<初恋の悪魔>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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林遣都と仲野太賀がW主演を務める「初恋の悪魔」が2022年7月16日スタート。

本作は脚本家・坂元裕二が送るミステリアスコメディ。停職処分中の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)、総務課・馬淵悠日(仲野太賀)、生活安全課・摘木星砂(松岡茉優)、会計課・小鳥琉夏(柄本佑)ら曲者4人がそれぞれの事情を抱えつつ難事件に挑む姿を描いていく。警察モノ、ラブストーリー、謎解き、青春群像劇……全ての要素をはらんだ物語の結末はどこへ……?

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・「初恋の悪魔」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー


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とある病院に長期入院中の少年・新(柴崎楓雅)が、病院の中庭で遺体となって発見された。飛び降り自殺かと思われたが、新と同室だった入院患者の少年・大希(髙橋來)が事情聴取で、新は担当医師の堂島に殺されたと証言。その後、大希は病状が悪化して危篤状態に陥った。新の死は、医師による殺人の可能性も出てきた。

境川警察署・総務課職員の悠日(仲野太賀)は署長の雪松(伊藤英明)から、ある失敗をして停職処分中の刑事・鈴之介(林遣都)の監視を命じられる。刑事だった悠日の兄は、捜査中の事故で殉職したのだが、雪松は鈴之介がその死に関わっているかもしれないと告げる。思いがけない命令に、戸惑う悠日。

悠日は、鈴之介の家を訪ねることに。鈴之介は大きな洋館に一人で住んでいた。悠日は、署内で行っているアンケート調査と称して鈴之介から話を聞く。過去に起こった世界の猟奇的犯罪について、熱っぽく語る鈴之介。彼は、凶悪犯罪愛好家の推理マニアだった。
そんな折、悠日は会計課の琉夏(柄本佑)から、頼みごとをされる。現在所轄で捜査中の病院での転落死事件の真相を突き止めてほしいというのだ。

細かい性格で刑事たちの精算にも厳しい琉夏は、署内では敬遠されがち。そんな中、刑事課の新人刑事・渚(佐久間由衣)は、いつも琉夏の話を真剣に聞いてくれる。そんな渚に密かに心を寄せる琉夏は、刑事課内でポンコツ扱いされる渚に手柄を立てさせたいと考えたのだった。突拍子もない申し出に、またしても戸惑う悠日。彼は断ろうとするものの、鈴之介のことを思い出す。

悠日は、琉夏を連れて鈴之介の屋敷を訪ねる。事件の概要を聞いた鈴之介は、医師がシリアルキラーである可能性が高いと興味津々。3人は、捜査会議を始めるが…。
悠日と琉夏は独自で捜査するため、捜査資料管理室に侵入。すると、なぜか生活安全課の刑事・星砂(松岡茉優)がいた。悠日と琉夏は、星砂も病院の転落死事件を調べていると思い込み、彼女に協力してほしいと頼む。
かくして、捜査権のない4人が事件解決に乗り出した。少年の転落死は自殺なのか、それとも殺人なのか?事件の裏に隠されていた秘密とは!?そしてこの妙な4人の組み合わせが、思いがけない事態を巻き起こしていく———。

第1話のレビュー

事前情報から、クセがありそうだなと感じていた登場人物たち。
実際に観たら、思っていた10倍くらい全員変人だった。情報量が多すぎて、正直1回観ただけでは消化しきれなさそうな物語にワクワクしている。事前に番組が、4人それぞれのキャラクターPVを用意したのも納得だ。

坂元裕二脚本作品ということで、このあと私たちはどんなふうにこの曲者の変人たちを好きになるんだろう、と早くも次回以降の展開に期待が募る。

今回は4人のキャラクターを振り返っていきたい。

総務課・馬淵悠日(まぶちはるひ・仲野太賀)

悠日が冒頭に放つ、「負けっぱなしの人生って、誰かを勝たしてあげてる人生じゃないですか」というセリフが心に残った。「僕たちが隅にいるから真ん中に立てる人がいるんです」とも言っており、脇役である自分を受け入れているように見える。だが小鳥琉夏(柄本佑)の話によると、悠日と小鳥の共通点は「自分の仕事が嫌いなこと」らしい。やはり満足しているわけではないということだろうか。4人の中ではいちばんまともそうではあるが、だいたいの状況で笑顔を崩さない彼は、逆に不気味にも感じる。

彼の亡くなった兄・朝陽(毎熊克哉)とはどのような関係だったのか、彼の友だちだったという署長・雪松(伊藤英明)は悠日を疑っているようだが、朝陽が亡くなった本当の理由は何なのか。

停職処分中の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)

鹿浜は、クセが強そうだと思っていたが、想像の10倍くらい面倒くさそうな人だった。凶悪犯罪愛好家の推理マニアで、猟奇的な事件を「美しい事件」と言う。今まで一度も人を好きになったことがなかったらしく、星砂(松岡茉優)のことが頭から離れない状況を「僕はおかしいのかもしれない。彼女のことばかり考えてドキドキしてる、気になって仕方ないんだ、彼女に対して殺意を抱いているのかもしれない」と解釈してしまうやばい人だ。

ドラマのタイトル「初恋の悪魔」の「初恋」は彼の星砂への気持ちなのだろうか? この恋がこの後どんな展開を迎えるのか非常に気になる。

会計課・小鳥琉夏(柄本佑)

堅物で生真面目な小鳥は少々他の人たちに煙たがられている様子。彼は彼でこだわりが強そうだが、正義感が強い一面もありそうだ。自分の話に耳を傾けてくれた渚(佐久間由衣)にひそかに恋心を抱き、彼女に手柄を立てさせてあげたいという思いから病院での事件を独自に捜査することに。

彼女がくれた炭酸飲料を、炭酸が苦手なのに飲むのがちょっとかわいい。鹿浜とは特に気が合わなさそうなので、今後の掛け合いにも期待したい。

生活安全課・摘木星砂(つみきせすな・松岡茉優)

元は県警捜査一課に所属していたが、今は生活安全課にいるという星砂。スカジャンがトレードマークで、話し方も独特だ。財布を落として悠日に食べ物(ハトにあげた残り)をもらったことから、彼らの捜査に協力することに。

ぶっきらぼうだが、洞察力に優れ、4人の中では冷静に判断できるように見える。落とした財布が届けられ取りに行くと、高そうな靴を買いその店に落ちていたという情報が。星砂は「私がその靴を買ったと?」と言うが、何かを思い当たったようで、途中から自分が買ったことを認める。彼女の家には高そうで、でも彼女が身に付けなさそうなものが並ぶクローゼットがあり、鏡を見て「ふふ…いい加減にしてくれよ。蛇女」とつぶやいていた。

これは……二重人格ということなのだろうか。彼女が訪ねて行った医師・小洗(田中裕子)の机に飾られていた写真には、小洗と警察の制服を着た星砂が写っていた。明かされていく彼女の真実が気になる。

曲者揃いの4人がそれぞれ勝手な推理をしているように見えつつ、それぞれの視点が重なることで事件を解決に導く様子が印象的だった。事件現場のジオラマのようなものを見ながら、実際の当時の現場に4人がいる、という演出が不思議だったが、これが「マーヤのヴェールを剥がす」状態なのだろうか。

「警察モノ?ラブストーリー?謎解き系?実は青春群像劇?その全てがここに出会った!」とうたわれている本作品。その言葉通り、さまざまな物語が複雑に絡み合っていそうだ。彼らがどんな人なのか、そしてさまざまな謎の真実や恋の行方はなんなのか。気になるポイントが多すぎて、土曜の夜が毎回楽しみになりそうだ。

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー


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悠日(仲野太賀)は、恋人の結季(山谷花純)と結婚式の相談をする。結季は、結婚後は悠日が仕事を辞めて主夫として家庭に入ってほしいと望んでいた。「結季ちゃんと結婚できるなんて、人生最高だよ」と、悠日は自分を身分不相応の相手と自認していて、結季に従うつもりだった。

悠日は、鈴之介(林遣都)に結婚することを告げる。鈴之介は動揺を隠せず、恋愛に関する偏った持論を悠日に語る。悠日は、鈴之介が星砂(松岡茉優)に恋しているのではないかと指摘。すると鈴之介は、星砂に殺意を抱いているのだと言い出す。

そんな中、刑事課では団地で起こった殺人事件の捜査が進んでいた。被害者は、かつて人気だった芸人の夕紀夫(内藤トモヤ)で、弟の日出夫(六角精児)とコンビを組んで紙切り芸を持ちネタにしていた。夕紀夫は、団地内の廊下で胸にハサミを突き立てられて死亡。団地の住人たちは助けを求める夕紀夫の叫び声を聞いていたが、犯人らしき人物を見たという目撃者は誰もいなかった。

手がかりを見つけるため、渚(佐久間由衣)がたった一人で団地の監視カメラの映像をチェックしていた。彼女は何日も家に帰っていないようで、琉夏(柄本佑)は心配でならない。
鈴之介、悠日、星砂、琉夏の自宅捜査会議が始まる。

自らがハサミコレクターである鈴之介は凶器がハサミであることに大興奮。芸でハサミを使っている日出夫が犯人だと主張する。そんな短絡的な推理を全否定する琉夏と喧嘩となる。第一日出夫には完璧なアリバイがあるのだった。
謎は深まる一方の捜査会議から帰る途中、悠日は婚約者の結季が別の男性と一緒にいるところを見てしまう…。

第2話のレビュー

変人4人の物語、待ち遠しかった第2話!
あえていうなら悠日(仲野太賀)回だったのかなと思う。

冒頭で、なんと悠日に結婚間近の恋人・結季(山谷花純)がいたことがわかる。綺麗な人で、悠日に仕事を辞めて専業主夫になることを望んでいることから、稼ぎもあるようだ。人によってはある意味素晴らしい条件だが、「どうせ嫌々やってる仕事でしょ」という言い方が少し気にかかる。彼女の両親は、自分の娘と悠日とではつり合わないと思っているらしい。

悠日は自分でもそう思うと、すべて結季の言いなり。「結季ちゃんと結婚できるなんて、人生最高だよ!」と笑っている。例によって大変噓くさい笑顔だ。自分にはもったいない相手と結婚できるのだから、自分の意見など我慢して当然と思っているようだ。

だが後日、結季が別の男性と一緒にいるところを目撃してしまう悠日。「オープンマリッジ」という、お互い結婚していても自由に恋愛を楽しむ関係を主張され、笑顔でうなずいてしまう悠日だが……? いや、どうなのそれ……

亡くなった兄・朝陽(毎熊克哉)の法要で、家族と署長の雪松(伊藤英明)が集まった。悠日の家は警察一家で、親が息子たちにかける期待は大きかった。優秀な兄と、刑事に向いておらず、訓練はしたものの挫折した悠日。総務課の職員になることで両親には許してもらったが、ずっと劣等感を抱いてきたらしい。

両親(篠井英介・中村久美)の見た目が似ていて、雪松が間違えるくだりは笑ってしまったが、この両親がなかなかひどい。悠日のいる前で「朝陽が生きていれば張り合いがあったのですが……」と言い、「悠日くんがいるじゃありませんか」と言われると大爆笑し始めた。悠日は「兄と僕では心臓と盲腸くらい違いますから」と一緒になって笑っていたが、悠日を馬鹿にする両親の態度にカチンときた雪松は、両親を順に高い高いした。

雪松は悠日のことも疑っているようだったが、曲がったことが嫌いないい人なのだなと思った。同時に、高い高いという斬新な嫌がらせ(?)方法に笑ってしまった。

4人のやり取りも板についてきて、テンポ良く小気味いい。
悠日が「お疲れさまです」と言うのに対し琉夏(柄本佑)が「言われなくても疲れてるよ」と返すやり取りが何度か出てきて、今後「お疲れさまです」と誰かに言われたら「言われなくても疲れてるよ」と返したくなってしまいそう。感じ悪いから絶対やらないけど。

相変わらず鈴之介(林遣都)と琉夏は犬猿の仲でケンカするし、悠日は自分で止めずに星砂(松岡茉優)に止めるよう頼むし、星砂がイスを振りかざして「躊躇しねぇぞ?」と言うと二人とも光の速さで「ごめんね」と握手し合うのがもう全体的にコントっぽい。

星砂への恋心を殺意だと言い張る鈴之介は、悠日に恋人がいると知っていろいろ聞いてくる感じものすごいロマンチストなのかもしれない。

「ブランコに2人で乗って高く漕いだ方がたくさん好きだよって話をするのか」「しません」「それは恋人じゃないよ」というやり取りがあったり、キスを「観覧車でか、神社の境内でか」と聞いてきたり。悠日の「カラオケボックスです」という答えはちょっと聞きたくなかった。

いろいろと心配な鈴之介だが、星砂の椅子だけいいやつになっていたり、星砂に出すカップだけいいやつ(鈴之介とペア)になっていたりとわかりやすい態度になってきた。

今回刑事課が追っていたのは、団地で起きた殺人事件。殺されたのは、元人気芸人だった兄弟の兄。実は兄のほうが圧倒的に人気者で、弟は兄に借金もしていたという話を聞いて、悠日は自分と兄の関係に重ねてしまう。

兄が亡くなる前、兄から何度も留守電がきていたのに、悠日は全部無視していたのだ。亡くなる前日にもメッセージがあり、兄は何かに悩んでいて悠日に相談したいようだったのに、やはり無視してしまった。

そのことを初めて星砂に話し、本当は動物園の飼育員になりたかったという悠日。でも「もうなれません、好きなことをする資格はないんです」と言う。

「欲しいものを手に入れた人と手に入らなかった人がいて、欲しいものが手に入らなかった人は、もう他に何にも欲しくなくなってしまう」

「顔はね、笑ってるんです」
「でもそんなのは上っ面で、心の中ではお前もう笑うな、俺を馬鹿にすんな、俺にアドバイスすんな、えらそうにすんな 俺をもっと尊敬しろ」

「そういうね、ひんまがったやつだから、兄は死んでしまったんだなぁって」

悠日の笑顔は、ままならない状況から自分を守る、鎧のようなものなのかもしれない。そして心のなかではずっと、自分のせいで兄を死なせてしまったのではないかと思ってきたのか。だから、自分には好きなことをする資格はないと……。

そんな悠日に星砂は「警察なんかどうだっていいんだよ、ラーメンなんかのびたっていいんだよ、話したいことがあるときは」「電話、出な? 兄ちゃんから電話あったんだろ?出なよ」と言う。だって兄はもう……と思ったが、悠日はスマホを耳にあてて話し始める。兄・朝陽からの留守電に応えるように。

バナナのシールを集めていたこと、2人で家出したときのこと……ものすごい笑顔で、本当はずっと兄と話したかったんだなとわかるのだ。後半は泣き声になっていた。

本当は兄自体は悠日を馬鹿にしてなんかなくて、悠日も心の底ではずっと話したかったのに、両親の声とか自分の劣等感とか、そういうものでがんじがらめになって話せなくて、そのまま兄は死んでしまった。なんとも切なすぎる……。

別れ際、星砂に「兄を知っていましたか?」と聞く悠日。出会ったときに彼女が見ようとしていた資料は、悠日の兄の事件(事故)のものだったからだ。でも彼女は「わかんねえ」と言って去っていってしまった。

朝陽は強盗を追う途中にビルから転落したのだが、携帯などの所持品が出てこなかった。星砂が自宅でおもむろに手にしたスマホには、バナナのシールがたくさん貼られていた……これはもしかして、朝陽のものなのでは……? だとしたらなぜ星砂が持っているのか。

特大の謎を残して、次回がさらに気になってしまう。

第1回放送の後、悠日の名字「馬渕」と鈴之介の名字「鹿浜」と合わせると「馬鹿」になることを指摘する声があがりなるほどと思った。さらに考えると、琉夏は「小鳥」星砂は「摘木」。4人のなかで星砂だけ動物ではなく植物なんだなというのが気になる。全員変人だが、彼女にだけさらに異質な何かがあるということなのだろうか? 

今回は悠日のクローズアップだったが、別の人物のクローズアップ回も待ち遠しい。

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー


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悠日(仲野太賀)は、もう一度、結季(山谷花純)に正式なフィアンセとしてプロポーズし直すつもりだった。しかし、結季は待ち合わせの場所に来なかった。落ち込む悠日は、星砂(松岡茉優)と出くわす。星砂との何気ないやりとりで、癒される悠日。

そんな中、悠日は、鈴之介(林遣都)に呼び出される。鈴之介もまた様子が変だった。森園(安田顕)がシャベル片手に突然鈴之介の家に乗り込んできた昨夜の話を一部始終を聞かされる。だが、そのうち鈴之介の話題は星砂へと変わる。「僕以外の世界中の人は、摘木さんのことが好きなんだろうなって思うんだよ」と。悠日は、非常に屈折した鈴之介の恋心を感じるのだった。しかし鈴之介は、星砂に興味はないと言い張る。

その頃、スーパーで万引きの監視をしていた星砂は、ワインを盗む男性を捕える。しかし確認すると、彼のバッグには商品は入っていなかった。店長の山田(今野浩喜)は、星砂が大切な客を万引き犯扱いしたことに苦言を呈する。一方、古株の店員・絹子(松金よね子)は、星砂をかばう。続いて星砂は、チョコレートをバッグに入れる女性を捕える。しかし、彼女のバッグにチョコレートはなかった。確かに見たはずなのに…と、動揺する星砂。

鈴之介は、熱を出して寝込んでいた。どうやら、恋わずらいらしい。琉夏(柄本佑)は、悠日が鈴之介と星砂の仲を取り持ってあげればいいと提案。鈴之介も口には出さないものの、それをあてにしている様子もあり、悠日は複雑な思いを抱く。
悠日は、星砂が万引き犯を間違えて捕えたことを知る。しかし、星砂は納得していない様子。悠日は星砂に、鈴之介に相談してはどうかと勧める。
本当に、万引きは星砂の見間違いだったのか?万引きの証拠は、なぜ消えたのか? 鈴之介の推理で星砂の疑問を解決すれば、星砂は彼を好きになるかもしれない。鈴之介は、悠日と琉夏の協力を得て、星砂の心をつかもうと真相究明に乗り出す———!?

第3話のレビュー

悠日(仲野太賀)の兄・朝陽(毎熊克哉)の死の真相、星砂(松岡茉優)が朝陽のスマホを持っている理由、星砂のもう一つの人格、鈴之介宅のドアを叩く隣人・森園(安田顕)……さまざまな謎が気になる一方で、4人の間に早くも三角関係が生まれた第3話。

悠日は前回”オープンマリッジ”を提案してきた恋人にプロポーズし直そうとするが、彼女は来なかった。花束を持って歩く悠日は、星砂とのやり取りに癒される。目をギンギンにして「僕が振りました!」と強がる悠日に「お前の言う通りだよ」と言ってくれる星砂。

一方鈴之介の家の窓が割られ、彼が殺人鬼ではと一方的に疑っていた森園が額から血を流してドアを叩く様子は恐怖でしかなく、あやしいと思ったけど常識的ないい人と見せかけてからのやっぱりやばい人なのか……!? と覚悟した。鈴之介もコレクションのハサミを片手に応戦しようとするが、森園は包丁を持った空き巣が鈴之介の家に入ったことを知らせてくれ、空き巣と3人で大立ち回りをすることに。

空き巣は逃げ、無事だった鈴之介。森園は自分の額からたくさん血が出ているのに、鈴之介の指から血が出ていることを気遣ってくれ、家にいる女性(萩原みのり)に絆創膏を取ってくるように言う。「しょくぱんまんのしかない」という小ネタにうける。

死を覚悟し星砂のことを思ったという鈴之介。琉夏(柄本佑)にも仲を取り持ってあげるよう言われ、悠日は複雑な感情になる。星砂がスーパーで捕まえた万引き犯がカバンの中身を確認すると商品が入っていない……という状況が何度も起こる。

星砂に(鈴之介とは)ないと言われて意気消沈していた鈴之介だが、星砂の笑顔が見たいと捜査に協力する気になる。彼が協力してくれることが「マーヤのヴェール」ポーズで伝わるのに笑ってしまう。

鈴之介「この世には知らない方がいいこともある」琉夏「知ってるなら言ってよぉ」のやり取りもすっかり板についてきた。結果、古株の店員・絹子(松金よね子)が客に万引きさせ、商品が入っていない同じカバンを仕込み、すり替えさせていただことが発覚。確認中は防犯カメラの録画が止まることを利用して、店のお金を着服していた。

事件は解決したが、鈴之介は「あれはエゴだ、エゴに礼はいらない」と星砂の来訪を拒否。悠日にも「君も出て行ってくれ。だって君も彼女のことが好きなんだろう」と告げる。気づいてたのか……! 自分の気持ちも人の気持ちもわからない、犯罪にしか興味がない変人と思いきや、こういう人の心の機微にはさといのか……。悠日は、自分の気持ちに気づいていたのだろうか。どっちともわからない表情だった。

鈴之介は、「僕ももっと楽しくオクラホマミキサーを踊ればよかった、手紙の返事を書けばよかった……」と過去に恋の可能性を自らつぶしてきた自分を後悔するようなことを言う。

「僕が触れると花は枯れる、人は離れる」と言う鈴之介に「普通にすればいいじゃないですか」的なことを言う悠日。普通という言葉は残酷だと思った。「普通という言葉に恐れを抱き、怯えてしまう人間は存在するんだ」と言う鈴之介の言葉、どちらかというと普通の人ができることも満足にできないなと感じたことが多い筆者は共感してしまった。大人になるほど世間一般の「普通」に当てはまらないこと=悪と言われているような感じがして何気ない言葉に傷つく経験、意外としたことある人は多いのではないだろうか。

だが、おそらく”特別”な兄と自分を比較して、比較されてきた悠日が「特別」をうらやましいと思うのも理解できるのだ。悠日も変人に見えていたので、本人が普通にコンプレックスを持っているのは少々意外ではあったが。

そんな悠日に星砂が投げかけた言葉に救われたのは、悠日だけではないと思う。

「普通の人とか特別な人とか、平凡とか異常とか、そんなのないと思うよ」
「ただ、誰かと出会ったときにそれが変わる」
「平凡な人を平凡だと思わない人が現れる」
「異常な人を異常だと思わない人が現れる」

「それが人と人との出会いのいい、美しいところなんじゃないの?」

確かにそうだな。先週に引き続き、星砂の言葉は刺さるし優しいし泣きたくなる。

星砂は突然人が変わったようになり、悠日に「あなた誰?」と言い、居酒屋から走り去ってしまう。逃げる星砂を追い、悠日の知っている星砂に戻ると、星砂はたぶん朝陽を知っていること、自分の部屋に朝陽のスマホがあること、鍵をなくして自分の部屋に入れないことを告げる。

星砂の前に急に表れて殴りかかろうとした男性や、過去に星砂が撃たれた話、星砂じゃない星砂は誰なのか、朝陽とはどういう関係だったのか……気になることが多すぎて、一週間待てそうにない。

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー


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社会のマナーやルールを守らない者が矢で射られてケガをする事件が発生。ごみの分別をしなかった者、順番の列に割り込んだ者などが次々と被害を受けた。
まもなく、世界英雄協会を名乗る男から犯行声明の動画が配信される。迷惑をかける人間を排除すると宣言。今後、新たな犠牲者が出ることが予想され、渚(佐久間由衣)は刑事課の捜査会議で懸命に世界英雄協会の危険性を訴える。しかし他の刑事たちは取り合おうとしない。

悠日(仲野太賀)の家に転がり込んでいる星砂(松岡茉優)は、自分の中のもう一人の別人格の自分の存在に怯える。悠日は、そんな星砂を気遣っていた。

一方、鈴之介(林遣都)は、家の中で見つかった監視カメラを、森園(安田顕)の手を借りて撤去していた。そして森園から自分は駆け出しのサスペンス小説家だと教えられるのだった。森園が期待していたようなシリアルキラーではなかったことに落胆する鈴之介だった。
しかしその後、森園家には妻と呼ばれる女性以外にも、多種多様の怪しげな女性が出入りする様子を何度も見かけ、鈴之介は混乱するばかり。やはり森園は謎多き人物のようだ。

世界英雄協会の犯行は続く。犯行はいつか愉快犯となり、犯行声明とともにクイズを出題。大量の数字が並んだ暗号を示し、自らのアジトを示唆するのだった。琉夏(柄本佑)は渚に頼まれて、数字クイズ解読に取り組む。
しかし、犯人の特定は進まず、渚までが犠牲となり怪我をしてしまう。悠日と琉夏は、鈴之介に助けを求めるが———!?

第4話のレビュー

悠日(仲野太賀)・星砂(松岡茉優)・鈴之介(林遣都)の三角関係、星砂のもうひとつの人格、悠日の兄・朝陽(毎熊克哉)の死の真相……気になることがてんこ盛りの中放送された第4話は、切なさでヒリヒリする回だった。
「人を好きになる」って、こんなに苦しいことばっかりだったろうか。

今回起こる事件は、ゴミ分別をしない、列に割り込むなどの社会のルールを守らない人が矢で射られるというもの。確かに迷惑な行為だが、大けがや事故にもつながるこのやり方は悪質すぎる。

星砂がもうひとつの人格でいるうちに鍵をなくしたため、悠日の家でしばらく過ごすことに。もちろん他の人たちにはばれないようにしている。

もうひとつの人格におびえる星砂。守りたくなるようなタイプだった……という話になったところから「守ってくれんの」「守りますよ」という話になり、ちょっといい雰囲気。

一方鈴之介は、隣人の森園(安田顕)に手伝ってもらい、家に仕掛けられた防犯カメラを撤去。肩車をしてくれようとする森園に前からまたがろうとし「後ろから」と言われるくだりに笑ってしまう。森園、さっと手を添えてくれたり、やってくれることがいちいちスパダリなんだよな……。よく気が付く親切な人だけど、なんでそこまで気づくのだろうと少し気になる。

森園がサスペンス小説家だと知り、思っていたようなシリアルキラーじゃなかったことにちょっとがっかりしてしまう鈴之介。だが千尋(萩原みのり)以外にも手作り料理を持ってくる色っぽい女、洋服の背中のファスナーを森園に挙げてもらう清楚っぽい女など、いろんな女が出入りしているのを見て、やはり謎が深まるのだった。

自宅からは見えない森園家の様子を見ようと、おそらく電柱に登ろうとしていたところ千尋に声をかけられ、動揺して「僕が知っている以外に妻という言葉の意味はありますか」と質問して「ないと思いますが……」と言われていて200%不審者である。

「妻ズ、ということですか? 妻ズ ライオンズ アベンジャーズ 妻ズ」
「誤解の誤解でした、あなたは素晴らしい人でした」

途中やってきた森園に「大丈夫ですか?」と聞かれ

「僕が大丈夫だったことは一度もありません」
「そういう意味で大丈夫です」
そう言って隣なのにあらぬ方向へ走り去る鈴之介。ヤバい隣人はどっちなのか。

琉夏(柄本佑)は一緒にいた悠日と星砂の仲を疑うが、悠日がジョギングをしていたことにしてうやむやに。「僕がジョギングをしたら行き着く先は病院だぞ」という名言が出た。琉夏のひねくれているからこその小気味のいい名言が結構好きなので、琉夏語録を作りたい。「大豆田とわ子と三人の元夫」だと、慎森や鹿太郎のポジションだろうか。

犯人が出した数字の謎解きに、悠日や星砂が得意ではといったら屁理屈をこねながら全然違うと言っていたのに、想い人の渚(佐久間由衣)に頼まれたらひとたび「得意じゃないと言ったら嘘になっちゃいますよ~」と態度を変えるの、こいつ~! と思うがそこも含めて琉夏だなぁと思う。

渚が犯人の矢を受けて負傷したことで入院してしまい、花束を持って病室へ向かうが、結局渡す勇気がなく帰ってしまう。

「片思いはハラスメントの入り口だ」
「僕は片思いという暴力を彼女に振るってしまった」

琉夏の言葉はいまそこまで思いつめなくともと思う一方で、確かにそういった側面もあるかもしれない、と妙に納得してしまう。

そして今回、星砂がいる悠日宅にはやけに突然の来客がある。
はじめは悠日の両親。別の回では悠日のことを馬鹿にしている感じだったが、意外と行き来のある親子なのだろうか。次に来たのは雪松(伊藤英明)だった。

亡くなった悠日の兄、朝陽のことを

「あいつはさ、人の幸せを、心の底から願える男だったから」
「朝陽は嘘のない人間だった」

と話す雪松。真意がわからず怖いなとも感じてしまうが、悠日の中に朝陽を見ているからたびたびちょっかいをかけてくるのかもしれない、この人もまた切ないなと思った。

「困った人を助けたいと思わないのか?」
「そういうことは困った時に助けてもらったことがある人に言ってくれ」
という琉夏と鈴之介のやり取りや、今回の事件の犯人に対し「いい人がいいことをするとは限らない。悪い人が悪いことをするとは限らない。歪んだ正義感を振りかざしてるのは僕達と同じじゃないか」という言葉から、鈴之介はいろいろ考えている人なんだとわかる。

そしてすごく切なかったのは、恋は傷であり、自分にはそれはいらないと言った鈴之介が、悠日と星砂に
「君たちに言うことはできるよ。おめでとう、幸せになってください」
と言ったところ。よく見ると、前回自分と星砂に出していたいいカップを、悠日と星砂のところに置いているのだ。

切なすぎるし、一見人の気持ちなんてどうでも良さそうに見える鈴之介が初恋と失恋を短期間で経験したのちにこの行動に至ったのを思うと、どんな気持ちで……と泣きそうになる。こんな風に、自分の好きな人と好きな人が好きな人(もともと知り合い)に優しく接することができる人、どれだけいるだろう。なかなかできることではない気がした。

悠日と星砂も切ない。
杏月に「彼なら受け止めてくれそうだけどね」と言われて「だから困るんだよ」と答えた星砂。悠日に惹かれながらも兄の死に関わっていたかもしれない自分は、近づきすぎちゃいけないと思っていた。

「一緒にいたのは一緒にいたかったからです」と伝える悠日に、自分が兄の死と同じころ銃で撃たれたことを言っても「よかったですね無事で」と見当違いに自分を気遣ってくれる悠日に「死に関わってる可能性があるって疑うところだろ」と自分で言う。もう一人の自分におびえていた。

でも悠日は星砂に嫌いと知っているトマト以外にエビフライが好きだと聞き、

「僕が好きなのは、トマトが嫌いでエビフライが好きな人です」
「僕はあなたを知っています」
「僕がいる限り、あなたはいなくなりません」

と、星砂を抱きしめる。悠日、この間まであんなに上辺を取りつくろう人だったのに、星砂にはこんなにも真っ直ぐ伝えてくれるんだ。今まで視聴者に見えていなかっただけで、こういうところのある人なんだ。

それぞれ本当に相手が好きなのに、このままでも誰一人幸せになれなさそうな4人が切ない。幸せになってほしいと願ってしまうくらいには、すでに4人のことを好きになっている。

この展開だと、タイトルが「初恋の悪魔」なことにも納得してしまう。

ラスト、悠日の家から星砂が出たところに雪松がきて、階段の上でもみ合いになる。そして雪松が階段から転げ落ちてしまった……。

鈴之介の家では、ブレーカーを落としてもメーターが動いていることに森園が気づく。彼の家には、引っ越してきてから一度も開けたことのない扉があった。2人でその扉を破ることに。

どうする、どうなる……!?

全然関係ないが、犯人の本拠地に乗り込んだときの鈴之介の服装と、矢を分厚い本で受けたところはかっこよかった。二次元みが強い。

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー


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鈴之介(林遣都)は森園(安田顕)とともに、廊下の突き当りにあった開かずの扉を開く。そこには地下に続く階段があり、更にその先には地下室があった。薄気味の悪いその地下室は明らかに誰かが監禁されていた痕跡があり、更に驚く二人。そんな隙、森園は地下室の扉を突然閉め、鈴之介だけを地下室に閉じ込めてしまうのだった。

一方、悠日(仲野太賀)は兄の朝陽(毎熊克哉)が残したスマホのロックを解除し、朝陽の死の謎を解きたいと星砂(松岡茉優)に言う。星砂は“もうひとりの自分”が朝陽の死に関わっている証拠が出てくるかもしれないと不安を抱く。

閉じ込められている鈴之介は、森園から過去に起きたある殺人事件について聞かされる。5年前、15歳の少年が行方不明となり、まもなく遺体で発見された。犯人は逮捕されたものの、森園は真犯人が他にいると考えていた。そしてこんな奇妙な家に住む鈴之介こそが、その真犯人ではないかと疑ったのだった。鈴之介は、「ここは僕の家に違いないが、僕の家ではない」と告げるが、森園は「意味が分からない」と取り合わない。

そのころ、渚(佐久間由衣)は、捜査に行き詰ったとき、いつも解決のヒントが書かれた手紙が届くことを琉夏(柄本佑)に打ち明ける。さらに渚は手紙の主が鈴之介ではないかと思っていると、頬を緩ませながら語るのだった。密かに渚に心を寄せる琉夏は複雑な心境に。
一方、鈴之介は森園に、この家に住むこととなった経緯を語り始める。この家は椿静枝(山口果林)という老いた女性から譲り受けたのだった。椿との出会い、それは鈴之介がこれまで誰にも語ったことのない、今の鈴之介を形成する壮大なストーリーがあったのだ。
そのころ、しばらく音信不通になっている鈴之介を心配した悠日と星砂そして琉夏は、鈴之介の家を訪ねてくる。地下室の存在など知る由もない3人は、鈴之介の部屋から椿の書いたとみられる手記を発見し———。

第5話のレビュー

第5話はあえて言うなら鈴之介回だった。いつもの「マーヤーのヴェール……」シーンはないが、視聴者の心に深く響く回となった。

隣人・森園(安田顕)に言われ、自分の家にある開かずの間を開けた鈴之介(林遣都)。階段から続く地下には、明らかに人を監禁していたような部屋があった。一体だれがこんなことを。怖いけど「僕が怖いのはシャンプーしてるときに背中をトントンされることだけです」「シャンプートントンだけです」と謎に強がる鈴之介。何と森園は、ドアを閉めて鈴之介を閉じ込めてしまった。森園、結局裏の裏でシリアルキラーだったのか……!?

森園は、鈴之介が自分を観察していたことに気づいており、彼をあやしいと思っていたらしい。謎の踊りを踊っていたのは「小説家あるある」で、作中に書こうと思っていたものを自分で実践していたという。家に出入りする女性たちも編集者だという。作中で扱う殺人事件の話を喫茶店でしようものなら、通報されかねないらしい。

森園は突然、5年前に中学生が行方不明となり、数日後に遺体で発見された事件の話をし始める。ホームレスが逮捕されたが、亡くなった中学生は「地下室にいる」という言葉を遺しており、他に真犯人がいるのではないかと思っているらしい。地下室のある家に住んでいる鈴之介を疑っていたのだ。鈴之介は、「ここは僕の家に違いないが、僕の家ではない」と言うが、全く取り合ってもらえない。

「お化けなんてないさ」の歌を歌って恐怖を紛らわそうとする鈴之介がかわいい。「ここでは助けを呼んでも誰も来ない」という森園に、「どこだって同じだ、僕には助けてくれる人間なんていない!」と答える。鈴之介は、小学生の頃のことを思い出していた。そこでは「鹿浜くんカウンセリング」ともいうべき、恐ろしい光景が繰り広げられていた。

「鹿浜くんは変だから〇〇してあげたほうがいいと思います」
「鹿浜くんとは話題が合わないから、流行のテレビを教えてあげたほうがいいと思います」

など、「鹿浜くんをどうしたほうがいいか」をクラスメイトが提案し、女性教師がそれを褒めて拍手するという地獄のよう時間だった。なんだこれ、こんなのいじめじゃないか。観るだけでも苦しくなるシーンだった。今までの、頑なすぎるようにも思えた鈴之介のセリフの数々に納得がいった。

一方、琉夏(柄本佑)は思いを寄せる渚(佐久間由衣)に「最近事件についてお手紙で助言してくれる方がいるんです。優秀な刑事だって聞いてるから鹿浜さんなのでは?」と言われて複雑な気持ちになる。星砂(松岡茉優)と2人で撮った写真を見てデレデレする悠日(仲野太賀)のところへいき、「幸せそうな人を見てどう思うかで自分が幸せかどうかが決まる」「僕は不幸せなようだ」といつものめんどくさい感じで話し出す。

鈴之介の話を出して「数日連絡取れないんだって」「穴にでも落ちてればいいのに」「なぜ僕を叱ってくれないの、僕の醜い嫉妬心を」と相変わらずな感じだ。

鈴之介と森園は、もみ合いになり2人とも閉じ込められてしまう。鈴之介は、この家を譲ってくれることになった椿静枝(山口果林)という年配の女性の出会いを思い出していた。座り込んでいる椿さんに具合が悪いんですか? と声をかけ、おぶって家まで連れて行ったのだ。「僕はただの冷血な変人なんです」という彼を面白がり、親しくなり家にちょくちょく立ち寄るようになる。鈴之介にとっては数少ない、人の温かさに触れた経験だった。

だがそんな日々も長くは続かなかった。ある日彼女の家を訪れると、彼女は倒れて亡くなっていた。いつか終わるならこんな気持ち知らなければよかった……と鈴之介は後悔する。彼女は身寄りがなかったため、この家を譲り受けることになったのだった。

地下室にはある男の免許証と手帳のようなものがあり、森園と2人で読み始めると、この部屋に監禁されていた男性の手記だった。座り込んだ女性を家まで連れてきたらお礼に食事をと言われ、眠くなって起きたら閉じ込められていたというのだ。「あなたも狙われていたんじゃないですか」と言う森園に、「彼女がそんなことするはずない」と答える鈴之介。あれほど凶悪犯罪が起こるのを楽しみにしていたのに、実際に大事な人が関わっていたかもしれないとなるとショックを受けるのだな……。

一方で、悠日と琉夏、星砂は鈴之介の家に訪れる。ドアが開いていたので中に入ると、謎のモニターと日記のようなものを発見した。とある事故で壁が崩れ、女性とその子どもが巻き込まれて亡くなった。2人は椿の娘と孫だった。その日は椿の誕生日で、現場には誕生日ケーキの箱が落ちていた。この事件で市の管理責任が問われたが、不起訴となった。納得がいかない彼女は、自分で手を下そうと、役所の人間を狙って襲ったのだった。

モニターに鈴之介と森園の姿が映る。地下室の存在に気づき、助けに来た3人。いまの鈴之介には、助けに来てくれる人がいたのだ。

平謝りする森園が帰り(一応監禁って犯罪だけど大目に見るのね、まぁ鈴之介も覗いたりしてたしな)、4人になると、女性の日記には続きがあったことに気づく。結局男は逃げ、女は逮捕されたが、情状酌量がつき早めに出てこられた。

鈴之介が椿と出会ったのは、奥さんの出産が近い同僚を気遣って「冷血な変人なのかと思ってました」と言われた直後だった(ひどいな)。

「あなたと一緒にいると、優しい気持ちになれる。世の中を恨む悪魔になっちゃダメ。人は人、自分らしくしてればいつか未来の自分が僕を守ってくれてありがとうって褒めてくれる」

「悲しみが消えたわけではありません、娘と孫が生きたこの世界を生きたくなったのです」

そして見せられた最後のページには
「あなたに助けられました。ありがとう、鈴之介くん」
と書かれていた。

「ちょっとおしっこ行ってきます」と鈴之介が部屋から出ると、彼の嗚咽が聞こえてきた。鈴之介に人と接する温かさを教えてくれた椿もまた、彼に救われていたのだ。これはもらい泣きしてしまう……。

「世の中を恨む悪魔になっちゃダメ」というセリフは、鈴之介だけでなく、自分にも向けた言葉だっだんだな。タイトルにもある「悪魔」という言葉が初めて出てきたが、この作品での悪魔は=世の中を恨む人、なのだろうか? 今後の展開にも注目したい。

「今日はありがとう」と素直にお礼を言う鈴之介に「それは何? 人々が通常使ってる意味のありがとう?」と余計なことを言う琉夏。

「今度カラオケでも行こうか?」
「いいよ」
「今行く?」
「いいよ」

と、4人でカラオケに行くことに。みんなでYUIの「CHE.R.RY」を大熱唱。夜の雑踏を4人並んで笑顔で歩く4人は幸せそうで尊くて、この時間が永遠に続けばいいと願わずにはいられないが、一方でこんな時間は長く続かないんだろうなとも思ってしまう。

子どもの頃の自分に「大丈夫だ! 自分らしくいればいつか未来の自分が褒めてくれる、僕を守ってくれてありがとうと。友達もいつかできる」と言って抱きしめる鈴之介の言葉には、観ているこちらも励まされた。こんな自分が……と思ったことがある人はみんな、刺さるものがあったんではなかろうか。

星砂と悠日のやり取りもまた心に残った。

「人間て大事な思い出は身体全部で覚えるんだなって」
「大事なことは身体全部で覚える、それが生きるってことなんだなって思う」
「だからね、あんたね、私に何があっても私のこと覚えててくれるかな」

「覚えなくたって忘れるわけないじゃないですか」
「忘れるわけないじゃないですか」

星砂を抱きしめて言う悠日。この星砂がいなくなってしまうかもしれないなんて嫌だな……悠日がこの面子の中で唯一リア充だった(浮気されてたけど)のも何となくわかる。それにしても切ない……。

後日、悠日の兄・朝陽(毎熊克哉)が亡くなった現場に訪れた悠日と星砂。同僚刑事の話を聞き、朝陽のスマホの話をするうちに星砂は逃走してしまう。また森園が元弁護士だったことが発覚する。

刑事に復帰した鈴之介が東京で見かけたのは星砂だったが、”蛇女”と呼ばれる別人格のほうだった。どうする、どうなる……!?

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー


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鈴之介(林遣都)と、もうひとつの人格となった星砂(松岡茉優)が偶然、東京で会った。星砂は鈴之介のことをまるで知らない様子だが、自分の名前を知っていた鈴之介に興味を示す。鈴之介は、そんな星砂に戸惑う。星砂は、鈴之介を自分が寝泊まりしているネットカフェに連れて行く。

翌日、悠日(仲野太賀)は、いなくなった星砂を心配し、鈴之介と琉夏(柄本佑)に相談するが、鈴之介は星砂と昨夜会ったことを言えないでいた。琉夏は、そんな鈴之介の態度を見抜き、怪しむ。一方、雪松(伊藤英明)は、星砂の身辺を詳しく調べていた。 鈴之介は再び東京のネットカフェを訪ねる。しかし、星砂はすでにいなかった。

悠日の家に、もとに戻った星砂が訪ねてくる。星砂の無事を確認し喜ぶ悠日。星砂は、気が付いたら東京のネットカフェにいたと話す。悠日は星砂に、ときどき現れるもうひとつの人格について尋ねてみるのだが、そうしているうちにまた星砂はいなくなってしまう。

その後、鈴之介の家を訪れた星砂は、少しずつ心を許し始めた鈴之介に自分の過去を語り始める。16歳で家出し東京に出たこと。そこで出会ったリサ(満島ひかり)という女性に救われたこと。そして、そのリサが、悠日の兄・朝陽(毎熊克哉)が殉職したとされる事件に深く関わっていたことを———。

第6話のレビュー

偶然東京で出会った鈴之介(林遣都)と、もう一人……蛇女のほうの人格の星砂。星砂に別の人格があることを知らず、そもそも彼女のことが好きな鈴之介は戸惑う。しかもこちらの星砂は、鈴之介に好意的に見える。

彼女が寝泊まりするネカフェの個室に招かれ、距離の近さにたじたじの鈴之介。だが、彼が学生時代にラブレターをもらい、指定された花を持って待ち合わせ場所に行くとクラスメイトが全員いて笑いものにされた話をすると「クソだね」と言って怒る。「そういうのってシャツのシミみたいに残るんだよ」と怒る星砂に、「君が怒ってくれたから大丈夫、シャツのシミは消えた」と伝える鈴之介。

前回過去の自分を抱きしめることができた鈴之介。それでも消えるわけではない地獄のような思い出に、心が痛む。そんな思いをしたのに人を気遣える人に育った鈴之介、とてもえらい。

そして、これまで蛇女のほうの星砂はとんでもない性格の女かと思っていたが、人のために怒ってくれるいい人な一面もあるとわかった。

場面は変わり、鈴之介と琉夏(柄本佑)がお互い相手に憎まれ口を叩きながらも「りんちゃん」「ことりん」と愛称で呼び合っていたのは見逃せない。いつの間にそんなに仲良くなったんだ、やっぱり前回か? 鈴だがらりんちゃんなのか。

失恋から立ち直るにはどのくらいかかるか聞く鈴之介に「長くて一生、短くて半年」と答える琉夏。他の人を好きになることで忘れられる、その繰り返しだとしてもそのうち慣れるという琉夏に「慣れたくはない」と言った鈴之介は、この苦しい感情も大切に感じているのかもしれない。

そこへ森園(安田顕)がやってきて、彼が前回気になっていた事件のより詳しい説明を聞く。被害者が中学生と知った琉夏の「子どもじゃないの」というセリフが個人的にツボに入ってしまった。森園、スライドに弁護士である自分の写真も入れているところがシュール。

この事件が冤罪だと思い、心残りだと言う森園。彼いわく、犯罪者にも個性があるという。ホームレスが金欲しさに彼を刺し、財布を奪ったのだとされているが、犯人は被害者を19回刺していた。1回刺せば死に至ることが多いのに、盗み目的で19回も刺すだろうかというのだ。鈴之介も、あまりにも証拠品が揃いすぎていると言う。

星砂は我々が慣れ親しんでいるほうの人格に戻り、悠日(仲野太賀)の家に帰ってきた。自分以外の人格がいると気づいたのは祖母が亡くなった10代の頃で、家出して東京に行き、記憶がなくなり、気づいたときには「間庭製作所」と書かれたメモを持っていたが、怖くて捨ててしまったという。

何かわかるのではと二人で間庭製作所に行ってみると、夫婦はうれしそうに迎えてくれるが、通りかかった同年代くらいの女性は怒りをあらわにして「あんたは私たちを裏切った、待ってたのに」「リサのこと知らないなんて言えるの?」と言ってくる。自分はいろんな人を傷つけていたんだ、と落ち込む星砂に「大丈夫です」と励ます悠日。根拠のない大丈夫だなと言われるが、「根拠のない大丈夫は優しさでできてます」と笑顔。

「僕は前向きな言葉が好きです。綺麗事と思われるかもしれないけど、綺麗事を口にしてきた人って泣いてきた人たちだと思うんですよね。もう一度立ちあがろうとしてきた人たちの言葉だと思うんです」と言う悠日。いい解釈……。だがまた星砂は蛇女のほうの人格になり、出て行ってしまった。

鈴之介の家にこの間のお礼をお菓子を渡しにくる星砂。なんで鈴之介の住所を知ってるんだろう? と思ったが、メモでも渡していたのだろうか。「君はまるで2人いるみたいだ」と言う鈴之介に「2人います」と答える星砂。鈴之介はすぐに「個人的なことであり、僕はそういうものとして受け入れるべきだった」と後悔するところに彼の優しさがあらわれている。

「鹿浜鈴之助さんは素敵な人だなって」
「一旦席を立ちます」
「あなたも素敵だと思います」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」

2人の会話が鈴之介らしさ満載で、もはや微笑ましい。

鈴之介の調理を手伝おうとし「前に住んでた家の冷蔵庫もいつもギチギチでした」「実家じゃありません、リサっていう子の家です」「話しすぎましたね」と言う星砂。

「途中でやめようとした話こそ、いちばん話したい話です」と言う鈴之介の言葉には、確かにそうだなと感心した。

東京に家出してきて所持金もなくなり、このまま死ぬのではというときに助けてくれたリサという女性が、家に招いてくれて食べさせてくれただけでなく寝泊まりさせてくれた。ここでおそらく視聴者の多くに衝撃が走ったと思う。

だって、回想に出てくるリサ、満島ひかりだったんだもん。
坂元裕二作品に出てくる満島ひかり、たまらん……!

リサは他にも星砂と同じような境遇の少女たちを家に連れてきては、勉強させて自分は朝から夜まで働いた。さらにブランド物の転売や偽物の販売など……自分だけが働き、女の子たちが手伝おうとしても決してやらせなかった。多分違法だから彼女たちが罪に問われないようにしたんだろう。見ず知らずの子たちにここまで親切にできるなんて、リサ自身はどんな環境にいたんだろう。

「風が気持ちいい日に家に帰ったりしちゃ駄目だ」
「そんな夜は遠回りするんだよ」
「人生でいちばん素敵なことは、遠回りすることだよ」

風が気持ちいい夜にそんな風に言うリサのこと、見てるこっちも好きになっちゃうよ。

でもそんな日は長くは続かず、「頭が良くて正しくて、近道が好きな人たち」が家にきた。リサは借金を背負い、なんとか借りるつてを掴んだ。それが「間庭製作所」のメモだった。メモを託された星砂は、「またみんなで暮らすんだ、また風の吹く夜を過ごすんだ」と走るが、途中で記憶がなくなってしまった。

次に気づいたのは7年後。自分は警察官になっていた。

「違う違う、ここじゃない。わたし、リサを助けるためにお金を借りに行くはずだったのに」

リサは殺人の容疑をかけられて指名手配されていた。担当刑事だった朝陽に直談判しに行ったが、取り合ってもらえなかった。自分でやるしかないと人の不正を密告していたら、蛇女というあだ名がついた。

ある日、風の気持ちいい夜にリサと再会した。
「ただいま」と言ったらリサは「おかえり」「おかえり、やっと見つけた、よかった」と言ってくれた。

やっぱりリサの言う通りだ、ほんのちょっと遠回りしてただけだったんだ、と思ったけれど、リサは見つかって追われてしまった。気づくと朝陽が逃げるリサに銃口を向けていた。「やめて、リサを撃たないで」と思って動こうとしたが、朝陽が撃った弾は星砂の胸に当たっていた。

次に気づいたとき、リサは逮捕されて刑務所にいた。

リサを助けなきゃいけないのに人格が入れ替わってしまうことに不安ともどかしさを感じるこちらの星砂に

「もしまた君がいなくなることがあったら、後は引き継ぎます」
「それで、少しは怖くなくなりますか」

そう伝えた鈴之介。素敵だな鈴之介……。

あちらの星砂に「僕があなたのことを覚えてます」と言った悠日。
かける言葉の違いに個性が出るけれど、自分が消えるのが怖いあちらの星砂にも、人格が入れ替わってリサを助けられなくなることが怖いこちらの星砂にも、それぞれがベストな言葉だったんだと思う。

蛇女の星砂、前回まで敵くらいに思ってたのに、すっかり好きになってしまった。

そして今回、雪平(伊藤英明)のあやしさがグッと増した。森園との会話で、5年前の事件で中学生の遺体があがった場所を覚えていなかった。朝陽の死をあんなに悼んでた人とは思えない。リサが容疑をかけられた殺人の被害者の傷は、森園が追っている事件の被害者の傷と酷似していた。

さらに、悠日に一般企業への就職を勧め、兄の電話が欲しかったのでは? と言われて別人のような態度を見せた。こいつが2件の殺人の真犯人、もしかしたら朝陽のことも殺したんだろうか?

星砂は朝陽に撃たれていたので、殺害は不可能だ。
気になりすぎるのに来週は休み。待ちきれないよ……!

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー


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鈴之介(林遣都)の家で星砂(松岡茉優)と再会した悠日(仲野太賀)は、彼女の無事を喜ぶ。しかし、悠日に対して警戒心をあらわにする星砂。別人格の星砂なのだと察し、複雑な気持ちを抱く悠日。

そんな中、殺人事件が発生する。被害者は、大学生の望月蓮。遺体は水に濡れていて無数の刺し傷があり、靴を履いていなかった。その手口は、森園が裁判を担当した5年前の事件と、朝陽(毎熊克哉)がリサ(満島ひかり)を逮捕した3年前の事件とそっくりだった。

森園(安田顕)は、今回の事件が5年前、3年前の事件に続く連続殺人の“第3の事件”だと鈴之介に詰め寄る。星砂も、ここで真犯人を見つければリサの無実が証明できると意気込む。鈴之介は森園と星砂の勢いに押され、3人で捜査をすることに。

一方、悠日は、雪松(伊藤英明)を殴ってしまったことで自宅謹慎を命じられる。琉夏(柄本佑)は、恋人も職も失いそうなそんな悠日を心配し慰める。悠日は琉夏に、星砂が自分のところに帰ってくるのを信じていると告げる。
鈴之介たちが捜査を進めるうち、望月の恋人だった大学生・桐生菜々美が容疑者として浮上。菜々美は、望月の死亡推定時刻にひとりカラオケをしていて、その途中でカラオケ店に居合わせた同じテニスサークルの仲間たちと話をしたとアリバイを主張する。しかし、その仲間たちは、菜々美とは会わなかったと証言。菜々美のアリバイは崩れる。警察も菜々美をマークし、彼女の逮捕が決定的となりつつある。これは“第3の事件”なのか———。新たな冤罪の被害者を生んでしまうのか。その裏に隠された秘密とは!?

第7話のレビュー

鈴之介(林遣都)の家に星砂(松岡茉優)がいることを知ってしまった悠日(仲野太賀)と琉夏(柄本佑)。事情を知らない琉夏は、2人に対して悠日への裏切りだと怒る。鈴之介も悠日もその場で詳しく話すわけにもいかず、険悪なムードに。誰も悪くないのに、数話前のカラオケはあんなに楽しそうだったのに、一瞬だったな……。鈴之介と悠日2人の会話も、鈴之介の言葉が少なすぎるために多分誤解されている気がする。

疲れ切った悠日に「睡眠とプライスレスな優しさが必要だ」と膝枕する琉夏、優しい……。寝てなさいと怒られつつ、鈴之介も星砂も悪くないんです、と一生懸命起き上がって言おうとする悠日(でも詳しくは話さない)もまたいいやつだ。

そんな中、新たな殺人事件が起こってしまう。被害者は望月蓮という男子大学生で、5年前森園(安田顕)が担当した事件、3年前リサ(満島ひかり)が逮捕された事件と手口が似ている。鈴之介と森園は、連続殺人の第3の事件だと確信する。つまり、もしそうであれば今捕まっている2人は事件を起こせないから冤罪だということだ。

しかし、蓮の彼女だった菜々美(あかせあかり)に容疑がかけられる。彼女は死亡推定時刻にひとりカラオケをしており、SNSにもその動画をアップしていたが、そこで会ったというサークル仲間たちは会っていないという。彼氏が殺されたのにカラオケ動画をSNSにアップする神経が知れない、前から蓮は別れたいと言っていたのに拒んでいたらしい、彼女が殺したのではと大学でも噂になっていた。確かに視聴者も笑顔で歌ってる動画をあげるなんておかしいなと思った。
警察側も菜々美を犯人で進めようとしていて、このままでは冤罪の被害者が生まれてしまうと、捜査を進める4人。星砂は蛇女のほうのままだが、実際の犯人を捕まえられればリサの無実を証明できると乗り気だった。

結果、大学のサークル仲間は女子高生と酒を飲んでいたのを隠したくて嘘をついていたと判明。菜々美はこのカラオケで別れの歌を歌いまくり(天城越えと夜桜お七、すごく上手い)、彼と別れるのを受け入れる決心を固めていたが、約束の時間に現れなかった……というのが真実だった。「人に見せたい顔と本当の気持ちは違う。彼女が本当はどんな気持ちだったかなんてわからない」という鈴之介のセリフが刺さった。その通りだ。

途中、琉夏に「(悠日に星砂を)返してやってくれ」と頼まれ「摘木さんは物じゃない」と答える鈴之介。それはそうだし、友達を思って頼む琉夏も、全部話せば誤解されないのにそれは言わず星砂を気遣う鈴之介も、どちらも本当にいい人で今この状況がつらい。

そして星砂(蛇女)と悠日が話し、悠日の死んだ兄・朝陽(毎熊克哉)の話になる。朝陽がリサを撃ったと聞いて「何かの間違いです、調べればわかります」という悠日、朝陽の弟である悠日のその発言により不信感を募らせる星砂。

悠日はついに、星砂(蛇女)に詰め寄り
「あなたのせいです。あなたがそこに居座ってるから摘木さんはそこにいれなくなったんでしょ?」
「出てってください。あなたはそこにいちゃいけない」
「返してください」

二重人格の人にそんなこと言うべきではない、こちらの星砂だって好きでこうなっているわけではない、前回の星砂の話だとむしろこっちの星砂がもともとの星砂かもしれない。悠日が朝陽のことを誤解だと言ったように、悠日も星砂(蛇女)のことを誤解しているが、知らないから当然なのだ。彼だって普段はこんな感じで人に詰め寄ったりしない人だし、精神的に限界だったのだろう。

鈴之介が星砂を守るように「彼女に触るな」「触らないでくれ」と言う。

ああ何だか本当につらいなあ、どっちも悪くないしなぁ。
こっち(蛇女)の星砂は、リサさえ助けられれば自分は消えたっていいと思ってるのに。そしてあっち(スカジャン)の星砂は、もう戻ってこないのだろうか。

悠日は小洗(田中裕子)のもとを訪れ、星砂を元に戻す方法を教えてくれというが、小洗は星砂(スカジャン)の書いていた日記のようなものを渡してきた。「こんなことするガラじゃないんだけど、あんたがいたからじゃない」と言う。

そこには、星砂が自分の人格がいなくなったときにそなえ、悠日に向けて書いたであろう手紙が書かれていた。

自分がどうしてこうなったか過去を知ろうとするな、ハッピーなエンドなんていらない、ほんのスプーン一杯くらいの幸せがあればそれでいいのだと。

そして悠日との、ささやかだけど幸せな思い出がつづられていた。

「私には私の思い出がある。しかも私の思い出は私だけの思い出じゃない。それがうれしい。これ以上があるか?」

そして私がいなくなっても泣くな、と。

それを読んだ悠日は「怒られちゃった」と泣きながら、笑うような表情でいい、もう何とも言えない……。

悠日も鈴之介も琉夏も2人の星砂も、みんないいやつなのに、みんながみんな幸せになることは難しくて、もう4人で笑い合えることはないのかな。

一方森園は雪松(伊藤英明)と2人になり、話を切り出していた。そんな連続殺人犯かもしれない人と2人きりになっていいのか……!? 案の定、連続殺人事件に関わる話になると話題を反らそうとし「過去のことだ」という雪松、あやしすぎる。刑事の言うこととは思えない。

最後、泣きながら妻らしき人に電話をかけ「片付いた」という雪松。も、もしかして森園、殺されちゃったの……? でも、冷酷な殺人鬼かと思ったら泣いている雪松も謎だ。ど、どういうこと……?

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー


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“第3の事件”の容疑者・菜々美に逮捕状が出る。冤罪の可能性が高いと考えた鈴之介(林遣都)、星砂(松岡茉優)、森園(安田顕)は、雪松(伊藤英明)にターゲットを絞り調べることに。雪松は、菜々美の逮捕に疑念を抱く鈴之介に、昇進をちらつかせて近付いてくる。

一方、免職となった悠日(仲野太賀)は、警察署を去る。寄り添ってくれたのは、琉夏(柄本佑)だけだった。署から荷物を持ち帰った悠日の元に両親が訪れる。悠日は、失望させてしまったことを両親に謝る。そして思いがけず、朝陽(毎熊克哉)のスマホのパスワードが判明する。

鈴之介、悠日、星砂、琉夏は、スマホの中身を確認。最も疑われる雪松との通話記録は残っていなかった。4人は残された発着履歴を手掛かりに朝陽の行動をたどっていく。朝陽と所縁のあった人々から話を聞くと、朝陽の意外な一面が見えてくるものの、彼の死に関する有力な情報は得られない。自分の知らなかった兄の思いに、悠日は動揺。

そんな折、発信履歴にあった「みぞれ」という人物から悠日に電話がかかってくる。彼は朝陽のことを知る元刑事だった。みぞれは余命わずかで「死ぬ前に話しておきたかった」と、朝陽との思い出を話し始める。みぞれが語る朝陽の死に関わる新たな事実とは———!?

第8話のレビュー

ケーキ屋さんでいちごのケーキとマスカットのケーキを買い、好きなほうを星砂(蛇女)に選んでもらおうと思っていた鈴之介(林遣都)。玄関で話す練習をしているのがかわいい。部屋に入ると、なんと星砂もまったく同じ2個のケーキを買って、同じように鈴之介に好きなほうを選んでもらおうとしていた。

2人がまったく同じことをしているのに運命を感じるし、本当にお互いを思い合っているのが伝わってくるシーンで、愛おしくてたまらない。ただもちろん、星砂(スカジャン)と悠日(仲野太賀)のこともあるので、複雑な気持ちになってしまうのがこのドラマ。

星砂(蛇女)は、リサ(満島ひかり)の無実さえ証明できれば、自分はいなくなってしまってもいいと思っていて、目的を果たしたら元(スカジャンのほう)に戻る方法を探そうと考えている。人のことを考えられる人すぎる。鈴之介が、もっと自分のことを考えてもいいと言うのもうなずける。

でもそれじゃ(自分じゃないほうの)摘木星砂さんに申し訳ないし……といろいろ申し訳ない場面を挙げる星砂(蛇女)に、じゃあそれらをしないように、無人島で一人で生きればいいと言う鈴之介。一見ひどい言いようのようでもあるが、鈴之介はただただ星砂(蛇女)にも生きてほしいんだろう。最終的に、無人島のそれぞれ反対側に住み、週1くらいでおすそ分けをし合おうという話に落ち着き、楽しそうな2人。「大きなおさかなが獲れたときは……」と話す鈴之助がかわいい。

前回、無実の可能性が高いことがわかったのに、菜々美(あかせあかり)は逮捕されるらしい。鈴之介たちだけでなく、口木(味方良介)も、菜々美のものだとわかる証拠品があまりにあからさまに残されていたことに疑問を抱いている様子。この人、いつも渚(佐久間由衣)の手柄を横取りする人だと思っていたけど、刑事として誠実なところもあるんだな。でも、上にいるのが雪松(伊藤英明)なので結局もみ消されてしまうのだろうか。

悠日の両親は、雪松に悠日の退職を考え直してくれないか頼んだが、駄目だったという。悠日は兄のように期待に応えられなかったと詫びるが、両親は何言ってるのという反応で、悠日を馬鹿にしている様子はなかった。さらに、朝陽(毎熊克哉)の死について、本人は直前に雪松に会うと言っていたのに、彼の死後雪松は「朝陽としばらく会っていなかった」と言ったことを疑問に思っていたと明かした。彼が命を狙われているようなことを言っていなかったか尋ねる。

悠日は実際あったこと、朝陽のスマホを持っているが、パスワードがわからないと伝えると、お母さんが「朝陽のパスワードなら7580よ、七転び八起き」だという。

はじめはひどい人たちだと思った悠日の両親だったが、思ったより冷静でまともだとわかってよかった。どうでもよかったら、何度も家を訪れたりしないだろうし。

朝陽のスマホからはパッと見証拠となるようなものは見つからなかったが、カメラロールが蕎麦と空で埋めつくされていたこと、「悠日の誕生日」をカレンダーに登録していたことから人柄が伝わってきた。そして朝陽のスマホに”みぞれ”という名で登録されていた人に話を聞くことに。

悠日の家にやってきたのは、もともと朝陽の上司だった刑事だった。ギャンブルのやりすぎで異動になり、今は病気で余命半年の5か月目らしい。彼は朝陽に雪松のことでいろいろと相談を受けており、きっかけは武器を持っている犯人・リサに発砲しろと命令されて撃ったが、実際にはリサは凶器を持っておらず、自分は丸腰の相手を射殺するところだった、ということだった。それまで聞く朝陽の人柄から、あそこで撃つような人じゃなさそうなのにと疑問を持っていたが、雪松の指示だったのだ。

みぞれさんは止めたが、雪松と話すと言った朝陽は翌日転落死したのだという。だが権力も人望もある雪松に目をつけられたらクビになると思った彼は、このことを話さずにきたことを申し訳なく思っていた。

そしてみぞれさんによると、朝陽は悠日について「僕は人見知りで人と仲良くするのが苦手なんですが、弟は仲良くなるのが得意でみんなに好かれるんです。両親だって悠日の方が好きなんですよ。両親は僕より僕が持って帰る賞状のほうが好きなんです」と話していた。

なんと……お互い自分の持っていない部分をうらやましく思い、相手のほうが両親に愛されていると思っていたんだ。きょうだいって、そういうところがあるよな……。なんたが、愛おしいような泣きたいような気持ちになった。

そして朝陽は「雪松署長は僕にとって初恋のようなものなんです」と言ったのだ。実際に恋愛でというような意味ではなく、大きな存在という意味で。
「初恋の悪魔」というタイトルは、てっきり鈴之介の初恋にまつわる三角関係のことなのかとこれまでは予想していたが、タイトル回収はこちらな気がしてきた。

鈴之介の家の冷蔵庫にあった、悠日の作ったカレーを食べていた星砂は、宅配便の名前を書いている間にスカジャンの人格に戻る。悠日のカレーで戻るのが泣ける……星砂(スカジャン)は、悠日の家に一目散に走った。でも玄関の前で悠日が出てきたときに星砂(蛇女)のほうに戻ってしまった。悠日は先日の言葉を詫び、自分にそんなことを言う資格はないし、応援しているし、星砂も鈴之介も自分も納得できる日がくればいいと思ってます、と告げる。

みんな人のことを思いやれる優しいいい人なのだ。無理なのはわかってるけどみんな幸せになってほしい。

最後、悠日は雪松を尾行し、家からは息子(菅生新樹)が出てきた。悠日は琉夏(柄本佑)に「自分が殺されないか見張ってほしい」と告げていた。どうか、どうかみんな自分の命を大切にしてほしいし誰も死なないでほしい。

ここまで琉夏が、三角関係に絡んでいないために、どうしても他の3人に比べると蚊帳の外感があるのが気になっていたが、もしかして、この先結構つらい役割が待っていたりするのだろうか……。

雪松が明らかにあやしいことは間違いないが、彼が真犯人というのも予想通りすぎる気もしている。ここからどんな結末に結びつくのか、気になって仕方がない。今回からエンディングテーマに歌が入り、さらに物語を盛り立てた。

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー


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悠日(仲野太賀)と琉夏(柄本佑)は、独自に雪松(伊藤英明)の周辺を調べ始める。2人が雪松を尾行し家の前で張り込んでいると、帰宅する雪松とちょうど出かける息子・弓弦(菅生新樹)の会話が聞こえてくる。ふたりの様子はごく普通の家庭に見える。事件は家族には関係ないと主張する悠日に対して、琉夏は息子に疑いの目を向ける。

服役中のリサ(満島ひかり)と面会した鈴之介(林遣都)は、星砂(松岡茉優)にその時の様子を伝える。リサが深く傷ついていたと知った星砂は、リサを苦しめた人間を殺したい、と心を乱す。鈴之介はあなたにそんなことはさせません、と星砂を抱きしめる。

鈴之介、星砂、森園(安田顕)は、手分けして捜査を進める。鈴之介は、3年前に朝陽(毎熊克哉)が転落死したホテルへ向かった。鈴之介が聞き込みをしていると、事件当日のことを覚えているという従業員が見つかる。森園は3人の被害者の家族を訪ね、3人の被害者にある共通点を見つける。

3つの事件が連続殺人であり、雪松がその真犯人と確信する鈴之介と森園。森園は雪松の告発を急ぐべきだ、動機や理由はあとからでいいと主張するが、鈴之介はそれでは雪松署長が淡野リサにしたことと同じになる、とぶつかってしまう。業を煮やした森園はその場を飛び出してしまう。
一方、雪松の家の張り込みを続けていた悠日と琉夏は、家を出る弓弦を尾行し、弓弦のある行動を目撃する…!

第9話のレビュー

衝撃がじわじわと尾を引く、そんな回だった。

雪松(伊藤英明)の息子・弓弦(菅生新樹)を尾行する悠日(仲野太賀)と琉夏(柄本佑)。弓弦に疑いの目を向ける琉夏と、あくまでも疑っているのは雪松で、家族は関係ないと主張する悠日。でも確かに、雪松は出かける息子と会話するときやたらと気を遣っていたように見えたし、出かける前に妻と二人で話していたときも視線は息子がいるであろう2階を向いていた。今までのことは、息子をかばってという可能性はある。

一方、リサ(満島ひかり)と面会した鈴之介(林遣都)だったが、彼女は何も話してくれなかったという。一瞬映った彼女の顔には表情がなかった。当時彼女を担当していた弁護士によると、当初殺人を否認していたが、長期間にわたる執拗な捜査により途中で「もう何でもいいです、もう人とは会いたくないです」と言うようになったという。捜査は激しく人格否定をされ続けるようなものだったらしい。これまで出てきた、知らない人に親切にし、何人もの家出少女を面倒見るような彼女がそんな風になってしまうのはよっぽどのことだったろうと思うと心が痛む。

「リサを苦しめた人間を殺したい」と声を荒げる星砂(松岡茉優)を、鈴之介は抱きしめる。

そして森園(安田顕)は、被害者の3名の少年たちの家を訪ね、遺族に話を聞きに行く。そして、3人は小学生のとき同じアウトドアクラブに所属していたことを突き止める。

すぐにでも動こうとする森園を、鈴之介は止める。理由を振り返るべきだと。5年この事件を独自に追っていた森園は理由なんてどうでもいいと口論になり、出ていってしまう。

「生まれついて猟奇的な人間なんていません。もしいたとしても、僕たちはその理由を考えることを放棄してはいけない。人を殺して当たり前なんて人間はない」

鈴之介のこのセリフに、物語の冒頭で森園が猟奇的な殺人鬼なのではないかと期待していた彼を思い出し、彼がどんなに変わったのかを実感する。3人と出会ったことで友情や恋愛を知り、馬鹿にしていた感情の大切さに気付いた。数か月前あんなに求めていた猟奇殺人に触れても、今の鈴之介はちっともうれしそうじゃない。それがうれしい。

弓弦の監視を続けていた悠日と琉夏は、彼が先日の事件の被害者の靴を捨てようとすることを目撃する。弓弦は泣きながら、今までの事件はすべて父親がやったことを打ち明ける。これまでの3人だけでなく、同じアウトドアクラブの少年のことも皆の前で殺したのだという。

自分の友だちを殺しては「殺してなんかないよ、こうした方がこの子たちは愛されるんだよ、みんなこの子たちのために泣いてくれるんだよ。それはとても幸せなことなんだよ」と言ったという。

話を聞いた2人は鈴之介の家を訪ね、弓弦のことをかくまってもらう。

同時に雪松のもとを訪れた森園は、彼を追い詰める。

 「どんな理由があったって人を傷つけていい理由にはならない」
「人を傷つけたら駄目なんだよ馬鹿者」
「人を殺したら駄目なんだよ馬鹿者」

安田顕の演技がすごかった。
殺人鬼と2人でこんなことを言って、森園の身は大丈夫か心配になってしまうが、雪松は

「申し訳ありませんでした。私が、3人の子どもたちを殺害しました」

涙を流して謝罪した。そして流れるエンドロール。

これで真相は明らかになったのか? と思う一方で、あまりにすんなり明らかになったことに違和感を覚える。長年にわたって犯罪を犯し、もみ消してきた人がこんなにすんなり認めて、涙を流して謝るだろうか。

それに、弓弦の話では殺した子は4人なはずなのに、雪松は確かに3人と言った。もしすべての事件の犯人で謝るにしても、間違えるだろうか。

エンドロールの後も、物語は続いた。
悠日と鈴之介は雪松の元へ向かい、琉夏と星砂は留守番。
みんなのぶんのおにぎりをにぎる琉夏にオカンみを感じる。
なるほど、三角関係から外れている彼の役割はオカンだったのか……
なんて言っている場合じゃない。

悠日が家の前に停めたレンタカーが邪魔だと苦情が入り、琉夏は移動させにいってしまう。家に星砂が一人になった瞬間、感覚的にやばい、と思う。
星砂は地下室におにぎりを持っていき、毛布をかぶった人物に励ましの言葉をかける。

星砂、ゆっくり座って話さないで、逃げて……!!
鈴之介のコレクションのハサミが、むき出しになって置かれていた。
やっとそれに気づいた星砂は、ドアを閉めた後紐でしばろうとするが弓弦が出てくる。おにぎりをくわえながらハサミを持ち、楽し気に星砂を探す様子に恐怖を覚えた。弓弦こそがごはんを食べながら人を殺せてしまうような人、何の恨みもない星砂をためらいもなく殺そうと行動できる人……猟奇殺人鬼だったのだ。

脚本家・坂元裕二によるこの物語は、今までいつだってさまざまなセリフとともに真実が明らかになってきた。なのにこのシーンは、セリフ無しに視聴者に真実を”わからせる”ことに成功していて、観終わったあともざわざわが止まらなかった。

玄関を出たところで尻もちをついた星砂に、弓弦はハサミを振り上げる。
お願い誰か戻ってきて……。次の瞬間、星砂は無事、弓弦は突き飛ばされていた。助かった……? と思ったが、星砂に覆いかぶさった森園に、ハサミが刺さっていた……。

これまで幾度か身の危険が危ぶまれ、今回は序盤で妻(萩原みのり)から「フラグが立っちゃうから心配するのやめる」と言われた森園。そんなフラグやめて。お願いだから生きてくれ……。

そして中盤鈴之介が約束していた、鈴之介が星砂にリンゴの皮の剥き方を教える約束も守られてほしい。

弓弦を演じるのは菅田将暉の弟・菅生新樹で、この役が初演技だ。
あれだけ有名で実力も認められた俳優の弟として同じ職業でデビューするのは、どうしたって比べられるしやりづらそうだなと思っていたが、ラストのあの恐ろしさを出せる感じ、彼は彼ですごいものを持っている人なのかもしれないと思ったし、さすが恐ろしい犯人役もやってきた菅田将暉の弟! とも思った。今は彼の演技がもっと見たいなと思う。

さて、泣いても笑ってもあと1話で最終回。
お願いだからみんな幸せになってほしいよ……。

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–{第10話ストーリー&レビュー}–

第10話ストーリー&レビュー

第10話のストーリー


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父親・雪松(伊藤英明)の犯罪を告発した弓弦(菅生新樹)を鈴之介(林遣都)宅に保護し、雪松のもとへ向かう鈴之介と悠日(仲野太賀)、そしてその留守を預かる星砂(松岡茉優)と琉夏(柄本佑)。

途中、鈴之介と悠日は琉夏からの着信履歴に気付き折り返す。しかし一向につながらない。嫌な予感がした2人は、すぐさま鈴之介宅に引き返す。到着した2人は玄関先に散らばる血痕を見つけ固まる。そのとき、ドアが開き、中にはおにぎりを頬張る弓弦が一人待ち受けていた。

第10話のレビュー

ああ、ついに終わってしまった……。
来週から土曜の夜なにをすればいいのか。

……先に今の気持ちが出てしまったが、レビューはちゃんと書く。

車を移動させた琉夏(柄本佑)が戻ってくると、家の前には血痕が。
しゃがみ込み、どうするか、逃げたほうがいいかと一人でぶつぶつ言う琉夏だったが、星砂(松岡茉優)が中にいる可能性がある以上、突入するほかないのだった。いい奴。

前回ラストでは、玄関で星砂が弓弦(菅生新樹)にハサミを振り下ろされそうになったところ、森園がかばって背中にハサミが刺さっていた。あのときは弓弦も突き飛ばされて倒れていたが、2人はどうなったのだろうか。

悠日(仲野太賀)と鈴之介(林遣都)に電話をするが出ない。2人の登録名が「総務課の友達」「刑事課の友達」になっていて笑ってしまった。そして想い人の渚(佐久間由衣)からの電話がかかってきて表示されたのは「あの人」だった。名前で登録しないタイプなのね。普通に会話して切り、彼女がお礼に持ってきてくれたというアイスを「会計課の誰かに渡しておいてください」と伝えたけども「アイス、何味かな」とつぶやくのが何だかフラグみたいで怖い。声をあげちゃって自分の口を押さえるの、ちょっとかわいい。

”あの部屋”があやしいと気づいてしまった琉夏、様子をうかがっていると中から伸びてきた手に引きずり込まれてしまった。ああ……。

折り返しても出ない琉夏に不穏なものを感じた悠日と鈴之介は、走って家に向かう。家に帰ると弓弦がおにぎりを頬張りながら、女の人(星砂)がけがをしたので男の人(琉夏)が連れて行ったと説明する。途中で森園を見なかったかと聞かれると、その人が星砂と言い争っていたと説明を加える。この子、息をするように嘘をつくな……。怖い。

おかしいことに気づいた2人は本当のことを言うように説得するが、弓弦はハサミで鈴之介にけがを負わせる。弓弦は「またやっちゃった」と父親である雪松(伊藤英明)に助けを求めていた。鈴之介たちと対峙しているとき以外、ひっきりなしにメッセージを送っている。単なるサイコパスではなく、動揺しているのだろうか。

弓弦が閉じこもった状態で、雪松がやってきた。息子の犯罪を隠蔽してきたことを指摘されると、雪松は今までのことを告白する。はじめにキャンプで死んだ友人は、弓弦たちほかの4人が遊びのつもりでからかっていたら溺れて死んでしまったらしい(からかうにも限度があると思うが……)。

泣いて助けを求められた雪松は、死んだ子の靴を脱がせて川に流し、その子の遺体も川に流し、靴を取ろうとして溺れたと言いなさいと指示した。それも、必ず4人でやりなさい、と。前回「3人の少年たちを殺したのは私です」と告白したことから、キャンプで死んだ子のことは知らなかったのかと思ったが、がっつり知っていたしこのときから隠蔽ははじまっていたのか。

「大事な息子が泣いて助けを求めているのに、何もしないでいられる親がいるか」というようなことを言ったのだが、そのためなら誰かにとって大事な息子たちを殺して、罪のない人たちに濡れ衣を着せて、朝陽を殺してよかったというのか。身勝手すぎる。

そして、かばってそう言った可能性もあるが、弓弦はそのことをきっかけに人格が歪んでしまったらしい。”悪魔”をかばってきただけでなく、生み出したのも雪松だったということか。その後も自分たちのしたことに耐えられなくなった同級生たちを殺してしまった。「またやっちゃった」「靴は脱がせた」「どうしよう」と、そのたびに雪松に泣きついてきたのだ。どこか小学生のままになってしまったのかもしれない。

雪松は、なおも自分と取引きしないか、自分が罪をかぶって死刑になるから、黙っていてくれたらいいポストを用意するというのだ。鈴之介も指摘したように、雪松が罪をかぶって死んだとて、弓弦はまた新たな殺人を繰り返すだけだ。

鈴之介は、ある決意をする。雪松の指示で動くと声をかけるが、悠日に「摘木さんたちはもう駄目かもしれない。警察に引き渡されたらこっちは何もできない。やるなら今だ」と、コレクションのハサミの額を割る。そうか、もう3人とも殺されちゃったのかな。でも今までの人たち、みんな殺してるもんな、最悪の展開だ……。終わらせるために自分が引き受けようとする鈴之介の決意にも泣けてしまう。

様子を見にきた弓弦を引きずり出し、馬乗りになり、「悪魔(弓弦)を殺せるのは悪魔(自分)だけだ」というが、なかなか振り下ろせない。星砂たちのことを見に行った悠日は、ぐるぐる巻きにされているが彼らが生きていることに気づく。「生きてます!」その声を聴いた瞬間、ハサミを放って手錠をかけた。ハサミを拾った雪松は、泣きながら自分の喉元に当てようとする。鈴之介はやめろと首を振るが、弓弦を押さえているので動けない。でも雪松は死ねず、鈴之介はほっとするのだった。

3人は病院に運ばれ、悠日と鈴之介に囲まれて星砂は目を覚ました。
喜ぶ2人だったが、言葉を発した瞬間、スカジャンのほうの星砂だとわかる。僕ちょっとおトイレ、と咳を外す鈴之介。無事で本当によかったけど、うれしいけど、予想もしていたことだけど、切ない……。蛇女の星砂、「リサ(満島ひかり)を助けられれば私は消えたっていいんです」という言葉通りになってしまった……。

3人が無事で何よりだが、弓弦の行動には謎も残る。なんで弓弦は、今まで都合の悪い相手は殺してきたのに3人のことはすぐに殺さなかったんだろう。

スカジャンの星砂は、蛇女の星砂のことを気遣っていた。お互い今いないもう一方を気遣っていて、いい子たちなんだな2人とも。杏月(田中裕子)の言葉が沁みる。

「あんた、その子のことが好きなんだね」

「少しすれ違っただけだけどね、いい子そうだった。
ずっとあんたのこと守ってくれた子なんだよね。
だったらあんたの中にも、その子は生きてるんだね。
お別れじゃないよ。会えなくても、離れていない人はいるの」

今作は意外と出番少ないんだなと思ったのに、最後の最後にこんな名言を残す田中裕子さんよ……やはり坂元裕二作品の田中裕子、めちゃくちゃいい。

二重人格ものというと、片方がとんでもないサイコパス、みたいな設定は多かったが、こんな形もあるんだな。

そして、見ているほうも会えなくなった大事な人を思って励まされるような言葉だ。「大豆田とわ子と3人の元夫」で、突然亡くなった親友・かごめ(市川実日子)の話をしたとわ子(松たか子)に、小鳥遊(オダギリジョー)がかけた言葉も思い出して泣けてきてしまった。

「あなたが笑ってる彼女を見たことがあるなら、今も彼女は笑っているし5歳のあなたと5歳の彼女は、今も手を繋いでいて今からだっていつだって気持ちを伝えることができる」

坂元裕二さんのセリフは、たまにずっと苦しんできた思いみたいなものを救ってくれるから、好きだ。

なぜか、鈴之介の家で生活する悠日と星砂。蟹を持ってきた森園を家に入れまいと押し問答する様子がおもしろすぎて声出して笑った。彼が持ってきたグッドニュースは、リサが釈放されるというもの。事情を知らない森園は、迎えに行って差し上げてくださいと言うが……。

釈放の日、星砂はリサを迎えに行く。といっても、こっちの星砂はリサと面識がないのだ。おそるおそる声をかけると、リサは「どちらさま?」と言う。姿は同じでも、違う人だと一発で見抜いたのだ。さすがリサ、すごい!

喫茶店でナポリタンを頼む2人。目をつぶって、聞いてない振りして2人っきりで話させてくれないかな、というリサ。

「ただいま、星砂。待っててくれてありがとうね」
「これからはずっと一緒だよ」

泣いちゃう……星砂(蛇女)、よかったね。
その後の楽しそうにナポリタンを食べる2人がまぁ……。
いいシーンだなぁ。坂元裕二作品×満島ひかり×ナポリタン、ぐっときてしまうな。

悠日はクビが取り消しになり、総務課に戻れることに。
琉夏も渚との間にちょっと進展がありそう。
鈴之介はいい加減出て行ってくれと2人に言い、また独りに。
悠日に渡された、新しい住所のメモを捨て、でも後になってゴミ袋をひっくり返し、2つの林檎が出てきて「帰ってきたら林檎のむき方を教えて」と蛇女星砂に言われていたのを思い出して切なくなる……。

箱庭と、4人のコマを作った鈴之介。
切ないけど、得たものが何もかも失われたわけじゃないのかも。

ここで早めのエンドロール、まだあと10分くらいあるぞ? と思ったら、最高の続きが待っていた。

夜、ふと何かに気づき、家の外に出る鈴之介。
ドアの前に、星砂(蛇女)が立っていた。

風の気持ちいい夜、だった。
ああ……戻ってきてくれたのかな、と思ったけど、たぶん最後だから会いに来たんだという。そうか、やっぱりそんな都合のいい話はないのか。
でも最後に会いたいと思ったのが鈴之介だったんだというだけでも結構すくわれる。

2人で散歩しながら、星砂はずっと言えなかった言葉を伝える。

「鹿浜鈴之介さん、
あなたに会えて良かったです。
あなたのことを好きになりました。
あなたはとても素敵な人です。
これからも、あなたのことを想っています」

顔を両手で覆って泣く鈴之介がもう愛おしくて仕方ない。
こんなの泣いちゃう。切ないけど、よかったね……。

その後、楽しそうに話す2人がとってもよかった。
ちょっとした笑い話から、2人がどんなことを大事に思って生きているかわかる話まで。

「人にできることって、耳かき一杯くらいのことかもしれないけど、
いつか、いつかね
暴力や悲しみが消えたとき、そこにはね、僕の耳かき一杯も含まれてるかもしれないです。

大事なのは、世の中は良くなってるって信じることだって」

と言う鈴之介。

「大事なのは、ちゃんと自分のままでいることだって」

と言う星砂。

鈴之介と星砂(蛇女)も、悠日と星砂(スカジャン)も、どっちも出会うべくして出会って惹かれ合ったんだな。

別れ際、
「元気でいてくださいね」
「努力します あなたも元気で」
「努力します」
という独特なやり取りのあと、背を向けた星砂に鈴之介はお礼を言った。

「ありがとう、ありがとう、僕はもう大丈夫です」

胸がいっぱいだ。
最後に手を挙げたのはどっちの星砂だったんだろう。

鈴之介が序盤で「僕が大丈夫だったことは一度もありません」と言っていたのを思い出す。この物語はある意味、鈴之介の成長物語だったんだな。
いや、悠日の物語から始まって、グラデーションで鈴之介の物語になっていった感じだろうか。そしてそれぞれに、星砂の物語が絡んでいた。
欲を言えば、琉夏スピンオフももっと観たい。

悠日、琉夏、星砂(スカジャン)、星砂(蛇女)。誰か一人でもいなければ、今の鈴之介にはならなかった。そして、失ったものばかりではないし、もう元の孤独な鈴之介ではないのだ。

ひさびさに開かれた自宅捜査会議、なんだかうれしそうな鈴之介の顔が、そのことを物語っていた。

結局悪魔って雪松息子のことだったのか、雪松のことだったのか、星砂だったのか、初恋そのものだったのか……はたまた全部か。

ものすごく大切な作品のひとつになったことは間違いない。
あー、もう1クールやってほしい!
ありがとう、4人(5人)+(個人的には)森園。
ありがとう、初恋の悪魔。

最後に、めちゃかっこいいこの番組の最終章テーマ曲のMVを貼ってお別れしよう。

(文:シネマズ編集部)

※この記事は「初恋の悪魔」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「初恋の悪魔」作品情報}–

「初恋の悪魔」作品情報

キャスト

鹿浜鈴之介…林遣都
馬淵悠日…仲野太賀
摘木星砂…松岡茉優
小鳥琉夏…柄本佑
雪松鳴人…伊藤英明
森園真澄…安田顕
小洗杏月…田中裕子
 
服部渚…佐久間由衣
口木知基…味方良介
尾白詠子…瀬戸カトリーヌ
野上千尋…萩原みのり
出口玲雄…西山潤
馬淵朝陽…毎熊克哉

スタッフ

脚本…坂元裕二
演出…水田伸生、鈴木勇馬、塚本連平
プロデューサー…次屋尚、池田禎子(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー…三上絵里子
制作協力…ザ・ワークス
製作著作…日本テレビ