話したことですこし優子も変わってきたのかもしれません。

智(前田公輝)歌子(上白石萌歌)に協力しています。智はもともと他人に親切心でしたけれど。歌子の長い片思い、かなうといいですね。

※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第99回のレビュー}–

第99回のレビュー

いよいよ明日で100回です。

99回は、東京でちゃくちゃくとお店の準備を進める暢子(黒島結菜)と、やんばるでゆっくり進行しはじめたらしき、歌子(上白石萌歌)智(前田公輝)との関係が描かれました。

暢子は矢作(井之脇海)をなんとしてでもお店で雇いたいと思って、彼の行方を追います。

矢作は食い詰めて、寝る場所もなく、浮浪者のように外でしゃがんでいます。
懐から包丁を取り出して眺めます。やばい。怪しまれますよ。

この包丁が洋包丁ではなく和包丁だとネットで話題になっていました。
イタリア料理を修業していたのになぜ和包丁なのか。きっと、彼のお父さんが日本食の職人でその形見みたいなことではないでしょうか。

昨日の夕方のNHKの番組でちょうど銃刀法違反について解説していましたが、朝ドラと連動しているのでしょうか。

その番組ではそこまで解説されてませんでしたが、調べたところ、料理人が職場から家に持ち帰るのは正当な理由としてありだそうですよ。

お店の工事が行われているなか、信用金庫の坂田(安井順平)がやってきます。遅刻したり、すぐトイレに行ったり、落ち着かない人ですが、嫌味がなく、受け入れられやすい得な人物です。

このひとも「運命共同体」という言葉を使い、みんなで協力することをほのめかします。ドラマの行き着く先が見えてきた感じですね。主人公が「ゆいまーる」精神を実践していく時が来たという印象です。

さて、やんばる。

智のはからいで、歌子が「比嘉花子」という芸名で、お店デビューすることになりました。お店・珊瑚礁の前を蝶が飛ぶという芸の細かさです。

が、弱気の虫がまた出て、逃げ帰ってしまいます。

飛行音が聞こえてきたり、お客が勝手にしゃべったり、集中できない。演奏に興味なく一緒に飲めという客もいます。いたたまれない。

お酒の席、しかも見知らぬ人の前で芸を披露することがどれだけ大変か。「浅草キッド」などでも描かれていますね。いくら、智の知り合いの店、同じ地元の人たちとはいえ、歌子も考えが甘い気がしますが……。

ギャラは智が勝手に出してくれていたことを知って、歌子のプライドは傷つきます。

智は、好意の度が過ぎてしまう傾向があるようです。暢子には恋、歌子にはそうではない、みたいですが、やってることはそんなに変わらない。何が違うんでしょうかね。

でも、暢子とは一方通行で、コミュニケーションできなかった智が、歌子とだとちゃんとお互いの考えを聞いて、謝ったりして、コミュニケーションとれるのです。

「あんな店」と歌子が言うと、「大事なお得意先だ」と智はたしなめるのです。こういうの、これまでだと一方的に「あんな店」で終わって、視聴者が突っ込んでいたところでしょう。

じょじょに他者との関係を築いていく流れになってきているのです。作り手の狙いなのかなと思いますが、あまりにも長く、傍若無人な描写が続きすぎたような気がします。2時間ドラマか映画のプロットですよこれは。

99回で活躍したのは優子(仲間由紀恵)。智と歌子の話を、立ち聞き(座っていたけど)しています。慌てて、隠れて、息を殺して聞いている優子がかわいい。隠れる動きが俊敏で若い。お母さん役で落ち着いて見せているけど、仲間さん若い。

芋を転がしてしまい、気づかれて、「お芋お芋」と誤魔化すところなど、ほんとうにチャーミング。「トリック」の山田を思い出します。ちゃっかり抜け目ないけど憎めない人物を好演できる仲間由紀恵さん。あなたがいてくれてよかったです。

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–{第100回のレビュー}–

第100回のレビュー

とうとう100回まで来ました、「ちむどんどん」。
今日は、井之脇海劇場。彼の表情だけで、ご飯が何杯も食べられる、すばらしい場面がありました。矢作が主人公の朝ドラが見たかったと思うほどです。

食い逃げをゆるされたあと、まだ鶴見でうろついていた矢作を暢子(黒島結菜)が見つけます。

そのあと、銀座のフォンターナへーー

暢子は杉並に引っ越したのに鶴見にいて、そこから銀座へ? 洋食屋の前にしゃがんでいたのでお店が閉まったあとでしょうから、夜も遅いと思うんですが、どういう時間と距離の感覚なのか。

フォンターナで房子(原田美枝子)は矢作に退職金を払います。
そこへ、妻の佳代(藤間爽子)が現れ、やり直そうと励まします。
いい奥さんですね。

それからみんなで沖縄そばを食べ、暢子が店に誘います。

おいしく感じたのは(言葉ではいろいろ言っていたけれどたぶんおいしかったと思う)、矢作がお腹をすかせていたせいもあると思いますけどね。

厨房で待機していたらしき二ツ橋(高嶋政伸 タカハハシゴダカ)が矢作の持ち歩いた包丁を見て、ちゃんと手入れがしてあると褒めます。包丁が和包丁ではないか問題はとくになにもなくスルーでした。

二ツ橋も、ナポリタン作ったり、沖縄そば手伝ったり、イタリア料理シェフなのにねえ……。まあ、いろんな料理の知識を得られて楽しいと思っているかもしれませんけれど。いっそフォンターナは無国籍料理の店だったら良かったのではないかという気がします。

矢作は何かと斜に構えた態度を取りながらも、杉並の店に来て手伝うことに。

暢子が青パパイアのイリチーを手伝ってもらいます。妊娠中は食べないほうがいいとも言われる食材だそうで、なんでわざわざそんな食材を使う……と思いますが、沖縄料理ではたしかによく青パパイアが出てきますから、やむなしということでしょうか。

それにしても油とかじゃんじゃん使う沖縄料理、妊娠してたら気持ち悪くならないのでしょうか。

NHKの「京都人の密かな愉しみ」というドラマではパン職人が妊娠したら、舌の感覚が変わってしまって戸惑うエピソードがありました。沖縄料理は味が濃いし炒めものが多いしそれほど繊細な味付けではない気がするので(失礼だったらすみません)、妊娠しても関係ないのでしょうか。

パパイアを千切りする矢作。ここが見どころです。房子のちょっとイイ話や、夫婦のちょっといいシーンや、二ツ橋のちょっとイイ話などは目じゃありません。

研ぎ澄まされた包丁がまな板にさくっと当たる感触に得も言わぬ喜びを感じ、泣きながら笑顔になる、切る調子がどんどんあがっていき、そのたびに口角が上がっていく。心のなかのくすんだものが包丁によって浄化されていく。いやあ、すばらしい演技にちむどんどんしました。

包丁のいい音をお腹の子供に聞かせる暢子。子供が料理人になりそうですね。

こんなにいい演技をする井之脇さんを、なぜ、ここまでずっと、シンプルな悪役のようにしていたのでしょうか。ギャップを見せたいにしても、もったいなさすぎました。でもきょうも「退職金」「謝る」と房子のセリフを反復させられていてそこはもったいなかったです。

相手のセリフを反復するのは相手と同調するためとも言われますが、物語世界のなかでのそれは、単調な印象を与えますし、会話劇としてのおもしろさに欠けます。俳優もやっていておもしろくないでしょう。いや、楽でいいと思う人もいるかもしれませんが、できる俳優には反復させないでほしい。

さて、今日の和彦(宮沢氷魚)。何もしてないように見えますが、矢作が店に現れたとき、やっぱり警戒心をあらわにして、暢子を守るように立っているのです。暢子はゆるしても僕は油断しないぞという心境を懸命に漂わせる宮沢さん。
渡辺謙さんと舞台で共演したりしているだけあって、なんにもしてないように見えて、伝わる全身表現を行っているのであります。

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–{第101回のレビュー}–

第101回:お店ちむどんどんがオープン間近

強力な助っ人・矢作(井之脇海)が参加して、暢子(黒島結菜)の沖縄料理の店・ちむどんどんの準備が本格化した第21週「君と僕のイナムドゥチ」(演出:田中陽児)のはじまり。イナムドゥチという馴染みのない固有名詞をサブタイトルにしてなかなか攻めています。

オープン2週間前、料理道具を、三郎(片岡鶴太郎)が知り合いからもらって来てくれたり、ホールなどを担当する従業員の目処がついてなかったり、こんなものなんでしょか。筆者はお店をやったことがないのでわかりません。

そもそもお向かいがジャンルは違えど飲食店です。気まずくならないんでしょうか。余計なお世話ですが心配です。このへん、相変わらず、暢子は自分のことしか考えていませんね。

料理の面では頼れる矢作ですが、改心したわけではなく、相変わらず、口も態度も悪く、「貧乏くさい店」と小馬鹿にしたようなことを言い、最低限のことしかしません。しぶしぶやってる感が全身から漂います。

準備期間中は5時までしか働かず、仕事以外のつきあいには参加しません。沖縄料理の魅力も積極的には知ろうとしていないようです。

矢作のような非協力的な人物とふたりでやっていけるのでしょうか。そもそも、
フォンターナ時代も、暢子と彼が一致団結していい感じに店がまわったことはなかったような……。

そこそこ技術があってもうまくいかないとキレがちな矢作。フォンターナを急に辞めて独立したうえに権利書を盗むという洒落にならないことをしました。独立に失敗して、食い詰めて、まだ借金もあるようで、そんな人を雇うのはなかなかリスキーです。どんなブラックな人とのつきあいがあるかわかりません。実際、それでフォンターナはひどい目に遭いましたから。

矢作のような問題のある人をゆるして雇うとしたら、フォンターナに戻りたいと謝ってきたものの、房子(原田美枝子)が手厳しく断り、これまでの罪を償う代わりに暢子を手伝いさない、命令よ的な感じで、ちむどんどんで働くハメに……というほうがわかりやすいような気がしました。

沖縄料理・ちむどんどんを寺や教会のような場所に見立て、罪深い人がここへ来て、ご飯を食べることで懺悔し、更生し、浄化されていくというような場所になったらいいですね。

和彦(宮沢氷魚)は、フリーライター兼カメラマンとして月刊誌で連載をもつことになり、はりきっています。いつの間にか、髪が横分けから真ん中分けになっていました。

いつ行ったのか、那覇のハーリーの写真を撮っていて、そういう記事を書いているようです。前に売り込んでいた企画書は、沖縄の伝統文化で、たぶん、そういう記事を書くのでしょう。

自主的に沖縄に行ってその手の原稿を書いたことがほぼなさそうなのに、いきなり沖縄に関する連載持てるとは大手新聞社にいた実績でしょうか。出版社の経費持ちで沖縄取材に行くのでしょうか。

出版社では時々、フレッシュな新人の大抜擢企画はあるものなので、和彦はそのラッキーな人なのでしょう。がんばれ。

いつの間にかといえば、暢子はいつの間にか宮廷料理もマスターしていました。

比嘉家の皆さん、全員、順調で、ちむどんどん中です。
良子(川口春奈)は野菜給食計画が順調、歌子(上白石萌歌)は歌も恋もじょじょに順調? 賢秀(竜星涼)は猪野養豚場の名刺を作ってもらいいよいよ本格的に働きはじめそうです。

姉妹は近況を文通形式で伝え合っています。あいかわらず、電話と手紙の使い方が不自然なのですが(智〈前田公輝〉まで電話と手紙の役割、つまり伝書鳩として投入されました)、暢子が上京した頃から文通形式にしていたら、離れている比嘉家のそれぞれのエピソードをうまくつなげて見せられたかもしれないですね。

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–{第102回のレビュー}–

第102回:ふつうのドラマになってきた

暑い夏もじょじょに秋めいてきて、「ちむどんどん」に関する様々な疑問も沈静化してきたような第102回。キーは歌子(上白石萌歌)です。

智(前田公輝)にもらったペンダントを良子(川口春奈)に見せて、暢子がまだ好きであろう智のことを考えてもやもやすることを相談します。

「なんでうちはこんな意地悪なの」とくよくよする歌子を励ます良子。白いパジャマ姿で並ぶ良子と歌子が清らかです。

「なんでうちはこんな意地悪なの」と自分の嫉妬心を責める歌子がいじらしい。
ちっとも意地悪じゃない。

あとでペンダントの真相を知ったときの「うそつき」も可愛かったです。

ペンダントは安物かと思ったら意外と高価なものでした。智はもらいもので暢子にもあげたと言いましたがそれは照れ隠し。原宿で買ったものでした。

善一(山路和弘)と飲みながら人生相談する智。
歌子に惹かれているのを善一に見透かされて、
姉から妹に乗り換えるのは「カッコ悪い」「おれおかしくないですか」と自分の気持ちがわからない智。

善一「男はな人を好きになるとかっこ悪くなる」
智「顔に似合わないこと言いますね」

父のいない智、もっと早くから善一と交流していれば相談に乗ってもらえたのではないでしょうか。暢子に夢中になっているときに諭してもらえばよかったのに。

そして、歌子は東京へーー。
暢子のお店の手伝いをすることになります。

暢子のお店の食材の仕入れは智、お店の手伝いは歌子。家族ぐるみでちむどんどん。あとは、賢秀(竜星涼)が豚で参加すればめでたしめでたしでしょうか。

これまでずっと秩序が崩壊したかのような展開でしたが、ようやく収束に向かってきたようです。まさに「丸く収まる」状況が見えてきました。

和彦(宮沢氷魚)はフリーライターの仕事をしながら家事を手伝うという理想の夫化してきました。

子供たちを旅立たせ、広い家にぽつんとひとりの優子(仲間由紀恵)の寂しさが際立ちます。

とはいえ、良子のうまんちゅ給食企画はうまくいっていません。沖縄の食材を使った給食は子供たちに不評でした。

ちむどんどんのほうも、沖縄料理は本土のひとに馴染みがないから、大丈夫かなと暢子は悩み始めます。オープン1週間前に悩むのはマリッジブルー的なものでしょうか。

矢作はとってもえらそうで、どっちがオーナーだかわからない雰囲気。暢子は「すみません」と謝ってばかり。でも彼がいなかったら、暢子ひとりでは手が回りません。矢作がしっかりしていて、ガミガミ言うから助かるのです。

社長である暢子と智。事業に失敗した矢作。
「ふたりともいまは社長様でしたね。3ヶ月後につぶれてないといいけどな」と毒づく矢作。自虐的なことを言えるようになって矢作も元気になってきたということですね。

初対面の歌子に矢作が「よろしく」と言うと智が「何かっこつけてるんだよ」と対抗するのは歌子を意識してのことでしょうけれど、妻帯者の矢作が歌子を意識するような態度をとるのは、どうなんでしょうか。これもまた男のかっこ悪さなんでしょうか。

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–{第103回のレビュー}–

第103回のレビュー

ちむどんどん開店に向けて、歌子(上白石萌歌)が手伝いにやんばるから上京して来ました。

歓迎会が開かれ、鶴見の人たちと、田良島(山中崇)が集まります。そこで、歌子と智(前田公輝)がいったん席を外したときに、鶴見の人が「姉のお古、お下がりの智」なんて噂していることを立ち聞きして傷ついてしまいます。

そこでかかる大袈裟な劇伴。

あーあ、せっかく歌子と智がいい感じになりかかってきたのに残念。幸福には困難がつきものといっても、こんな悪意のない噂話の立ち聞きとは……。

そして、智が交通事故に遭うという急展開。

最近、ちょくちょく出てきた公衆電話とベンチとポストのある道で、智が轢かれて「瀕死の重体」になってしまいます。ネットでは「瀕死の重体」の言葉遣いがおかしいのではないかと話題になっていました。頭痛が痛いみたいなことでしょうか。とにかくすごく大変な状態であることを言葉を重ねて伝えたかったのでしょうか。

「あさイチ」では車が通るとは思えない道と話題になりました。

ロケでなく、狭い歩道のようなセットを使って、車の通る道での事故を表現するってなかなかの荒技です。これは朝ドラ史に残る、珍場面です。

すべては歌子と智が結ばれるため、だと推察します。

智がなぜか暢子(黒島結菜)を好きになって勘違いして結婚話まで突っ走ったため、面倒くさいことになっているんですよね。

姉に振られて妹と……という流れは、「ちむどんどん」を描くうえで参考にしたといわれる「若草物語」にあります(正確には「続若草物語」のほうで)。主人公ジョーの男友達ローリーはジョーを好きになりますが振られ、妹のエイミーと結婚することになります。

筆者は子供のとき、ジョーとローリーが結ばれないことが不満だったので、「ちむどんどん」の暢子と智と歌子の関係にももやもやを感じるのは当然なのかもしれません。

ただ、智が、矢作(井之脇海)が歌子に親切な態度をとっているのを見て嫉妬心を燃やしている様子が、暢子のときと同じで、もうそれはいいからと思ってしまいます。それが智のキャラなのでしょうけれど、恋愛になると一直線はもう卒業してほしい。

矢作が妻帯者だから抑えめですが、智がへんな対抗心を出すから、矢作が歌子に優しいことが下心にも感じられて、余計な描写だと感じます。

なぜだろう、いちいち、すんなりいかない。わざとねじっているのかなとも思いますが……。

わざとすんなりいかないようにしているように思えるのは、良子(川口春奈)の野菜給食計画。沖縄の野菜づくしは生徒たちに不評で悩むと、博夫(山田裕貴)が「食育」について助言します。

優子(仲間由紀恵)が晴海に畑仕事をさせて野菜を好きにさせたことから思いついた野菜給食。視聴者的には、野菜を自分で作るから美味しく感じることが見てわかっているのに、良子はそこに気づいていないことがなんだか不自然に感じるのです。というのは、比嘉家で一番賢いはずの良子がそこまで鈍いかなあと疑問に感じるんですよね。

そうやって、わざと遠回りしているかと思えば、田良島が、ちむどんどんを東洋グラフの東京の沖縄料理店特集に推薦しておいたと言うようなイージーモードもあって。登場人物に悩んで悩んで正解にたどりつかせたいのか、トントン拍子の無双にしたいのかどっちなんでしょうか。

※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第104回のレビュー}–

第104回:「ちむどんどん」いよいよ開店

サブタイトルにあった「イナムドゥチ」は沖縄のお祝い料理の定番であることがわかりました。和彦(宮沢氷魚)がオープン祝いに作るのです。

その前に解決しないといけない問題があります。

智(前田公輝)が「瀕死の重体」と聞いて、暢子(黒島結菜)歌子(上白石萌歌)が病院に駆けつけると、いろいろ誤解があって、智は無事でした。

喧嘩したまま智が死んでしまったら……と心配した歌子と智の気持はまた一步近づきました。

握手をしようよとしたら三郎(片岡鶴太郎)が病室に入って来て……。このとき、数珠持っているのがブラックです。しかも三郎さん、ものすごく顔色が悪い……。

この実に素朴な聞き間違いコントについてはさらりと飛ばして、お次は、フォンターナです。

賢秀(竜星涼)清恵(佐津川愛美)が東京に営業に来たおり、フォンターナでランチ。
スーツを着た賢秀とワンピースの清恵はなかなか素敵です。

高そうなお店に緊張する清恵。ふと、昔、女友達と食事したことを思い出し語りします。その友達は、東京に憧れて出てきて男に騙され故郷に戻ったというもので、どうやらそれは彼女自身のことのように思えます。

清恵が賢秀に苛立ちながら見放せないのは、自分を見ているみたいだからかもしれません。あるいは悪い元カレ。そう、清恵はいわゆるダメンズに弱いタイプなのかも。

過去は償えないと言う清恵に賢秀は

償えるさ 人はよ、何回でも人生をやり直せる

とあっけらかんとしています。さすが賢秀。「いいこと言うね たまには」と珍しく賢秀を肯定する清恵。

そう思えないとやっていけない、俺なんか、もっと恥ずかしい過去ばかりと自覚している賢秀。

ちょっと切ない劇伴が流れて、失敗した過去を持ちながらなんとか前を向いて生きてようとしているふたりの生きる哀しみが共鳴しはじめた、じつにいい場面です。が、そこへ、アロハを着たチンピラふうの男・涌井(田邉和也)が現れ……。

フォンターナ、一流レストランのはずなのに、なぜ、こんな柄の悪い人がふらっとランチに入って来れるのでしょうか。時代の変化と共にいつの間にか大衆レストランになったのでしょうか。夜は予約制でなかなか入れないけど、ランチは誰でもウェルカム、リーズナブルな値段で一流の味が食せるみたいなことを
売りにしているのかな。確かに、暢子も上京してすぐに早苗に誘われてランチに来てましたしね。

一流問題はまあいいとして、視聴者のほんと誰もが思うのは、こんな偶然の再会ある?ということです。

智の交通事故と同じく、素朴過ぎる展開です。これもまた、智の件と同じく、賢秀と清恵との関係を進展させるための仕掛けでしょう。

と、ここで思うのは、交通事故、元カレらしき男との偶然の再会。どっちもドラマあるあるで、お話を盛り上げるときには使う必須アイテムのようなものですから、それはそれでいいのですが、問題はその舞台です。

前者は、ここで大事故起こらないよね、というような狭そうな道、後者は、ここにチンピラ来ないよね、というような銀座の一流レストラン。

創作とは、ここどうする? となったとき、冴えたアイデアで乗り越えることでもあると筆者は思っています。それが、辻褄合わなくても視聴者にSNSでツッコんでもらえて盛り上がりの一助になるからいいよねってことで、それこそ一流のはずの制作者たちが、思考や工夫を放棄するようになることがとてもこわいことだと感じています。

力技で突破するのは思いがけないアクシデントがあったときには仕方ないけれど、このドラマは、その思いがけないアクシデントがあったときの力技ばかり使っているようで、いったいどうしてこういう選択をしているのか、ほんとうに謎です。

そうこうしていると、1979年9月(昭和54年)、暢子のお店がオープンしました。

暢子が珍しく空を仰ぎ、太陽を拝んでいました。「ちむどんどん」では空があまり出てこないんですよ。沖縄の空を強調するためでしょうか、東京は息苦しい閉ざされた雰囲気なのです。

そして開店には、暢子と和彦の頼もしき仲間たちが。
交際範囲は狭く数も少ないながら、絶対的な味方がいることは強いですねえ。

※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第105回のレビュー}–

第105回:ドラマはクランクアップ

長きに渡る撮影がクランクアップしたそうです。あと4週間、見守っていきましょう!

「ちむどんどん」第105回の裏、BSプレミアムで「新日本風土記『夏のうた 沖縄の旅』」の再放送をしていたんですよ。BSPで早々に「ちむどんどん」を見たあと15分間、チャンネルを変えなかったら見られる流れです。

内容はオンデマンドの解説を引用しますと、

沖縄戦の激戦地・読谷村で暮らす農家の『さとうきび畑』。大阪のリトル沖縄・大正区で遠い故郷を思う『てぃんさぐぬ花』、そして親子をつないだ『花』。沖縄球児を『ハイサイおじさん』で全力応援する兵庫県の高校吹奏楽部。石垣島の高校生が三線で歌い継ぐ八重山民謡。沖縄のラジオ局が大切にする沖縄方言と『島人ぬ宝』など「ウチナーポップス」。本土復帰50年を迎えた沖縄の、多様な夏の歌の世界と人々の暮らしを紡いでいく。

「ちむどんどん」を見てもっと沖縄を知りたいと思ったら、こういう番組を見るといいですね。オンデマンドでもまだ見ることができます。

それにしても、再放送とはいえ、なぜ裏で沖縄ものをやるのでしょうか。ドラマはドラマ、現実は現実という表裏一体感でしょうか。あるいは、ドラマに不足している臨場感をこちらで補足? そんなコトしないでドラマで扱ってくれたら良かったのにと思いました。おそらく、ドキュメンタリーもドラマも、同じように取材をしたと思うんですよ。同じように知り得たことから、かたや自由なドラマが生まれ、かたや、生活者に寄り添ったドキュメンタリーが生まれる。ジャンルが違うとはいえこうも印象が違うのがおもしろいものですね。ドラマは時代が70年代で、いま、その頃を再現するのは難しいのかもしれませんが、伝統文化や料理に関することだったら時代に関係なく伝えることができたのではないでしょうか。

さて、ドラマです。ちむどんどんがオープン。大盛況でした。和彦(宮沢氷魚)も雑誌に記事が載って、
暢子(黒島結菜)ともども、スタートを切りました。

口の悪い、料理以外はいたしませんだった矢作(井之脇海)が料理を運ぶようになります。妊婦に無理させるわけにはいかない。生まれてくる命にはみんな親切です。

フォンターナ時代は無駄遣いされていた矢作が、屈折しているけど、根は料理を愛するいい人という愛されキャラに育ちました。彼メインの料理人ドラマが見たくなります。

雑誌にも紹介記事が載って順風満帆かと思いましたが、重子(鈴木保奈美)波子(円城寺あや)が来店しますが、にっこり不穏なことを言いながら去っていきます。

そして開店2ヶ月ーー。

2ヶ月後、なぜか登場人物の衣裳がおしゃれになっています。矢作のエプロンや和彦のセーターがポップになっています。
オープン時から暢子と歌子(上白石萌歌)がエプロンに頭に巻いた手ぬぐいはカラフルでかわいいかったです。

テーブルに花が飾ってあるのもいいですね。フォンターナのみならず暢子の下宿にも飾ってありました。
花を飾る、そのひと手間は、美術さんか装飾さんの気配りでしょう。こういうのが物語のなかにも取り入れてあったら琴線に触れるのになあと思いました。

一方、やんばるでは、良子(川口春奈)の給食の助っ人に優子(仲間由紀恵)が現れます。給食メニューはイナムドゥチ。その後、生徒からの理解ある手紙に感動する良子。野菜給食は軌道に乗りそうです。よかったよかった。

賢秀のほうは、清恵(佐津川愛美)が東京に行って以来塞いでしまい……。

さてさてどうなる??? あと4週!

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–{第106回のレビュー}–

第106回のレビュー

第22週「豚とニガナは海を超えて」(演出:木村隆文、内田貴史)はいや〜な感じではじまりました。

ちむどんどんの経営が思わしくなく、暢子(黒島結菜)の食欲も落ちてお腹の子のことも心配。

どうしてお客さんが入らないのか悩む一同。そりゃあ、開店2ヶ月経っているのに、店の前でチラシ配ってるだけではだめでしょう。駅前で配りなさいよと素人の筆者でも思います。もちろん撮影の都合なのはわかりますが。

とくに何も工夫しているように見えないにもかかわらず、ただただ落ち込んだ末、

智「矢作さんにも問題あるんじゃないですか」

暢子「うちは矢作さんとは違います」

などと協力的でない矢作(井之脇海)に当たるなんて、ひどすぎる。

「オーナーは料理もしないのに偉そうです」と言い放った若き日の暢子、健在でしたが、あとから反省して謝ります。矢作は謝ることができることを「たいしたもんだ」と褒めます。自分の店がだめになったとき、他人に当たり散らしたという矢作も変わりつつあるようです。

暢子も矢作もすこしずつ成長しているのを見せたいのでしょうけれど、「うちは矢作さんとは違います」はなあ……。あとから反省して謝ってもこんなこと口にしてしまう人、いやだなあ。
智(前田公輝)もなぜ矢作を敵対視するのか。

家族や仲間が大事なのはいいのですが、暢子たちは身内とそれ以外の差があからさまに違うんですよね。そうしないと生きていけない事情があるのもわかるのですが……。

ここで気になるのは、矢作はすでに身内のようなものになっているはずで、本来の暢子や智のような感覚の持ち主ならここで矢作に意地悪を言わないと思うんですよ。沖縄では一度会ったら誰でも身内のようなものみたいなこともドラマのなかで言ってましたよね。なのに、何かあったときは、まっさきに他人に冷たいなんて最もいやな感じですよ。

矢作が暢子をねぎらい、暢子が平謝りしたあと、なんの余韻もなくものすごい勢いで豚のアップに切り替わって、暢子が謝る場面がちっともいい場面じゃないと感じさせました。

豚は悪くないですけどね。そして、猪野養豚所では、豚の営業がうまくいきかかりますが、例の涌井(田邊和也)が現れて……。

絵に書いたようないやな展開です。緩急をつけたいのはわかるのですが、こんなベタベタな……。涌井がゆっくりたっぷり語ってる間に、ちょっと向こうで……と追い出せばいいのにとイライラしてしまうんですよね。そうしたら逆上して余計にひどいことになるのかもしれないけれど、まだそのほうが感情と状況がついていく。涌井が語っているのをぼんやり見ている時間がもどかしい。

二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだかが、店を潰した先輩として助言したところは、高嶋さんの演技力で伝わるものがありました。

矢作や二ツ橋、失敗した人たちが暢子を応援してくれています。だから暢子は彼らの分まで輝かないといけないのです。それには決して得意にならず、謙虚で、純粋で、哀しみを背負って懸命に明るく強くなくてはならない。みんなの願いを抱えて高く飛ばないといけない。理想のヒロインってとても大変なんです。

「あさイチ」は朝ドラ受けしない代わりにカナダの事件をニュース速報で流したのではないかと勘ぐってしまいました。大事件ではありますが、番組の頭に速報で流す必要のあるニュースとは思えなかったので……。

筆者は以前著書「みんなの朝ドラ」で一時期、朝ドラが低迷した頃は、民放のドラマが面白かったので
朝ドラは退屈だったと書きました。とんでも展開の昼ドラがおもしろかったとも書きました。でもそれは
20年くらい前の話ですからねえ。時代はアップデートされているんですよね。というわけで、新しい朝ドラに関する本「ネットと朝ドラ」(9月12日発売)を書きました。この5年間の朝ドラを総ざらいしております。よろしければどうぞ。

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–{第107回のレビュー}–

第107回:ちむどんどん 早くも休業?

ちむどんどんは閑古鳥で打つ手がなくなった暢子(黒島結菜)は休業を決意します。

えええー 

必死で何か手を打っていたようには思えませんでしたが……。

あと4週、最終週の大逆転を前に、ズドーンと落としているのはわかります。あと4週の間に一気に浮上するでしょう。とはいえ、この展開はいかがなものでしょうか。

そもそも暢子は無計画過ぎます。

急に和彦(宮沢氷魚)に恋モードになって結婚して、独立を決意して、妊娠もして、大きな店舗借りて、
従業員(矢作)も雇って、客足が途絶えてもどこかぼんやりして流されるまま。

豚肉に火をかけたまま、2階に上がって和彦と今後の相談していて、焦げ付かせてしまいます。とても迷走しています。これ、へたしたら火事になったかもしれないですよね。怖すぎます。

そもそも、豚肉を沖縄から取り寄せるなど素材にこだわっているのに、味を東京の人に合わせたものに変えるなど、矛盾していませんか。

まったくお客がいないけど、あまゆや田良島(山中崇)はオープン時しか来ないのか。田良島なんて知り合いをじゃんじゃん連れてきそうではないですか。和彦も、雑誌の編集部の人を連れて来ないのか。

重子(鈴木保奈美)が唐突に、これは暢子の冒険なのだと言い出しましたが、彼女の冒険=無謀、流されるままという印象です。

「遠い南の島からたったひとりでやって来て……」

重子が唐突にやたらといいことを言ってましたが、詩が好きな重子だから、こういう日常会話的ではない言葉を言えるのでしょう。

鈴木保奈美さんは代表作「東京ラブストーリー」でかっこいい自立した自由なヒロインを演じていたから、こういう力強いセリフが似合います。その分、世間知らずの箱入り娘の重子とはすこし違う方向にキャラが育ってしまっています。でも、保奈美さんの魅力でそれが素敵に見えるからいいですね。

波子(円城寺あや)も出番がさほどないのに、すごく印象的に見えるのは、円成寺さんの力だと思います。田舎料理を作ってきて、沖縄料理以外のものを…とすすめます。これは、地元料理の良さに気づかせたいという思いでしょうか。暢子、なんで食べない? 波子がお皿によそっているのに、食べる画をなぜ入れない? 明日以降、食べて、何かピンと気付くシーンが出てきますよねきっと?

ありがとうございます と目を落とした先には、波子の料理があるはず。これを一口食べて、場面を切り替えたらいいのに、第106回同様、暢子の表情に余韻なく、ぱっと場面が切り替わってしまいます。

そして最大の問題、賢秀(竜星涼)清恵(佐津川愛美)のシーンへーー。

涌井(田邊和也)のせいで、いい感じになっていた二人の仲もにわかに雲行きがあやしくなります。

賢秀「出ていけ おまえの顔とか 見たくない」
清恵「悪いけど ここ私んち」

賢秀、ほんと、ばかですね。こうして、清恵は出て行ってしまいます。
清恵の女ごころ。都会に憧れて出ていったものの騙されて水商売をするようになって、その過去を賢秀に話す勇気はないから、友達の話とぼかして伝えて。

清恵のことだったと知った賢秀は騙されたと怒り出し、水商売ややばい男との結婚していた過去はやっぱり消えないのだという悲嘆と、賢秀が出て行ったら大変だろうという思いやりで、出て行ってしまう清恵。

そしてまた水商売に。

この時代、なにも持たずに都会に出たら、水商売しかない ということも確かにあったかと思いますが、
あれだけ水商売の過去を消したかった清恵がまた水商売をやっているのは、物語的にとても安易だと感じて胸が痛いです。

運良く助けられてきた暢子との対比を描きたいのでしょうか。でも、過去の朝ドラで水商売をやっていた人物たちにはもっと痛みがあり、女性が一緒にその痛みを共有し、あってはならないと感じて見たものです。「おしん」や「カーネーション」はそうせざるを得なかった女性の視点に立っていました。

その歴史を経て、いまの時代に、なぜこんな描き方をするのでしょうか。わざわざ水商売のセットを急作りで作って、清恵に金髪をかぶせて……。

第106回で、二ツ橋(高嶋政伸 たかはハシゴダカ)が、水商売について語っていました。飲食店も水商売ということを言っていました。つまり、「ちむどんどん」では、清恵のような水商売も、暢子の飲食店も、同じ水商売なのだという観点で描いているのかもしれません。そういったら芸能だって水商売です。

みんな泥水すすって生きてるのだということです。わかりやすい水商売だけが特別視される職業というわけではないのです。みんな悲しいし、暢子たちのように愚かで無様でたくましく生きているだけなのです。それは悲しいのではなく尊い。そう思うと生きる勇気が沸いてくるような気がします。

言いたいことはなんとなくわかるのですけれど、それを朝の貴重な時間に放送しているのだから上質なドラマに仕立てて見せてほしいというだけなのです。長く続いた朝ドラのブランドを大事にしてほしい。

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–{第108回のレビュー}–

第108回:いよいよテーマを畳み掛けてきた?

「おはよう日本 関東版」でも、賢秀(竜星涼)清恵(佐津川愛美)の「出ていけ」「ここ私の家」のやりとりが取り上げられていました。「日本中がツッコミましたよね」と三條アナ。こんなふうに朝、ほのぼの可笑しさを共有できるといいのですけれど。その会話に至る問題がけっこうヘヴィなので……。

暢子(黒島結菜)は休業を決意。料理の味やメニューを見直すことにしました。

改装中ということで休業にしていましたが、いったいどれくらいの期間を予定しているのでしょう。
家賃もかかるから、長くは休んでいられないってことですよね。飲食店ってそういう感じなのでしょうか。筆者は飲食店経営に関してはまったく知識がないのでわかりません。

うすぼんやりと思ったのは、最近の若い方は日本の経済が困窮しているため未来を儚んで結婚も出産も諦めているみたいなので、世をはかなむことなかれで冒険してみることを暢子を通じて提案しているのではないかということです。でもこのドラマの展開だとあまり参考にならないし、ますます未来が閉ざされてしまいそうで心配になります。

とはいえ、第108回は暢子の未来が開けるような話になります。過去が暢子の未来を下支えする流れです。

暢子を励ますために、房子(原田美枝子)のイタリア帰国祝いという名目で、アッラ・フォンターナで食事会が行われました。

そこで房子はイタリアと沖縄は豚をまるごと料理に使うという点で似てると言い、命を大切にいただくと二ツ橋(高嶋政伸 たかはハシゴダカ)が言い、一気にドラマのテーマを畳み掛けはじめます。第107回では、何があっても食べることの大事さを、重子(鈴木保奈美)が語り、それは「ごちそうさん」を思い出させ、第108回の「出汁は料理の基本」は「なつぞら」を思い出しました。大事なことがぎゅっぎゅっと詰め込んできています。最終回までもう時間がないですからね。そうしないと。

房子が語るその土地のその食べ物に込められた人の思いを大事にすることが暢子の料理に影響を及ぼすことでしょう。

1、生きるために食べる
2、命をいただく 命の循環
3、できるだけすべてを使う始末の精神
4,食べ物に込められた土地や人の思いを大切に
5、基本を忘れない 出汁の大事さ

さらにそこに、寛大(中原丈雄)による「海から豚がやって来た」の話が語られます。沖縄出身の津嘉山正種さんが演じた嘉手刈による遺骨収集の話に次ぐ沖縄の歴史です。今回は当時の写真も出てきました。これぞNHKのドラマという感じです。

「海から豚がやって来た」の話は、賢秀が猪野養豚所に来たときに触りが出てきました。そのときはそのままになっていたことを伏線回収と喜ぶ感じではないですが、ようやく出てきてすっきりしました。そのときすでにネット検索して調べてしまったので(たぶん、そういう人、少なくないと思います)、こんなに空ける意味が感じられないのですが、暢子にはヒントになったようです。和彦(宮沢氷魚)もメモをとって、記事のネタにしそうです。

前述した、1〜5にまとめた食の基本精神を”豚”に集約させることになりそうです。沖縄と豚は切っても来れない関係。

そもそも比嘉家が豚を飼っていて、飼った豚を泣きながら食べたことが、比嘉家の”食”と”生きる”ことの原点だと思われます。

食事会のあと、なぜか妙な時間差があって、矢作(井之脇海)がちむどんどんに戻ると、暢子と和彦が1階で矢作に辞めてもらう相談をしていました。
矢作を無理に店に呼んでおいて、こんなに早く辞めてもらうなんて。しかも経営問題を1階で……。第107回は2階で話していたのに。フォンターナでは元同僚に嫌がらせされて、矢作も自業自得とはいえ、こういうところだけ念入りな描写なのはなぜ……。

「うちがもっとしっかりしていたら」と反省する暢子。やっと自分の後先考えない言動が他人に迷惑をかけることを学びはじめたようです。

矢作も振り回されて可哀想だし、寛大はいい話をしたのに食事させてもらえないまま店を出るはめになって可哀想でした。こっちは賢秀の身勝手。比嘉兄妹、そろそろしっかりしてほしい。

そういえば、歌子(上白石萌歌)はなぜ食事会にいない???

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–{第109回のレビュー}–

第109回:矢作が40万円の入った封筒を……

ちむどんどんの経営が思わしくなく矢作(井之脇海)に辞めてもらうしかない状況。その話を立ち聞きしてしまった矢作はおりしも元・同僚の桃木(池田航)に一緒に店をやらないかと誘われて……。

桃木さん、フォンターナでほとんど出番がなかったけれど、桃木雄三というフルネームがありました。

矢作によくかかる劇伴はやや電子音ふうの(「17歳の帝国」みたいな)ものでなんだか違和感ありますが、いつものその曲が流れ、心揺れて見えます。

ある日、暢子(黒島結菜)が鶴見信用金庫の坂田(安井順平)に支払う40万円を店に忘れ、留守を任されていた矢作が発見。そのときの劇伴はほのぼのしたもので……。矢作は盗まないよという意味合いなのかもしれませんが、違和感ありました。

劇伴がしっくりこない……。愛役の飯豊まりえが出ている人気ドラマで、12月にも第三弾が放送される予定の「岸辺露伴は動かない」では、音のつけかたをほんの少し違和感あるものにしているそうで(2021年12月24日公開「みんなのドラマ」演出家渡辺一貴さんインタビューより)そういうズラしは作品世界と合った選択だと感じますが、「ちむどんどん」でズラす必要性を感じないですが……。

矢作が盗んだのでは? と皆の胸に疑惑が沸くときは、ふつーに深刻な劇伴でした。

それにしてもお金を支払うのが目的で出かけたにもかかわらずそれを忘れていくなんて……暢子ドジっ子過ぎる。

智(前田公輝)は「泥棒がそんな簡単に改心するわけ?」と頭ごなしで……。以前のレビューにも書きましたが、賢秀(竜星涼)を代表として身内は何してもゆるすのに、距離のある人のことはこんな言い方するの、ひととしてどうかと思います。

暢子だけはすっかり低姿勢で、これまた智は「暢子は自分より相手のことを考える人間です」と信頼を語ります。うっそーー。これまで暢子がどれだけ自分、自分だったか……。

もうめちゃくちゃで笑いが止まりません。これまでわりと無表情で見ていたのですが(チベスナ的な顔で)、本日ついに根負けして、笑いながらこれを書いています。

人間はそうそう一貫性のあるものではないとはいえ、日常で身近にこういう人たちがいたらメンタル疲れてストレスたまりまくり、格好のSNSネタだし、飲み会の愚痴のネタです。

矢作だけが失敗を糧に反省し、いやがらせされても堪え、お金を前にしても心を動かさず、暢子の船に乗り続ける決心をします。

船とか冒険とか、急に「ONE PIECE」的な感じになってきました。

第108回で「海から豚がやって来た」の話が出たからでしょうか。ハワイに移住した沖縄の人たちが戦争で食糧難になった沖縄を救うため海を渡って豚を届けたという感動実話。このとき、果敢に船に乗った七勇士たちに暢子と仲間たちをなぞらえようとしているのではないかと推測します。この逸話もスペシャルドラマになりそうですものね。

豚の話はハワイに移住した沖縄の人たちが沖縄の食を助けたというもので、本土の人が助けた話ではありません。そこに「ちむどんどん」の登場人物が身内で固まってしまう理由が隠されている気もします。

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–{第110回のレビュー}–

第110回:優子と良子がやって来た

お店を改装中ということにして休業中の暢子(黒島結菜)の元に、優子(仲間由紀恵)良子(川口春奈)がやって来ました。

優子が朝、作ったという沖縄の野菜料理を暢子と歌子(上白石萌歌)矢作(井之脇海)とそろって食べます。矢作は最初、遠慮していますが、参加します。交流には参加しないと壁を作っていた矢作が変化してきています。まあ、沖縄料理を勉強するためにも食べたほうがいいとは思いますけれどね。

矢作も「うめえ」と言います。なつかしい。アッラ・フォンターナで暢子が作った料理をいつも「うめえ」と言ってました。暢子には冷たかったけれど、美味しいものには素直に「うめえ」と言う。そこが矢作のいいところ。ただ、フォンターナ時代は井之脇海さんほどの俳優には「うめえ」以外のセリフをもっと書いてほしいと思っていたので、昨今の矢作の躍進にはホッとしています。

野菜料理は、良子が野菜給食活動をしているつながりでしょうけれど、これまで沖縄料理は茶色いぽいお肉メインのものばかりで、こんなに明るい色味の野菜料理があるならもっと早くから出してほしかったなーと思いました。それとも、比嘉家の経済状態がよくなってきた、あるいは沖縄自体の経済状態が、本土復帰以前以降で変わったということを表しているのでしょうか(みんなの服装も明るくなってきている)。でも「なつかしいやんばるの味」と言ってましたね。故郷で笑顔で食べたって、あの頃、野菜料理どころかおかず一品しかない状態でしたよね。

ともあれ、「みつけた うちの足元の泉」と暢子が元気になってきました。やんばるの野菜の素材を生かすことを重視します。色味がきれいな野菜料理がいっぱいできました。

実際、都内のカジュアルな沖縄料理屋さんに行っても野菜系のメニューが少なくて、野菜があっても天ぷらになっていたりするんですよね。島らっきょうや海ぶどうを必ずオーダーする筆者としてはこういう新鮮野菜系の沖縄料理に興味津々です。

とはいえ、メインは豚肉です。おいしい豚肉はないものか……と思っているとそこへーー。

豚肉といえば、賢秀(竜星涼)。猪野養豚場で働いている賢秀。娘の清恵(佐津川愛美)と喧嘩するけどいい感じになっていたところ、清恵が家出してしまいます。

保証人がなくても働けるのは水商売に違いないと、目星をつけて探す賢秀。そこでニアミスが……。

清恵の働く水商売街のセットに「纏う朝」という店があったことに気づいたかたはいますでしょうか(第107回です)。主題歌「燦燦」の歌詞にある言葉ですね。

暢子のお店はうまくいき、賢秀と清恵はうまくいき……となっていくことでしょう。ここまで来ると何も考えず、終点までバスに乗っている気分です。

「あさイチ」にはクランクアップを迎えた黒島結菜さんがゲストで登場。三浦大知さんと宮沢氷魚さんも応援に駆けつけました。お店の看板の文字ちむどんどんは黒島さんが書いた文字をアレンジして使用しているそうです。それにはちむどんどんしました。それと黒島さんが島の文化に興味があると語ったところ。黒島さんが和彦のようなジャーナリスト設定の話も見てみたかった。

あと3週!

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–{第111回のレビュー}–

第111回のレビュー

第23週「にんじんしりしりーは突然に」(演出:中野亮平)は清恵(佐津川愛美)が偶然、ちむどんどんに現れるところからはじまります。

偶然その1:清恵はちむどんどんと同じ杉並で住み込みで働いていた

偶然その2:お店のひとから豚肉を買ってきてと頼まれていた

清恵は賢秀(竜星涼)から妹・暢子がちむどんどんという店を作ったと聞かされていたので、ここがその店と目星をつけたようです。

偶然その3:ちょうど店では豚肉を欲していた

清恵は暢子(黒島結菜)に試食を頼まれ、偶然もっていた豚肉を渡します。暢子が欲していた皮付きの豚肉!
東京ではない皮付き肉は賢秀が沖縄育ちを生かして提案したものでした。

偶然その4:賢秀のびっくり誕生パーティーに清恵が現れる

さすがに偶然が過ぎるためか、偶然4の前にはすれ違いが仕掛けられます。

清恵が試食しているとき、賢秀が店に来ますが、智(前田公輝)が止めます。智がいるのも偶然ですね。
店のなかに入らないようにするため無理くりつくった、賢秀のためのびっくり誕生パーティーの打ち合わせ中という理由のために、実際にパーティーをやるはめになり。それが清恵と賢秀の偶然の再会になるのです。

清恵がもう一度ちむどんどんに来るのは、皮付き肉を渡したのはいいものの、どこで手に入るか伝えなかったため。

プラスもマイナスもすべてが都合よい。なんとよくできた展開! こんなことが人生にあったらどんなにいいことでしょう。それが物語。

ちむどんどんが開店したときから、柱に貼ってある「食品衛生責任者・青柳暢子」がやたらと映っていたのが気になっていて。暢子の店という誇らしさを強調しているのかと思って見ていたのですが、清恵が暢子の名前を知っていたことを誤魔化すこの回のためだったようです。こういうものこそ伏線というのではないでしょうか。

あまりに都合良く話が展開しているとはいえ、清恵と賢秀の関係が微笑ましく積み重なってきていたので、ふたりが早く結ばれてほしいという思いのほうが強く、偶然の神様がふたりを導いていくことにはさほどいやな気持ちはないです。

このようにうまくいくことが連なると、人間はぼーっとなってしまいますね。何も考えずにぼーっと15分が過ぎていきます。いい感じに物事が進んでいく様子をぼーっと見ていられる物語は動物や自然を映す環境映像のようです。

いろいろツッコめるほうが頭が動いて、人間のためにはいいのかもしれないと思った朝でした。それは、皮付き豚肉のようなものかもしれません。筆者はあまり好きではないのですが、鳥でも豚でも魚でも皮が好きな人もいます。実際あったほうが味にフックを感じますよね。

「あさイチ」では今日も豚肉を食べて「うめえ」と言った矢作を演じている井之脇海さんがゲスト。最近、好感度ナンバーワンという感じの矢作なので「あさイチ」も盛り上がりを感じます。博多大吉さんは矢作びいきという印象。頭に巻いたバンダナのとんがりをずっと気にし続けていることもおもしろいです。

※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第112回のレビュー}–

第112回:賢秀と清恵、そろそろハッピーエンドが近づいてきた?

清恵(佐津川愛美)は「本日貸し切り」の張り紙には気づくのに、「改装中で休業」の張り紙には気づかなかったのでしょうか。それはさておき。豚肉が買える店情報を伝えに来て、偶然、賢秀(竜星涼)に見つかってしまいます。でもここでハッピーエンドにはならず、まだまだ引っ張ります。

痴漢に間違われた賢秀が苦い顔でちむどんどんに入ると、クラッカーが一斉に鳴って時期外れの誕生日を祝福されるという展開には笑いました。そうか「ちむどんどん」って3ヶ月も前の誕生会のような意味のわからない感じそのものです。このときの暢子(黒島結菜)のとんがり帽子姿がなんともいえずかわいい。

時期外れの誕生会の意味のわからなさと、賢秀と清恵のすれ違いを「やんばるの野生児の勘」という暢子の言葉がすべて解決してしまう力技。

確かに、シークヮーサーをかじると勘が冴え、元気が出たこともありました。暢子の勘の良さは冴え、房子(原田美枝子)に電話した直後、房子を訊ねて清恵がやって来ます。

清恵には房子、賢秀には三郎(片岡鶴太郎)が助言して、いよいよ賢秀と清恵のハッピーエンドが見えてきました。

しかし、賢秀、清恵はちむどんどんの近くで働いていることがわかったにもかかわらず、鶴見方面をまた探しているのが謎。智(前田公輝)が事故ったベンチとポストと公衆電話のある道は鶴見のほうですよね。まさか杉並設定???

しかも何度も何度も清恵のいる同じ水商売街も探している。まあ、現場100回と言いますし、何度も同じところを探すのも大事ですけれど。

さてさて、こんなふうにこじれたのも、賢秀が養豚の仕事をしていることを身内や知人に隠しているから。養豚の仕事を恥じるのは実際に従事している人に失礼というような声がネットで上がっているようです。
こういう話は難しいです。いまは、なんでも平等にという考えが広まっているから、失礼だという意見が出るのでしょうけれど、偏見があった事実もあるわけで。なかったことにしないでそれを伝えることも必要だと思うわけです。ただ、昨今のニーズを慮り、作り手なりに偏見をネガティブに描かないように気遣い、それによって余計に意味合いが伝わりにくくなるという悪循環を感じます。

賢秀の場合、子供のときから豚の飼育は得意で、大人になってもなんとかのひとつ覚えのようにそれしかできないということを恥ずかしく思っていて、何か違う、もっとすごいこと(ピッグではなくビッグなこと)をやってみんなを驚かせたいという一心であるとも解釈できます。

賢秀の問題は、職業差別とは別の、「成功」「お金持ちになる」というようなことに囚われ、そこに到達できないから自己肯定感が低くなってしまっているところにあるようです。

賢秀はようやくそのトンネルから抜けて、自分の仕事に自信を持つことができそうですが、誰しも、自信のある仕事や生活をしていないと昔の知り合いに会いづらいことがあります。例えば、長いこと同窓会に出なかったけれど、仕事で成功したから出席したということってあるあるです。なかには無理して自分を良く見せ続ける人もいます。

手前味噌ですが、拙著「ネットと朝ドラ」では、ネットで誰でもなんでも発信できる時代になったのと同時に、あまりに多くの意見があるため逆に何も言えなくなってきた時代の朝ドラについて書きました。賢秀の仕事に関する批判も、どう語っていいか迷走してしまった時代の問題だと感じています。

※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第113回のレビュー}–

第113回:大切な人を見放してはいけない

雨降って地固まる ということわざが絵になっていました。

やっと清恵(佐津川愛美)を見つけた賢秀(竜星涼)。清恵は帰らないと意地を張りますが、賢秀はもう二度と「大切な人を見放すことはしない」と強い決意で粘ります。

賢秀が大切な人を見放さないと思ったきっかけは子供の頃、暢子(黒島結菜)が貧しさから東京に養女に出されそうになったときの苦い経験です。家族が引き裂かれることの悲しみが募りに募り、暢子は東京にいかず、家族で幸せになると決意したあの日……。

和彦(宮沢氷魚)が暢子の手を離さないと誓ったのと同じく、賢秀もそう思っていて、いまは清恵に対してその思いを注いでいるのです。

三郎(片岡鶴太郎)に言われて黙って後ろから抱きしめる賢秀。恋愛ドラマで有名なシチュエーション(別名・あすなろ抱き)ですが、実は、子供時代に、賢秀は暢子を後ろから抱きしめています。家族愛の表現として。

子供の日の回想シーン。賢秀(浅川大治)と暢子(稲垣来泉)が猛ダッシュで駆け寄って、賢秀は勢い余ってお互い通り過ぎそうになるところを、咄嗟に腕で暢子を抑え込んだすえに抱きしめる。最初からはかったように前から抱きしめるのではなく、勢い余った感じが最高にいいのです。

子役の浅川大治さんの懸命さが胸を打つ、大好きなシーンです。

後ろから抱きしめるは形骸化するともはやコントですが、本来は、背を向ける相手を必死で止める感情の発露です。

暢子の手を逡巡したすえ握った、和彦の子役・田中奏生さんの演技にも切実なものがありました。

少年時代の賢秀と和彦は、貧しさゆえ運命に翻弄されるひとりの沖縄の少女をなんとかして守りたいと
思いながら何もできない非力な自分が悔しい。かの名作「火垂るの墓」に感じるようなものがありました。

ところが大人になると、和彦と暢子は、戦争の話と自分たちを重ね合わせて沖縄の海で愛を誓うというすっきりしないことになり、賢秀と清恵の場合は、店の前で舞台のような絶叫芝居をはじめ、「グッド・バイ」を歌うのか歌わないのかというわかりやすい暗喩めいたやりとりがあり、そこに雷ゴロゴロ、雨ザーザーという、そうでもしないと間がもたない流れで、引っ張りに引っ張ったすえ、ようやく清恵は千葉に戻ります(この撮影に携わった人たちの想いをドラマ化してほしい)。

昭和のドラマには当たり前にあった”生きる悲しみ”の必要性と、平成に求められた楽しくなければ……のノリと、令和になって、いろいろ描き過ぎちゃうと視聴者が引いてしまうから配慮の必要性とのせめぎあいによって「ちむどんどん」は足元が安定しないものになっているような気がします。まるでアメリカと日本と中国に挟まれている沖縄のようです。

先日、脚本家の羽原大介さんに取材する機会がありまして。恋愛の話になったら

恋愛はすれ違うからこそ恋愛なんだ。

Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。

とおっしゃっていたことが印象的でした。恋愛に限ったことでなく表現がストレートでなく遠回りしてしまいがちな作風なのだなあと感じました。これは房子(原田美枝子)に言わせたらたぶん、強みであり弱みでもあるのではないでしょうか。

清恵の手をようやく掴んだ賢秀は、回り回って暢子を救うことになります。彼の育てた豚がちむどんどんの看板メニューを作り出す。子供の頃のあの悔しい想いがここへ来て、生かされているのですね。賢秀が暢子を笑顔にしたのです。

というのは理屈ではわかるのですけれど、2時間くらいの映画のプロットというおそばがすっかり伸び切ってしまったものを食べている心境です。ストレートに言えず100回近く費やしている。ある意味強烈な個性だし、それを許容するNHKは寛大だ(中原丈雄さんの役名ではありません)。でもやっぱり「マッサン」のエリーみたいな、ぐずぐずするマッサンにツッコめる人物の必要性を感じますが、どうでしょうか。

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–{第114回のレビュー}–

第114回のレビュー

12月、ちむどんどんが再開。なかなかお客さんが来ないので、歌子(上白石萌歌)が意を決して表で声出しします。朝ドラファンとしては「ごちそうさん」の焼氷の歌エピソードみたいに歌子が歌うのかなと期待しましたが、歌わず。でも歌子、ここまでしたのは立派です。

と、そこへお客様が。クレジットでは藤田という人物のようですが、「ごちそうさん」で結婚詐欺的なことをした人物を演じた古舘寛治さんが演じているので、警戒して見ていると、緊張感ある2分間ほどの食事シーンはいい結果で終わります。その後、お客さんが続々やって来て……。順調にお店は繁盛し、藤田はお客さんを連れてきます。この客がナレーションを担当しているジョン・カビラさん。彼らが相席した紳士とお嬢さんはカビラさんのお父様と娘さんだとか。ものすごく意味深に撮っていました。

川平朝清さんはNHK とゆかりのある方だそうで、朝ドラってNHK、あるいは放送文化と関係あることはすごく敬意をもって撮る印象があります。

前作「カムカム」ではNHKのラジオ放送の歴史に関係する部分を、「おちょやん」だとラジオドラマ、「エール」もラジオドラマ……、このあたりの描写は短くてもしっかり描いている印象なのです。何が言いたいかといいますと、自分たちと関連する部分は資料もあるしある程度わかるからなんでしょう。今回はNHKとは関係ないけど、NHKのOBとしてジョン・カビラさんのご家族として、敬意を感じる撮り方です。それと同じように料理をはじめとしたいろいろな事柄についても短い場面でも歴史と伝統を感じるような撮影をしてほしいなあということです。

ともあれ、ちむどんどんが、知らないお客さんばかりでいっぱいになったところは感動的でした。

そのあと、暢子(黒島結菜)が外に出ると、雪が降って来て……。

遠い南の島からやってきた女の子が、最初に雪を見て、カルチャーショックを受けたときがあったわけですが、いまやその女の子は立派に東京で、沖縄の食文化をたくさんの人に喜んでもらうことができた。食を通じて、沖縄と本土が繋がった素敵な日だったのです。

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–{第115回のレビュー}–

第115回:健彦、誕生

サンサン商店街に来てから暢子(黒島結菜)は太陽を拝むようになりました。子供の頃、実家で、お父さん賢三(大森南朋)が拝んでいたように。そういえばお父さんが謝らないといけないことってなんだったんだろう。

暢子は過去に謝ることは一切合切なくただただいまの感謝と未来に向かって祈っているのでしょうか。

鶴見は日が当たらない場所で、銀座も不思議と太陽を感じさせない中、杉並だけは明るい。これは暢子がようやく日の当たる場所に出て来ることができたというなのだと解釈できます。自分のやりたい沖縄料理の店を持って、ようやく光が当たってきました。

暢子の出産が近づいて、優子(仲間由紀恵)がまた東京に来ます。何度も東京に来ることができる恵まれた経済状態の比嘉家。沖縄や九州方面には交通費がかかるからなかなか帰れないという声を聞きますが、比嘉家はそんなことないのです。昔、あんなに苦労した人たちが豊かになってなによりです。

ただし、賢秀(竜星涼)は期待を裏切りません。優子と清恵(佐津川愛美)を引き合わせに来て、プロポーズをしますが、不完全。まさかやー でした。いつかダイヤモンドの指輪を買ってやると言い続けて買えないみたいなままが賢秀らしい気がします。

この場面で、賢秀が膝を打って痛てて……となっているところや、離れて聞いていた優子、歌子(上白石萌歌)智(前田公輝)和彦(宮沢氷魚)が一言ずつセリフを与えられてしゃべるところが、昭和のホームドラマ的でもあり、学校でやる演劇のようにも見えました。ほら、生徒に平等にセリフをくれるやつです。こういう、ひとり一言の元は古代ギリシャ劇のコロスであり、市民の声の代弁なんですけど、それが時を経て謎の学校演劇芝居になってしまったんですね。

賢秀はこころのきれいなまっすぐな子、心が健やかだと優子が言います。清恵も結婚に失敗しているけれど関係ないと、じつに素朴な善意の話にまとまってきます。矢作(井之脇海)もすっかり素直になりました。三郎(片岡鶴太郎)多江(長野里美)房子(原田美枝子)も3人でちむどんどんで会います。これで房子もようやく積りに積もった孤独や恨みから解放されたんでしょうかね。フォンターナも太陽光が注がなかったのは房子の心理の現れなんでしょうたぶん。一流店で太陽のイメージの強いイタリア料理を扱っていながらフォンターナは路地裏で暗かった。

これで誰もに光が注がれるようになったわけです。それも順光線が。にんじんしりしりーのオレンジは太陽の恵みの色、そのものです。

生まれた子供の名前は「健彦」。誰もが健やかでさえあればいいという願いを込めた名前です。

憲法に保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を思い出しました。

ときに1980年ーー

あと2週!

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–{「ちむどんどん」作品情報}–

「ちむどんどん」作品情報

大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――

ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。

放送予定
2022年4月11日(月)~

<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。

日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。

<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。

出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人

作:
羽原大介

語り:
ジョン・カビラ

音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)

主題歌:
三浦大知「「燦燦」

沖縄ことば指導:
藤木勇人

フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子

制作統括:
小林大児 藤並英樹

プロデューサー:
松田恭典

展開プロデューサー:
川口俊介

演出:
木村隆  松園武大 中野亮平 ほか