「ちむどんどん」第97回:重子の名前コント、房子の深刻な過去が同じ番組と思えない

続・朝ドライフ

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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第97回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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「悪いのは和彦」

和彦(宮沢氷魚)が新聞社を辞めたことを責める重子(鈴木保奈美)
「離婚しなさい」と言ったのは、暢子(黒島結菜)を心配してのことでした。
子供ができたと知ると、「夫が身重の妻をほうりだして好き勝手に日本中飛び回るなんて」とたしなめます。彼女が夫・史彦(戸次重幸)にそうされていたのでしょうね。

この感じだと暢子が育児とお店を立派に両立して、和彦のライフワーク(沖縄)を支えるようになるのではと想像が働きます。

和彦は新聞社で暢子と再会したときは、すてきに成長したように見えましたが、
そのあと、いいところがあまりありません。
記事の主題である質問を取材の終わりについでのようにしたり、6,7年経っても、取材の心得が身につかず、デリケートなことをずけずけ聞き出そうとしたり、新聞記者にもかかわらず、事件性の高い現場にのこのこ行って巻き込まれ、
会社に迷惑をかけてしまう。

そしてなぜか、辞めた新聞社で、田良島(山中崇)に仕事先を紹介してもらっています。こんなことあるかなあ……。売り込みしていたカフェバーみたいな場所を流用しても良かったのではないでしょうか。

ただ、こんなことありえないと思っても、辞めた会社の人が親切に仕事を紹介ーーしかも古巣の会社で、ということがありえてもいいのではないかとも考えられます。ありえない は いつの間にか刷り込まれたことであって、もっと自由に柔軟であってもいいですよね。盗みと詐欺と殺人以外は、あってもいいのかもしれません。

なんでもありのようだった暢子も、引き抜きはしてはいけないと自覚しています。

新店舗の料理人を探すにあたって、フォンターナの二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)を引き抜くというアイデアをあまゆの順次(志ぃさー)が口にするのも、アウトな気がします。

思うのは自由とはいえ、お世話になったフォンターナから引き抜きはあってはならないでしょう。なんで、こんな会話をわざわざ……

食い逃げもあってはいけないことのひとつでしょう。

沖縄なまりの強い、料理人としての腕も期待できない人(諸見里大介)や、魚さばきの得意な高齢者(元木鴈二朗)などしか面接に来なくて、困っているところへ現れた食い逃げ犯はーー

ありえないは、重子が、店名「ちむどんどん」を生まれてくる子供の名前と勘違いするところ。「LIFE」的なコントと思えばあっていいですが、房子(原田美枝子)のパートはシリアスで(妹の流産)、15分のなかで重子のコントと房子の深刻が並行して描かれるので、ついていきづらいのです。こういう番組ってなかなかないです。見せ方は違いますが、どちらも若い暢子と和彦をそれぞれの表現方法で心配しているんですよね。

「禍福は糾える縄の如し」「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という人生を表現する挑戦なのかもしれないです。でもある意味商品(受信料でできている)として世に出すにはもうすこし練ったものを見せていただきたい。

優れたドラマとは何か。NHKの番組の基準とは何か。朝ドラとは何か。正しさとは何か……。
「ちむどんどん」は問いかけているようにも思います。

「ちむどんどん」のような実験を国民的ドラマ枠・朝ドラでやるのはありえない。深夜やBSでやるべき。と思ったとしても、何を根拠にそう思うのか。「ちむどんどん」を見ていると既存の価値観がどんどん崩壊していきます。

(文:木俣冬)

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–{「ちむどんどん」第20週目のあらすじ}–

「ちむどんどん」第20週目のあらすじ

暢子(黒島結菜)の開店準備が進む中、和彦(宮沢氷魚)が東洋新聞を退職することに。そしてその直後、暢子の妊娠が判明。不安もあるが、二人は大きな喜びの中にいた。だが事態を知った房子(原田美枝子)が暢子に告げたことは…。一方、沖縄では、良子(川口春奈)が学校給食を改革しようと奮闘していた。だがこれまでのやり方を変えるのは、相当難しいようで…

–{「ちむどんどん」作品情報}–

「ちむどんどん」作品情報

大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――

ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。

放送予定
2022年4月11日(月)~

<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。

日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。

<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。

出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人

作:
羽原大介

語り:
ジョン・カビラ

音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)

主題歌:
三浦大知「燦燦」

沖縄ことば指導:
藤木勇人

フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子

制作統括:
小林大児 藤並英樹

プロデューサー:
松田恭典

展開プロデューサー:
川口俊介

演出:
木村隆  松園武大 中野亮平 ほか