『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』4DXとの相性が最高である「5つ」の理由

映画コラム

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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が2022年7月29日に公開された。ここでは4DX上映をおすすめしたい理由を、映画の特徴と合わせて記していこう。

前置き1:恐竜がたくさん登場するファミリー向け映画として超楽しい!

まず、本作は現在(2022年7月末時点)IMDbで5.7点、Rotten Tomatoesで批評家支持率30%と、シリーズの中でもかなり評価が分かれている。だが、実際の本編は見せ場満載&新機軸のアイデアもあって超楽しく、少なくともファミリー向けのエンタメ大作として安心して観に行ってOKな内容だった

恐竜がたくさん登場して、その恐竜から逃げ惑うハラハラが満載で、これまでのシリーズにはなかったシチュエーションにもワクワクするし、劇場で観てこその大迫力の画も存分にあるなど、アトラクション的な魅力がたっぷり。ストーリーも「少女の救出」というわかりやすい活劇が中心に据えられているし、明るめの場面が多く、怖さはシリーズの中でもマイルドな方なので、小学校低学年くらいのお子さんでも楽しめるだろう。

また、シリーズ初見でもおそらく問題ないが、可能であれば『ジュラシック・ワールド 炎の王国』を観ておき、メインキャラクターの1人である少女・メイジー(イザベラ・サーモン)の境遇だけでも知っておくのがおすすめだ。

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もちろん、(詳しくは後述する)賛否両論を呼ぶ要素があることは事実。だが、それは概ね、アクションやスペクタルを存分に楽しんだ上での「あれがちょっとな〜」「これがこうだったらいいのに」といった文句ではあると思うのだ。146分というシリーズ最長の上映時間であっても退屈せずに観られたし、少なくとも「恐竜が登場するアクションアドベンチャー」として、応えるべき最低限の需要には応えきっているとは思う。

前置き2:シリーズファンこそ嬉しい「同窓会」的な内容に

本作は1993年に公開された第1作『ジュラシック・パーク』から続くシリーズの最新作にして最終作であり、29年という年月を経ての完結となる。ファンにとって嬉しいのは、その第1作からのキャラクターたちが集合しており、まるで同窓会に参加した感覚になれることだろう。

アラン・グラント(サム・ニール)、イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)、エリー・サトラー(ローラ・ダーン)の3人の博士は、年齢を重ねてはいるが、以前とほぼ変わらない姿と性格のまま登場して、そして2015年の『ジュラシック・ワールド』からのキャラクターたちと「合流」し「共闘」する。長年続いてきたシリーズであり、それこそ子どもの頃から観ていたからこそ、彼らとの再会が感慨深くなる、という方も多いはずだ。

また、キャラクターが集結するだけでなく、あえて1作目を踏襲しているような画やシチュエーションがあり、一部のセリフも「1作目があってこそ」のものになっていたりする。これもシリーズファンへのサービスと捉えるべきだろう。あの頃に観た『ジュラシック・パーク』の楽しさを思い出す、ノスタルジックな気持ちになる大人も多いのではないか。

本題:今回の4DXのここがすごい!

ここからが本題。座席の移動や各種演出が楽しめる上映方式の4DXと、この『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は相性が抜群、いや最高だった。

正直に申し上げて、4DXで上映された作品の全てが良いというわけではなく、過去には「4DXがあまり合わないな」「通常の上映で十分だな」と思った例もあるのだが、今回は間違いなく「当たり」だった。具体的なその理由を記していこう。どのような演出があるかも知らずに観たい方は、4DX上映が実施されている劇場をチェックして、先に駆けつけてほしい。

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–{○○○○○○○のアクションで演出が大盤振る舞い!}–

理由1:バイクチェイスのアクションで演出が大盤振る舞い!

本編にはバラエティ豊かなアクションが連続するが、その中でもマルタ島でのシークエンスは白眉だろう。街の中での恐竜たちと「パルクール」的な追いかけっこが展開し、さらにはバイクに乗っての攻防戦もブッ続くのだから。

ここで4DXでは、座席の移動や振動だけでなく、劇場内に激しく吹く風もあって、猛スピードで飛ばすバイクに乗った感覚を疑似体験させてくれる。しかも、座席横の「プシュッ」と吹き付けるエアーの演出も、そのバイクが通り過ぎる時の「風圧」までも再現してくれるのだ。

そのバイクが走破するのは、かなりのアップダウンのある街中ということもあって、座席がグワングワンと、もう限界ギリギリと言わんばかりに身体を揺さぶってくるのが、何よりも楽しい。特に、バイクで階段を「強行突破」する時の揺れっぷりに期待してほしい。

理由2:恐竜の「咆哮」や「歩く時の地面の揺れ」の再現も!

地味と言えば地味なのかもしれないが、座席の振動が恐竜の「咆哮」や「歩く時の地面の揺れ」を再現してくれることにも感動があった。

恐竜の「グルルルル……」という唸り声だけでも、その「空気の振動」に合わせるように座席は僅かに揺れる。超重量級の恐竜がズシンズシンとやってくる時は、その足音に合わせて座席が動く。ひとえに、肉食獣である恐竜の恐ろしさが4DXのおかげでマシマシになっているのだ。

理由3:空中や水の中でのアクションも疑似体験!

具体的なシチュエーションはネタバレになるので秘密にしておくが、本作は空中でのスペクタクル、寒い地でのバトル、水の中に入るシーンなど、やはり多種多様なアクションのシチュエーションが用意されている。

それぞれで、「きりもみ回転」をするようなグルングルンと回る座席の激しい動き、寒い地の環境を示す劇場内に降る「雪」の演出、はたまた「雨」や「吹き付ける」水で、それぞれのアクションをダイレクトに観客にも体験させてくれる。ひとえに、「キャラクターと一緒に冒険している」感覚を得られるのは、本作の4DXの最大の魅力だろう。

理由4:良い意味で悪趣味なサービスも

今回の4DXには良い意味で悪趣味だと感じたシーンもある。それは、劇中ではやたらデカい「イナゴ」の大群が襲ってくるのだが、それが地面や空中で「カサカサ」とうごめく様を、座席下の足の部分、まさに「カサカサ」とくすぐってくる演出で示してくれるのだ。

虫嫌いの方は悪い意味で「ウッ」となってしまうかもしれないが、その演出自体の時間はあまり長くはないので、それほど不快にはならないとは思う。その「やだな〜」な感覚も含めて楽しんでしまうのが吉だろう。

また、本作はファミリー向けの作品であるので、もちろん血が激しく噴き出すなどの残酷描写はないのだが、人間が恐竜に食べられたときに、まるで血のように水がプシュッと吹き付ける場面があった。実は4DXにおいて、この「血の代わりに水を吹き付ける」演出はよくあるもので、それもまた良い意味で悪趣味だ。なお、水の演出が苦手な方は、座席横のスイッチでON/OFFを切り替えられるので、ご安心も。

理由5:空気をプシュッと吹き付ける様が「そのまんま」なシーンも!

個人的に良い意味で笑ってしまったのは、終盤のとあるシチュエーションで煙が激しく横から吹き付けるのだが、そこで示し合わせたように座席横から「プシュッ」とエアーが出てくることだった。

これまで書いてきた通り、4DXは劇中のシーンを疑似体験させてくれるサービスなのだが、まさか「そのまんま」なエアーの演出があるとは思いもしなかった。ここのシーンはその他に劇場内が光る「フラッシュ」の演出も効果的に使われているので、ぜひ楽しみにしてほしい。

–{今回の4DXのここが不満かも&賛否両論の理由}–

今回の4DXのここが不満!:3D効果は今ひとつ

今回の4DXはほぼ文句なし!な素晴らしい出来栄えなのだが、1つだけ決して小さくはない不満がある。それは4DXにプラスして、画面が「3D」でもあるのだが、劇中でその3Dの効果が感じられるシーンがほとんどなかったことだ。

強いて言えば恐竜が画面手前に牙を向くシーンで、少しだけアトラクション的な3Dの効果はあった。だが、いちばん奥行き感があったのはユニバーサルのロゴというのは、さすがに物足りない。3D料金も上乗せしているのだから、もう少しだけでもサービスしてくれてもいいだろう。

最近では3D上映そのものがめっきり少なくなってしまったが、それでも直近では『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の3Dが奥行き感たっぷりで素晴らしかったので、今後も3Dが効果的な映画には期待したいところだ。

おまけ:賛否両論の理由は?

最初に掲げたように、この『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の評価は賛否両論となっている。その理由の1つには、最終作にして「既視感」を覚えてしまったこともあるのではないか。

前述したように、今回はあえて1作目を踏襲しているような画やシチュエーションがいくつかある。その他にも、前述したバイクチェイスは『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)も連想するし、おそらく『地獄の黙示録』(1979)のオマージュと思われる画もあるし、洞窟内の探検は『インディー・ジョーンズ』っぽかったりもする。それは作り手が打ち出したサービスではあるのだが、そのことがむしろ「前にも観たなあ」というネガティブな印象にもつながっていたのかもしれない。

さらに、『ジュラシック』シリーズは、人の手で現代に恐竜を蘇らせるという物語の発端をもって、常に「生命倫理」の問題を説いていたのだが、今回はそのテーマがやや中途半端に投げ出されてしまったような印象を受ける。今回はクローンとして生まれた少女メイジーの心理が掘り下げられており、その先で「知ったこと」は感動的なのではあるが、その後の帰着がやや飲み込みづらくなっているのも否めない。

そして、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の世界は「恐竜が野に放たれてしまった」というものであり、もうどうにも収集がつかないような事態になっていた。これに対しての決着というか「終わり方」にも、やはり賛否両論があるだろう。物語としては、やや破綻しているような印象さえ持ってしまう。

その壮大なスケールに対して、メインが少女を救出に向かう「スパイもの」のようなアクションであり、ややこじんまりした印象も、評価を下げてしまった原因なのかもしれない(しかもセキュリティはガバガバ)。威厳のある敵恐竜の活躍や、仲間である恐竜・ブルーとの共闘も、もう少し深く描いて欲しかったと思う方もいるだろう(それでいてイナゴの出番が多い)。せっかくの同窓会も、キャラクターたちが状況に振り回されるドタバタの印象が悪い意味で強くなってしまっている。

さらに、ラストバトルそのものと、その時に放たれるある言葉にもモヤモヤが残った。これはほとんど自虐的なギャグであり、それはそれで面白いのだが、最終作であるからこそ、その自虐ぶりが本当に切なかったりもしたのだ。なお、筆者は字幕版と吹き替え版の両方を観ているのだが、吹き替え版のほうが原語のニュアンスをしっかり拾い上げていて、より良かったように思う。

そんな風に不満もあげてしまったが、筆者個人はそれでも『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が好きだ。最初に掲げたように恐竜のアクションアドベンチャーとして楽しくって仕方がないし、やはりシリーズの大団円としての感慨深さがある。まずは大いにエンターテインメントとして楽しんで、その後にやいのやいのと言うのもまた楽しい作品だろう。その楽しさを確実に底上げする、4DX上映もぜひ選択肢に入れてほしい。

(文:ヒナタカ)

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–{『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』作品情報}–

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』作品情報

【あらすじ】
ジュラシック・ワールドが存在した島“イスラ・ヌブラル”が火山の大噴火で壊滅、救出された恐竜たちが世界中に放たれてから4年。人類はいまだ恐竜と安全に共生する道を見出せずにいた。そんな中、オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、山小屋で恐竜の保護活動を続けながら生活していた。2人と共に暮らすのは、14歳になったメイジー(イザベラ・サーモン)。ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘のクローンとして誕生した少女だ。オーウェンたちが人里離れた土地で暮らすのは、メイジーを守るためでもあった。ある日、オーウェンは子どもを連れたヴェロキラプトルのブルーと再会する。ところが、何者かにブルーの子どもが誘拐される事件が発生。ブルーに子どもの奪回を約束したオーウェンは、クレアと共に救出に向かうが……。一方、サトラー博士(ローラ・ダーン)は、ある目的のため、世界各地から恐竜を集めて研究する巨大バイオテクノロジー企業“バイオシン”を追っていた。そこへグラント博士(サム・ニール)も駆けつけ、マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)に協力を求める。人類と恐竜の共存の前に立ちはだかるバイオシンの恐るべき計画とは……? オーウェンとクレア、そして3人の博士は大切な命と世界の未来を守り抜けるのか……? 

【予告編】

【基本情報】
出演:クリス・プラット/ブライス・ダラス・ハワード/ローラ・ダーン/ジェフ・ゴールドブラム/サム・ニール/ディワンダ・ワイズ/マムドゥ・アチー/BD・ウォン/オマール・シー/イザベラ・サーモン/キャンベル・スコット/ジャスティス・スミス/スコット・ヘイズ/ディーチェン・ラックマン/ダニエラ・ピネダ ほか

監督:コリン・トレボロウ

上映時間 147分

映倫:G

ジャンル:SF/アクション/アドベンチャー

製作国:アメリカ