「ちむどんどん」第89回:主人公の結婚式を祝福することがためらわれる理由

続・朝ドライフ


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第89回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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あゝ 歌子まで

1979年3月。

雨降って地固まる、いよいよ暢子(黒島結菜)和彦(宮沢氷魚)の結婚式の披露宴の日です。

披露宴の話ばっかりなんですが、肝心の式はどうなったのでしょうか。やらないで籍だけいれて、披露宴? 披露宴にすべてを賭けている様子の重子(鈴木保奈美)や、フォンターナに来てしんみりしている優子(仲間由紀恵)良子(川口春奈)の様子を見れば、そうですよね。

これを機会にみんなで集まってパーティーしたいということなのでしょう。

房子(原田美枝子)「自分がどこから来てどこに行きたいのか 考える一番の 機会です」と暢子に言います。

いわば、披露宴は人生の転機。
これまでのすべてを丸く収めるということで、三郎(片岡鶴太郎)多江(長野里美)と房子も対面します。
そして、智(前田公輝)歌子(上白石萌歌)の仮病に騙されて東京までやって来ることに。

房子と三郎との再会は暢子のたっての願い。智は、歌子が連れて来たかったのだと推測できます。あるいは家族ぐるみのはかりごとか。

これは、いろんな人の意見を聞きたいです。筆者はそっとしておきたい派。少なくとも自分のお祝いのときにはやらないと思います。

「ちむどんどん」の世界では、人類みなきょうだい、自分の幸せはみんなのしあわせという感じがするので、自分が幸せになる日に、みんなが仲直りしてほしいと思うのでしょうね。筆者はやるのもやられるのもいやかも。まあ、タイミングにもよりますけど。

「ちむどんどん」の場合は、重子も、房子も、智も意地っ張りで本音を出せない人物で、内心は水に流したいと思っているから、しぶしぶそうなったという状況を作り出してあげればいいということで、このような流れになっていると考えられます。

全員、同じ性格で、とても一面的なんです。意地っ張りな人物を描くのが得意な作家だなと過去作を見ても思うのですが、ひとりひとりの違いを尊重することを謳っているなら、もうすこし工夫して、いろいろなタイプのひとを描いてほしかったと思います。

重子も房子も、デレる表現が、おしゃれするというのも芸がない。重子はいろんな服に迷い、
房子は三郎が来てメイク直しします。うーーん……。まあこれはかわいいということでいいとして。

なんといっても、歌子の病気の描き方です。病気をドラマのフックにしてしまっていることが残念です。
最初にそれが気になったのは、歌子がはじめて東京に来て検査を受けたとき。大変な病気なのかなと心配させるムードがあり、結果、なにごともありませんでした。

そして今回、智を東京につれていくために仮病を使います。このとき、深刻な劇伴もかかるから余計にたちが悪い。もうこれでは歌子を心配できなくなります。これまで彼女が虚弱体質で悩んでいたことも無意味化してしまいます。それがなんだか悲しかった。

つまり、このドラマの脚本が仮病を使って、その都度、心配させるけど、それはほかの目的のためなのです。

暢子の実家への手紙と電話も脚本上の都合でしかなく、手紙を効果的に使っていた名作ドラマとはまるで違います。

セリフもほんとうに有機的でなく、その場限りの”それ”っぽいものばかり。

「乾杯用のスプマンテは冷えてますか」「はいもちろんです」と調理場の雰囲気を一応出してみました感。

「誰かに迎えに来てもらうかタクシーで行け」と歌子に当たり前のことを言う智。

フォンターナに「着いた」って前に来てるじゃん、重子。

「やんばるにこんな店ないね」と博夫(山田裕貴)。「きれい」と晴海。
石川家はここで三人家族一緒をかみしめます。

重子も、房子も、三郎も多江も、智も石川家も、それなりに大変な思いを抱えてきたはずで、それが報われたり、水に流せたりするときに、こんなふうでいいのかな。あー、いろんな人の意見を聞きたい。

「時間よ止まれ」を得意げに練習している賢秀(竜星涼)は、以前はなにかとうるさく感じましたが、彼にしかない主張があるので、少なくとも楽しいです。

(文:木俣冬)

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–{「ちむどんどん」第18週目のあらすじ}–

「ちむどんどん」第18週目のあらすじ

暢子(黒島結菜)が勤めるアッラ・フォンターナに、三郎(片岡鶴太郎)のおかげで、平和が戻ってきた。ただ、房子(原田美枝子)と三郎の再会は果たせなかった。暢子は、大事な人を集めた披露宴をアッラ・フォンターナで行おうと決意する。しかし、重子(鈴木保奈美)からはまだ和彦(宮沢氷魚)との結婚を認めてもらっていない。そんな中、良子(川口春奈)が、妹の結婚のために動き出すことに。

–{「ちむどんどん」作品情報}–

「ちむどんどん」作品情報

大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――

ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。

放送予定
2022年4月11日(月)~

<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。

日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。

<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。

出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人

作:
羽原大介

語り:
ジョン・カビラ

音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)

主題歌:
三浦大知「燦燦」

沖縄ことば指導:
藤木勇人

フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子

制作統括:
小林大児 藤並英樹

プロデューサー:
松田恭典

展開プロデューサー:
川口俊介

演出:
木村隆  松園武大 中野亮平 ほか