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町田啓太主演フジテレビ系ドラマ「テッパチ!」が2022年7月6日より放送スタート。
陸上自衛隊を舞台にした本作は、町田啓太演じる主人公・国生宙を含めた自衛隊候補生たちの熱き青春と成長を描いた物語。佐野勇斗や佐藤寛太など次世代を背負う若手役者が多数出演することでも話題を呼んでいる。
cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
国生宙(町田啓太)は、高校時代はラグビー部のエースとして活躍したが、独りよがりで強引なプレーがもとでケガをしてしまう。チームメートから非難された宙は、孤立したまま引退。卒業後は、ひとり暮らしを始めるも、定職に就かずその日暮らしの生活を送っていた。
ある日、街中でのケンカが原因で警察沙汰になった宙は、工事現場の仕事をクビになった挙句、住んでいたアパートも家賃滞納で立ち退きを言い渡される。そんな宙に「お前にピッタリな仕事を紹介してやる!寮完備で三食飯つき!体力自慢のお前にはもってこい!」と声をかけてきたのが、陸上自衛隊の3等陸佐で、東部方面北東京駐屯地で教育中隊長をしている八女純一(北村一輝)だった。
最初は拒絶したものの、仕事も決まらず、生活もままならない状況だった宙は、「訓練生でも給料が出るなら、とりあえず受けてやるか」という中途半端な気持ちで自衛官候補生の採用試験を受け、陸上自衛隊の候補生になった。
入隊の日、宙は、出迎えてくれた八女に、「半年間訓練を受けてみることにしたが合わなかったらすぐ辞めてやる」と悪態をつく。そのとき、宙たちの目の前を通ったのが、防衛大学校を卒業したエリート自衛官で、宙たちを指導する教官のひとり、桜間冬美2尉(白石麻衣)だった。思わず見とれてしまう宙。
第一班として、寮で宙と同室になったのは、自衛隊の音楽隊に憧れており、宙とは採用試験のときに出会っていた馬場良成(佐野勇斗)、ガンマニアの丸山栄一(時任勇気)、ある暗い過去を持つ武藤一哉(一ノ瀬颯)、かつて芸人を目指していたという渡辺淳史(坂口涼太郎)、小説家志望の小倉靖男(池田永吉)、父とふたりの兄も自衛官という最年少の西健太(藤岡真威人)。そしてもうひとり、宙が警察沙汰になった際のケンカ相手だった元ヤンキーの荒井竜次(佐藤寛太)もいて……。
第1話のレビュー
町田啓太に佐野勇斗、そして佐藤寛太や北村一輝! 若手からベテランまで幅広いイケメンが揃った、熱き青春ドラマが始まった。
町田啓太演じる国生宙は、学生時代こそラグビーのエース選手として活躍していたものの、怪我をきっかけに引退。オレオレなプレースタイルに周囲の反感を買っていた宙は、卒業後もくすぶったままだった。
その日暮らしを続ける宙。工事現場もクビになり、家賃滞納のため家まで追い出される。そんな人生ドン底の状態から、たまたま通りかかった陸上自衛官の八女(北村一輝)にスカウト(!)され、陸自の候補生になることに。こんな逆転劇があるのか!? ステーキまで奢ってくれる八女さん、どんなに控えめに見ても良い人すぎます。
仮に八女さんがホストクラブの経営者だったとしたら、宙はホストとしてスカウトされ、あれよあれよとNo.1に登り詰めていたかもしれない。それはそれで人生逆転劇。このキャストたちで、熱い凌ぎを削るホストたちのNo.1争いドラマも見てみたい気もする。
無事に候補生として、3ヶ月の厳しい訓練に従事することになった宙。
入寮にあたり、髪を切って髭も剃った宙がカッコ良すぎる……! やさぐれていた間も薄々思っていたことだが、ビジュアルの素晴らしさを隠しきれていない。町田啓太の眉の凛々しさやスタイルの良さが、より際立っている。できれば毎話ごとに数秒でいいからシャワーシーンを入れていただきたい。
このドラマは、陸自を舞台に繰り広げられる、男たちの熱き青春ドラマである。
それと同時に、若手からベテランまでイケメンが揃っていることでも、放送前から話題になっていた。
とくに触れておかねばならないのが、宙のバディとなる馬場(佐野勇斗)、そして入寮前から宙と因縁のあった荒井(佐藤寛太)だろう。
陸自の音楽隊に憧れ、脱サラを決めて入隊した馬場。試験の時点で爽やかさ満点である。これまで佐野勇斗が演じてきた直近のキャラクター(「ドラゴン桜」の米山や「真犯人フラグ」の橘一星など)と比べると、より彼のパーソナリティに近いのでは? と思わせる役柄だ。
バディを組むにあたり、もし互いのどちらかに不幸があれば、片方が遺族へ連絡をする決まり事があるらしい。
2枚の鉄製タッグがついたネックレスを渡された候補生たちは、複雑な思いでそれを眺める。宙は「大げさな」と深く取り合わないが、馬場は「俺が死んだら、宙くんが家族に連絡してくれるんだろう?」と真摯に向き合う。佐野勇斗が表現する真面目さや素直さ、実直さに打たれる視聴者も増えそうだ。
もうひとり、佐藤寛太演じる荒井は、その名の通りなかなかの荒くれ者だ。
ストーリーの中盤以降で、実は彼が金持ちの家の息子であることが判明する。建設会社の長である父親は常に忙しく、広い家でポツンとひとり、孤独な時間を過ごすことが多かった荒井。愛情不足でグレてしまうキャラクター設定はありがちかもしれないが、佐藤寛太が演じることで他にはない真新しさが見えてくる。
宙と馬場、そして荒井。他にも個性豊かな候補生の面々たちがいる。彼らを教え統率する役回りとしては、宙をスカウトした八女、そして白石麻衣演じる桜間が。彼女との恋の予感にも、今後注目していきたいところだ。
一度は「やっぱり辞めてやる」と寮から抜け出そうとする宙。
しかし八女は「逃げ出さない限り、ここはお前を受け入れる」と一言だけ告げる。どこに行っても居場所がないと感じていた宙にとって、何よりも嬉しい言葉だったに違いない。
拒絶され、根なし草だった宙が、新しい環境と人に巡り合い、変わっていく。現実を生きる私たちにとっても、心から安心できる居場所は必要だ。少しずつ変わっていく宙を見ながら、居場所を探す行動力と生きる勇気をもらえるかもしれないーー少し、大げさかもしれないけれど。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
陸上自衛隊の候補生になった国生宙(町田啓太)は、同じ第一班の荒井竜次(佐藤寛太)と隊舎内のジムで乱闘騒ぎを起こす。教官のひとり、桜間冬美2尉(白石麻衣)から「輪を乱す人間がひとりでもいれば命取りになる。そんな人間はここには必要ない」と叱責され、自衛隊を辞めようとする宙。
それを知った教育隊中隊長の八女純一(北村一輝)は、「そうやって逃げ続けて生きていくのか」と宙を挑発し、荒井と決着をつけたいのならケンカではなく訓練で決着をつけろ、と告げる。来週行われる体力検定の場で勝負すればいい、というのだ。
引くに引けず、それを受けた宙は、同じ第一班の馬場良成(佐野勇斗)に立会人を頼み、荒井に勝負を申し込む。すると荒井は、ただ勝負するだけではつまらない、と言って、「負けた方がここを辞める」という条件を出す。それ以来、宙と荒井は、訓練中はもちろん、掃除や自由時間のときですら何かと張り合うようになっていった。
そんなふたりの姿を見ていた第一班の丸山栄一(時任勇気)、渡辺淳史(坂口涼太郎)、小倉靖男(池田永吉)、西健太(藤岡真威人)は、どちらが勝つか賭けよう、と言い出すが、真相を知っている馬場は一人心配していた。そして、体力検定の日がやってきて……。
第2話のレビュー
今回のテーマは「宙(町田啓太)と荒井(佐藤寛太)の体力測定勝負の結果は?」と「武藤(一ノ瀬颯)の闇深い過去」の2本立てである。
お互いのことをいけ好かないと思っている宙と荒井。「負けたほうが訓練生を辞める」と賭けた2人は、体力測定勝負に勝つため躍起になる。が、結果的に切磋琢磨し合うことになり、良いライバル関係になっていた。
勝負の結果、宙はギリギリのところで負けてしまう。
しかし、その過程で開けた視点は、彼に多くの影響を与えた。ある意味「自分だけが不幸」と頑なに思い続けていた宙が、周りに目を向け、多くのことに気づくのだ。
自分を含め、どの訓練生も八女(北村一輝)の誘いで入隊していること(このあたり、八女さんの審美眼とスーパースカウト師ぶりが光る)。もう後戻りできない事情を抱えていること。バディである馬場(佐野勇斗)はとくに、そう簡単には辞められない覚悟で、ここにいること。
人に言われるがまま行動し、不都合なことが起これば人や環境のせいにしてきた宙。彼にとって「辞める・辞めない」を賭けの材料にしたこと自体が不誠実だったのだと、気づくきっかけになったのかもしれない。
人生には往々にしてこういったことが起こる。出来事、人との出会い。振り返れば「あれが人生のターニングポイントだった」と思える事象が、ふと降ってくる。宙にとって、それが八女や訓練生たちとの出会いなのだろう。
勝負には負けてしまった宙。しかし、馬場の「俺は途中で投げ出したりしない。自分で決めた道だから」といった言葉、そして荒井との喫煙場でのやりとりが契機となり、最高の自衛官になることを決めた。
新しい目標を見つけた宙は、もう簡単に人生を棒に振ったりしないだろう。諦めさえしなければ、自分を見限ったりはしない仲間と、ともにいる限り。
勝負の決着がついたところで、宙たちは不穏な噂を耳にする。
同じチームである武藤が、過去に父親を刺し殺しており、刑務所に入っていた……といった話。
噂の真偽は定かではない。しかし、養護施設に入っていた武藤の回想シーンがあったところからすると、何かしらの事情はあるのだろう。
次回は、そんな武藤の闇に触れる回になりそうだ。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
陸上自衛隊の自衛官候補生として厳しい訓練を続けている国生宙(町田啓太)や馬場良成(佐野勇斗)ら第一班の面々は、同じ班の武藤一哉(一ノ瀬颯)が少年刑務所あがりだという噂話を聞く。父親を刺し殺したのだという。武藤は普段から無口で、何を考えているのかわからないだけに、アイツならやりかねないなどと言い出す荒井竜次(佐藤寛太)や丸山栄一(時任勇気)たち。宙や馬場は、ただの噂話かもしれないから気にする必要はない、と言うが……。
そんな折、宙たち自衛官候補生は新たな訓練が始まり、渡辺淳史(坂口涼太郎)や小倉靖男(池田永吉)、西健太(藤岡真威人)らは、桜間冬美2尉(白石麻衣)が教官のひとりだと知って盛り上がっていた。宙は冬美から指導を受けることに。一方、武藤は男性教官から叱責されながら指導を受けていたが、様子が変で……。
第3話のレビュー
寡黙キャラな武藤(一ノ瀬颯)の殻が破れた。宙(町田啓太)を中心とする候補生たちとの間に、家族に似た絆が生まれた3話。前回、実の父親を刺し殺した噂が流れていた武藤だが、ついにその真実が明るみに出たのである。
シャワーシーン、もしくはシャワーを浴びる前後の”筋肉お披露目タイム”は、もはやこのドラマ恒例のよう。いつものように男同士のお喋りをしていた最中、末っ子キャラの健太(藤岡真威人)が、とあるものを発見する。
それは、武藤の肩に刻まれた、古い傷跡だった。
隊員食堂でたまたま耳にした噂。肩の傷。そして、圧が強めな上長に怒鳴られ続けパニックを起こす武藤の姿。すべての点が線として繋がったように思えた頃、耐えかねた武藤は脱走を試みる。通りかかった宙が止めて話を聞いていなければ、そのまま挫折していただろう。
父親の暴力に悩まされた子ども時代。たまりかねて包丁を持ち出し、父親に突き刺そうとした心境。結局、体の大きい父親に組み伏せられ、肩に傷を負った顛末。逮捕された父親と、養護施設に入った自分のこと。
自衛隊に入るまでの経緯を語る武藤の口調、表情はなんとも哀切に満ちていた。あれだけ寡黙だった彼がウソのように、まさに堰を切ったように言葉が止まらない。その様は、押さえつけていたものの大きさを感じさせられる。
武藤の話を聞きながら、宙は思ったかもしれない。このまま脱走するのはもったいない。ここは、自分から逃げ出しさえしなければ、受け入れてくれる場所なんだから。かつて、自分自身も同じように挫折しかけたからこそ、手を差し伸べずにはいられなかったのだろう。
だからと言って、あの”訓練方法”はどうなんだろう……? と個人的にはヒヤヒヤしてしまった。
荒井(佐藤寛太)たち候補生仲間も巻き込み、夜の剣道場で武藤ひとりを囲み、全員で1時間罵倒し続ける。誰にどんな罵詈雑言を浴びせられても、パニックにならないようにする訓練だそうだ。
そんな様を見守る八女(北村一輝)や冬美(白石麻衣)がいたこと、たとえフリだとしても悪口は言えなそうな馬場(佐野勇斗)が、見張り役としてその輪から抜けていたこと、順番に悪口を言い続ける候補生たちもつらそうな顔をしていること、すべてが終わったあと口々に「ごめん!」「あれは本心じゃないから!」と謝罪&撤回の言葉があること。
これらの仕掛けがなければ、たとえ訓練だとしてもさらに心折れてしまうだろう。結果、彼らの”家族にも似た絆”は深まり、全員で武藤の誕生日を祝うまでに関係性が仕上がった。
「声を上げることの大切さ」を説いたドラマが目立つ。金曜ドラマ「石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー」では、些細なことと軽く見ずに弁護士に頼る姿勢を投げかける。月9「競争の番人」では、おかしいことはおかしいと主張する勇気に焦点が当てられる。
「テッパチ!」でも、ただ黙って待っているだけでは人生は好転しない、そんな基本に立ち返って「じゃあ、どうする?」を考えるきっかけを与えてくれる。少しでも自分の人生に風穴を開けたい、そんな思いで集まった候補生たちの絆を描いたドラマなのだ。
※この記事は「作品名」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
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陸上自衛隊の自衛官候補生の国生宙(町田啓太)や馬場良成(佐野勇斗)たち第一班は、厳しい訓練が終われば寮の部屋や娯楽室でアームレスリング・トーナメントや「陸上自衛隊クイズ」大会を開くなどして、それなりに楽しくやっていた。
ある日、サバゲーが趣味でミリタリー通でもある丸山栄一(時任勇気)は、射撃の予習訓練でその姿勢の良さを教官たちから褒められる。一方、桜間冬美2尉(白石麻衣)の指導を受けていた宙は、彼女に気を取られてしまい集中できない。冬美は、そんな宙に丸山のようになりたければ体幹を鍛えろ、と言い放つ。毎日懸垂100回をこなせば少しはましになる、と冬美に言われたことが悔しかった宙は、その日の夜からひとりでトレーニングに取り組み始め……。
そんな中、いよいよ実弾を使った射撃訓練が始まる。緊張感漂う中、そこでも良い結果を出す丸山。だが、宙もトレーニングの成果を発揮し、丸山よりも良い結果を出す。ショックを受けた丸山は、会社員時代の上司から「お前の代わりなんていくらでもいる」などとこき下ろされていた時のことを思い出し……。
第4話のレビュー
まず言わせてください。冒頭の腕相撲大会&クイズ大会、あまりにも愛らしさが爆発してませんでしたか……? 候補生たちが休憩中や休日にどんな過ごし方をしているか、それを見せてくれる癒しのシーンにアッパレ!としか言えなくなってしまった。
前回、無事にトラウマから解放された武藤(一ノ瀬颯)の変わりようもすごい。カラオケに誘われ嬉しそうにする武藤、カラオケでのはしゃぎ方がわからずに戸惑う武藤、曲のチョイスで根暗認定される武藤、その後もカラオケに行きたくてねだりまくる武藤。こんなに人懐っこい子だったのね。
余談ですが、カラオケシーンでの劇団EXILEによるChoo Choo TRAINも良かったですね。センターの2人、明らかにダンスのクオリティが違った……。
それはそうと、武藤が無事に殻を脱げたのも、宙(町田啓太)の働きかけによるもの。1時間の罵りに耐える訓練は功を奏したらしい。
そんな彼が次に(無意識にも)向き合うことになるのは、ミリオタ・丸山(時任勇気)のトラウマである。
元システムエンジニアだった丸山は、これまでの回でも何度か、前職の会社でパワハラを受けていたらしい過去の描写があった。お前の代わりはいくらでもいる、使えない……そんな心ない言葉を上司から食らっていたのだ。
丸山が自衛隊に志願したのは、もともとミリオタであることも関係しているだろうが、パワハラで受けた傷を回復させるため(=自尊心を取り戻すため)でもあるだろう。
「パワハラ」。さまざまなハラスメントの実態が言語化されるにあたり、この言葉も市民権を得てきた。パワハラによって休職や退職に追い込まれるケースは、実生活でもよく耳にする。共感部分が多いからこそ、ドラマとしての扱いには慎重にならざるを得なかっただろう。
丸山については、これまでの回でも何度か前職でのシーンを入れ込んでいること、失くした止めねじを全員で探すシーン+宙と比較され悔しがるシーンなどにより、過去に囚われてしまっている様子を丁寧に描いている点が良かった。
典型的な起業サギに遭いそうになる展開にはヒヤヒヤしたが(500万を奪われずに済んで良かった……)、それほど「お前の能力を買ってる」と自尊心をくすぐるような言葉は、麻薬に近いのだ。
宙の活躍を見て「上には上がいる」「努力してもどうにもならない」と心折れかけた丸山。そんな彼に八女(北村一輝)が告げた言葉は……。
「自信はつくかどうかじゃない、つけるかどうかだ」
「お前が勝たなきゃいけないのは自分自身だ。自分に負けるな」
自分より”もともと能力が高いだけ”に見える人間も、陰でものすごい努力をしているのかもしれない。生まれながらに手にしている才能もあるのかもしれないが、配られたカードをさらに磨くのは自分の意志なのだ。
宙の努力する姿、八女の激励により、自分のすべきことに立ち返ることができた丸山。宙に握手を求める彼の目には、また新しい光が宿っているように見えた。
武藤のときは意識的に「力になりたい」と思っていたはずの宙、今回は「絶対負けねえ!」的な反骨心が結果的に丸山を前向きにさせている。無意識にも人を助けている宙、次は誰のトラウマに立ち向かうのか?
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
国生宙(町田啓太)や馬場良成(佐野勇斗)たち自衛官候補生と、WAC(Women’s Army Corps)と呼ばれる陸上自衛隊の女性自衛官(候補生)との特別合同訓練が始まる。この日を心待ちにしていた丸山栄一(時任勇気)や渡辺淳史(坂口涼太郎)たち。ほどなく、森下瑠理香(山本千尋)と石崎奈央(坂東希)ら8名の女性自衛官候補生が北東京駐屯地にやってくる。そこで出会った奈央のことが気になる小倉靖男(池田永吉)。
そんな中、特別講師として、かつてテレビ局に務めていたという入山大吾1尉(柏原収史)を迎え、『大規模震災における自衛隊派遣について』という講義が行われる。入山は、被災した町で救助活動に尽力する自衛官たちの活動を、映像や写真を交えながら紹介した。実は入山が自衛官に転職したのは、テレビ局勤務時代に被災地で出会った八女純一3佐(北村一輝)が関係していた。入山の話に心を打たれる宙たち。
講義の後、渡辺や西健太(藤岡真威人)たちは奈央が気になる小倉の恋を後押ししようとする。小倉は小説家志望でSNSにあげた小説も結構評判が良かった、と紹介して連絡先を交換しようとするも失敗。しかし、第一班の仲間たちの応援もあり小倉は諦めずにもう少し頑張ってアタックしてみることに。ところが、その奈央は実は妊娠しているという秘密を抱えていた。その事実を知った教官の桜間冬美2尉(白石麻衣)は助言を送るが……。
第5話のレビュー
女性のキャリア問題について考えるとき、どうしても切り離せないのは「結婚」「出産」「育児」の3セットだろう。男女平等が叫ばれ続けて久しいが、まだまだ女性と男性のステージは違うと痛感させられてしまうことが多い。
今話のテーマは「女性自衛官」のキャリア。
立派な自衛官になることを夢見て候補生になるも、入寮前に関係のあった相手との子を妊娠していることがわかった女性訓練生(石崎)が登場する。
現在は育児休暇制度も整っており、駐屯地によっては託児所もあるという。少し前の環境に比べれば、女性自衛官も”子育てをしながら仕事”がしやすくなっているわけだ。
しかし、だからといって、誰もが仕事と育児の両立を望むわけではない。
実際、石崎は悩んだ末に、自衛隊を辞めることを決めた。「今の私に、命懸けで誰かを守れるわけがない。だけど、この子を守れるのは私だけ」と口にする様は、人生における大事な覚悟を決めた強さに満ちていた。
選択肢は広く在ってほしい。女性だから、男性だからと性別を理由にして、選ぶ余地が限られる世の中であってほしくない。
育児をしながら訓練を続け、自衛官を目指す道もある。けれど、”自分”は違う道を選ぶ。本来、人生における選択とは、そういった多様性を帯びたもののはずだ。
複数の選択肢と、それらを(性別による制限などなく)自分の意思で選べる余地を描いたことが、確実のこのドラマに厚みを持たせている。
石崎が退寮を決めたのは、もしかしたら宙(町田啓太)や冬美(白石麻衣)をはじめとする、他の訓練生たちに心配をかけないように、といった理由もあるかもしれない。
妊娠によって体調が不安定になりつつあった石崎。立ちくらみで階段から落ちそうになった彼女を助けた冬美だが、バランスを崩し階段下へ転倒しかけてしまう。とっさに体が動いた宙が、下敷きになる形で身を挺して守った。
頭を打ち、しばらく寝込んでしまった宙。しかし、彼はこの件をきっかけにして”人を助ける喜びとはどんなものか”を体感することになった。
「落っこちながら思ったんだよ。俺、いま本物の自衛官みてえ……って。(中略)誰かを助けるために、この体、張ってんだなって」
「自分のことなんか何も考えてなかった。ただ”助けてえ”ってこと以外には」
考えずとも体が動く。それは何を置いても、自衛官としての資質として挙げられるに違いない。これまでも無意識に訓練生の救いになってきて宙だが、ようやく”人を助けること”に自覚的になったのかもしれない。
母になる覚悟を決めた石崎と、そんな彼女を助けた宙。5話の物語は、そこから宙と母親の関係性にシフトしていく。
訓練が休みの日に、馬場(佐野勇斗)の実家へ訪れた宙。馬場の両親に良くしてもらったことで、否が応でも自身の母親が脳裏に浮かぶ。
久々に姿を見に向かうが、再婚した母は新たな家庭で幸せそうにしていた。自身に向けられた怪訝そうな目線にひるんだ宙は、逃げるようにその場を後にする。
人を助ける喜びを知った宙は、自衛官になる未来をより強く感じているに違いない。しかし、この先、たくさんの人を支えながら”まだ救われていない自分の存在”がチラつくようになるだろう。
そんな宙を気遣ってくれるのは、きっと同じ夢を共にし、つらい訓練に耐え抜く候補生の仲間たちなのだ。
次回は第一部の閉幕。どのように閉じられ、そしてどのように第二部へと繋がっていくのだろうか。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
国生宙(町田啓太)ら陸上自衛隊の自衛官候補生の教育終了まで、残すところあとわずかとなっていた。自候生たちから提出された希望職種を見ている教官の八女純一(北村一輝)と桜間冬美(白石麻衣)。そこにはそれぞれの希望職種と合わせて理由が書かれていた。
馬場良成(佐野勇斗)は、憧れている音楽科が狭き門ということから、陸上自衛隊の根幹である普通科を第一志望、荒井竜次(佐藤寛太)は高射特科、丸山栄一(時任勇気)は機甲科、武藤一哉(一ノ瀬颯)は衛生科、渡辺淳史(坂口涼太郎)は需品科、小倉靖男(池田永吉)は会計科、西健太(藤岡真威人)は野戦特科をそれぞれ第一志望にしていた。
そして宙は、第一志望から第五志望まですべて普通科と書いて提出する。「肉体的精神的に強くなりたい!!」と書いており……。
そんな折、実際の戦場を想定した戦闘訓練と徒歩行進訓練を柱にした2日間の総合訓練が行われる。教官の八女は、「この3ヵ月間に鍛え上げてきたものをすべて出し切れ!」と宙たちに発破をかける。果たして、彼らは無事に最終訓練を乗り越え、卒業することができるのか……!?
第6話のレビュー
生きていると、時折「究極の二択」を迫られることがある。
大なり小なり、人生を左右する重要な決断だ。進学、就職、結婚、移住……。ライフステージに関わる選択には、できれば相応の時間をかけたいと思うもの。
訓練生卒業に向け、2日間の総合訓練が行われた。宙(町田啓太)をはじめとする訓練生たちは、実際の戦闘を想定した「戦闘訓練」と、その翌日に行われる「戦闘訓練+徒歩行進訓練」に挑むことに。まさに今後の進路が決まる局面において、宙は究極の二択を提示されることになる。
訓練の日程中に、母が事故に遭った報が入ってきたのだ。
いくら人生を賭けた訓練だろうと、身内を放っておくわけにはいかない。しかし、当初は小康状態だった母が、2日目の戦闘訓練最中には危篤状態になってしまった。
八女(北村一輝)を筆頭に、訓練生の仲間たちは宙を病院へと促す。が、彼は頑として従おうとしない。
「こいつらと最後まで、やり遂げるって決めたんだよ!」と揺るがない決意を示した宙は、最後の徒歩行進訓練まで見事にやり遂げる。
仲間たちとの訓練か、それとも、母の命か。迷ったはずだ。確執がある母であっても、万が一、これが最期だったとしたら……。そんな思いがよぎらなかったはずはない。
しかし、宙は2日間の総合訓練を最後までやり切ったあとで、母の元へ駆けつける選択をした。結果的に、仲間と過ごしてきた時間や積んできた経験が、母との和解に繋がったのである。
ラグビー部で活躍していた学生時代、宙は傲慢なプレー姿勢で仲間からの反感を買い、怪我をしたことも相まってその場にいられなくなった。
くわえて、母は再婚し疎遠に。職も長続きせず、どこからも必要とされない自分に対して”諦め”ていた。
そんな彼にとって、自分でも役に立てる場所があるかもしれないと、目を覚まさせてくれたのが自衛隊への入寮であり、そこで出会った仲間たちだったのだ。
母のためとはいえ、途中で訓練を投げ出すことは、仲間たちや自分に対する裏切りにも等しいと思ったはず。最後までやり切ったことが恩返しであり、これまで時間や努力を費やしてきた自分に対する信頼の証明だった。
それを察したからこそ、母は「前へ進んでるんだね」と言ってくれたのだろう。
無事に訓練生を卒業した宙たち。新たなステージへと向かう一人一人に対し、八女が投げかけた言葉が沁みる。
「どうだ、やっぱり自衛隊は、お前にぴったりの仕事だったろう」「みんな良い顔をしてる。お前のおかげだ」ーー宙が自衛隊の世界へ飛び込み、次第に立派な自衛官を志すようになった過程は、決して間違いではなかった。
物語は第一部閉幕。次回からは第二部が幕を開ける。新たな仲間、そして上司となる冬美(白石麻衣)との関係性も気になるところだ。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
厳しい訓練を乗り越え、晴れて自衛官となった国生宙(町田啓太)は、候補生のときに同じ班の仲間でバディでもあった馬場良成(佐野勇斗)とともに普通科隊員として南関東駐屯地に配属される。そんな宙たちの前に、教官だった桜間冬美(白石麻衣)が現れた。1尉に昇級した冬美も、普通科隊員として宙たちと同じ駐屯地に異動になったのだ。「今日からはあなたたちの上司よ。候補生のときは少々甘い態度を取ったこともあったけど部下に対してはそうはいかないから」と冬美は、宙たちに忠告する。
若干の不安を抱きながら隊舎に向かった宙と馬場を待っていたのは、先輩自衛官たち――班長で1曹の大木隆之(久保田悠来)、バツイチで大木の次に古株の金子慎也(桐山漣)、大木いわく駐屯地イチの爽やかイケメンだという風間速人(工藤阿須加)、年齢は班内で一番年下だが優秀な野村晴樹(結木滉星)の手荒い歓迎だった。先輩たちからのイタズラに耐えつつ、押し付けられる雑用をこなしながら日々の厳しい訓練に明け暮れる宙たち。そんな折、宙と馬場の歓迎会が行われることになる。そこで宙は、自衛隊にも部活があり、ラグビー部もあることを知るが…。
そんな中、災害派遣要請を受けた冬美や大木班の一同は、現場へ出動する。初めての避難誘導に戸惑ってしまう宙と馬場。そこには、避難していた一般人のオリンピック候補生・芝山勝也(水沢林太郎)がいて……。
第7話のレビュー
諸説あるが、自然科学者・ダーウィンの考えから残されていると考えられる、以下のような言葉がある。
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化する者である」
第7話から開幕した二部を見守りながら、じわじわとこの言葉が脳裏に浮かんだ。強くても賢くても、宙(町田啓太)や馬場(佐野勇斗)は生き残れない。この”地獄”のような環境に慣れていかなければ、自衛官として生きてはいけないのだ。
戸を叩いた先にいたのは、なんとも個性豊かな先輩たち。
一等陸曹で班長、お酒が大好きな筋トレマニアリーダーの大木(久保田悠来)。
ギャンブル好きのバツイチ先輩・金子(桐山漣)。
爽やかナルシストイケメン・風間(工藤阿須加)。
優秀な自衛官だが、太鼓持ちと嫌味っぷりが鼻につく野村(結木滉星)。
寮の部屋を訪れるや否や、水鉄砲の乱射で出迎えられる宙と馬場。その後も、飲み会参加を強制され「班長の良いところを10個挙げろ!」と言われたり、歓迎会にも関わらず飲み代を全額払わされたり、先輩の私物に気を使いながらホコリ一つ残さない掃除を求められたり、筋トレ中にボディビルダー大会が開催されたり……。
つらい訓練生時代を乗り越え、晴れて自衛隊員としての一歩を踏み出したが、扉を開けたらそこは地獄でした。
物語の終盤では、熱烈すぎる歓迎やコンプライアンスに引っかかりそうな指導は、あくまで「不測の事態に備えるための訓練」だとされていた。本来は、無意味な上下関係などなく、フラットで優しい先輩たちなのだろう。
一部で描かれた、仲間との友情&成長と比較すると、あまりにも酷なスタートだった。いわゆる”ロス状態”に陥った視聴者も多かったのではないだろうか。
健太(藤岡真威人)や八女(北村一輝)も登場し、宙たちの挫けそうな心をケアしてくれる。できれば今後も定期的に一部メンバーに登場していただきたい。
さて、本格的に自衛官として出動した宙。
災害現場から、地域住民を避難所へ誘導する役まわりに立った宙は、初出動なこともあり慌ててしまう。亡くなった主人の位牌や喘息の薬など、忘れ物を取りに帰りたいと騒ぐ住民たちを宥めるのに必死だ。代わりに忘れ物を取りに行っている間、あるトラブルが起こる。
スケートボード選手としてオリンピック出場も控えていた芝山(水沢林太郎)に怪我を負わせてしまったのだ。
「指示があるまで待て」と言われていたにも関わらず、彼が勝手に動いたせいで負った怪我であり、宙に責任はないように思われる。しかし、自衛官である以上、自分の勝手な判断で持ち場を離れた負い目は無視できない。
初出動で失敗してしまったことを気に病む宙。入院中の芝山自身にも謝りに向かうが、邪険に追い返されてしまう。
どうしてこんなことになったのか。なぜ訓練の成果を出せなかったのか。自衛官になった意味とは?
さまざまな思いがグルグルとめぐるなかで、またもや八女の言葉が刺さる。
「何よりも大事なのは、命だろう」
「俺たちは、それを守るためにいるんだ。それが俺たちの使命だ」
その後、大木班長が言ってくれた「お前たちは、何もできなかったわけじゃない」と合わせ、折れかけた心を立て直させてくれる言葉たち。
極限状態に追い込まれる市民たちを守り、命を救う自衛官たちを支えるのは、自身の使命を思い出させてくれる強い言葉なのかもしれない。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第8話ストーリー&レビュー}–
第8話ストーリー&レビュー
第8話のストーリー
国生宙(町田啓太)と馬場良成(佐野勇斗)は、班長の大木隆之(久保田悠来)らと訪れた居酒屋で『南関東駐屯地祭り』の話を聞く。これは、自衛隊が地域住民と触れ合うためのイベントで、公開演習や打ち上げ花火、盆踊りなどが行われ、出店もあるという。風間速人(工藤阿須加)や金子慎也(桐山漣)によれば、若い女性と親しくなるチャンスもあるらしい。それを聞いた宙たちが盛り上がっていると、野村晴樹(結木滉星)が駆け込んできて、今年の駐屯地祭りが中止になったことを皆に告げる。
本来ならばお祭りだったはずの休日に宙と馬場は、せめて祭りの雰囲気だけでも味わおうと、たこ焼き器でたこ焼きを作る。そこには、馬場になついている自候生時代の仲間・西健太(藤岡真威人)も参加していた。
そんな折、金子の元妻・理恵(三倉茉奈)が、7歳になる娘の花音(宮地美然)を連れて駐屯地へやってくる。近くまで来たから寄ってみたのだという。娘との再会を喜ぶ金子。離婚したとはいえ、仲睦まじいその様子に、宙たちは「復縁もあるのでは?」と期待する。
一方、副連隊長の神宮寺一成(緋田康人)は、35歳でいまだ士長の金子について、次の昇任試験の結果次第では指導が必要ではないか、と桜間冬美1尉(白石麻衣)に伝える。それはつまり、リストラを意味していて、金子は冬美からラストチャンスの通告を受ける。自衛隊の厳しい実態を知った宙と馬場は……。
第8話のレビュー
「同期」や「仲間」や「ライバル」は、仕事に打ち込んだり目標達成に向かって頑張ったりするうえで、力にも薬にもなる。しかし、時には目の前にそびえ立つ壁のように感じることもある。
宙(町田啓太)と馬場(佐野勇斗)の関係は、良き仲間でありライバルでありながらも、ひとつボタンを掛け違えると破綻してしまいそうな境地にある。
前回の”失敗”を胸にがむしゃらに訓練する宙は、その姿勢を買われ、早々に昇進試験を受けることになった。桜間(白石麻衣)によると、あくまでも模擬試験とのことだが、「受けるレベルに達していない」と評された馬場との差は大きい。
同期であり仲間でもある宙と馬場。なのに、差は広がっていくばかりのように見える。八女(北村一輝)をはじめ、彼のメンタルを心配し声を掛ける者は大勢いるが、心が折れてしまわないか心配になる場面も多い。
しかし、宙だって順風満帆とはいかない。先輩である金子(桐山漣)とともに受けた昇進試験だが、合格レベルに達していたものの、決定的な”欠点”も浮き彫りになった。
まさに瞬間湯沸かし器のように、何かあると「すぐに熱くなり、周りが見えなくなる」。前回の出動中、自己判断で行動し問題を起こした件に加え、今回の試験勉強中も咄嗟のことで金子と揉み合いになってしまった。自衛官として、冷静に物事を見据え決断する資質に欠けている、と桜間は断じたのだ。
宙にとっては聞き流せない話だろうが、ドラマの演出としては良い方向に働いていると感じた。このまま順調に宙がレベルアップしていき、桜間との仲も深まっていく……といった流れは、ぬるすぎる。これくらいの”壁”があってもいいだろう。
壁といえば、年齢的にも今回がラストチャンスの昇進試験となった、バツイチでギャンブル好きの金子。今回は彼のフィーチャー回であり、別れた妻子も登場して、過去と現実そして未来を見直す展開となった。
ギャンブルの誘惑に耐えながら、そして中卒であるハンデとプライドを抱えながらも、懸命に努力し見事合格した金子。元妻からは「再婚するの」と告げられる切ない終わりになってしまったが、一連の出来事は彼にとっての新たな自信になったに違いない。
金子を演じる役者・桐山漣は、活動歴こそ長いものの、『仮面ライダーW』で注目を集めるまではアルバイトを掛け持ちしつつ養成所に通う下積み生活を送っていたという。今回の金子フィーチャー回は、そんな彼自身のこれまでの過程を、自然と思い起こしてしまうような脚本だった。
壁を乗り越えれば、また新たな壁が現れる。次は、誰にとっての大きな壁が現れるのだろうか。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第9話ストーリー&レビュー}–
第9話ストーリー&レビュー
第9話のストーリー
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国生宙(町田啓太)と馬場良成(佐野勇斗)は、先輩自衛官の風間速人(工藤阿須加)から合コンに誘われる。金子慎也(桐山漣)、大木隆之(久保田悠来)、野村晴樹(結木滉星)、馬場から声をかけられた西健太(藤岡真威人)の7人が参加した今回の合コンの相手は、エステティシャンだという女性たちだった。そこでもモテ男ぶりを発揮した風間は、女性の相手があまり得意ではない大木をネタにするなどして場を盛り上げる。
あくる日、大木は、風間が宙や馬場に、「あの人は終わっている」などと大木のことを話しているのを聞いてしまう。すると大木は、しばらく何かを考え、ひとりずつ面接を行うと言い出す。班長として、部下のことを知る必要がある、というのだ。
大木は、宙がラグビー部出身だったことや、馬場が音楽隊を目指していることも知っていた。それを踏まえて、宙たちにアドバイスをする大木。一方、野村は、面接部屋に入るなり、風間が警務隊に出入りしている、という噂を大木に伝える。警務隊は、隊内で起きた事故や事件を調査する部隊だった。風間と面接した大木は、休日の度に女性と遊んでいることを注意した。だが風間は、「僕が羨ましいんですか?」と返すと、勝手に面接を切り上げて部屋を出て行ってしまう。
そんな折、宙は、桜間冬美1尉(白石麻衣)から突然の呼び出しを受け、ある提案をされる。馬場もまた八女純一3佐(北村一輝)から電話を受け、ある提案をされる。
第9話のレビュー
冒頭からウィキペディア引用で恐縮だが、「現代の調査では95%の人が先延ばしをすることを認めており、また過去40年間で先延ばしが自身の性格特徴だと認める人が急増している」らしい。自分にとって大事なこと、必要なことだと思うほど、着手するのを遅らせたい願望が人にはあるのだろうか。
宙(町田啓太)、そして馬場(佐野勇斗)にとっても、決して無視できない”人生のテーマ”がある。宙にとってはラグビー、そして馬場にとっては音楽だ。
監督からどれだけラグビー部に誘われても「やりたくないもんはやりたくない」と頑なな宙。しかし、桜間(白石麻衣)に誘われラグビーの練習試合を見に行ったときの彼は、ジャッカルについて熱く語るラグビー愛を見せた。
以前、宙の監督不行き届きでケガをさせてしまった柴山(水沢林太郎)について「ラグビーから逃げているあなたが、彼に再起しろと言えるのか」と言われたことも、大きかっただろう。過去のトラウマから逃げ、見てみぬふりをしてきた宙にとって、ついに”先延ばし”をやめるタイミングが訪れたと言える。
馬場も、八女(北村一輝)からの紹介で、音楽隊員と会うことになった。
音楽隊に入れるのは、8割が音大出身者。馬場のように部活のみの経験者はたったの2割と聞き、怖気付いてしまう。しかし、紹介してもらった音楽隊員自身も部活のみの経験者であり「確かに狭き門だけど、諦めなかったから入隊できた」と馬場を強く励ました。
宙も馬場も、なんとなく見ないふりをして、だけど確実に心の底にあった”願望”に対して、目を向けようとしている。
それは先輩隊員である風間(工藤阿須加)も例外ではなかった。隊員のために合コンをセッティングし、休日になると女性とデートに出かけ、少々”自衛官らしくない”姿勢が目立っていた風間。
しかし、彼は合間を縫って柔道場に通い、さらに強くなるため鍛錬を重ねていた。それは兼ねてからの夢である”警務隊入隊”を果たすためだった。
越えられない壁かもしれないが、努力を惜しまず夢に向かって努力し続ける彼らは、確かに”未来”を見据えている。
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–{第10話ストーリー&レビュー}–
第10話ストーリー&レビュー
第10話のストーリー
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国生宙(町田啓太)は、馬場良成(佐野勇斗)や風間速人(工藤阿須加)ら班の仲間とともに、広報活動の一環として、テレビのお見合い番組に出演することになった。
番組収録の日、南関東駐屯地の体育館に20人の女性たちが集まり、収録がスタートした。馬場は、真面目で清楚な雰囲気の女性・葵(矢作穂香)と良い雰囲気になる。一方、宙もギャルっぽい女性と麻雀の話で盛り上がり、意気投合。少し離れた場所から収録の様子を見守っていた桜間冬美(白石麻衣)は、何故か宙たちのことが気になってしまう……。
後片付けで二人きりになった宙と冬美。ギクシャクした雰囲気の中で宙は、「音楽隊を目指している馬場を本気で応援している」と真剣に告げて立ち去る。その言葉が胸に刺さった冬美は、馬場にチャンスを与えようと動き、音楽隊のオーディションを受けられるように手配する。何としてでも合格したいと頑張る馬場を、宙は心から応援するが……。
第10話のレビュー
まさかすぎる展開になってしまった。
テレビのお見合い番組に出演することになった宙(町田啓太)や馬場(佐野勇斗)たち。麻雀の話で盛り上がった女性とマッチングした宙だったが、案の定、桜間(白石麻衣)に睨まれる流れに。しかし、後々起こる大問題の布石はそこではない。
葵(矢作穂香)という女性と同じくマッチングした馬場。あくまでも広報の一環で出演した番組だったため、出演後の個人的な連絡は控えていた馬場だったが(なんとも彼らしい)、なんと後日、葵のほうから連絡が。
桜間の計らいで音楽隊のオーディションを受けられることになった馬場、その練習をするために訪れていたカラオケ店へ、「ぜひ演奏を聞いてみたい」と直接やってきた葵。馬場への好意が感じられ、なんとも微笑ましい関係性へと発展していくことが予想されたが……。
この女性、なんとも問題アリだった。
いざオーディション当日、もう少しで馬場の順番がまわってくるタイミングで「もう死にたい」と電話をかけてくる葵。怪しい。怪しすぎる。「私はどうせ独り」とひたすらに自死を仄めかす葵を心配し、馬場はオーディション会場から抜け出してしまう。
予想通りというかなんというか、葵は「馬場を呼び出したら本当に来るかどうか賭けていた」とのたまう始末。バーのような場所で仲間と酒を飲んでいた葵は、カラオケ店で馬場の演奏を聞いていた彼女とは別人のようだった。
自衛官である自分を意識した馬場は、自分の将来よりも、今まさに死を選ぼうとしているかもしれない女性のことを優先したのだ。優しさの結果とんでもない裏切りを受けた彼は、絶望し自宅で自殺未遂をしてしまう。
宙が必死で励ますも、療養休暇の末に退職願を出した馬場。果たして、このままフェードアウトしてしまうのか……?
9話の最後で思わせぶりなナレーションが入っていたことから、何か問題が起こることは予想していた、まさかこんな展開になるとは。
冷静な頭で考えれば「指定された場所がバーであることから、何か裏があると推定できるはず」「彼女のことを本気で心配するなら、警察や他の仲間に連絡するなど、やりようはあったはず」など対策はいくらでも思いつく。
けれど、馬場は持ち前の優しさと思いやり、正義感、真面目さによって人を助けようとしたのだ。八女(北村一輝)が言っていた「その優しさが仇となることを忘れるな」が思い出される。
果たして馬場はこのままフェードアウトしてしまうのか? 次週の最終回を待ちたい。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{第11話ストーリー&レビュー}–
第11話ストーリー&レビュー
第11話のストーリー
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桜間冬美(白石麻衣)のもとに、病気休暇中だった馬場良成(佐野勇斗)から退職届が送られてきた。馬場のために何をすればいいのかわからず苦悩する国生宙(町田啓太)。そんな宙たちのことを心配していた八女純一(北村一輝)は、馬場がいまも病気休暇ということになっていると冬美から教えられる。
宙と連絡を取った八女は、馬場の退職届がまだ受理されていないことを伝える。続けて八女は、馬場にしてやれることは何もないが最後まで信じてやることはできる、と告げる。「それがバディってもんだろ。だから先ずはお前がしっかりしろ」。八女は、そう宙に語りかけた。
八女の言葉で少し前向きになれた宙は、入院中の芝山勝也(水沢林太郎)の見舞いに行く。リハビリを続けていた芝山は、宙の顔を見るなり敵意を向けた。するとそこに風間速人(工藤阿須加)が現れ、「宙の話を聞いてやってほしい」と頭を下げる。そのおかげで、宙は芝山と話す機会を得るが、「あんたが死ぬ気で何かやってみろ」と激しく拒絶される。
それから数日後、宙たちは、出動要請を受け、大雨の影響で発生した土砂災害の現場に向かう。初めての土砂撤去作業で、宙は人命救助という重みを感じながら頑張るが……。
第11話のレビュー
お見合い番組で出会った女性をきっかけに、馬場(佐野勇斗)が心身を病み休職状態となってしまった前回。あまりにも衝撃すぎる展開に、果たして最終回ですべての決着がつくのか……? とハラハラした方も多いのではないだろうか。ちなみに、筆者はまだあの女性のことを許してはいない。
ざっくりまとめてしまうと、これまでの伏線は3つある。
1. 馬場は復帰するのか?
2. 宙(町田啓太)と柴山(水沢林太郎)の関係は修復されるのか?
3. 宙と桜間(白石麻衣)の恋は実るのか?
そして結論から言ってしまうと、それぞれの伏線は無事に回収された。馬場はこのままフェードアウトして終わってしまうのでは? と思っていたが、その復帰に繋がったのが「宙と柴山の関係」である。
誤って柴山に怪我をさせてしまってからというもの、まともに話もさせてもらえない宙。何度か柴山の元に通うが、けんもほろろに帰されるだけ。柴山のキツい態度については「あなたが自衛隊員の指示を無視して勝手な行動をしたからでしょうが……」と未だに思わなくもないのだが(筆者だけだろうか?)。
風間(工藤阿須加)のナイスアシストにより、なんとか改めて話すチャンスを得た宙。しかし、もう一度頑張ればオリンピックに出られるはずと軽はずみな励ましが柴山の逆鱗に触れてしまう。「死ぬ気で頑張ってる姿見せてみろ」などと、ある意味、挑戦状を叩きつけられた形に。
またもや振り出しに戻った感もあるが、これをきっかけに宙は再熱する。災害救助に出動した際、顔見知りの女児が生き埋めになっている可能性に思い至るや、桜間の指示を撤回させる勢いで救助活動の延長を申し入れるのだ。
宙は、柴山とのやりとりを事前に馬場へ伝えていた。留守電越しにはなってしまったが、彼の熱意に打たれ馬場の気力も復活。八女(北村一輝)の後押しもあり、延長中の救助活動の場へ姿を見せた。
無事に女児含む家族全員が救助された。彼らを助け出し、救助ヘリへ受け渡す宙たちの姿を見ながら、自衛隊員として確実に歩を進めているのを実感せざるを得ない。最終回だけれど、きっとこの先も、彼らはどこかで人を救っているのだと思わせてくれる場面だった。
さて、もうひとつの伏線、宙と桜間の関係について気になっていた方も多いだろう。
なんと、兼ねてからの希望だったアメリカの陸軍学校へ選抜メンバーとして派遣されることになった桜間。お互いに感謝を伝え合う宙と桜間を見ながら、このまま曖昧な別れとなるのか……と思いきや。いったん去りかけた桜間が宙の元へ駆け寄り、胸元を引き寄せてのキスシーン。
彼女がアメリカへ滞在するのは約1年。今後、続編ドラマや劇場版が制作されるとしたら、1年後に再会する二人の姿が見られるかもしれない。その後の展開を大いに想像させてくれる結末だった。
賛否両論飛び交った面もある「テッパチ!」だが、最終回を迎えた上であらためて強調したいのは、全役者陣に対する尊敬と感謝である。食傷気味な表現で申し訳ないが、彼らの真摯な姿勢なくしてこのドラマは成立しなかっただろう。
強いて言うなら、最後の最後で一部のメンバーのサプライズ登場があってもよかったのでは……と思ってしまった。二部でもちょいちょい出ていた西くん(藤岡真威人)さえ出てこなかったのは、1話から見守っていた筆者としては寂しさの残るところである。
このドラマで、”推し”が見つかった人も多いかもしれない。この先、別の作品での活躍にも大いに期待したいところだ。
※この記事は「テッパチ!」の各話を1つにまとめたものです。
–{「テッパチ!」作品情報}–
「テッパチ!」作品情報
出演
町田啓太
佐野勇斗
白石麻衣
北村一輝
佐藤寛太
時任勇気
一ノ瀬 颯
坂口涼太郎
池田永吉
藤岡真威人
工藤阿須加
桐山 漣
久保田悠来
結木滉星
水沢林太郎
企画
渡辺恒也、江花松樹
企画・プロデュース
栗原美和子
(共同テレビ)
脚本
本田隆朗、関 えり香、諸橋隼人
プロデューサー
山崎淳子
(共同テレビ)
演出
石川淳一
(共同テレビ)
根本和政
音楽
福廣秀一朗
主題歌
GENERATIONS from EXILE TRIBE『チカラノカギリ』
(rhythm zone)
制作協力
共同テレビ
制作著作
フジテレビ