<鎌倉殿の13人・御家人政治編>27話~38話までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

2022年のNHK大河ドラマは「鎌倉殿の13人」。三谷幸喜 脚本×小栗旬 主演で描く北条義時の物語。三谷幸喜曰く「吾妻鏡」を原作としており、そこに記されきれていない部分を想像と創作で補い、唯一無二のエンターテイメント大作に仕上げているという。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事では御家人たちの合議制が始まった27話~の記事を集約。1記事で感想を読むことができる。

[※本記事は広告リンクを含みます。]

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

もくじ

・第27話ストーリー&レビュー

・第28話ストーリー&レビュー

・第29話ストーリー&レビュー

・第30話ストーリー&レビュー

・第31話ストーリー&レビュー

・第32話ストーリー&レビュー

・第33話ストーリー&レビュー

・第34話ストーリー&レビュー

・第35話ストーリー&レビュー

・第36話ストーリー&レビュー

・第37話ストーリー&レビュー

・第38話ストーリー&レビュー

第27話ストーリー&レビュー

第27話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

土御門通親(関智一)から源頼朝(大泉洋)の死を知らされ、思案する後鳥羽上皇(尾上松也)。鎌倉では宿老たちが居並ぶ中、新たに鎌倉殿となった源頼家(金子大地)が自身の方針を表明。これに北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)は共に困惑し、梶原景時(中村獅童)は賛辞を贈る。その様子を政子(小池栄子)に報告した義時(小栗旬)は、弟・北条時連(瀬戸康史)と愛息・頼時(坂口健太郎)を頼家のもとへ送り出し……

第27話のレビュー

ほんのり地獄の幕開けを感じるのはなぜだろうか。

頼家(金子大地)が鎌倉殿として本格始動した。
気負っている。気負いすぎである。
訴えがあれば自分で聞く、と宣言するが、できるのか。
更に、どうにかして権力を握ろうとする比企能員(佐藤二朗)、北条時政(坂東彌十郎)を退ける。

そんな頼家にあれこれ囁くのは梶原景時(中村獅童)だ。
御家人を信用してはならない、頼朝も自分以外の御家人を信用していなかった、と言う。頼家が心から景時を信頼しているかどうかわからない。
しかし、とりあえずは景時がひとつの指針になっているように見える。
一方で頼家は義時(小栗旬)に若くて力のあるものを集めるように言う。
年寄りたちは信用ならない、できれば、自分と分かり合ってくれる若く優秀な人物がそばにいてほしい……と思うのは当然かもしれない。

やる気に満ちている頼家だが、訴えを全て自分で聞く、というのは、そんなあなた……無理でしょうよ……と思っていたら、わりと早めに挫折する。
そこで義時が提案したのが「4人の文官が訴訟に関する評議を行い、道筋をつけ、最終判断を頼家に委ねる」というもの。景時は頼家と文官たちの取次役となり、5人衆で頼家を支える案だ。

そこでサクッと5人衆で決まればよかったのだが、
「梶原がいるなら比企も入れろ」(by比企能員)
「梶原と比企がいるなら北条も入れろ」(by北条時政)
……と人数が増えていく。

さらに、自分の味方を増やそうと、北条と比企はそれぞれ勝手に人材を引きこむ。
「もうひとり、行っとく?」じゃないんですよ、時政殿……。

時政が声をかけたのは三浦義澄(佐藤B作)、和田義盛(横田栄司)。畠山重忠(中川大志)には断られる。あなたにはがっかりです、とりく(宮沢りえ)に言われて、目を閉じる重忠の表情に見とれてしまったが、そんな場合ではなかった。
時政がそのあとに名前を挙げる人物も高齢の方ばかり。
これは「じいさんはやめておきましょう」と義村(山本耕史)がぴしゃりと言ってくれたおかげで回避するが、本当に頭数を集めたいだけなのがわかってうんざりだ。

比企も同じように味方を集め、文官にもわざとらしく接待して勢力を拡大しようとする。
そして最後に義時が政子(小池栄子)の頼みで加わり、13人に。
「鎌倉殿の13人」というタイトルなのだから、もっとこう、重大な理由があるのかと思いきや、こんなことで増えていったとは。

義時から13人に増えたことを聞き、「私はそんなに頼りないか」と茫然とする。また、義時が加わっていることも頼家にショックを与えた。

頼家はきっと頭が切れる人なのだろう。上に立つ者としての片鱗もこれまでに見えた。
それが、じいさん……ではなかった、経験豊かで権力を握るのが大好きな高齢の方々に潰されていく様子は見ていてつらい。
頼朝の死は早すぎたのだと、景時が言った言葉が染みる。

物語冒頭では、京ではキレキレな後鳥羽上皇(尾上松也)も登場し、蹴鞠をしながら、頼朝の死因を推理し、「頼朝の跡目、さぞ重かろう」と一言。
結果、終盤では悔し涙を見せる頼家の姿が。今後の頼家の行く道が、不安でならない。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第28話ストーリー&レビュー}–

第28話ストーリー&レビュー

第28話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)との争いにより、義時(小栗旬)と梶原景時(中村獅童)の構想から大きく逸脱し、13人まで膨れ上がった訴訟の取り次ぎを行う宿老たち。鎌倉殿となり気負う源頼家(金子大地)はこれを自身の力を侮っている結果だと捉えて憤慨し、北条時連(瀬戸康史)・頼時(坂口健太郎)ら若い御家人をそばに置いてけん制する。そんな中、13人の宿老たちが集まり常陸の御家人の土地争いについて評議を……

第28話のレビュー

「鎌倉殿の13人」による評議が始まった。

しかし、よく知っている者の名前が出てくると、それぞれ味方してしまう北条側と比企側。

梶原景時(中村獅童)は「これでは評議になり申さぬ!」と声を荒げるが、時政(坂東彌十郎)も比企能員(佐藤二朗)もそのために人数を増やしたようなもので……。

当然、頼家(金子大地)は反発。独自で若い者たちを率いるようになる。
父・頼朝を超えたいという気持ちが分かるが、空回りするばかりだ。

 そんな中、頼家は安達盛長(野添義弘)の息子・影盛の妻・ゆうと良い仲になっていた。現代風に言えば、不倫である。

頼時(坂口健太郎)は人の道に反していると意見するが、頼家は聞き入れない。
そして、盛長と景盛に「ゆうをくれ」と言う。
景盛はもちろん、盛長もこれを拒否。頼朝に長らく仕えていた盛長だが、「首をはねられても心は変わらない」ときっぱり。頼家もそれで引き下がればいいものを、安達親子の首をはねるように命じてしまう。景時も止めるが聞かない。
そこに登場したのは母の政子(小池栄子)である。

不倫をし、相手に夫に妻を譲れと言うが、拒否をされて力づくで奪おうとするものの、母に叱責される……。
冷静になったらダサすぎる。それも、自分の部下たちの前でやっているのだ。

そして、出てくるのが「父上も同じことをやっていたではないか」という言葉。
全国のお父さん、観ていますか……子どもはしっかりと親の背中を見ていますよ……。
でもきっと、頼朝なら自分の腹心の家族構成や年齢ぐらいは把握していたと思うが。

 
そんな頼家の行動はさらに御家人からの信用を失うことになる(そりゃあそうだ)。

そこで景時は、頼家への不満を口にした結城朝光(高橋侃)をみせしめに殺すことを提案。
景時は頼家に反発心を持つ御家人を一気に排除するつもりだったのだ。
義時(小栗旬)はこれ以上、景時に対する御家人の反感を大きくしたくない。事を荒立てないために、三浦義村(山本耕史)、畠山重忠(中川大志)、和田義盛(横田栄司)に相談するが、結果、事態は更に大ごとに……。
景時の力を削ぐためだけのはずが、流罪にまで話は進んでしまう。

上総広常を斬った景時。それから、頼朝の信頼を得、頼家の元でも重要な役割を担っていた。御家人たちの不満は募っていたのだ。

見ていると、出る杭は打たれる、という言葉を思い出す。
誰かひとりが大きな力を持つのは嫌で、できれば自分がお山の大将になりたい。
もしかしたら、政治とは国とは、そういうものなのかもしれない、と思ってしまう。
そして、名君になりえたかもしれない人物も潰す。

結果、景時は行動を起こす。
刀は斬り手によって名刀にも鈍らにもなる。鈍らでは終わりたくなかった、という景時。
また、鎌倉から有能な人物が去っていく。

そして、善児という刀が景時から義時へと渡る。

八田知家(市原隼人)が見た目だけでなく、話し方もウェッティで気になるだとか、義村に「お前は裏に回るには見栄えが良すぎる」と言われ、「そうですか、やはり見栄えが……」と言う重忠とか(妙に顔のアップ+凝視する義盛)とか、一瞬和むシーンもある。が、それがかすむぐらいにほかのシーンが今後の地獄を予感させて恐ろしい。善児(梶原善)が置き土産なのも、りく(宮沢りえ)の笑顔も怖い。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第29話ストーリー&レビュー}–

第29話ストーリー&レビュー

第29話のストーリー


>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

御家人たちのバランスが崩れ始めた鎌倉。義時(小栗旬)は北条と比企との争いの激化を懸念し、頼時(坂口健太郎)と比奈(堀田真由)を前に決意を新たにする。そんな中、つつじ(北香那)が源頼家(金子大地)の次男・善哉を出産。三浦義村(山本耕史)が乳母夫となるが、比企能員(佐藤二朗)は長男・一幡こそが嫡男であるとけん制。一方、北条時政(坂東彌十郎)はりく(宮沢りえ)から政子(小池栄子)の次男・千幡を頼家の跡継ぎにと……

第29話のレビュー

梶原景時(中村獅童)が討ち死にした。鎌倉は、静かに混乱していく。

頼家(金子大地)は自分の好きなようにやる、と言い、比企能員(佐藤二朗)の後ろ盾を拒む。頼家は鎌倉を守りたい、大きくしたい、などというよりは、宿老たちから逃れたいという気持ちのほうが大きいように見える。

梶原景時が亡くなったあと、宿老たちにはさらなる変化が。三浦義澄(佐藤B作)がこの世を去る。
義村(山本耕史)に手を握られながら「死んだあとのこと正直どうでもいい」、そして駆けつけた盟友の時政(坂東彌十郎)の体にしがみつき「一緒に行こう!一緒に行こう!」が最期の言葉だった。さらに安達盛長(野添義弘)も……。

そんな中で激化していく北条vs比企。
時政というより、りく(宮沢りえ)の野心は強い。いま、鎌倉にいる後継ぎは一幡、千幡、そして公暁。自分たちが有利になれる者が跡を継いでほしい。それぞれがそう考える。
時政たちは実衣(宮澤エマ)、全成(新納慎也)が乳母を務める千幡を跡取りにしたい。その前に、邪魔なのは鎌倉殿。時政たちは全成に鎌倉殿に呪詛をしてほしいと頼む。これまでの全成なら引き受けなかっただろう。
しかし、実衣が琵琶の師・結城朝光(高橋侃)に心が揺らいでいたこと、そんな実衣を喜ばせてやりたいという気持ちから引き受けてしまう。なんというめぐりあわせ。

若者たちも離れていくのか

頼家は全てのことに対して疑心暗鬼だ。頼家を思っての助言も跳ねのけ、距離を取ってしまう。
その筆頭が頼時(坂口健太郎)。
まずは伊豆の領地へ行くように命じられる。凶作で苦しむ農民たちが、借りた米を返せなくなっているのだ。それを収めよ、とのこと。
この任務を成し遂げた頼時は評判があがるが、頼家の覚えはよくない。
褒美と言って頼時に新しい名を与える。もうすぐ征夷大将軍になる自分と同じ「頼」の字が入っていたら荷が重いだろう、ということで、「泰時」という新しい名がつけられる。
頼時にとって「頼」の字は頼朝の「頼」でもあるので納得がいかないが、拒めない。
さらに、「父の元で励め」と言われ遠ざけられてしまう。

今回の頼時はさんざんである。想いを寄せているはつ(福地桃子)には「真面目」「そういうところ息が詰まる」「おもしろくないの」と言われガックリ。

そんな息子・頼時に向かって、義時(小栗旬)はドヤ顔で「山ほど土産を抱えて帰ってくれば機嫌が直る」とアドバイス。あなた、山ほど土産を抱えて帰ってきて八重(新垣結衣)に眉をひそめられていませんでした……?

さらに「女子というものは大体きのこが大好きなんだ」という間違った知識を伝えるんじゃない……! そして頼時も「いいことを聞きました!」じゃないんですよ。
山ほどのきのこを持って帰ってきたのに、はつに突き返されたと聞いて驚く義時。未だに義時の中で「女子が好きなものランキング」が更新されていなかったことにこちらが驚きである。

しかし、クスリとできるシーンも不穏さが伴っているので素直に笑えない……。

とにかく頑なな頼家の心。それが側女のせつ(山谷花純)が真正面からぶつかっていったことで少しほぐれる。
そして、一幡を後継ぎにすることを決める。家などは関係なく、誰とだったら鎌倉を大きくしていけるかを考えてのことだった。
また、頼家が井戸に落ちそうになったところを全成が助けたのも功を奏した(妙に芝居がかっていた井戸のシーン、とてもよかった)。ほっこりとした空気で終わるのかと思いきや、もはや終わり方がホラー映画のそれである。不穏は、続く。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第30話ストーリー&レビュー}–

第30話ストーリー&レビュー

第30話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

源頼家(金子大地)に対して呪詛(じゅそ)を行った疑いにより、詮議を受ける阿野全成(新納慎也)。比企能員(佐藤二朗)はその背後に北条家の暗躍があると確信し、対決姿勢をさらに強める。そのころ北条家では、夫・全成を巻き込まれて激怒した実衣(宮澤エマ)が父・時政(坂東彌十郎)を追及。名乗り出ようとする時政だが、りく(宮沢りえ)に止められる。義時(小栗旬)は北条家を守るために一案を講じ、畠山重忠(中川大志)の助力を得て……

第30話のレビュー

だから、あれほど「忘れ物はないか」と聞いたのに……。

頼家(金子大地)が病に倒れた。そのタイミングで、御所の寝殿の床下に人形があるのが見つかる。
全成(新納慎也)が呪詛のために用意したものだ。
前回、ほっこり丸く収まったと思ったのに(いや、最後のワンカットは完全にホラーだったが)、一気に全成は追い詰められることになる。

しかし、多くの者が、全成の一存でやったことだと思っていない。
北条時政(坂東彌十郎)か、はたまた、妻の実衣(宮澤エマ)か、と考える。全成のキャラクターがそうさせるのかもしれない。

とにかく、今、義時(小栗旬)が避けたいのは北条家と比企家の対立だ。
時政が関わっていることを隠したい義時。実衣まで捕らわれるようなことはあってはならないし、何より比企の一声で全成の首がはねられることを避けなければならない。
しかし、北条を潰してしまいたくて仕方がない比企能員(佐藤二朗)。

義時は畠山重忠(中川大志)と共に策を練り、どうにか一旦は衝突を回避する。全成は、命はとられず、流罪。
宿老のひとりである八田知家(市原隼人)が治めている常陸に送られることとなった。

 これで一件落着……かと思いきや、今度は比企能員に利用されてしまう全成。

というのも、頼家の政によって、能員は怒りに震えていた。
頼家によって行われた所領の再分配が原因で御家人たちから不満の声が上がっていた。
所領の少ない御家人たちは、土地が与えられたことを喜ぶが、もとは多く所領を持っていた御家人から召し上げられたもの。
能員は頼家を説得しようとするが、逆に「手本を示せ」と言われる。
比企の上野の所領を近隣の御家人に分け与えるように、ということだ。
比企が、これをよしとするはずがない。

そこで能員は全成の元に向かい、「実衣の身が危うい」と言い、呪詛の道具を渡す。頼家を呪え、と。

実衣を守りたい一心の全成は道具を手に取る……。

 これが露呈した全成は、八田の手によって討ちとられることとなる。もう言い逃れはできなかった。
全成は間際まで呪文を唱えていた。突然の大雨、強い風、雷……。
これは全成の力だと思い、その場にいた者たちは慄く。
振り上げられた刀、その刹那、雷が落ち、全成の首を斬らず、背中……だろうか、傷を負う。
流れ出る己の血を見て実衣の名を叫ぶ。
よく赤が似合う、愛しい妻の名。

最後、口にしていたのは「臨兵闘者皆陣烈在前」だった。
全成が初登場時に唱えていたもの。当時は風を起こせなかったが、最期は嵐を呼んだ。
そして、亡くなったあとに広がった青空。ある意味、実衣への愛のメッセージだったのかもしれない。

義時はとても家族を愛している人なのだと思う。実衣や、全成の幸せをきっと強く願っていただろう。
今回の件は、義時にとって許しがたいことだった。
「鎌倉殿のもとで、悪い根を断ち切る」
比企能員に向かって、そう強く言い切った義時。北条義時が開眼した瞬間か。

義時は能員の本音を聞き出し、頼家に聞かせようとする。が、それは叶わない。頼家は病で倒れていた。

 権力を握りたくて仕方がない者たちが、鎌倉を、頼家を壊していく。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第31話ストーリー&レビュー}–

第31話ストーリー&レビュー

第31話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

源頼家(金子大地)の後継者をめぐり、激しさを増す北条と比企の争い。比企能員(佐藤二朗)はせつ(山谷花純)が産んだ頼家の長男・一幡(相澤壮太)を推し、早々に朝廷の許しを得ようと躍起になるが、大江広元(栗原英雄)らは取り合わない。一方、義時(小栗旬)は比奈(堀田真由)に頼んで比企の動向を探り、三浦義村(山本耕史)にも相談を持ち掛ける。そんな中、政子(小池栄子)のもとに北条時政(坂東彌十郎)、りく(宮沢りえ)らが集まり……

第31話のレビュー

頼家(金子大地)が倒れた。父・頼朝(大泉洋)と同じ病状だという。

誰もが、頼家はもう目覚めないだろう、と思った。と、なると、問題は誰が次の「鎌倉殿」になるかだ。

鎌倉殿の候補は、頼朝の次男・千幡と、頼家の息子の一幡、善哉だ。乳母夫はそれぞれ一幡は比企、善哉は三浦、千幡は北条。どの子もまだ幼く、実際には乳母夫が実権を握ることになる。比企能員(佐藤二朗)は一幡を次の鎌倉殿にしようと鼻息が荒い。

そんな中、全成(新納慎也)の息子が、修行中の京の寺で殺される。全成の陰謀に加担した疑いがかけられたのだ。
政子(小池栄子)のもとに集まった義時(小栗旬)たち。全成の妻である実衣(宮澤エマ)は「すぐにでも比企を攻め滅ぼしてください」と言う。
しかし、ここで動けば戦となる。北条側は千幡を推す。義時は、この目論見が阻止されたときは、刀を抜くことも辞さない構えだ。

義時は一幡と千幡で鎌倉殿の役割を分けることを提案するが、当然のことながら比企は拒否。鎌倉には暗雲が立ち込める。

義時は以前の義時ではない。動向を探るために、妻で能員の姪である比奈(堀田真由)を比企の館に行かせる。比奈自身が申し出たことであるが、泰時(坂口健太郎)からすると、母を利用したように見える父が理解できない。
さらに、義時は泰時に「戦になったら真っ先に一幡を殺せ」と命じる。
父を討たれた息子が成長したときに、どのような行動をとるか。さらに、一幡が生きていれば、次の鎌倉殿についてもまた話がこじれる。
が、命じられたからといって、素直に受け入れられる泰時ではない。泰時は、かつての義時とよく似ている。

迎える比企能員の最期

最後のチャンス、と時政(坂東彌十郎)がもう一度、鎌倉殿の役割を千幡と一幡で分けることについて能員と交渉をする。しかし、能員は受け入れず、比企に有利な条件を提示する。交渉は決裂。能員の運命は決まってしまった。

その翌日、時政は能員の提案を受け入れるとし、和議を申し込んだ。能員は肝が据わったところを見せようと丸腰で北条の館へと出向く。館を案内するのは仁田忠常(高岸宏行)。そこで待っていたのは鎧姿の時政たちだった。

能員は自分に何かあれば三浦が黙っていない、と言い放つ。三浦を味方に引き入れたつもりだったが、義村(山本耕史)は北条を裏切っていなかった。寄る辺がなくなった能員は討ち取られる。

 そして、比企の館へ。一族を、一幡と、頼家の妻・せつ(山谷花純)を討つためだ。泰時はせつと相対するが動けない。代わりにせつを撃ったのはトウ(山本千尋)だった。一幡の前には善児(梶原善)が。善児は判断をあおぐかのように泰時を振り返る。今の泰時に一幡を殺せと命令もできないように思うが……。

比企一族を滅ぼし、千幡を次期鎌倉殿とするよう手筈を整え始める義時たち。そこへ、頼家の意識が戻ったという知らせが入る。

 頼家にとってみれば、とんでもない状態だ。目覚めたら、自分の母の一族によって妻と、妻の実家が滅せられていたのだ。おまけに、自分が目覚めたことを誰も喜んでいない。これが不憫と言わずして何と言おう。

 
不憫と言えば、泰時もそうだ。父・義時と、自分の正義の間で揺れ動く。そして目の前で流れる血。ここから泰時はどのようにして成長していくのか。ターニングポイントのひとつとなるかもしれない。

もちろん、義時にとってもそうだろう。比企を滅ぼし、北条が坂東武者たちの頂点に立つ。兄・時宗(片岡愛之助)が望んだことでもあったが、それが結果として義時を修羅の道へと導いているようにも思える。
だんだん暗くなっていく義時の瞳が気にかかる。

そして、最後まで「らしい」姿だった比企能員。今回の能員、夢に出そうだ。それほどまでに強烈だった。
能員も、時政も、最初は愉快なおじさまだったのに。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第32話ストーリー&レビュー}–

第32話ストーリー&レビュー

第32話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

奇跡的に息を吹き返した源頼家(金子大地)。しかし後鳥羽上皇(尾上松也)のもとには頼家危篤の報が届き、後鳥羽は考えを巡らせる。鎌倉では、政子(小池栄子)のもとに義時(小栗旬)、泰時(坂口健太郎)らが集まり、新たな体制について話し合っていた。そんな中、一人で思いにふける比奈(堀田真由)。一方、先を見据えるりく(宮沢りえ)は時政(坂東彌十郎)に京との関係をより深めるように説き、愛息・政範(中川翼)も胸を高鳴らせる。そして、三浦義村(山本耕史)は……

第32話のレビュー

鎌倉殿である頼家(金子大地)が目覚めたのなら、本来は万々歳のはずだった。

しかし、義時(小栗旬)たちの表情は冴えない。

それもそのはず、頼家は死んだものとして話は進んでいた。千幡を新しい鎌倉殿にする。そして、それは頼家が目覚めたとて、変わることはないのだ。

目覚めた頼家は妻のせつ(山谷花純)と一幡に会いたいと時政(坂東彌十郎)と時房(瀬戸泰史)に言うが、二人はもういない。
流行り病で臥せっていると時政たちが嘘を言うと、頼家は見舞いの品を届けろと言う。すぐに二人の好物が出てくるのが切ない。上っ面だけではなく、頼家はちゃんと妻と息子を愛していたのだ。

とは言え、いつまでも隠しておけるはずがない。頼家に全てを伝えたのは政子(小池栄子)だった。
いくら母の言葉だからといって、妻も子も奪われて「はい、そうですか」と言えるはずがない。
何より、頼家は気付いてしまった。全ては北条の企みだということに。

頼家は、和田義盛(横田栄司)と仁田忠常(高岸宏行)を呼びだし、比企滅亡の顛末について知る。
頼家が二人に命じたのは「時政を討て」。
和田はすぐに三浦義村(山本耕史)と畠山重忠(中川大志)に相談するが、仁田は一人で思い悩む。
忠義の厚い仁田は北条と頼家の板挟みになってしまったのだ。
義時に相談しようにもままならず、仁田は最悪の選択をしてしまう。仁田演じる高岸宏行のあんなに悲しそうな顔をこれまで観たことがなく、それだけでも心が揺さぶられてしまった。

また、義時にも比企滅亡の余波が。妻の比奈(堀田真由)は比企の家の者。比企討伐に比奈も協力していたが、それは比奈の心に暗い影を落としていた。
義時も悩むところだっただろう。実衣(宮澤エマ)は「比企の者でまだ残っている者がいる」と比奈にも憎しみを向けていた。
そのまま、義時と比奈が共に生きていくことは難しかった。
今の義時にとって、数少ない理解者である比奈との別れはまた暗い影を落としたのではないか。

更に、息子の泰時(坂口健太郎)は、義時から殺すよう命じられていた一幡をかくまっていた。
泰時は、一幡を助けてほしい、そして、隠し続けることができないと分かっていたから打ち明けたのだろう。
そして、父である義時が子どもを殺すようなことはしない、と信じていたのかもしれない。
もう、義時に、そんな情けの心は残っていない。いや、そんな余裕はない、と言ったほうがいいか。

一幡は、善児(梶原善)のもとにかくまわれていた。
当然、義時は善児に一幡を殺すように命じる。が、善児の返事は「できねえ」。
理由は、一幡が自分を好いてくれているから。その理由に、善児がなぜためらいなく人を殺すことができたのか、想像できる。辛い。そして、一幡を殺さない選択をできないことも、辛い。

 
頼家は、修善寺に行くことに。修善寺に行くことに抵抗する頼家の姿が辛い。床に突っ伏し、泣きじゃくる頼家。
「父上、これでよいのですか?」
大切なものを全て奪われた頼家。もう、問いかけられるのは、亡くなった父・頼朝だけだったのかもしれない。

 千幡が鎌倉殿となったが、それで丸く収まるのか。
頼家の次男、善哉のもとには、生き残った比企尼が訪れていた。「北条を許してはならない」その言葉が善哉の心をむしばむのか。
災いの種が、今夜また、植えられた。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第33話ストーリー&レビュー}–

第33話ストーリー&レビュー

第33話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

鎌倉では政子(小池栄子)の次男・源実朝(嶺岸煌桜)を鎌倉殿とする新体制が始まり、北条時政(坂東彌十郎)が執権別当に就任。時政を裏で支えるりく(宮沢りえ)は実朝の正室を京から迎えることを進言し、娘婿である平賀朝雅(山中崇)を通じて後鳥羽上皇(尾上松也)に願い出る。しかし、御家人たちは派手に権力をふるう北条を敬遠。三浦義村(山本耕史)の忠告に義時(小栗旬)も苦笑する。一方、失意の源頼家(金子大地)は……

第33話のレビュー

地獄が上塗りされていく……。

 
源実朝が鎌倉殿に就任した。政子(小池栄子)と頼朝の次男で、乳母夫は実衣(宮澤エマ)。そして実朝を支える執権別当には時政(坂東彌十郎)が。やる気満々な時政だが、ほかの者たちからはりく(宮沢りえ)の言いなりだということは見え見え。

時政は家族が大事で、北条が大事。だけれど、いささか行き過ぎている気もする。

権力を振りかざしている様子が目に余るのか、義時は三浦義村(山本耕史)から嫌味を言われてしまう。嫌味で済めばいいが、御家人の不満が膨らんでいくのは想像に難くない。

 

新たな鎌倉殿が誕生したが、修善寺に送られた頼家(金子大地)は鎌倉に戻ることを諦めていなかった。
鎌倉に文を出し、自分の存在感を示そうとする。
さらに、修善寺にやってきた義村に鎌倉に攻め入るつもりがあるということを話す。義村なんて絶対に話してはいけない相手なのだが……。
義時(小栗旬)はもう少し様子を見よう、という。闇落ちしたように見える義時だが、できるだけ人を殺したくない、という気持ちはまだ変わっていないようだ。

しかし、頼家が後鳥羽上皇(尾上松也)に北条追討の院宣を願い出ていることが発覚する。これによって、義時は頼家を討たざるを得なくなってしまった。

義時はその任を善児(梶原善)に任せることに。
が、ここに来て、善児が宗時(片岡愛之助)を殺したのだということに気がつく。
共にいた時房(瀬戸康史)は自分が善児を討つと言うが、義時はそれを制する。
善児は必要な男だというと同時に、「私に善児を責められようか」という。
義時も、誰かにとって「大切な人」を殺めてきた。そして、善児が心を動かされた一幡を殺せと命じているのは他ならぬ義時だ。

義時から頼家を討つ話を聞いた泰時(坂口健太郎)は修善寺へ走る。頼家に逃げろと言うが、「いずれ自分は殺される」と言って聞かない。
そして、これから猿楽が披露されるから見ていけという。猿楽には善児が紛れ込んでおり、泰時が見破る。

が、泰時は敵わない。追い込まれる頼家。善児との一騎打ちになり、不利な状況に見えたが、善児の手が緩む。頼家が書いた「一幡」の文字を目にしたからだ。傷を負い、逃げようとした善児に切りかかる頼家。その頼家を背後からトウ(山本千尋)の刀が襲う。

師匠である善児を助けたのか。違う。トウは自分の両親の仇を討ちたかった。
「ずっとこのときを待っていた」と言い、善児を刺す。「父の仇」、「母の仇」。
修善寺に幽閉されていた源範頼(迫田孝也)と一緒に野菜を作っていたのはトウの両親だった。範頼が暗殺された際に、トウの両親も殺されたのだ。

仇であると同時に、育ての親でもある善児。トウの辛い心情が想像される。

頼家の死。享年23歳。悲しく短い一生。それでも、もしかたら最後に泰時が来たことは頼家にとっての救いになっていたのではないか、と思いたい。
誰も自分が回復したことを喜んでくれない。助けようとしてくれない。そんな中で、唯一、泰時は頼家を守ろうとした。
頼家を守れなかった泰時の心中を考えると悲しくなるが、このひとつひとつが将来の泰時を作っている。

義時は「泰時はかつての私なんだ」と言う。
似た経験をした親子が、時代によって、どのような道を歩むのか。それもまた、興味深い。

 

「大河ドラマ」なので、つい、「伏線が回収された」などと思ってしまうが、「鎌倉殿の13人」を見ていると、ひとりの人間の行動が数珠つなぎになっているのだと実感する。
ひとりの行動が運命を変える。たとえば、泰時が善児に一幡をかくまうように言っていなければ、善児は死ななかったのではないか、とか。頼家の人生はあまりにも多くの人が関わったせいで、早い死を迎えることになってしまったようにも思う。

それにしたって、今回はあまりにも地獄の詰め合わせが過ぎる……。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第34話ストーリー&レビュー}–

第34話ストーリー&レビュー

第34話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

源実朝(柿澤勇人)と後鳥羽上皇(尾上松也)のいとことの婚姻が決まり、政子(小池栄子)の心配をよそに喜ぶりく(宮沢りえ)。一方、京では後鳥羽上皇が源仲章(生田斗真)、慈円(山寺宏一)らと鎌倉の行く末について思いを馳はせていた。そんな中、北条時政(坂東彌十郎)から代々受け継ぐ惣検校職そうけんぎょうしきのお役目を返上するように求められた畠山重忠(中川大志)が、疑念を抱いて義時(小栗旬)に相談。その義時ものえ(菊地凛子)を……

第34話のレビュー

第34回のタイトル、「理想の結婚」ということで、それぞれの夫婦、結婚の在り方が描かれた。

すっかり成長した源実朝(柿澤勇人)の結婚が決まった。相手は後鳥羽上皇(尾上松也)のいとこだ。りく(宮沢りえ)や実衣(宮澤エマ)はノリノリだが、政子(小池栄子)は心配そうにしている。
政子としては、子どもの婚姻には良い思い出がない……というところはあるかもしれない。

当の実朝もあまり気が進まない様子。
泰時(坂口健太郎)にも妻と仲が良いのかと聞く。
それに泰時は「いつも尻に敷かれております」。仲が良いんだね、泰時……良いことだよ……。

また、御家人たちから武芸や学問などを学んでいる実朝。和田義盛(横田栄司)に誘われ、和田家で食事を摂ることに。そこではやはり義盛と巴(秋元才加)の仲睦まじい姿が。

実朝は果たして、理想の夫婦像を見つけることができるのか。

それにしても「女子とのあと腐れのない別れ方」を教えるのが三浦義村(山本耕史)とは……。
もっと教えることなかったんか、とも思うが大事である。

そして、義時にも縁談が。二階堂行政(野仲イサオ)から、孫娘ののえ(菊地凛子)を勧められる。

最初は渋る義時(小栗旬)は八田知家(市原隼人)に見極めを頼む。
そこは義村の出番では!?と思うが、場合によっては面白がりそうなので良くない。
見極めるのにふさわしい人物としては確かに八田殿しかいない気が。
今の義時に企みなしで助言してくれる人がなかなかいない。畠山重忠(中川大志)も良さそうだが、義時と少し似ている部分もありそうな気も。

仕方なしにのえに会ってみると、心をわしづかみにされてしまう義時。
あっという間にその気になってしまう。もちろん、八田もイチオシである。

そんな中で反対したのが泰時だ。比奈(堀田真由)がまだ出て行ったばかり、それも義時の自業自得ではないかと食ってかかる。さすがに腹に据えかねたのか、義時も険しい表情に。
そこに割って入ったのは泰時の妻・初(福地桃子)だった。泰時の頬をはたき、言葉を止めさせる。たぶん、初がやらなければ、義時と泰時の仲はさらに悪くなっていただろう。

で、のえは実際にどうなのか、という話だ。
視聴者目線で言うと、なんというか、話すことが嘘っぽいというか、耳障りの良い言葉ばっかり言っているというか。義時が差し入れたきのこを「きのこ大好き!」というのもわざとらしい。
と思ったら、案の定、のえには裏の顔が。
この裏の顔を見てしまったのが泰時だけ、というところがこじれそうだ。

それにしても、義時が好きでたまらなかったのは、きっと八重だけなのだろうな、と思う。

一見、ほのぼのとしたような今回だが、水面下では次なる地獄の伏線が張られていく。
執権となり、やりたい放題、賄賂もらいたい放題の北条時政(坂東彌十郎)。
時政に代々受け継ぐ惣検校職の役目を返還するように言われ、疑念を抱く畠山重忠。
京では源義仲(生田斗真)が平賀朝雅(山中崇)によからぬことを吹き込む。
さらにりくと時政の息子・北条政範(中川翼)の京での死。

正しき道を進もうとする人の命が奪われないように、と願ってやまない。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第35話ストーリー&レビュー}–

第35話ストーリー&レビュー

第35話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

源実朝(柿澤勇人)の妻になる後鳥羽上皇(尾上松也)のいとこ・千世(加藤小夏)が鎌倉へ到着。政子(小池栄子)らが出迎えるが、愛息・北条政範(中川翼)の凱旋を心待ちにしていたりく(宮沢りえ)は失意に沈んでいた。そんな中、娘婿・平賀朝雅(山中崇)が畠山重忠(中川大志)の嫡男・重保(杉田雷麟)への疑惑をりくに告げる。一方、朝雅の振る舞いについて重保から相談された義時(小栗旬)は、父・時政(坂東彌十郎)に……

第35話のレビュー

この苦しみを、誰に向ければいいのか。

 

鎌倉に、実朝(柿澤勇人)の妻となる千世(加藤小夏)が京からやってきた。しかし、本来、千世を連れて帰るはずだった北条政範(中川翼)の姿はない。京で亡くなった。

最愛の息子の死にりく(宮沢りえ)は深い悲しみにふける。そんなりくに、娘婿の平賀朝雅(山中崇)が畠山重忠(中川大志)の息子・重保(杉田雷鱗)が毒を盛ったのでは、と吹き込む。畠山は北条に恨みを持っている、と。しかし、実際に毒を盛ったのは平賀。重保は、平賀が毒を受け取るところを目撃していたのだ。

りくはこれを聞き、怒り狂う。畠山を討つべし、と。畠山家が恨みを晴らしたいのなら、正々堂々と討とうとするだろう。畠山重忠は、「坂東武者の鑑」と言われた人なのだから。

りくの言葉を受けて、北条時政(坂東彌十郎)はいきり立つ。この人は結局、りくが一番なのだ。義時(小栗旬)や時房(瀬戸康史)が必死になって説き伏せようとしても、りくの言葉でコロッとひっくり返る。どうしてそうなってしまったんだ、と拳を握ってしまうが、時政の本質は変わっていない。時代が変わったのだ。

一方、実朝は結婚に良い思いを抱いていなかった。もやもやとしたものを発散するため、泰時(坂口健太郎)を伴って和田義盛(横田栄司)の屋敷に赴く。前回、八田知家(市原隼人)らと訪れたときのことが楽しかったのだろう。

そんな実朝たちを連れて、義盛は歩き巫女(大竹しのぶ)の元へ訪れる。歩き巫女は泰時に向かって「双六が苦手だろ」という。小さいときから双六をすると具合が悪くなる泰時。もしかして、本当に上総広常(佐藤浩市)の生まれ変わりなんだろうか、「武衛」と泣いていたし。

実朝には「雪の日は出歩くな。災いが待っている」という。実朝は雪の日に殺されたというが、果たして。

 

和田家ですっかり夜更かしをしてしまった実朝。
御所に帰ってきた実朝に時政が近づく。畠山討伐のための文書に花押をもらうためだ。何が書いてあるかを隠し、花押だけを……中身を確認しなきゃダメだよ、実朝……と思うが、実朝にとってはきっといいおじいちゃんなのだろう。それに、夜更かしをして帰ってきて、みんなに心配をかけたばっかりだ。逆らうこともできなかったのだろう。
しかし、もし、自分の花押のせいで、畠山が討たれたとしたら、実朝はどれだけ心に傷を負うことになるか。

賄賂をもらって融通したり、こうやって騙して花押をもらってしまうところが本当に田舎というか、時代遅れというか、執権をやっていていい人ではないことは確かだ。

義時は、どうにか回避できると思っているが、重忠はそう思ってはいないようだ。戦は、起こる。そのときに、義時はどうするのかと問う重忠。
義時は答えられない。時政につくしかないからだ。それでいい、という重忠。が、「本当に鎌倉のためを思うなら、あなたが戦う相手は」と言う。そして、「あなたは分かっている」とも。義時が戦う相手は、重忠ではなく、時政だ。

中川大志が演じる畠山重忠が本当にすごい。柔らかな空気をまといながら、腹を括ったときのすごみ。
そして、美しい。ここに来て、その美しさが際立っている。
頭も良く、きっと未来の鎌倉を義時とともに支える人だったはずだ。そんな未来は、来ない。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第36話ストーリー&レビュー}–

第36話ストーリー&レビュー

第36話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

深まる北条時政(坂東彌十郎)と畠山重忠(中川大志)との対立。りく(宮沢りえ)を信じる時政は、源実朝(柿澤勇人)の下文くだしぶみを得て御家人を招集。三浦義村(山本耕史)、和田義盛(横田栄司)、稲毛重成(村上誠基)らが集い、対応を協議する。一方、手勢を率いて鎌倉を目指す重忠。板挟みとなった義時(小栗旬)は、政子(小池栄子)、時房(瀬戸康史)らと事態の収拾を図る。そんな中、父・義時を心配する泰時(坂口健太郎)は……

第36話のレビュー

どうしてこんなことになってしまうのだろう。

経緯を知っていても、そう思わずにはいられない。

 

謀反人とされた畠山重忠(中川大志)。

執権・時政(坂東彌十郎)の命のもと、義時(小栗旬)を大将に、三浦義村(山本耕史)、和田義盛(横田栄司)らが兵を率いて畠山討伐に動く。

本来ならば、避けられた戦だった。

もはや、時政……とりく(宮沢りえ)の暴走である。畠山家は何も悪くない。そもそも、りくは重忠をよく思っていなかったということもあるだろう。

重忠が実朝(柿澤勇人)と話せるように義時が取り計らうが、重忠の息子・重保(杉田雷鱗)が討たれたことでそれも叶わくなる。

大将となった義時は、せめて最後にもう一度説得を、と試みる。使者に立ったのは、和田義盛だった。
反発し合うことも多い2人だったが、似たところもある2人。

畠山討伐に、難色を示したのも義盛だった。時政たちが言っていることは分かるが、心のどこかで「どうして重忠が討たれなければならないんだろう?」という思いもあるのだろう。

説得できなければ、「そのときは腕相撲で勝負してみようと思う」と大真面目に義時たちに言うところがおかしくて、悲しい。

説得に来た義盛と、重忠は穏やかに言葉を交わす。
やがて重忠は叫ぶ。

「戦など誰がしたいと思うか!」

それでも戦をするのは、伝えなければならないことがあるから。

そんな重忠に、義盛は「もうちょっと生きようぜ。楽しいこともあるぞ」と言うのが悲しすぎる。
説得できなかったから、腕相撲をしようとする義盛に「腕相撲は、しない」と重忠が言うのも悲しい。
だって、次に義盛が何を言うかわかるほど、一緒の時間を過ごしてきたのだから。
(だからこそ、義盛がどういう戦法をとるのかわかってしまっているわけだけれど……)

 
畠山重忠の乱。
最後は重忠と義時の一騎打ちだった。

泥臭く、殴り合う。

重忠は義時を討てただろう。しかし、しなかった。
義時にはまだやることがあるのだと、重忠は分かっていたから。
義時がやらねばならないことの重さを伝えるために、戦をしたようにも思う。

そして、畠山家の誇りのために。

前回からの中川大志の気迫がすさまじい。
涼し気な表情をゆがませて、怒りをこぼれさせ、拳を、刀を振るう。

これまで、静かな佇まい、穏やか微笑んできた姿があったからこその衝撃。
義時を殴り倒し、馬に乗って立ち去る姿、表情は形容しがたい美しさがあった。
忘れられないシーンを目にしてしまった。

そして、義時の目からこぼれる涙。
戦いを目にした泰時(坂口健太郎)は何を思ったか。
 

この重忠の死が、時政を追い詰めていくことになる。
御家人たちは、重忠の潔白を信じている。そして、重忠の戦いの様が潔白を証明していた。
時政は、重忠の首を確認することもしなかった。いや、できなかった。
その瞬間に、義時は時政を見限ったのかもしれない。
これが、「北条義時」の完成か。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第37話ストーリー&レビュー}–

第37話ストーリー&レビュー

第37話のストーリー

>>>「鎌倉殿の13人」の画像をすべて見る

政子(小池栄子)、大江広元(栗原英雄)らと新体制を始動させた義時(小栗旬)は、泰時(坂口健太郎)を自身のそばに置き、強い覚悟で父・北条時政(坂東彌十郎)と向き合う。一方、時政を蚊帳の外に置かれ憤慨するりく(宮沢りえ)は、娘婿・平賀朝雅(山中崇)を担いで対抗することを画策。三浦義村(山本耕史)を誘い、反撃ののろしを上げる。北条家内の対立が激化する中、源実朝(柿澤勇人)は和田義盛(横田栄司)のもとへ……

第37話のレビュー

畠山重忠を喪ったショックから抜け出せないが、立ち直るまで待ってくれているほど鎌倉はそんなに優しくはない。

執権・北条時政(坂東彌十郎)を蚊帳の外に置き、新たな体制で動き始めた義時(小栗旬)。政子(小池栄子)を中心とし、大江広元(栗原英雄)らと共に鎌倉を動かしていくことになる。

しかし、そんな状況を見てりく(宮沢りえ)が黙っているはずがない。実朝(柿澤勇人)を退け、娘婿の平賀朝雅(山中崇)を鎌倉殿に押し上げる計画を立て始める。正直に言って、めちゃくちゃではないか。

そんなことは、きっと時政は分かっている。しかし、りくはわからない。
いざとなれば、政子や義時を討つことにもなる、というりく。
自分が子を喪った悲しみを知っていても、他人の気持ちを慮ることができなくなっている。
複雑な表情を浮かべる時政を押しに押しまくる。そして、時政はりくが一番大事なのだ。たとえ、計画がうまくいかなくても、自分の命をかけることになっても、時政はりくの願いをかなえようとする。

そして、その計画に、三浦義村(山本耕史)を巻き込む。
義村は、自分に勝ち目と得があればそちらに寝返ることもあり得そうなのだけれど、いまのところ、義時に勝るものがないのだろう。時政の案にのったフリをして、義時にそっと計画を伝える。

 
実朝を自身の屋敷に連れてこさせ、そこで出家するように起請文を書かせようと企む時政。
その前に、時政は政子のもとを訪れる。りくに話していた「やっておきたいこと」である。
政子と義時、実衣(宮澤エマ)、時房(瀬戸康史)と宴を開く。
そこでブツブツと「オンベレブンビンバ、オンベレブンビンバ……」とつぶやく。先週から多くの視聴者を戸惑わせていた「オンベレブンビンバ」である。
実は、大姫が唱えていた呪文「オンタラクソワカ」のことだった。
「オン」しか合っていない……。そのあともっとひどい……。

確か、「元気になるおまじない」だったか。
しかし、誰も正しくいうことができず、その場はオンタラクソワカの大喜利状態になる。おもしろいシーンのはずなのに、これが全員が揃う最後の場面だと思うと悲しくて仕方がない……。

その後、実朝は義村に連れられて、時政のもとへ。起請文を書かせようとするが、実朝は拒否する。
自分が書いたことで、畠山重忠が亡くなっている。きっと、彼の心にも残っているはずだ。
そして、出家する旨を書くように言われても政子や義時に相談をしたいと頑なに言う。
頼朝とも頼家とも異なる鎌倉殿。実朝は少しずつ、一歩ずつ、鎌倉殿になるために学んでいる。

義時は、時政の謀反を宣言。北条、骨肉の争いへ発展するのか。
りくがいなければ、歴史は変わったのかもしれない。でも、時政はりくを愛してしまった。
今、少し不安なのは、のえ(菊地凛子)がちょっとりくと似ているような気がすること…気のせいであれ……

それにしても、今回は大姫や武衛の名が出てきたり、なんとも物悲しい気持ちになってしまった。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る

–{第38話ストーリー&レビュー}–

第38話ストーリー&レビュー

第38話のストーリー

激しさを増す北条親子による主導権争い。北条時政(坂東彌十郎)とりく(宮沢りえ)は、三浦義村(山本耕史)に命じて源実朝(柿澤勇人)を屋敷へと連れ込み、鎌倉殿の座を娘婿・平賀朝雅(山中崇)へ譲るように迫る。対する義時(小栗旬)は、泰時(坂口健太郎)、時房(瀬戸康史)、八田知家(市原隼人)らを引き連れ、時政の屋敷を包囲。攻め込む機会を慎重に見定めていた。張り詰めた空気が鎌倉を覆う中、政子(小池栄子)は……
放送週に追記します。

第38話のレビュー

実朝(柿澤勇人)を自身の屋敷へと連れ込んだ北条時政(坂東彌十郎)とりく(宮沢りえ)。
鎌倉殿の座を娘婿・平賀朝雅(山中崇)に譲るよう迫るが、実朝は頷かない。
祖父である時政と、自分だけで決めていい事柄ではないと実朝は分かっていたのだ。

一方、義時(小栗旬)は、泰時(坂口健太郎)、時房(瀬戸康史)、八田知家(市原隼人)と共に時政の屋敷を包囲する。今日も元気に八田殿の胸元がはだけているなあ! というところに注目し、気を紛らわせねばしんどくなってきてしまう親子の対立。

でも、時政は分かっているのだ。こんな状態になってうまくいくわけがないことを。だってこれはもうまぎれもなく、謀反なのだから。

義時は時政の首を取ることを考えていた。
これまでの謀反人だってそうしてきた。たとえ、謀反を企んでいなくても。身内だからといって命を助ければ御家人たちにしめしがつかない。
しかし、政子(小池栄子)が、実朝が、時政の命を助けるように乞う。義時とて、その2人の意向には逆らえない。結果、時政は出家し、りくと共に伊豆に帰ることとなる。

義時と時政の最後の親子の対峙は圧巻だ。
涙をこぼしながら、自分の気持ちを伝える義時。もっと、父と共にいたかった。しかし、それを叶わない願いとしたのは父自身だと。
そんな父に対して「お恨み申し上げます」。
本当に、義時は悔しくて仕方がないのだろう。
そして、本当は権力を握るようなポジションに着きたくない人なのに。

 
伊豆に流罪というところで話は落ち着くが、義時はりくにトウ(山本千尋)を差し向ける。
時政をそそのかしたのはりく。そのりくを暗殺しようと企んだのだ。
しかし、その企みはたまたま居合わせた三浦義村(山本耕史)によって阻まれる。トウが暗殺者だと見破ったのだ。
そのまま義村とトウの戦闘へ。義村は正々堂々と戦って勝てる相手ではない。
義村が有利に進んだ戦闘。トウを後ろから羽交い絞めにした状態で言う。どうするつもりか、義村! と思いきや、「俺の女にならないか」。いやなんでやねん。本当に何を考えているかがわからない人だ。

しかし、この義村は義時にとってますます重要な人物となっていく予感。
自身がその座を奪うために父・時政を執権から追い落としたようにも見える義時。
そんな誤解を解くために、義村は茶番だってやる。

 ついに、執権・北条義時が誕生した。
義時が目指す鎌倉とは一体どんなものなのか。
そろそろ人が亡くならない、平和な鎌倉が見たいものだが、まだまだ難しそうである。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

→元記事はこちら

→目次へ戻る

「鎌倉殿の13人」をU-NEXTで見る