<純愛ディソナンス>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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中島裕翔(Hey! Say! JUMP)が主演を務めるドラマ「純愛ディソナンス」(フジテレビ)が2022年7月14日スタート。

新任音楽教師と生徒の“純愛”を軸とする本作。高校を舞台にした第1部と大人の人間模様を描く第2部で構成され、タブーと隣合わせにある恋が次第に周囲を巻き込み“ディソナンス”(=不協和音)となっていく様を描く。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・第11話ストーリー&レビュー

・「純愛ディソナンス」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第1話の予告をYouTubeで見る

新田正樹(中島裕翔)は、父・秀雄(神保悟志)が学校法人『立秀学園』の理事長、母・景子(舟木幸)が教師という規律正しい家庭に生まれた。優秀だった兄・幸助と常に比較され続け、強いコンプレックスを抱いていた正樹は、幸助が大学時代に事故で他界してからも、どうすれば周囲から良く思われるかを考えながら打算的に生きていた。

そんな折、勤めていたピアノ教室が倒産し、職を失ったばかりの正樹のもとへ、音大の先輩で、幸助の恋人でもあった小坂由希乃(筧美和子)から連絡が入る。私立桐谷高校で音楽教師をしていた由希乃は、もうすぐ学校を辞めるため、正樹に後任を任せたいのだという。最初はそれを断る正樹だったが、「来月からうちの学校に来い」という秀雄の命令から逃れるため、仕方なく由希乃の申し出を受ける。

赴任前夜、桐谷高校を訪れて教頭の影山勉(手塚とおる)に会った正樹は、2年3組の副担任を任せられる。その後、音楽室に立ち寄り、ピアノを弾き始める正樹。すると、ピアノの下に隠れていた2年3組の生徒・和泉冴(吉川愛)と目が合った。冴は、ともに映像研究部でもある同級生の朝比慎太郎(髙橋優斗)ら数人の仲間と学校に忍び込み、あるものを探していた。だが、影山に見つかってしまったためバラバラになって逃げ、音楽室に隠れたのだ。その騒ぎに巻き込まれた正樹は、逃げる際に冴が落としていった1枚の紙に気づき……。

あくる朝、職員室でも前夜の出来事が話題になる。2年3組の担任で社会科教師の加賀美理(眞島秀和)は、「新任早々災難でしたね」と正樹に声をかけると、由希乃のデスクを使うよう指示し、隣席の国語教師・碓井愛菜美(比嘉愛未)に、由希乃の私物の整理を頼む。実は由希乃は、「一身上の都合」とだけ書いた辞職願のメールを学校側に送り、それ以後、一切連絡が取れなくなっていたのだ。影山は、由希乃の退職理由については病気ということにする、と教師たちに指示していた。

加賀美は、2年3組の生徒たちに正樹を紹介する。すると慎太郎が、スマホに保存していた、由希乃がいなくなる少し前の動画を流した。その動画には、楽しそうに話している由希乃の姿が映っていた。こんなに元気なのにいきなり病気というのはおかしい――慎太郎たちはそう言って騒ぎ出すが……。

第1話のレビュー

中島裕翔演じる教師と、吉川愛演じる生徒による禁断の恋を描く「純愛ディソナンス」が始まった。“ディソナンス=不協和音”。純愛×ドロドロの“純ドロ”ストーリーが見どころらしいが、その概念は果たして両立し得るのか。

と、少々疑いながら観た第1話。結論からすると、両立できた。めちゃくちゃ両立できてた。

物語は、音楽教師としてとある高校に赴任してきた正樹(中島裕翔)と、夜中の学校に忍び込んだ女子生徒の冴(吉川愛)が出会うところから始まる。どちらも親から所有物のように扱われ、偏った価値観を押し付けられてきた。二人は失踪した前任の音楽教師・小坂(筧美和子)の行方をめぐり、急激に距離を縮めていく。

冴は裏表のある“おもしれー”大人の正樹に、一方の正樹は同じ境遇でも、自分とは違って他人に対する興味を失わない冴に、それぞれ惹かれていくプロセスがとても自然だった。

教師×生徒は年齢差もあって嫌悪感を抱きやすいけど、それが不思議とない。むしろ彼らを取り巻く人間たちが闇の住人すぎて、どうにか二人だけで幸せになって!という気持ちになる。

秀雄(神保悟志)も静(富田靖子)も子供のこと何だと思ってんだ?って感じだし、冴の貯金を盗んだ静の恋人は論外。静さん、また男選び失敗してますよ。

小坂の香水を使っている碓氷(比嘉愛未)とその香りに昔の女を思い出した風の加賀美(眞島秀和)も、裏サイトに小坂の悪口を書き込む教師(上谷圭吾)も、みんながみんな小坂を恨む動機がありそうで怪しすぎる。

もちろん、正樹と冴もキラキラ属性ではない。好青年の皮を被った正樹は打算的で人を見下している節があるし、冴は歪んだ大人たちに泥臭く立ち向かっている強さもあれば、ふとした瞬間に死に近づいてしまう心の闇を持つ。

一方で、どちらも根っこには純粋さがあるような気がするのだ。「純愛ディソナンス」という矛盾した二つの概念を、正樹と冴自身もはらんでいる。その不安定さがいとも簡単に深い闇へと引きずりこみそうで、不安を覚えた。

簡単には共感させてくれない、ミステリアスで儚げな中島裕翔と吉川愛の魅力に私たちも落ちていく。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第2話の予告をYouTubeで見る

正樹(中島裕翔)の大学時代の先輩で、桐谷高校を突然辞職したまま行方がわからなくなっていた元音楽教師の小坂由希乃(筧美和子)が遺体で発見された。殺人事件を視野に捜査を開始した警察は、桐谷高校を訪れて教職員から話を聞くとともに、残されたままだった由希乃の私物を押収していく。2年3組担任の加賀美(眞島秀和)は、冴(吉川愛)や慎太郎(髙橋優斗)ら生徒たちに由希乃のことを伝えた。副担任の正樹は、ショックを受けて呆然としている冴を見つめ……。

夕方、正樹が音楽室を訪れると、そこに冴もやってくる。一緒にピアノを弾くふたり。「どうして死んじゃったんだろう」。冴は、ピアノを弾く手を止めて正樹に尋ねた。すると正樹は、死亡原因は解剖して調べないと分からないと返す。冴は、兄の恋人でもあった由希乃が殺されてもどこか冷めた態度の正樹が理解できなかった。

あくる日、実家を訪れた正樹は、学校法人立秀学園の理事長を務める父・秀雄(神保悟志)に、親父の後を継ぐ気はないと告げる。それに対して、殺人事件が起きるような学校はろくなものじゃない、と言い放つ秀雄。正樹は、そんな父に、亡くなったのは兄の幸助がずっと付き合っていた女性であることを告げ、「結局、兄貴のことだって大して知らないんだな」と言い残して出て行く。

数日後、三者面談が行われる。冴は、加賀美から「指定校推薦枠に推せると言われて喜ぶが……。

第2話のレビュー

「え!?来週もう5年後!?」と思わず叫んだのは私だけじゃあるまい。

当初より、青春と恋とサスペンスを描く第1部と、その5年後の人間模様を描く第2部の2部構成であることが公式に発表されていた「純愛ディソナンス」。だが、第1部は次週で幕を閉じるようだ。

そのことに困惑せずにはいられないほど、第2話は収拾不可能な情報量の多さだった。まず、今回から光石研と佐藤隆太演じる気になるキャラクターが初登場となった。

行方不明になっていた小坂由希乃(筧美和子)が遺体で見つかり、先生や生徒にも動揺が広がる桐谷高校。だが、唯一平常運転なのが、初回から不気味なオーラをまとっていた碓井愛菜美(比嘉愛未)だ。

誰からも愛される由希乃に彼女が抱いているのは憧れなのか、劣等感なのか。いずれにせよ、愛菜美は由希乃に妙な執着心を持っている。そんな彼女は新田正樹(中島裕翔)に、由希乃の存在が誰かを傷つけていることを伝えようとしていた。なぜ正樹なのか、それは彼が由希乃に兄の元恋人という以上の感情を抱いていると見抜いたからだろう。

その帰りに由希乃が目撃したのが、路加雄介(佐藤隆太)がとある会社の社長(光石研)に土下座している光景だった。

光石研といえば、今期は「六本木クラス」に出演。すでに物語からは退場しているが、誰にも忘れられないくらい優しく正義感に溢れた主人公の父親を演じていた。また、子供たちのためにある罪を背負ったまま死んでいった「最愛」のお父さん役も記憶に新しい。もはや「光石研が演じる優しい父親=死」という公式が出来上がりつつある。

一方、時を遡れば「Nのために」ではサイコパス?と思うくらい最低の父親も演じていた光石さん。その父親は早死にする家計に生まれながらしぶとく生きた。今回演じる社長は誰かの父親というわけではなさそうだが、性格が悪そうなので死ぬことはなさそう。

横山克手がける劇伴もあいまって、ここから「Nのために」感が加速。とある出来事をきっかけに、主人公の正樹と、ヒロインである和泉冴(吉川愛)の仲が引き裂かれる。

問題のある親を持つ、という点で共通する二人の距離はグッと縮まっていた。きっと正樹は知らず知らずのうちに兄が亡くなってからも、自分のことを気にかけてくれている由希乃に恋心を抱いていたのだろう。彼女を失って初めてそのことに気づいた正樹の痛みを分かち合ってくれたのが、冴だ。

「大人と子ども」という立場が逆転し、冴の腕の中で安心した表情を見せる正樹。誰だって少なからず好意を抱いている年上男性のそんな顔を見たら、絶対沼にハマる。間違いない。

だけど、そんな光景を撮影した写真が拡散される。学校に怒鳴り込んできた冴の母・静(富田靖子)。校門に入ってくるときは鼻歌を歌ってご機嫌な様子だったのが、より恐怖を助長させる。責任を持って、娘を嫁にもらいなさいよ!とでも言いたかったのかもしれない。静は先生や生徒の前で娘の小説を読み上げ、いかに冴が正樹にたぶらかされたのかを主張する。

そんな静に正樹が声を荒げる場面に胸を打たれた。いつも耳心地の良い言葉で相手の懐に入っていた正樹が、初めて冷静さを欠いたのは彼の中で冴の存在が大切なものになっていたからだろう。しかし、正樹はその出来事で学校を追われることになる。

その頃、冴は由希乃が生徒たちに残そうとしたビデオメッセージに、彼女がある男性と言い争う場面が映し出されていることに気づく。その男性とは、前回から由希乃と付き合っていたのでは?と話題になっていた加賀美理(眞島秀和)だ。どうやら不倫だったらしい。

眞島秀和が演じているということは、ただのマトモな教師ではないと思っていたが、ビデオの存在に気づいた冴に見せる表情は狂気に満ちていた。予告では冴が監禁されているシーンも流れ、と思えば物語が5年後に突入するわで、頭が整理できません。

ただこの一件で正樹と冴は結ばれることなく別れ、5年後に再会を果たすという展開が今後描かれるのだろう。でも、なぜか愛菜美が正樹の妻の座についていると見た。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第3話の予告をYouTubeで見る

映像研究部の部室でハンディカメラに残されていた映像を見ていた冴(吉川愛)は、遺体で発見された元顧問の由希乃(筧美和子)が部員たちに残していたメッセージを見つける。だが、由希乃がカメラの前で話している最中に、男が現れる。「もう終わりにしたい」という由希乃に、「終わらせるくらいなら、僕は全部捨てる」と返す男。それは、加賀美(眞島秀和)の声だった。正樹(中島裕翔)に電話した冴は、留守番電話に由希乃と付き合っていた相手がわかった、とメッセージを残す。するとそこに、加賀美が現れた。冴から事件のことを問われた加賀美は、由希乃の殺害を否定する。冴は、カメラを渡すよう迫る加賀美から逃げようとするが……。

一方、冴からの留守電に気づいた正樹は、異変を感じ、桐谷高校へと急ぐ。その途中、慎太郎(髙橋優斗)と出会った正樹は、彼と一緒に学校へ向かった。正樹たちは冴を探すが、どこにも彼女の姿はなかった。その際、正樹は、加賀美とすれ違い、冴を見なかったかと尋ねる。しかし加賀美は、見ていないという。それからしばらくして、正樹と慎太郎は、映像研究部の部室に落ちていた冴のスマートフォンを発見し……。

第3話のレビュー

衝撃的な展開が私たちを待ち受けていた「純愛ディソナンス」第3話。青春と恋とサスペンスを描く第1部が早々に終幕となった。

それは意外にも、あっさりとした結末だ。

殺害された由希乃(筧美和子)と不倫関係にあったことが、彼女の残したビデオメッセージから明らかになった加賀美(眞島秀和)。彼は妻子ある身でありながら、愛人の由希乃に惚れ込んでいた。

一方、生徒たちとの関わりにより、自分の罪を自覚した由希乃は加賀美と別れることを決意。だが、加賀美はそれを許さず、彼女を殺したという。つまり良くある“痴情のもつれ”による事件だったわけだ。

意外性がないじゃないかと一瞬思ったが、この第1部は5年後の正樹(中島裕翔)と冴(吉川愛)の関係を描く上で必要な序章だったのだと思い知らされる。

2022年、教師を辞めた正樹は、前話で少し登場した碓井(光石研)が社長を務める「モノリスエステート」で働いていた。だが、その会社はかなり悪徳な不動産会社。正樹はすっかり雰囲気が変わり、まるでヤクザの如く人を追い詰める役回りを果たしていた。社内でもトップクラスの成績を誇り、碓井に相当気に入られている。

かたや、大学の推薦を取り消された冴は、これまた前話で登場した路加(佐藤隆太)が社長を務めるアプリ会社でアルバイトとして働き始める。そんな二人が5年ぶりに運命の再会を果たした。

もう正樹と冴は、先生と生徒という間柄ではない。恋愛だって自由にできるはずだった。でも、正樹はすでに結婚していたのだ。

しかも、相手は元同僚である愛菜美(比嘉愛未)。彼女は「美南彼方」の名でまさかの小説家として活躍を果たし、見た目も振る舞いもまるで以前とは別人の華やかさに。ただ、何を考えているかわからない不気味さは健在だ。

「君も他人事じゃないだろ」と、加賀美は正樹に言い残していた。つまり、第1部で恋愛で破滅した加賀美と由希乃を描くことにより、これから正樹と冴に訪れる運命を暗に示していたのだろう。

正樹、冴、愛菜美。そして3人の関係に、影響をもたらしそうな碓井と路加の因縁。彼らがどんなドロドロの展開を見せてくれるのか、楽しみで仕方ない。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第4話の予告をYouTubeで見る

冴(吉川愛)は、『美南彼方』の名で小説家として活躍している愛菜美(比嘉愛未)と再会を果たす。その愛菜美が、「私の夫」といって冴に紹介したのは、何と正樹(中島裕翔)だった。ショックを受けた冴は、シェアハウスに戻っても一睡もできないでいた。

あくる朝、冴と莉子(畑芽育)は、慎太郎(髙橋優斗)から、新たにシェアハウスの住人となる村上晴翔(藤原大祐)を紹介される。晴翔は、19歳のフリーターだった。

冴がアルバイトをしている『コアスパーク』では、セカンドパートナーを探すためのマッチングアプリ『セカプリ』の新規登録者獲得を目的に、イベント会社と組んでパーティーを企画していた。社長の路加(佐藤隆太)から意見を求められた冴は、相手がいるにも関わらず他の相手との出会いを求めること自体が理解できず、不倫を推奨するふしだらな場、などと発言する。すると路加は、冴の言葉を遮り、「自分の気持ちが満たされないとき、その心の隙間をパートナーだけじゃ埋められないことはよくある。その感情を否定する時代はもう終わった」と返す。

一方、正樹が勤める『モノリスエステート』は、管理しているタワーマンションの住人たちから、会計報告書に偽造が見つかったとして、賠償金3億円を求められていた。正樹は、住人側のリーダー的な存在である医師・倉持の弱みを握って黙らせ、事態を収束させようと動き始めるが……。

第4話のレビュー

冴(吉川愛)が5年ぶりに再会した正樹(中島裕翔)は妻帯者になっていた。妻は、なんと“美南彼方”の名で小説家として活躍中の愛菜美(比嘉愛未)。なぜ、二人は結婚することになったのだろうか。

「純愛ディソナンス」第4話では、冴と正樹が離れていた“空白の時間”にあった出来事が明かされた。

冴との関係がきっかけで教師の職を離れた正樹。実家からも勘当され、何もなくなった彼に手を差し伸べたのは愛菜美だった。正樹は自分が起こした事件の後処理を請け負い、父である碓井(光石研)に頼み込んで、職まで用意してくれた愛菜美に返しても返しきれないほどの恩義を感じたのか。自ら彼女にプロポーズしたようだ。

でも、愛菜美には最初からここまで想定済みだったんじゃないだろうか。出会った時から彼女は正樹のことが好きだった…?いや、きっとそれは違う。純粋にただ正樹を手に入れたいだけだったら、再会した冴に構う必要はない。

全く興味のない「コアスパーク」からの協力依頼を引き受けてまで、冴との繋がりを持とうとするのは彼女を意図的に傷つけるためだろう。では、なぜ正樹と冴にそれほど執着するかといえば、やはり二人が死んだ由希乃(筧美和子)に思い入れがあるからだろう。

以前の自分とは真逆に、朗らかでみんなから愛された由希乃にとてつもない“怨念”を抱いているとみられる愛菜美。彼女は、由希乃と同じようにどんな環境下でも失われない純粋な心を持つ冴をどこまでもズタズタにしたいのではないかと推測する。正樹を愛しているというよりは、由希乃や冴みたいな存在をどこかで必要とする彼を自分の物にしておきたいだけではないだろうか。

そんな只ならぬ愛菜美の渇望を見抜いたのは、「コアスパーク」の社長・路加(佐藤隆太)。彼はどうやら正樹・冴・愛菜美の関係を利用し、恨みを抱いている碓井に復讐を遂げようとしている。それが愛菜美にとって“吉”とでるのか、それとも正樹と冴にとって“吉”とでるのかは分からない。ただ、路加の存在がさらなる不協和音を生じさせることは間違いないだろう。

正樹を泥沼から引き上げられるのは、冴だけ。一方、冴を泥沼から引き上げられるのは、彼女を一途に思う慎太郎(高橋優斗)だけ。正樹と冴にも幸せになってほしいし、慎太郎の大きな愛も報われてほしい。視聴者の心にもそんな不協和音が響いている。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第5話の予告をYouTubeで見る

正樹(中島裕翔)がケガをして入院していることを知った冴(吉川愛)は、居ても立ってもいられなくなり病院へと駆けつける。病院の屋上にいた正樹を見つけ、ようやく落ち着きを取り戻した冴は、帰ろうとした。そんな冴を、何も言わずに抱きしめる正樹。我に帰り、冴から体を離した正樹は、「ごめん」とだけ言い残して去っていく。

『コアスパーク』社長の路加(佐藤隆太)は、SNSで正樹に関する情報をチェックしていた。そこで路加は、5年前、正樹が教師を辞めたのは冴との写真が出回ったせいだと知る。

別の日、路加は、コラボ小説の打ち合わせで愛菜美(比嘉愛未)と会う。愛菜美は、主人公が結婚生活を守るためにセカンドパートナーを決める、という路加のアイデアを元にして、次回までに草案を出すと約束する。その際、次回の打ち合わせ日として路加が提案したのは、正樹と愛菜美の結婚記念日だった。路加は、結婚記念日は予定を空けているという愛菜美に、「記念日なんかにこだわっているカップルは大抵浮気する」と言い出し、同席した冴から非難される。

そんな折、冴は、愛菜美から誘われて一緒に食事に行く。自分が紹介した編集者が、冴が書いた小説を「退屈だ」と酷評したことを知った愛菜美は、まだチャンスがあるのだから諦めないよう助言する。

第5話のレビュー

共感できるのは誰?許せないのは誰?

「純愛ディソナンス」は、そう私たちに問いかけてくる。

今や既婚者となった正樹(中島裕翔)への思いを止められない冴(吉川愛)と、彼女を心のどこかで唯一の希望とする正樹。理性と感情の狭間で揺れ動く二人を、さらに泥沼へと導こうとするのは路加(佐藤隆太)だった。

5年前、冴と正樹の間で起こった出来事を知る路加。彼は碓井(光石研)への復讐を遂げるため、冴・正樹・愛菜美(比嘉愛未)の三角関係を利用し始める。そこにどんな企みがあるのかは謎だが、冴と正樹を再び結びつけたいようだ。

路加はいきなり冴と正樹を遠方の地で二人きりにして、彼らが間違いを起こすかどうかの賭けを愛菜美に持ちかける。愛菜美はもちろん、何も起こらない方に賭けるのだった。

結果として、彼女は賭けに勝つ。冴と正樹が一線を越えることはなかった。でも、一緒にケーキを食べた思い出を「忘れられないよ(正樹)」「忘れないで(冴)」と語り合う場面が印象的だった。これはもう、互いへの消せぬ思いを伝え合ったようなものではないか。

だから、正樹は罪悪感を打ち消すように愛菜美を抱いたのだろう。冴の前で見せる子どもっぽさを残した顔と、愛菜美の前で見せる憂いを帯びた大人の顔。そのアンバランスさが強烈な色香を放っている。

自分が愛菜美の立場だったら、他の女に取られないか常にハラハラするだろう。愛菜美の異常ともいえる牽制も分からなくはない。視点を変えれば、一気に共感できる人物が変わってしまうのがこのドラマの面白いところだ。

冴と正樹の“純愛”も、あと一歩関係を踏み込めば、冴を含む多くの人が嫌悪感を覚える“不倫愛”に変わる。一方で、純粋に思い合っていた二人の関係を引き裂いたのは愛菜美だ。彼女は5年前に、二人の写真をばら撒いた張本人。

汚い手を使ったのだから、正樹を冴に奪われても仕方ないと思うだろうか。それとも先生と生徒という関係性を超えてしまった正樹と冴に問題があったのだから、愛菜美の行動は正しいと思うだろうか。視聴者の数だけ、答えは無数に存在する。

冴の母・静(富田靖子)の登場で、さらなる波乱の予感を漂わせる「純愛ディソナンス」。もはや慎太郎(高橋優斗)のいる場所だけが安全圏に思えてきた。彼にだけはこれ以上、泥沼に足を踏み入れてほしくないと願ってしまう。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第6話の予告をYouTubeで見る

5年前、正樹(中島裕翔)と冴(吉川愛)の盗撮写真をネットに拡散したことを認めた愛菜美(比嘉愛未)。愛菜美がこれまで優しくしてくれたのは自分をコントロールするためだったと知り、怒りを露にした冴は、愛菜美の本性を正樹に知らせようとするが、愛菜美の妨害に遭い、タイミングを逸する。

一方、正樹は、路加(佐藤隆太)とのコラボ企画『セカプリゾート』の記者発表の準備を進めていた。路加は、ユーザーが記者発表と同時にサービスを利用できるよう、リゾート施設のリノベーションの完成を早めてほしいと正樹に依頼する。正樹は、プロジェクトを成功させるためにも路加のオーダーに応えようと動き出す。

冴が会社にやってくると、何故か母親の静(富田靖子)が来ており、社員たちに菓子を配って回っていた。冴は、静を外へ引っ張り出し、追い出そうとした。だが静は、そんな冴の気持ちなどお構いなしで、まだ正樹に会っている冴のことが心配だったなどと言い出す。

正樹と会う約束を取り付けた冴は、公園で彼に会い、ついに愛菜美のことを話す。 しかし、正樹から返ってきたのは意外な言葉で……。

第6話のレビュー

5年前、正樹(中島裕翔)と冴(吉川愛)の密会写真を拡散したのは愛菜美(比嘉愛未)だった。

冴は正樹に真実を伝えようとするが、今回に関しては愛菜美の方が一枚上手。愛菜美は冴に先んじて、正樹に本当のことを打ち明け、泣いて非礼を詫びたのだ。冴に再び近づいたのも、その罪悪感から力になってあげたかったのだと。

彼女の巧みな演技に騙された(?)正樹は、冴を突き放す。もう自分や、自分の周りの思惑に冴を巻き込みたくなかったのかもしれない。

理由はどうあれ、正樹は妻を選んだ。その傷をバネに、冴は自分の小説を書き始める。一方、愛する人に選ばれたはずの愛菜美はスランプに陥った。正樹に優しくされればされるほど、全てが嘘に見えて疑心暗鬼にかられる愛菜美。

そんな彼女に、路加(佐藤隆太)は「俺たちみたいな人間は誰かの特別にはなれない」と共感を示す。その言葉は5年前、賢治(光石研)に土下座する路加に愛菜美がかけた言葉と同じだった。

愛菜美は、正樹が冴への気持ちを完全に断ち切った上で、心から自分を選んでくれないと不安なのだろう。彼女にとって、冴は由希乃(筧美和子)と同じ。生まれながらに誰からも愛される正ヒロイン。愛菜美がやっていることは悪役の振る舞いだが、そうしなければ自分は選ばれないという自信のなさが悲しくもある。

結果、愛菜美は路加と手を組み、正樹を貶める。どん底に落ちた彼に手を差し伸べれば、また自分のことを選んでくれると考えてのことだ。しかし、第6話で一番上手だったのは路加。彼は正樹に愛菜美が自分に協力していることを案に示す。

どんなに成功を手に入れても、全く心満たせない路加と愛菜美。しかし、二人は「誰かの特別にはなれない」という劣等感が自分たちを成功に導いてきたことに気づいているのだろうか。

愛菜美が小説家になれたのも、路加が会社の経営者として成功を収めたのも、そこに関しては汚い手を使ったわけじゃない。自分を選ばなかったやつは許さない。絶対に見返してやる。その思いが二人を突き動かしたのだ。

結果、世間に必要とされる存在になったというのに。二人が復讐心にとらわれてしまったのは、悲しいことだ。それに振り回される正樹と冴が一番不憫なのだけど。

愛菜美に裏切られたショックで正樹は自然と冴に縋ってしまうが、冴は既に正樹への思いを断ち切り、慎太郎(高橋優斗)の手を取る。ずっと腐らず純粋に冴を思い続けてきた慎太郎に報われてほしい。

愛菜美が自分の愚かさに気づき、正樹を心から大切にしてくれれば安心なのに。多分、そうはならないのだろう。一番心配なのはようやく冴の気持ちが慎太郎の方を向いたと思いきや、やっぱり正樹がほっとけずに慎太郎を振る展開だ。どうか慎太郎にだけは闇落ちしませんようにと願わずにはいられない。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第7話の予告をYouTubeで見る

コラボ企画の準備を急速に進めてきた正樹(中島裕翔)と路加(佐藤隆太)だったが、路加は記者会見当日に突然、別の不動産会社と組むことを発表し、正樹とモノリスエステート社を陥れた。モノリスエステートの社長であり、正樹の義父である碓井賢治(光石研)は路加の裏切りに激怒し、正樹に路加を潰すよう命じる。

さらに、正樹は、路加の企みを事前に知りながらも、自分にそれを伝えなかった妻・愛菜美(比嘉愛未)への不信感を募らせる。

コアスパーク社を訪れた正樹は、路加と対峙する。路加は、モノリスエステート社の下請け会社に勤めていた頃、賢治から受けた仕打ちを忘れておらず、復讐の機会を狙っていたことを認める。愛菜美に近づいたのも、そのためだという。そこで、「俺につかないか」と正樹に持ちかける路加。モノリスエステートのあくどいやり口の数々を調べていた路加は、裏付けとなる証拠が欲しい、と正樹に告げる。

一方、慎太郎(髙橋優斗)は、冴(吉川愛)がゴミ箱に捨てた小説を見つけ、冴に内緒で、新人小説コンクールに出す。

そんな折、コアスパーク社でアルバイトをしている冴が正樹の昔の教え子であることを知った北都(和田正人)は、冴を使って路加の会社の内情を調べさせようと賢治に提案する。それを阻止しようと画策する正樹だが……。

第7話のレビュー

一気にたくさんの人の思いを受け止めると、こんなにもしんどいことを知った「純愛ディソナンス」第7話。脱力し切った状態でこのレビューを執筆しています。以下、筆致に覇気がないことをお許しください。

冴(吉川愛)がようやく慎太郎(高橋優斗)の手を取った。今度は自分を好きになれる相手と幸せを掴もうとする冴。その選択は絶対に間違っていない。慎太郎は冴がゴミ箱に捨てた小説を内緒でコンクールに出した。そのおかげで冴は少なからず、第一審査に通るくらいの実力が自分にあることを知れたのだ。

もういいんじゃないか。二人でこのまま幸せになってくれ……と思いたいのに、正樹(中島裕翔)が私たちを安心させてくれない。妻である愛菜美(比嘉愛未)に裏切られ、会社での立場も崖っぷち。こんなの正樹を救えるのは冴しかいないじゃないか。

それでも上手く立ち回ろうとする正樹だが、ついに自分をちっとも信じてくれない愛菜美への不満を爆発させる。そのもどかしさも分かる。だけど、夫が自分とは違う誰かと心と心で繋がっていることを、実感せざるを得ない愛菜美の辛さが今回ばかりは際立っていた。

幼い頃から父・賢治(光石研)にはたくさんの愛人がいて、その鬱憤を母親からぶつけられてきたという愛菜美。相手を試したり、何かを奪って自分に助けを求めさせたり。そういう方法でしか、自分は愛されないと思っている愛菜美を誰か救ってほしいとすら思う。

そんな愛菜美に離婚届を突きつけた正樹は薄情に思えるかもしれないが、自分と一緒にいても彼女が救われることはないと分かっているからだろう。行動は嘘をつけても、心は嘘がつけないから。事実、正樹は愛菜美がゴミ箱に捨てた冴の小説を見て見ぬ振りができなかった。

それは冴も同じ。慎太郎のことを好きになろうとしても、そのキスを身体が拒否してしまう。なのに、正樹からのキスは自然と受け入れてしまう冴。本作はその対比を容赦無く私たちに突きつけてくる。

こんなにも苦しいのは、やっぱり高橋優斗が史上最強に切ない演技を見せてくれているからだろう。いつも冴に寄り添って、自分の気持ちを押し殺す時の泣きそうな笑顔がたまらなく悲しい。莉子(畑芽育)が思わず抱きしめてしまう気持ちが分かる。間違いなく、このドラマで一番愛のある登場人物だと思う。

「誰も傷つかない恋愛ってあるのかな」という晴翔(藤原大祐)の問いに答えるならば、答えはNOだ。でも正樹が言うように「嘘は真実を際立たせてしまう」から、最初から自分の気持ちに素直になれば、誰かに与える傷の具合は最小限に抑えられるのかもしれない。

正樹と冴の純愛は純愛のまま、終われなかった。事情はあれど、たくさんの人を傷つけてしまった。それでも、もう自分たちの気持ちに嘘がつけないならその手を離さないでほしい。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第8話の予告をYouTubeで見る

愛菜美(比嘉愛未)との離婚を決意した正樹(中島裕翔)は、いまの自分にケリをつけて必ず迎えに行くから待っていてほしい、と冴(吉川愛)に告げる。「逃げるのはもうやめだ」という正樹の言葉を信じる冴。そこに、路加(佐藤隆太)から電話が入った。愛菜美が繁華街でひったくりに遭い、転倒した際に頭を打って病院に運ばれたという知らせだった。

正樹が病院へ向かうと、治療を受ける愛菜美の傍らには路加と警察官の姿があった。警察官によれば、愛菜美から連絡を受けて駆けつけた路加のおかげで、大事には至らなかったらしい。治療を終えた愛菜美がマネージャーに連絡するために席を外した際、正樹は、碓井家に復讐したいのなら勝手にすればいいが愛菜美を利用するな、と路加に忠告する。すると路加は、愛菜美を一番利用し、追い込んだのは正樹だ、と言い放つ。

シェアハウスに戻った冴は、慎太郎(髙橋優斗)に正樹のことが好きだと打ち明ける。「わかった」とだけ言い残してリビングから出て行く慎太郎。そこに現れた静(富田靖子)は、相手に依存してラクしているだけだと冴を非難する。「いまのあんたは、私からお父さんを奪った女と同じ」。静は冴にそう告げた。

正樹は、愛菜美を連れてマンションへ戻る。あくる朝、正樹が目を覚ますと、愛菜美が朝食の準備していた。そこで愛菜美は、もし正樹が必要としているのなら、冴をセカンドパートナーとして認めてもいい、と言い出し……。

第8話のレビュー

もう嘘はつかない。自分の気持ちに素直になることを決めた冴(吉川愛)と正樹(中島裕翔)。しかし、二人の純愛が耳を塞ぎたくなる不協和音を響かせていく。

「少し待っててくれないか。今の自分にケリをつけて必ず迎えに行くから」

正樹は冴にそう約束する。相手が自分の気持ちにケリをつけるまで待つ……その立場に置かれていたのは前話まで、冴ではなく慎太郎(髙橋優斗)だった。

何年も冴を思い続けて、ようやく報われた矢先に違う人が好きだと告げられる。慎太郎の気持ちを思うだけで胸が張り裂けそうに痛い。

かたや、頭を強く打って病院に運ばれた愛菜美(比嘉愛未)の元に駆けつけた正樹は、路加(佐藤隆太)から「散々愛菜美を利用した挙句に突き放す」と非難される。

しかし、覚悟を決めた正樹はもう揺らがない。救ってもらったことに感謝しつつも、愛菜美に別れを告げる。意外だったのは、愛菜美が自分からも、父・賢治(光石研)の会社からも正樹を解放したことだ。

でも、これで冴と正樹は傷つけられる側から傷つける側に回ってしまったことになる。本作が凄いのは、これまで不憫に思えていた二人が今話で一気に身勝手な人間に見えてしまうことだ。見方を変えれば、立場が変われば、向けられる眼差しは180度違ってくる。

冴と正樹が幸せを享受すればするほど、周りが不幸になっていくのが恐ろしい。愛菜美は愛する正樹を失い、自分にたった一つ残った小説さえも書けなくなって、精神を病んでいく。

温かい愛で冴を包んできた慎太郎さえも、正樹との仲を引き裂くために陳腐な行動に出てしまう。そんな慎太郎をそばで見てきた莉子(畑芽育)は冴への不信感を募らせていき、彼らが暮らすシェアハウスは崩壊の一途を辿っていくのだった。

たしかに冴の行動は、慎太郎への配慮が欠けていた。だが、もう崖っぷちギリギリのところにいた慎太郎をそこまで突き落としたのは、また違う人物のような気がする。

というのも、ここにきて急に晴翔(藤原大裕)が不穏な動きを見せているからだ。晴翔の言葉は完全に慎太郎を煽っているように思えたし、何やら彼の家庭環境にも秘密がありそう。

達観した恋愛観、父親と縁を切っているという事実……やはり由希乃(筧美和子)を殺害した加賀美(眞島秀和)の息子なのではないだろうか。

加賀美が由希乃と不倫していたことを突き止めたのは冴で、加賀美を追い詰めたのは正樹。その事実を晴翔が知っていたのだとすれば、二人に恨みを持っていてもおかしくはない。周りを焚きつける発言も納得がいく。「君も他人事じゃないだろ」という加賀美の台詞は、壮大な伏線だったのかもしれない。

愛は、純粋すぎると毒になるーー。そのキャッチコピー通り、本作は冴と正樹の純愛を純愛のまま終わらせてくれない。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」9話の予告をYouTubeで見る

正樹(中島裕翔)が講師として働く予定だったピアノ教室の壁に、何者かが正樹を中傷する落書きをした。冴(吉川愛)は、慎太郎(髙橋優斗)の靴に赤いスプレーが付着していることに気づき、彼を問い詰めた。そんな冴を、慎太郎を壊したのは冴だと非難する莉子(畑芽育)。慎太郎は、自分がやったことのけりは自分でつける、と冴たちに言い、住んでいるシェアハウスに、立ち退きの話が出ていることを明かす。

正樹は、ピアノ教室の経営者・野水百合子(阿部朋子)に謝罪し、すべて弁償すると申し出る。正樹は、心配してやってきた冴に、すぐに新しい仕事を探すから大丈夫だと言って安心させようとするが……。

一方、『モノリスエステート』社長の賢治(光石研)は、北都(和田正人)から、行方不明になっている娘の愛菜美(比嘉愛未)がいまだに見つかっていないとの報告を受ける。「俺は、死ぬときに家族全員に囲まれて死にたいんだよ。お前と愛菜美、あと正樹」。賢治はそう北都に告げ、手を打つよう指示する。

正樹は、不動産関係の仕事を探すも、すでに賢治たちの手が回っており、断られてしまう。落書きの件も賢治たちの仕業だと疑った正樹は、モノリスエステートへ抗議に行くが、そこで北都から、冴たちが住んでいるシェアハウスが立つ土地の権利書を手に入れたと告げられ……。

第9話のレビュー

自分の気持ちに正直になって、ともに生きることを決めた冴(吉川愛)と正樹(中島裕翔)。しかし、そんな二人の純愛が周囲の人間を壊していく。

正樹が講師として働く予定だったピアノ教室の壁に落書きをしたのは、慎太郎(髙橋優斗)だった。一方、正樹に別れを告げられた愛菜美(比嘉愛未)は行方不明に。

嘘を生きても、真実を生きても、誰かを苦しめる。そんな状況下で冴と正樹はどんな選択を取るのかが、注目された「純愛ディソナンス」第9話。

冴は因縁のある母・静(富田靖子)に頭を下げてお金を借り、正樹の代わりにピアノ教室の経営者・野水百合子(阿部朋子)へ弁償する。対して、正樹も社長・賢治(光石研)の魔の手が忍び寄る、冴のシェアハウスを守るために「モノリスエステート」に復職。

すべてはお互いのために。しかし、そのことで二人はすれ違う。犠牲になるのは自分だけでいいと思っている正樹と、自分も力になりたいと願う冴。

「そうやってすぐ閉ざす。ちゃんと言ってよ、思ってること」

世の中をうまく渡り歩くために、表の顔と裏の顔を巧みに使い分ける正樹の癖がここで課題となってくるとは。つくづく丁寧に作られた脚本だ。

そんな中、慎太郎が自分のやったことにケリをつけるとシェアハウスから姿を消す。冴は慎太郎を連れ戻すべく、彼が向かった故郷へ。

一方、正樹は路加(佐藤隆太)が連れ戻した愛菜美ともう一度ちゃんと話し合うことに。このまま、冴と正樹はそれぞれの元いた場所に戻り、別れてしまうのか……と思われたが、意外にも第9話は希望のある結末へと向かった。

愛して、愛して、誰かを傷つけてしまうくらいに愛し尽くして。慎太郎と愛菜美は、ようやくその結果を受け止められるようになった。「俺ももう、卒業しないとな」と、冴からの卒業を決意する慎太郎。愛菜美もまた、正樹への執着を手放す。

「自分さえ我慢すれば丸く収まるって思うのやめたほうがいいよ。それ、全然優しくないから。相手のためにってやってることが、逆に相手を追い詰めることもあるんだからね」

こんな展開、誰が予想しただろう。冴と正樹の仲を引き裂いた愛菜美の言葉が、二人の心をつなぐ。

“一緒に”幸せになるとする二人に自己犠牲は必要ない。正樹は誰かに許されなくとも、愛さずにはいられない気持ちを冴に打ち明ける。「頼むからそばにいてくれ」。こんなにも必死で誰かにすがる正樹は見たことがない。

心と心がようやく強く結ばれた冴と正樹。そんな二人の前に最後の敵が立ちはだかる。どうやら彼らを引き裂こうとする賢治に協力する黒幕がいそうだ。

正樹のもとに届いた手紙の主は、現在刑務所にいる加賀美(眞島秀和)。そこから考えられる黒幕はやはり、加賀美の息子説が浮上している晴翔(藤原大祐)なのだろうか。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第10話ストーリー&レビュー}–

第10話ストーリー&レビュー

第10話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第10話の予告をYouTubeで見る

正樹(中島裕翔)のもとに、服役中の元同僚・加賀美(眞島秀和)から手紙が届いた。手紙には「すぐそばに禍が迫っている。過去からは、逃れられない」と書かれていた。加賀美と接見した正樹は、手紙の言葉の意味を尋ねた。加賀美はそれには答えず、愛菜美(比嘉愛未)との結婚や、現在、正樹が冴(吉川愛)と交際していることに触れ、「あの時、俺が言った通りになったな」と告げる。

  
一方、路加(佐藤隆太)は、『セカプリ』の顧客情報流出の責任をとり、代表の座を退くと発表する。冴は、行方がわからない木之本(清水伸)が関係しているのではないかと路加に告げる。だが路加は、「カリスマ社長をやるのも飽きてきた」などと言って出て行ってしまう。

  
『モノリスエステート』社長の賢治(光石研)は、路加の謝罪動画を見て喜んでいた。「これでもう私がこの会社にいる必要はないのでは?」と賢治に問う正樹。すると賢治は、「これが最後だ」といって正樹に書類を渡す。それは、正樹の父・秀雄(神保悟志)が理事長を務めていた学校法人『立秀学園』の土地の売買契約書だった。

  
アルバイトから戻った冴は、自室に静(富田靖子)がいることを知って驚く。だが、冴が部屋を出て行こうとすると、背後で突然、静が倒れた。冴は、静が搬送された病院で、彼女が3年前に胃がんの手術をしており、昨年再発したと聞かされる。

そんな中、賢治からの指示を受けた正樹は、5年ぶりに実家を訪れるが……。

第10話のレビュー

服役中の加賀美(眞島秀和)から、正樹(中島裕翔)のもとに一通の手紙が届いた。

「すぐそばに禍が迫っている。過去からは、逃れられない」

ついに最終章に突入したドラマ「純愛ディソナンス」。第10話にテーマをつけるとすれば、「過去の清算」だ。ようやく心から結ばれ、未来に向けて歩みを進めようとする冴(吉川愛)と正樹の足を過去が引きずり戻そうとする。

同時期に切っても切り離せないものと向き合うことになった二人。切り離せないものとは、“家族”だ。

賢治(光石研)の支配から逃れるため、正樹は最後の仕事へと向かう。それは自身の父・秀雄(神保悟志)が理事長を務めていた学校法人『立秀学園』の土地の権利書を受け取るだけの仕事。

幼い頃から優秀な兄と比べられ、苦しい思いをしてきたのだから本来なら気を使う必要はない。しかし、そこで正樹は秀雄が認知症になっていることを知る。昔のように“父親”らしい顔で「あいつは頑固だからなあ」と自分のことを思い出す秀雄の姿に複雑な思いを抱く正樹。

一方、冴も静(富田靖子)が3年前に胃がんの手術をしており、昨年再発したことを知る。しかも、静が冴に渡したお金は治療費に当てる予定だったのだ。最後くらい冴と楽しく過ごしたい。冴に看取られたい。そんな静の思いに心動かされる冴。

「どんな親でも、親は親」という言葉もあるが、そんな理不尽なことはない。大事にしてくれない親を、どうして子どもが大事にできようか。それなのに、散々傷つけられてきたはずの冴と正樹が親を捨てた自分自身を責めてしまうのが切ない。

そんな二人に追い打ちをかけるのが、賢治だ。愛菜美(比嘉愛未)以上に、正樹に執着する賢治は冴に500万円の手切れ金を渡す。「家族の絆には勝てない」。賢治の言葉が冴の無意識化に根をはる。

冴は結局、その手切れ金を受け取ってしまった。既婚者である正樹のことを諦められず、愛菜美を傷つけてしまったという罪悪感もあったのだろう。正樹と別れ、冴は再び静のもとに戻っていく。

それにして静を演じる富田靖子の演技がすごい。なぜか同情して、一瞬ほだされそうになってしまうのだから。でも、結局は自分のことしか考えていない。この物語に出てくるのはみんな子供を所有物としか思っていない親ばかりだ。愛菜美と北都(和田正人)の親である賢治も。

だが、そんな毒親たちを暴走させた黒幕がいた。もうすでに多くの人に予想されていたが、やはり晴翔(藤原大祐)だ。慎太郎(高橋優斗)と正樹がまるで探偵のように真実を暴く。

晴翔は加賀美の息子。加賀美が捕まった後、母親が自殺したことを理由に5年前の事件を暴いた正樹に復讐しようとしていたのだ。だがしかし。そのあとに納得がいかない新事実が明らかになる。

なんと、小坂(筧美和子)を殺したのは晴翔だというじゃないか。加賀美が愛人である小坂にフラれた恨みで彼女を殺したわけじゃない。晴翔が母親から父親の心を奪った小坂を殺し、加賀美が彼をかばって捕まった。

それで正樹を恨むのはお門違いじゃん!!!と一瞬叫びそうになってしまったが、晴翔は不倫の被害者。今の正樹と冴が、不倫で母親と自分を深く傷つけた加賀美と小坂と重なり、恨みも倍増なのだ。

不倫による最悪の結果を描いた作品は多くあるが、冴と正樹を通して不倫=悪という図式に違和感を持つ展開だったのに。ここにきて、やっぱり不倫=悪!に視聴者の心を引き戻す脚本の凄さ。

果たしてどこに着地するのか。息つく間もなく、次週はついに最終回だ。

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–{第11話ストーリー&レビュー}–

第11話ストーリー&レビュー

第11話のストーリー

>>>「純愛ディソナンス」第11話の予告をYouTubeで見る

正樹(中島裕翔)は、過去の家族写真から、晴翔(藤原大祐)が加賀美(眞島秀和)の息子であると知る。これまで、正樹と(吉川愛)の仲を引き裂こうと暗躍していた正体不明の人物『Hermit』も晴翔だったのだ。

晴翔から「いま冴と一緒にいる」と呼び出された正樹は、かつて教師をしていた桐谷高校へと走る。

 冴は、晴翔とともに高校の屋上にいた。そこで晴翔は、小坂由希乃(筧美和子)を殺したのは自分だと冴に告げる。晴翔は、自分の家庭を壊し、母親を死に追いやった小坂と、小坂のことで加賀美を追及した正樹を憎んでいた。「俺は決めたんだ。新田をじわじわと追い詰めてやるって。ここから一緒に飛び降りたらあいつなんて言うかな」。晴翔は笑いながらそう言って冴に近づいていく。

桐谷高校に駆けつけた正樹は屋上で揉み合う冴と晴翔を見て、必死に階段を駆け上がる。だが、思わぬ人物が正樹の行く手を阻もうとし……。

一方、隙をついて晴翔から逃れた冴は、正樹のもとへ急ごうとするが……。

第11話のレビュー

今期一、SNSを盛り上げた作品と言っても過言ではない「純愛ディソナンス」がついに最終回を迎えた。

「どうして、こうなったんだろう。どこから、間違えていたんだろう」

1人の生徒と1人の教師が恋に落ちた。そんなありきたりな展開で幕を開けた本作。だが、その純愛が思いも寄らぬ不協和音を奏でてきた。当の本人である、冴(吉川愛)と正樹(中島裕翔)も予想できないほどの。

始まりは5年前に遡る。全く別の世界で生きていた2人を引き合わせた音楽教師の小坂(筧美和子)が何者かに殺された。冴と正樹は小坂が加賀美(眞島秀和)と不倫関係にあったことを突き止め、痴情のもつれによる殺人として事件は解決したはずだった。

しかし、小坂を殺したのは、なんと加賀美の息子である晴翔(藤原大祐)。晴翔は家庭を壊した小坂を許せなかった。加賀美を追及した正樹のことも。

その5年後。愛菜美(比嘉愛未)という妻がいながら、再び冴に惹かれていく正樹に晴翔は恨みを募らせる。結局、自分も加賀美と同じ穴のムジナではないかと。だが、本を正せば、正樹と冴を引き離したのは愛菜美だ。

そう。「誰かを傷つけるといずれ自分に跳ね返ってくる」という正樹の言葉通り、この物語は傷つけ、傷つけられての連続だった。

北都(和田正人)と揉み合った末に階段から転げ落ち、一時意識不明となった冴。仕方なかったとはいえ、すべては正樹が賢治(光石研)の支配に屈してしまったことに始まる。

どん底の生活から抜け出すために愛菜美の手を取り、彼女の父親である賢治に言われるがまま、会社のために手を汚した正樹。それが結果的に多くの人を傷つけることになってしまった。そんな負の連鎖を断ち切るために、正樹はモノリスエステートの不正を記者会見でリークしようとする。

いつも本音を取り繕い、うまく世間を渡り歩いていた正樹が危険をおかしてでも正義を貫こうとするなんて。何にも期待せずに生きていた頃の光のない瞳に生気が宿っていく。その姿は路加(佐藤隆太)をはじめ、周囲の人間を動かした。

誰かを傷つければ自分に跳ね返ってくるように、誰かに愛を与えればそれも自分に跳ね返ってくる。冴が静(富田靖子)から逃げ続けるのではなく、真正面から向き合ったことでようやく彼女の束縛から解き放たれたように。そんな冴に、今度は正樹から手を伸ばす。こんなにも、幸せな結末が待っているとは思ってもみなかった。

「不協和音程を別の音に忍ばせれば、いい感じのハーモニーになる」

これは第2話で正樹が冴に語った言葉だ。その言葉が物語るように、生徒と教師という当初は相容れなかった正樹と冴の純愛が、ドロドロの人間関係の中で際立った。そして、2人がその純愛を貫いた先で不協和音は協和音に変わる。

本当に本当に気持ちの良いラストだった。特別な存在になることに囚われていた愛菜美と路加は愛を与え合える関係になり、慎太郎(高橋優斗)と莉子(畑芽育)にもいつか結ばれる未来が見えた。

賢治にも、加賀美にも、晴翔にも、この物語は救いの手を差し伸べる。悪役的な存在に制裁が加えられるラストはスッキリこそすれど、後味が悪い。そうじゃなくて、本作は愛情で包み込むことによって人の心は変えられることを示した。

全員に少しずつ共感できて、全員に少しずつイライラさせられて。でも、最後は全員に幸せになってほしいと思える。改めて脚本の丁寧な心理描写と、それを画面に映し出す役者の演技力が素晴らしい作品だった。

※この記事は「純愛ディソナンス」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「純愛ディソナンス」作品情報}–

「純愛ディソナンス」作品情報

放送日時
2022年7月14日(木)スタート。(初回15分拡大) 毎週木曜22:00~

出演
中島裕翔(Hey! Say! JUMP)/吉川愛/比嘉愛未/髙橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)/筧美和子/和田正人/畑芽育/藤原大祐/神保悟志/手塚とおる/眞島秀和/富田靖子/光石研/佐藤隆太他

脚本
玉田真也(『JOKER FACE』『アノニマス~警視庁指殺人対策室』)
大林利江子(『ギルティ~この恋は罪ですか?~』『江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。~』)
倉光泰子(『アライブ がん専門医のカルテ』『うきわ』)
武井 彩(『捜査会議はリビングで!』『星になりたかった君と』)

音楽
横山克

主題歌
Hey! Say! JUMP『Fate or Destiny』(ジェイ・ストーム)

編成企画
髙野舞

プロデュース
森安 彩・関本純一(共同テレビ)

演出
木村真人・土方政人・菊川 誠(共同テレビ)

制作
フジテレビ

制作・著作
共同テレビ