<鎌倉殿の13人・鎌倉幕府成立編>11話~26話までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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2022年のNHK大河ドラマは「鎌倉殿の13人」。三谷幸喜 脚本×小栗旬 主演で描く北条義時の物語。三谷幸喜曰く「吾妻鏡」を原作としており、そこに記されきれていない部分を想像と創作で補い、唯一無二のエンターテイメント大作に仕上げているという。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事では鎌倉幕府成立、源頼朝・義経兄弟の対立などが描かれた第11話~26話までの記事を集約。1記事で数話分の感想を読むことができる。

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  1. もくじ
  2. 第11話ストーリー&レビュー
    1. 第11話のストーリー
    2. 第11話のレビュー
    3. ■義経の嘘
    4. ■頼朝の嘘
    5. ■頼朝と3人の女たち
  3. 第12話ストーリー&レビュー
    1. 第12話のストーリー
    2. 第12話のレビュー
    3. 思惑が絡み合った亀の前事件
    4. ここまでするのが義経
    5. 一方、八重は……
    6. 義村は何を言っているのか
  4. 第13話ストーリー&レビュー
    1. 第13話のストーリー
    2. 第13話のレビュー
    3. 下がるばかりの頼朝の支持率
    4. 木曽義仲の器は?
    5. 頼朝と義経、そんなところは似なくていいのだ
    6. 義時、初恋実る
  5. 第14話ストーリー&レビュー
    1. 第14話のストーリー
    2. 第14話のレビュー
    3. ■義仲、理不尽な目に遭う
    4. ■義経、出立
    5. ■揺れる義高の命運
    6. ■癒しは八重との時間だけ……
  6. 第15話ストーリー&レビュー
    1. 第15話のストーリー
    2. 第15話のレビュー
    3. 失敗する謀反
    4. 上総之介、逝く
    5. 頼朝にあるのは力か、恐怖か
    6. 政子、義時の成長
  7. 第16話ストーリー&レビュー
    1. 第16話のストーリー
    2. 第16話のレビュー
    3. 義経、イキイキする。
    4. 義仲、逝く。
  8. 第17話ストーリー&レビュー
    1. 第17話のストーリー
    2. 第17話のレビュー
    3. 義高、散る。
    4. 一方、義経は……
  9. 第18話ストーリー&レビュー
    1. 第18話のストーリー
    2. 第18話のレビュー
    3. いざ、壇ノ浦へ
    4. 義経の本当の姿は?
  10. 第19話ストーリー&レビュー
    1. 第19話のストーリー
    2. 第19話のレビュー
    3. こじれる頼朝と義経の関係
    4. 支える人がいない。義経の孤独
    5. まだ希望は捨てていなかった、が……
  11. 第20話ストーリー&レビュー
    1. 第20話のストーリー
    2. 第20話のレビュー
    3. 義時、平泉へ
    4. 女たちのそれぞれの最期
    5. 戦の天才、逝く
    6. 義時がこれから進む道
  12. 第21話ストーリー&レビュー
    1. 第21話のストーリー
    2. 第21話のレビュー
    3. ようやく幸せを得た八重
    4. 義時の最愛の人、逝く
  13. 第22話ストーリー&レビュー
    1. 第22話のストーリー
    2. 第22話のレビュー
    3. 頼朝が征夷大将軍に
    4. 不穏な風が吹く
  14. 第23話ストーリー&レビュー
    1. 第23話のストーリー
    2. 第23話のレビュー
    3. 成長著しい金剛と万寿の登場
    4. 頼朝が死んだ? デマが混乱を呼ぶ
  15. 第24話ストーリー&レビュー
    1. 第24話のストーリー
    2. 第24話のレビュー
    3. いい人だけでは生き残れない鎌倉
    4. 悲しき姫、大姫
  16. 第25話ストーリー&レビュー
    1. 第25話のストーリー
    2. 第25話のレビュー
  17. 第26話ストーリー&レビュー
    1. 第26話のストーリー
    2. 第26話のレビュー

もくじ

・第11話ストーリー&レビュー

・第12話ストーリー&レビュー

・第13話ストーリー&レビュー

・第14話ストーリー&レビュー

・第15話ストーリー&レビュー

・第16話ストーリー&レビュー

・第17話ストーリー&レビュー

・第18話ストーリー&レビュー

・第19話ストーリー&レビュー

・第20話ストーリー&レビュー

・第21話ストーリー&レビュー

・第22話ストーリー&レビュー

・第23話ストーリー&レビュー

・第24話ストーリー&レビュー

・第25話ストーリー&レビュー

・第26話ストーリー&レビュー

第11話ストーリー&レビュー

第11話のストーリー

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鎌倉では、源頼朝(大泉洋)の新たな御所が完成。坂東武者に平家の旧領を恩賞として与えるなど着々と体制が整えられ、北条義時(小栗旬)も慌ただしい日々を送っていた。だが、りく(宮沢りえ)は、頼朝の舅である夫・時政(坂東彌十郎)の処遇の低さに不満を募らせる。一方、都では平清盛(松平健)が敵対勢力の掃討に乗り出し、その苛烈さに人々が恐れおののく。そんな中、平家討伐を焦る義経(菅田将暉)は集った兄たちの前で……

第11話のレビュー

平清盛(松平健)が64歳でこの世を去った。宗盛に「頼朝を殺せ、儂の墓前にあやつの首を供えるのだ」と言い残して。
清盛の死の知らせは、「鎌倉殿」となった源頼朝(大泉洋)のもとにも届く。
「清盛の首をこの手でとることは叶わなかったが、平家のとどめは儂がさす」
そして忠実な宗盛は後白河法皇(西田敏行)に、政権を返上しつつ、頼朝追討の院宣を欲する。もちろん、清盛の遺言もあるだろうが、鎌倉に新たな政治的基盤ができることに恐れもあったのかもしれない。

■義経の嘘

「早く平家を討とうぜ」と気が急く源行家(杉本哲太)。頼朝だって一気に攻め入りたいのは山々だが戦には機もあるし、飢饉ゆえに出兵もままならない。
自分を相手にしない頼朝をよそに、行家は出兵を企てる。義経(菅田将暉)たちに話を持ち掛けるが、頼朝への思いもあり、誰も動かない。

そんな中、義経が義円(成河)をそそのかす。頼朝の信頼を得たい義円の心を焚き付け、行家と共に行かせる。
ことごとく、これまで抱いていた義経のイメージと異なっておもしろい。

頼朝に「平家との大戦の前にすべきことは何か」に問われた際のこと。ふてくされているような義経。そんな彼を「九郎の兄上を思う気持ちどうわかってあげてください」と義円が言ったときの義経の顔……。

プライドが高いし、独占欲もおそらく強い。義円をそそのかすときにも、「自分が一番兄上のことをわかっている」という気持ちを隠せていなかった。
まんまと義経の言葉を受けて、義円は義経に頼朝宛の手紙を託して出立してしまう。しかし、義経はもともと手紙を取り次ぐ気などはなかった。預かった手紙をその場に破り捨てていく義経。いや、その破り捨てた手紙、誰かに見つかったらどうするんだ、と思っていたら案の定、その場面を見られ、手紙は修復され、義経の目論見は頼朝の知るところとなる。
頼朝が言った「心を磨いてくれ」に全てが詰まっている。

その後、義円はむごい方法で討たれてしまう。純粋に頼朝の力になりたい、信頼を得たいと思っていたのに、あっという間に物語から退場……。誠実なだけの人間はこの時代を生き抜けないということなんだろうか。

■頼朝の嘘

政子(小池栄子)が懐妊する。今度こそは男の子を、と願う北条家と頼朝。全成(新納慎也)は男児出産のための祈祷を行うが、「千鶴丸が成仏しなければ男子が生まれない」「千鶴丸を殺した人物が死ななければ」という発言が。
結果、千鶴丸の殺害を命じた伊東祐親(浅野和之)が祐清(竹財輝之助)と共に自害を装って殺される。それも、千鶴丸殺害の実行犯である善児(梶原善)によって。もともと祐親たちは、恩赦で解放される予定だった。
どういうことかと詰めよる義時(小栗旬)に頼朝は「祐親は(恩赦を)よしとしなかったのだろう」と嘯く。
観ていると、因果応報という言葉が頭を過るし、源氏の今後を憂いてしまう。

でも、祐親が亡くなったところで、実行犯は生きているわけで。
全成はさらに「殺した人間が生きていれば、男児が生まれても長くは生きられない」と言っていたが、善児の行く末はいかに。というか、どれだけの人間を暗殺するんだ、善児……。

■頼朝と3人の女たち

冒頭できっぱりはっきり八重(新垣結衣)にフラレてしまった義時。なんで申し込む前に自信満々に受け入れてもらえると思っていたんだ……(義村含む)。フラレて本気泣き。よしよし、ドンマイ、義時……。
八重も義時と一緒にいるほうが幸せになると思うのだが、変わらず想いを寄せる相手は頼朝だ。

そんな頼朝のそばに控えるのは亀(江口のりこ)。そして、頼朝の妻としてふさわしい振舞いを身に着け、貫禄も増した政子。亀の振舞いはなんというか、えぐい。自分が愛されたいという欲が強い。そして頭が良いから困る。八重は耐え、政子は本妻の余裕を見せているようでもあるけれど……。
頼朝の好きなタイプの女性、バラバラだな! と思っていたけれど、なんというか、芯の強い女性が好きなのかもしれない。でなければこうはならない。

次回、「ここまでするか!?」……ではなく「亀の前事件」。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第12話ストーリー&レビュー}–

第12話ストーリー&レビュー

第12話のストーリー

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北条義時(小栗旬)から父・伊東祐親(浅野和之)と兄・祐清(竹財輝之助)の死を告げられ、憤る八重(新垣結衣)。義時は八重をいさめ、源頼朝(大泉洋)から与えられた江間へと八重を送る。政子(小池栄子)が懐妊し頼朝の嫡男誕生への期待が高まる中、比企能員(佐藤二朗)が比企尼(草笛光子)を伴い鎌倉に出仕。さらに、三善康信(小林隆)から推挙された官僚・大江広元(栗原英雄)らが都から下向し、新たな関係が動き出す……

第12話のレビュー

予告映像で映し出された源頼朝(大泉洋)の「ここまでするかぁ!?」に期待が高まっていた「亀の前事件」。なるほど、こうくるか! という展開だった。

思惑が絡み合った亀の前事件

男の子を産んだ政子(小池栄子)。吉報に北条家も鎌倉も湧くが、政子が出産のため、御所を離れているのをいいことに、頼朝は側女の亀(江口のりこ)のもとへ通っていた。亀に家も与えており、そこに呼ばれた北条義時(小栗旬)は驚きの表情を見せる。そんな義時に頼朝は「寂しいから」とのたまう。御所に1ヶ月は帰ってくるな、と言ったのは自分のくせに……!

もちろん、義時はそのことを誰にも言わないが、頼朝の異母弟・阿野全成(新納慎也)が亀の存在を実衣(宮澤エマ)に漏らす。実衣が黙っていられるはずがない。源範頼(迫田孝也)の耳に入り、北条時政(坂東彌十郎)とりく(宮沢りえ)にも伝わる。

政子のことをあまりよく思っていないりく。懲らしめてやろうと政子にわざと亀の存在を漏らし、後妻打ち(うわなりうち)で仕返ししては? と提案する。都では「前妻(政子は前妻ではないが)は後妻の家を打ち壊しても構わないの」と、りく。いや、やることがえげつないな!
苛立ちが収まらない政子はその話にのる。最初は時政に頼んでは、とりくは言うが、父を巻き込みたくない政子は首を横に振る。結果、りくの兄・牧宗親(山崎一)が担うことに。
ちょっと壊すだけのはずだったが、義時が亀の屋敷の見張りに義経(菅田将暉)を立てたばっかりに……。

ここまでするのが義経

政子に亀の屋敷の場所を教えてしまい、焦った義時。亀を避難させ、義経を見張りに立たせる。
しかし、やってきた牧から事情を聞いた義経は、なんと自身も後妻打ちに加わり、屋敷に火を放つ……!
誰もそこまでやれとは言っていない。
が、義経は政子に懐いている描写がここまでにも幾度となくあった。後妻打ちは慕っている政子の願い。政子がそんなことを考えたのは頼朝が浮気をしているせい、政子を苦しめている亀に腹が立つ! もちろん、義経の中には、頼朝に冷遇されているという鬱憤もあっただろう。苛烈な表情が多い義経だが、政子の前では子どものようだった。亀の屋敷を徹底的に壊すのは義経の中では正義なのだ。

誰が実行犯なのか隠そうとするものの、頼朝の周りには優秀な人間が集まってきている。1分で真相がバレた。義経は謹慎、そして牧は髻(もとどり)を切られることに。髻を切られる牧を見る義経が驚愕の表情を浮かべていることから、どれだけ屈辱的な仕打ちなのかがわかる。

頼朝は随分とご立腹のようだけど、悪いのは頼朝じゃないか? 亀にだけいろいろな怒りが向いてしまっているのはおかしくない? と思っていたら、りくと政子から猛反撃に遭う。
「咎めるのは夫のふしだら、夫の裏切り」という2人の言葉に、そうだそうだ! と思っていたら、頼朝はタジタジになったあと、ブチギレる。「源頼朝を侮辱するのは許さん!」となったところで、黙って聞いていた時政が「俺の身内に対してなんてことを言ってくれるんだ!」とさらにブチギレる。
時政は自分の言葉に後悔するが、諦めたように、「鎌倉は窮屈でかなわない」「田舎に帰って米を作ります」と立ち去る。

このシーン、ものすごくポップに描かれているが、頼朝にとっては大ごとだ。勢力図も変わるし、時政が引退となれば、北条家の家督相続の話も出てくる。
笑っていられる状況ではなかった。

一方、八重は……

父・伊藤祐親(浅野和之)と兄・祐清(竹財輝之助)が亡くなり、ひとりになった八重(新垣結衣)。義時はそんな八重を説得して、頼朝から与えられた江間に送る。
「寂しいだろうから、2日に1度は会いに来る」と言えば「1ヶ月に1度でいいです」と言われるし相変わらず不憫な義時。
が、八重はすぐに、鎌倉に戻りたい、頼朝のそばにいたいと言い出す。義時はたまらず、祐親と祐清はおそらく頼朝の企みだと話すが、八重の心は頑なだ。
「それを私に言ってどうするのです」「千鶴丸の仇を討ってくださった」
そんなに頼朝がよいですか……? となるが、頼朝が良いのだろう。頼朝でないとダメだと思っているのだろう。

八重、政子、亀、それぞれ強いが強さの種類が違う。ただ、自分が幸せになるための強さではない気がして複雑だ。

義村は何を言っているのか

前回は八重に秒でフラれ、「フラれてからが勝負だ」と言っていた義村だが、今回は亀に向かって「俺はどうだ」と口説く。「女なら誰でもいいのか!」という義時に「誰でもではない。頼朝の女だ。その時初めて俺は頼朝を超える」と返す義村。「難しすぎてもう分からん」と義時も言っていたが、観ているこちらもよくわからない。

口説かれた亀は亀で「悪くない」と答えているし……。そんな亀は、屋敷がなくなったため、上総広常(佐藤浩市)の屋敷でかくまうことに。
色目を使ってくるという亀に「ああいう女は好かねえ」と言う上総広常に妙な信頼感を持ってしまった。なんだかんだで義時に頼まれてかくまってあげているのもイイ。さらに、都に行ったときにばかにされたくないからと字の練習をしているのも好感度が高いし、そもそも義時が愚痴をこぼしに行く相手なんだなあ、と思うと和む。

大変な回だったが、それぞれの人間味が感じられた。だからこそ、回を追うごとに辛くなっていくのだが……。

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–{第13話ストーリー&レビュー}–

第13話ストーリー&レビュー

第13話のストーリー

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政子(小池栄子)が男児を出産し源頼朝(大泉洋)の嫡男誕生に沸く鎌倉であったが、頼朝の浮気が大騒動に発展。激怒した北条時政(坂東彌十郎)は伊豆へと戻り、これを比企家の好機と捉えた能員(佐藤二朗)は源義経(菅田将暉)らに近づく。そんな中、義時(小栗旬)は八重(新垣結衣)のことを一途に思い、鎌倉と江間を往復する日々を送っていた。一方、平家に敗北し再起を図る源行家(杉本哲太)は木曽義仲(青木崇高)を頼り……

第13話のレビュー

いよいよ木曽義仲の登場だ。

下がるばかりの頼朝の支持率

「頼朝の浮気は……」で始まった今夜の大河。
そんな始まり方、ある? と思うが、浮気が自分の足元を大いに揺るがすことになった。
北条時政(坂東彌十郎)が伊豆に帰ったことは、源氏方にとってみれば一大事だ。大変な後ろ盾を失ってしまった。頼朝(大泉洋)は戻ってくるよう、躍起になるがどうにもこうにも、である。

さらに、頼朝にすげなくされた源行家(杉本哲太)は木曽義仲(青木崇高)を頼る。頼朝が行家を突き放すのはよくわかる。義円(成河)を戦に巻き込み、死なせたというのに、責任を感じるどころか所領を要求してくる、とくれば頼朝の苛立つのも仕方がない。
おまけに、頼朝に次いで勢力を持つという義仲のところに駆け込んだとなれば、その面倒くささたるや。
義仲の動向が気になる頼朝は範頼(迫田孝也)を使者に立て、義時(小栗旬)と義村(山本耕史)が付きそうこととなる。

木曽義仲の器は?

最近、頼朝のあまりいただけない姿を見ているせいだろうか、義仲の器の大きさが際立つ。
「鎌倉に攻め入るつもりはない、源氏で争ってどうする」と言う義仲に対して、義時たちが要求するのは鎌倉への人質だ。義時は行家を、と言うが、義仲は自分を頼ってきた者を差し出すようなことはしない、ときっぱり。聡明そうで、周りからの信頼も厚く見える義仲はついていきたい、という気持ちになってしまう。頼朝の情けなさが目立っているばっかりに。
行家の代わり、息子の義高(市川染五郎)を鎌倉に差し出すと言う。何を考えているかは分からないが、それが義仲の誠意。
義時も「源氏同士で争うようなことがなければ無事に帰れますから」と笑顔で言う。そんなフラグを今から立てないでほしい、怖い。

キラッキラの義高……。行家が鎌倉に来るよりも、義高のほうが和むのではないかと思うが、そんな生易しい世界ではない平安が憎い。

頼朝と義経、そんなところは似なくていいのだ

実は義仲のもとへは義経も同行する予定となっていた。が、北条時政が伊豆に帰ったのをいいことに、比企家が源氏に取り入ろうとしていた。範頼と義経(菅田将暉)に頼朝の乳母・比企尼の孫娘たちを紹介。範頼はすぐに立ち去るが、まんまと引っ掛かる義経。翌朝、義仲のもとに出立する予定だったというのに、寝坊してしまい後れをとる。地団太を踏んで一緒に行きたい、戦がしたい!(戦に行くわけではない)とダダをこねていたというのに、何をやっているんだか。

一方、頼朝は鹿狩りと言って亀(江口のりこ)のもとを訪れる。が、そこにいたのは政子(小池栄子)。綺麗な二度見を決める頼朝。仕方なく立ち去るが、頼朝も義経も何をやっているんだか……。
このあとの政子と亀のやりとりがいい。身を引くと言う亀は和泉式部の歌を引用し、りくから渡された和泉式部の日記は読んだか? と問いかける。大事なのはこれから、鎌倉殿の御台所としてふさわしいのかよく考えなさい、足りないものがあったら補え、と心得を説くのだ。亀の表情の圧と言ったら。もはやスーパーリッチじゃないですか……。
政子も、普通なら激昂してもいいところかもしれない。しかし、「さしあたって何を読めばいいでしょうか」と聞く。こういうところが政子たる所以なのかもしれない。亀も政子も恐ろしい女だ。

義時、初恋実る

亀のところからすごすごと帰……れない頼朝。立ち寄ったのは八重(新垣結衣)のところだった。頼朝! お前どのツラ下げて! と言ってしまいたくなる。そしてもしや八重は流されて……!? と思いきや、頼朝の指を噛み追い返す。是非もなしと言って帰る頼朝。さっさと帰れば良いものを!

そしてその様子を見ていた義時。
今週の義時はせっせと八重のもとにおいしい食材を届けていた。八重に「怖い」と言われる行動は一歩間違えれば現代のストーカーである。

しかし、八重は頼朝が来たことで気がついてしまった。自分を都合のいい女扱いしかしていない頼朝。一方で、ただただ自分の気持ちを真摯に伝えてこようとする義時。義時だって自分の気持ちを押し付けているだけのように見えたけれど、八重が笑顔ならそれでいい、幸せな背中を見ていたい、という言葉に八重の気持ちも動く。
微笑み、指をついて義時に向かって「おかえりなさいませ」と言う。
八重の言動に涙ぐむ義時。長年の想いが成就した瞬間である。見方を変えれば、義時も怖いと思うんだけれど、義経、頼朝を見た後だとなんとも……。幸せになってくれ、八重……。

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–{第14話ストーリー&レビュー}–

第14話ストーリー&レビュー

第14話のストーリー

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嫡男・義高(市川染五郎)を鎌倉へと送った木曽義仲(青木崇高)は、平家の追討軍を撃退して上洛。敗れた平宗盛(小泉孝太郎)は、三種の神器とともに都を落ち延びる。義仲の活躍に焦る源頼朝(大泉洋)であったが、義仲と後白河法皇(西田敏行)との関係が悪化すると、弟・義経(菅田将暉)を大将とし派兵することを決断。しかし、利益のない戦に御家人たちが不満を募らせる。そんな中、義時(小栗旬)は……

第14話のレビュー

■義仲、理不尽な目に遭う

颯爽と登場し、頼朝(大泉洋)よりも上司にふさわしいのでは? と視聴者に思わせた木曽義仲(青木崇高)。
倶利伽羅峠に出陣、平家の軍を撃退する。その勢いのまま、京へと上り後白河法皇(西田敏行)と会う。
義仲は、義理人情に厚い真っすぐな男だが、作法などは知らない。三種の神器も知らない。三種の神器を取り戻すまで、自分の刀を預けておく! と意気揚々と言うが、京にいる人たちにとってはそんな行動も不可解だ。
京の者たちにとって大切なものを取り返してくるまでに、自分の大事なものを預けておくから、という真っすぐな心根も通じない。結果、後白河法皇の心は離れていく(そんな勝手な)。

義仲は投げられた言葉はそのまま受け取る。ゆっくりと休め、と言われれば、ゆっくりと休む。察するなど知らん、という話である。が、これがどんどん義仲を追い詰めていくことになる。少ない軍勢で平家討伐に出陣するが、兵が少ないために苦戦を強いられる。
一方、頼朝は鎌倉にいながらにして、文を送ったり、引き出物を送ったりしてうまい具合に後白河法皇に取り入る。おかげで流罪を解かれ、官位も戻され、東海道・東山道も軍事支配権も得る。
東山道には義仲の信濃も含まれている。義仲がこれをよしとするはずがない。さらに、京では、義仲が平家と通じているという噂が流れていた。
怒った義仲は止めようとした後白河法皇の近習・平知康(矢柴俊博)に怪我をさせながら院御所に押し入るが、これが謀反と捉えられてしまう。

■義経、出立

回を追うごとに、個人的な頼朝の好感度は下がっているのだが、頼朝は「政治」をやっている。義仲のように力押しはしない。文で、引き出物で「うまいことやる」。後白河法皇の信頼を得て、いざ出陣、となるが、今度は鎌倉にも問題が。御家人たちが、頼朝と義仲の身内争いに手を貸す気がない。北条時政(坂東彌十郎)が伊豆に帰ったことがジワジワと効いてきている。義時(小栗旬)では如何ともしがたいのだ。

兵力が少ない中、義経(菅田将暉)が先発隊として京へと向かうことになる。頼朝に命じられたときの義経の喜々とした顔よ……本当に戦がしたいのだ、この人は。
そして、頼朝もなんだかんだ言って、最後に信用できるのは身内だと言う。

義経出立の日、頼朝とふたりで矢を引きながら話す。今まで兄弟で語ることがなかった、戻ってきたらたっぷりと話をしようと頼朝。兄のことが好きな義経、ワクワクしながら矢を射ると、すでに的に刺さっていた頼朝の矢を弾き飛ばしてしまう。慌てる義経に頼朝は良い良い、と笑っていたけど、それが怖い。フラグでしかない……。

■揺れる義高の命運

義経が義仲討伐に出立する、イコール、大姫(落井実結子)の許嫁として鎌倉に入った義高(市川染五郎)も安全ではない。
美しい義高に大姫も表情を輝かせる。政子(小池栄子)に「良いお顔立ち」と言われて素直に「ありがとうございます」と返せる辺り、言われ慣れているのだろう。そして、義仲の息子らしく、性格も良く、義時や坂東武者たちとも打ち解けていく。

が、穏やかな日はあまりにも短い。義経の出立を複雑な面持ちで見つめる義高。そんな義高に義経は「いつかやろうと思っていた」と木箱を差し出す。中に入っていたのは蝉の抜け殻。義高が蝉の抜け殻を集めていると聞いて、のことだろう(聞いた瞬間はドン引きの表情をしていたが)。これから義高の父・義仲を討ちにいくことを踏まえての行動だ。義経は別に非情な人間ではない。子どもには優しいように思う。戦が大好きでぶっ飛んでいる人物だったら観ている側もある意味、気楽なのだが、義経という人は、複雑だ。

しかし、義高は義時に「義経が不憫」と漏らす。父上に戦で勝てる者はいない、もう会うことはないだろう、と。笑顔で蝉の抜け殻を受け取りながらそんなことを考えていたのか、と思うと恐ろしい子である。

■癒しは八重との時間だけ……

そして、頼朝が他にも抱えているのが鎌倉の内部にある爆弾。御家人たちによる反頼朝派だ。いまは他愛もない話をしているだけだが、統率力のある者が加わると太刀打ちできない。
統率力のある者。それは上総広常(佐藤浩市)だ。義時は大江広元(栗原英雄)の頼みで、広常に御家人たちから誘いがあったらのってほしい、と伝える。
「どういう了見だ」
視聴者も知りたい。どういうことだ。嫌な予感しかない。

殺伐とフラグが立ちまくる中でほのぼのとしたのは八重(新垣結衣)と義時の関係だ。笑顔の八重に見送られる義時。更に、八重のおなかには子どもがいる様子も途中描かれた。2人の打ち解けた様子によかったねぇ、義時……と和まずにはいられない。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第15話ストーリー&レビュー}–

第15話ストーリー&レビュー

第15話のストーリー

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源義経(菅田将暉)率いる一軍が迫っていると知った木曽義仲(青木崇高)は、後白河法皇(西田敏行)を捕らえて京に籠もる。一方、鎌倉では御家人たちが謀反を計画。上総広常(佐藤浩市)も加わり、義仲の嫡男・義高(市川染五郎)を旗頭とし、都ばかりに目を向ける源頼朝(大泉洋)の失脚をたくらむ。義時(小栗旬)は御家人たちの計画を潰すため大江広元(栗原英雄)らと連携し……

第15話のレビュー

水を得た魚ならぬ、戦を得た義経から始まった第15話。
が、本日の舞台は鎌倉である。

失敗する謀反

頼朝(大泉洋)に反旗を翻す御家人たち。が、頼朝たちには大方の情報は入ってきている。梶原景時(中村獅童)は内通者であるし、御家人たちを引っ張る上総広常(佐藤浩市)は義時(小栗旬)と通じている。
そもそも、御家人たちは一枚岩ではない。三浦義村(山本耕史)や畠山重忠(中川大志)らは頼朝に思うところはあるにせよ、源氏との対立をよくは思っていない。

そんな中、謀反決行の日がやってくる。鶴岡八幡宮で頼朝の長男・万寿の500日目の足固めの儀式の日だ。そもそも500日目の儀式も御家人方である文覚(市川猿之助)がでっちあげたこと。万寿を人質にして頼朝を追い出そうという企てだ。子どもを大事にしない大人に未来はないと思うが。

計画が丸裸にされている状態、さらに団結しているわけでもない御家人。上手く行くはずがない。広常の要所要所での誘導、重忠の機転。さらに、御家人たちが祭り上げようとしていた義高(市川染五郎)が体を張って万寿たちを守ろうとした。更に、義時の説得。
謀反は多くの血を流さずに鎮圧されることとなった。

上総之介、逝く

義時と通じながら、御家人たちをコントロールした広常。頼朝は広常を呼び、酒を酌み交わす。
「御家人が騒ぎ出したら俺がまたなんとかするよ」そう言う広常に頼朝が姿勢を正す。

「上総之介、そなたがいるから今の儂がおる」

頼朝の言葉に広常は照れくさそうな、でも嬉しそうな笑みを浮かべる。
よし、今日はもうここで終わろう、解散だ!

……が、当然終わらない。
丸く収めたとは言え、謀反を起こした御家人たちをそのままにしておくわけにはいかない。「謀反を起こしてもお咎めはない」「ならば言いたいことがあるときは実力行使」となりかねない。
そこで持ち上がったのは御家人の中からひとり、見せしめとして殺すこと。
もちろん、義時は納得しない。
さらに名前が挙がったのが広常となれば……。

実のところ、頼朝の狙いは最初から広常の命だったのだ。頼りになる男はそばにいれば心強い。しかし、敵になれば?
おまけに、さりげなく策を思いついたのは大江広元(栗原英雄)ということにしようとしていたのも、シンプルに嫌である。
猛反対する義時にそれなら処刑してもいい御家人をひとり挙げろという頼朝。義時にそんなことができるはずがない。

更に、その制裁を御家人たちに捕えられていた梶原景時に任せる。御家人たちと通じていなかったと証明するために、だ。
誰も、広常が殺されることを望んでいない。しかし、自分の命も大事だ。なんとも嫌な世界である。

頼朝にあるのは力か、恐怖か

広常を殺し、自分の力を見せつけた頼朝。自分に逆らう者は何人たりとも許さない。広常に駆け寄ろうとした義時に向かって「来ればお前も切る」と頼朝は言い放った。
15話のタイトルは「足固めの義」。頼朝の足固めの儀式だったというわけだ。

力を誇示したと同時に、人望と視聴者からの支持を失った。
驚きと失望、戸惑いの表情を浮かべた広常。純粋な広常は頼朝を信じていた。しかし、死の直前、全てを悟る。そして義時に微笑みかけて絶命する。

広常の鎧に隠されていたのは子どものような字で書いた文。頼朝……鎌倉殿のために何をすればいいかを書いていた。床に這いつくばり文字を一生懸命に書く広常の姿は真っすぐで胸を打つ。頼朝を支え、頼朝が京に上る姿を信じていたのだ。そんな広常の文字を「読めん!」と義時に投げ出す。そういうところである。
きっと、頼朝は誰も信頼できないのだろう、と思う。だから、自分を信頼してくれている人を危険だからと殺せる。それが彼の人生の行く末を想像させて如何ともしがたい気持ちになる。

政子、義時の成長

鎮圧のあと、政子は御家人たちに向かって「頼朝に言えないことは自分に言うように」と言う。少しずつ、御台所としてだけではなく、頼朝を支える者としての存在感を増していく。

一方、義時も真っすぐなままだけじゃいられなくなっていく。広常の死は義時にとって大きなターニングポイントのひとつとなりそうだ。
義村も義時に向かって「頼朝に似てきた」と言う。トップに立つ者は孤独で、残酷だ。しかし、それではいざというときに自分の元に残ってくれる人はいなくなる。義時はその部分をどう補っていくのか。
そして、八重が産んでくれた自分の子を抱いたときにどのような気持ちを抱いたのだろう。

頼朝も辛い立場ではあるかもしれない。というのが分かるが、今宵ばかりは全部頼朝のせいだ、と言いたい。

※この記事は「鎌倉殿の13人」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第16話ストーリー&レビュー}–

第16話ストーリー&レビュー

第16話のストーリー

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御家人たちをまとめ上げた源頼朝(大泉洋)は、弟・範頼(迫田孝也)を総大将、梶原景時(中村獅童)を軍奉行とした本軍を派兵。八重(新垣結衣)に見送られた義時(小栗旬)も従軍し先発した義経(菅田将暉)と合流する。後白河法皇(西田敏行)を捕らえて京に籠もる木曽義仲(青木崇高)、福原を拠点に復権を伺う平宗盛(小泉孝太郎)に対し、鎌倉方は義経の天才的な軍略に導かれて奮戦。畠山重忠(中川大志)らが華々しく駆ける……

第16話のレビュー

北条時政(坂東彌十郎)が鎌倉に戻ってきた。
上総広常(佐藤浩市)が斬られ、鎌倉の様子は変わった。
御家人は、明日は我が身と恐れて何か事を起こすことはできない。さらに誰かに落ち度があれば、その所領が自分のものになる、ということが分かった。誰かを陥れて、自分が得をする。そんなことがまかり通ってしまう時代が始まってしまった。

義経、イキイキする。

御家人たちがまとまったことで、ようやく頼朝は義仲(青木崇高)討伐の兵を出せるようになった。
義仲攻めが本格化し、義経(菅田将暉)は実に楽しそうだ。次々と策を出し、義仲討伐、更には平家攻めを目論む。
攻め方だけではない。相手をだますことも厭わない。「ともに平家を討とう」と文をよこした義仲。そんな義仲の使者を斬り、更に義経の軍勢は少ないと噂を流す。
策に嵌った義仲は京を捨てる決意をする。

更に平家討伐では後白河法皇に偽りの和議の文を出すように頼む。油断した平家、その隙に攻め込むという寸法だ。それも、平家の意表を突き、断崖絶壁を駆け降りる、という方法で。
誰しもが、「無理だ」と思うことを義経は可能性があるならばやってみせる。己にできぬはずがない、と思い込んでいる部分があるのかもしれない。攻め込めたのは、坂東武者たちの軍勢の力も大きいのだけれど、義経はそんなことは考えてもいないのかもしれない。
無邪気で、あっさりと人の心を傷つける残酷さも持ち合わせている。

中でも悔しさをにじませているのは梶原景時(中村獅童)だ。戦に長けている景時だが、義経は景時の一歩前を行く。その事実に景時は顔を歪ませながらも、義経の作戦が優れているとわかってしまうから、何も言えない。「生意気だ、黙れ」と言えてしまうような武者であれば、もっと生きやすかっただろう。

義経のような天才はどの時代にもいるだろう。でも、なんとなく、この世界では真面目に、コツコツと努力を重ねている人間が辛い目に遭っているような気がして複雑だ。

義仲、逝く。

これほどまでに、見惚れてしまう義仲が今まで描かれてきただろうか。
義経の策に嵌り、京を退くことを決めた義仲。最後、義仲は後白河法皇の御所に赴く。会うことはできなかったが、自分の声が聞こえていると信じて思いを伝える。
後白河法皇の悲願成就を祈る、と言ったあと、
「最後に一目、法皇様にお目通りしとうござったが、それも叶わぬはこの義仲の不徳のいたすところ」
罠に嵌り、いわば敗走するというときに、この言葉を発せられることが、義仲の器の大きさを物語っているというか……。

更に、逃げた先には範頼(迫田孝也)が待ち構えていた。ここで義仲は巴(秋元才加)に義高(市川染五郎)への文を預けて、逃げるよう伝える。凛々しく映しい巴の姿も相まってたまらない。
言葉を紡いでいる途中で額に矢が刺さり、こと切れる最期もやるせない。義理と人情に厚く、優しい素直な男がまた逝ってしまった。

こうなってくると気になるのが、鎌倉にいる義高の処遇だ。すでに来週の鎌倉殿は気が重い。

次々と人が死んでいく。一方で、八重(新垣結衣)は義時(小栗旬)の子を産んだことで「あの子のおかげでもう一度誰かのために生きようという気持ちになりました」と言うシーンがあった。生きたいと思うこと、誰かを助けたいと思うこと、誰かを殺すこと。さまざまな想いが行き交い、物語は混沌とした時代を進んでいく。

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–{第17話ストーリー&レビュー}–

第17話ストーリー&レビュー

第17話のストーリー

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源義経(菅田将暉)の軍略がさえわたり連勝に沸く鎌倉方。しかし、木曽義仲(青木崇高)の討伐により鎌倉に再び暗雲が立ち込める。義仲の嫡男・義高(市川染五郎)を危険視する源頼朝(大泉洋)は、戦勝報告のため範頼(迫田孝也)とともに鎌倉へ戻っていた義時(小栗旬)に義高の処断を命令。大姫(落井実結子)を思う政子(小池栄子)は憤り、義高を救うため奔走する。一方、頼朝に試された義時は八重(新垣結衣)ら家族を思い……

第17話のレビュー

再び、地獄の始まりである。

義高、散る。

義仲(青木崇貴)が討たれ、頼朝(大泉洋)の懸念事項はふたつ。甲斐源氏の頭領である武田信義(八嶋智人)親子の動向。そして、義仲の息子・義高(市川染五郎)の処分。
頼朝は義時(小栗旬)に義高を討つように命じる。義時には優しさがある。というより、人としての情がある。人柄が良く、御家人たちからも愛されている義高。政子(小池栄子)も、義高の許嫁である大姫(落井実結子)も慕っている。
できれば義高を助けてやりたい。しかし、頼朝を裏切れない。
政子が義高を逃がすことはできないかと策を講じるが、当の義高にその気がない。義高は、父を討った頼朝を許さない、とはっきり言った。そして義時のことも。

そんな義時の心を動かしたのは、巴御前(秋元才加)が義仲から預かった手紙だった。平家を討てるのは鎌倉殿(頼朝)だけ。そして戦いの行く末を見届けてほしい。父を愛し、父のために生きているような義高にとって、何よりも重い言葉だった。父の願いを叶えたい、と思うだろう。
ようやく、政子の策に乗ることを決意する。政子を始め、実衣(宮澤エマ)、全成(新納慎也)、三浦義村(山本耕史)、さらには義時の言葉を受けて畠山重忠(中川大志)らも力を貸す。
うまくいくはずだった。が、義高はかくまわれていた場所から逃げ出してしまう。義時が信用ならない、と書き残して。

結果、義高は藤内光澄に討取られる。大姫に請われて、頼朝が折れた矢先のことだった。
光澄に向かって政子は言い放つ。
「断じて許しません!」

義高は討たれた。更に、義高をそそのかし、頼朝を討とうとしたとして武田忠頼が討たれる。そして、義高の首を取った光澄も。それらは義時に命じられる。

上総広常(佐藤浩市)が討たれたあたりから義時の表情が虚無になっていることが多いのが気になる。八重(新垣結衣)のもとに帰り、息子・金剛を前にしているときは懺悔をしているかのようだ。それから「父を許してくれ」の一言。そんな義時の顔に触れる金剛。赤ちゃん、良い演技をする(というか、自由。無邪気で大変かわいい)。
野暮だけれど、広常がいたら義時になんて声をかけるだろう、とふと考えてしまった。

今回、義時は政子に向かって、「我らはもうかつての我らではないのです」と言う。この地獄の中で、義時は変わっていく。政子も御台所として変わっていく。それが良いのか、悪いのか、わからない。

それにしても、大姫の心中を察すると辛くてかなわない。また、義高が大姫と遊んでいた鞠を手にしていて……。
ふたりは偽りの許嫁などではなく、ちゃんと通い合っていたものがあったのだな、と思うと……。

一方、義経は……

手柄を挙げた義経(菅田将暉)。鵯を馬に乗って駆け降りた、という話に後白河法皇(西田敏行)たちも愉快そうだ。そんな中、義経は検非違使に任ぜられる。たいそう後白河法皇に気に入られたようだ。手柄に、頼朝も喜んでくれるだろうと義経は浮かれ気分だ。
そして、義経は京で恋に落ちる。白拍子・静御前(石橋静河)に。

冒頭で義経は梶原景時(中村獅童)に向かって「歴史はそうやって作られていくんだ」と言う。本当は鵯越ではないし、馬に乗って駆け降りてもいないのに、そのほうが絵になる、と。史実がどこまで本当かは分からない。義経だって、本当はどういう人物だったか分からないし、何より今回の鎌倉殿では意外なキャラクター設定となっているひとりでもある。そんな義経が言うセリフだからこそ面白い。

が、史実としてもエンターテイメントとしても悲しく、心に残る回であったことは間違いない。

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–{第18話ストーリー&レビュー}–

第18話ストーリー&レビュー

第18話のストーリー

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苛烈さを増す源平合戦。必死の抵抗をみせる平宗盛(小泉孝太郎)率いる平家軍に対し、源頼朝(大泉洋)は義経(菅田将暉)に四国、範頼(迫田孝也)に九州を攻めさせ、逃げ道をふさぎにかかる。しかし、範頼軍は周防で足止めをくらい、義時(小栗旬)・三浦義村(山本耕史)らが状況の打開に奔走。一方の義経軍も、後白河法皇(西田敏行)の命により摂津から動けずにいた。そんな中、梶原景時(中村獅童)の献策を一蹴した義経が……

第18話のレビュー

義高(市川染五郎)の死は御所に暗い影を落としていた。特に、大姫(落井実結子)はかつての笑顔を見せなくなっていた。政子(小池栄子)らはどうにか元気づけようとするがままならない。あまりの様子に胸が痛い。しかし、物語はさらに胸痛む展開が待っている。

いざ、壇ノ浦へ

源平合戦が終わりのときを迎えようとしていた。
負けなしの義経(菅田将暉)。鎌倉にいる頼朝(大泉洋)はそれが気になる。活躍を続ければ、義経を鎌倉殿に推す声も大きくなるのでは? という疑念を胸に宿す。今まで描かれてきた義経ならわからないかもしれない。でも、「鎌倉殿の13人」の義経はそんなことを思うはずがない。が、頼朝にはわからない。わからない頼朝は、義経ではなく景時(中村獅童)を総大将にするように指令を出す。
もちろん、義経が受け入れるはずがない。軍議では譲らぬ景時と義経で揉めに揉める。その場にいた畠山重忠(中川大志)や三浦義澄(佐藤B作)らの支持もあり、義経が総大将のまま戦に挑むことになるが、これは景時と義経の作戦だった。意外や意外、景時が義経とタッグを組むのか、そんなにも強力な組み合わせができるものなのか? と思うが……。

そして、戦いはいよいよ壇ノ浦へ。平家も弱いわけではない。義経はひとつの策を持っていた。平家の船をギリギリまで引きつけ、漕ぎ手を射殺すというもの。船が動かなければ戦いようがない。
しかし、義経の命に重忠は顔色を変える。漕ぎ手は兵ではない。「末代まで嗤い者になります」と言う重忠に「嗤わせておけ」と答え、漕ぎ手を弓で射貫く。射なければ殺す、という脅しで兵を動かし、漕ぎ手たちを射させる。形勢は逆転。
船から船を舞う義経。鬼神ごとき強さ。
「もはやこれまで」
追い詰められた平家。そのあとに展開するのは、あまりにも有名なシーンだ。
三種の神器を持った二位の尼と女官たちが海に沈む。そして、安徳天皇を抱いた女官も。
女官が船に立った瞬間、「やめろ!」と叫ぶ義経。沈みゆく姿に「嘘だろ……」。三種の神器と、安徳天皇を手に入れられなかったからか。直後、アップになった義経の瞳に涙がにじんでいたように思うが……。
その瞬間に映ったそれぞれの表情にも性格がよく表れている。特に、重忠と和田義盛(横田栄司)が合掌したのが印象的だ。考え方や価値観に違いはあれど、真っすぐな性格なのだろうということがわかる。

義経の本当の姿は?

平家を討った義経は大金星を得たはずだ。
しかし、三種の神器は手に入れられず、安徳天皇を死なせた。勝利とは言えない。何より頼朝からの信頼が日に日になくなっていっている。
景時から頼朝への報告も重要だ。頼朝の意向に背いていること、勝手なふるまいが多いこと。弟に会いたい気持ちはあれど、不信感のほうが大きくなる。

一方、義経は頼朝に会いたい。しかし、検非違使の任があるため鎌倉に帰れない。取った策は罪人である平宗盛・清宗を鎌倉に連れていく役目を担うこと。頼朝に会って誤解を解きたい。義経は純粋な気持ちだけだったが、頼朝からすると解せない。そもそも、義経が検非違使であること、処罰は京で行うためまた京に戻らないとならないこと。後白河法皇(西田敏行)に気に入られていることも、頼朝にとって引っ掛かるポイントだ。
義時(小栗旬)は義経にそんな野心はないと言うが、景時は義経を鎌倉に入れてはならないと言う。
「あのお方は天に選ばれたお方。鎌倉殿と同じだ。そのような2人が並び立つはずがない」
結局は、景時は頼朝側の人間で、義経がどのような人物か、その有能さを見極めていただけ、なのかもしれない。

義経のやること全てが裏目に出る。
本当に戦が好きで、人の心を持たない義経ならばよかった。

罪人である平宗盛と清宗を引き合わせ、語る時間を与える。もらった恩をきちんと返す。
壇ノ浦の戦いでは討たれた漕ぎ手たちを手厚く葬るよう命じる。
そしてただただ、頼朝が大好きな“弟”だ。
恐ろしい人間ではあるけれど、本当は戦に必要のない死や犠牲は求めていないのではないか。
漕ぎ手は戦に勝つために必要な死だから選んだ。
安徳天皇は戦で死ななくてよいはずだった。
これまでの描写を見ていると、自分より年下の者に対する当たり前の優しさは持っているように見えた。

兄と弟が語る機会は奪われた。2人の関係はますますこじれてゆく。

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–{第19話ストーリー&レビュー}–

第19話ストーリー&レビュー

第19話のストーリー

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鎌倉入りを許されず京で悲嘆にくれる義経(菅田将暉)。義時(小栗旬)は大江広元(栗原英雄)に知恵を借り、源頼朝(大泉洋)と義経との関係修復を模索するが、後白河法皇(西田敏行)はそれを許さない。愚痴をもらす頼朝に対し苦言を呈す八重(新垣結衣)。この状況を政子(小池栄子)が憂う中、京では義経をめぐって里(三浦透子)と静(石橋静河)が対立。さらに源行家(杉本哲太)が義経に近づいて頼朝への疑心をあおり……

第19話のレビュー

仇を討ち、兄弟は仲良く暮らしましたとさ。
……となれば、どんなによかっただろうか。

こじれる頼朝と義経の関係

義経(菅田将暉)はいまだ鎌倉へ戻れない。義時(小栗旬)はどうかして義経を京から帰る策はないかと頭をひねるが、彼らの前に立ちはだかるのは後白河法皇(西田敏行)だった。

義経を伊予守に任命させ、検非違使の任を解かせようとしたが、後白河法皇はまさかの兼任を命じる。前代未聞のことだった。
父・義朝の菩提を弔うために、義経の出席を促す。一度は認めた後白河法皇だったが、その場で具合が悪くなり、一度は心音も止まった。そばにいてくれと言う後白河法皇に義経も拒否することはできない。

しかし、これは後白河法皇の策略だった。鞠を脇に挟むと心臓が止まる、これをやってみせたというのだ(ここですかさず入る「真似をしてはいけない」のナレーション。笑えたのはここだけだった)。
頼朝(大泉洋)は怒りを募らせ、義経には打つ手がない。ただ、兄に会いたいだけなのに、その願いは叶わない。
状況はさらに悪化していく。

支える人がいない。義経の孤独

義経の妻・里(三浦透子)と妾の静(石橋静河)の仲が良くない。いや、本妻と妾の仲が良いことなんてそうそうないが。義経を挟んで争うことも厭わない。義経が里を立てないのもよくない。そこは少し頼朝を見習ったほうがいいかもしれない。一応、頼朝は妾の亀と会うときには人目を忍んでいた。一応、だが。
里は行家(杉本哲太)と手を組み、男たちに義経と静の部屋を襲わせる。静は殺して構わない、と言う里の恐ろしさよ……。
不意を狙われたにも関わらず、男たちを撃退した義経。そこにすかさず行家が駆け寄る。

「鎌倉が送ってきた刺客だ」

そう言って頼朝討伐のための挙兵をそそのかす。頼朝が刺客を。義経は信じられなかったが、行家の言葉を信じない義経でもなかった。
後白河法皇は行家たちの要請に応じ頼朝追討の宣旨を出した。
しかし、義経のもとには兵が集まらない。先の戦いで義がない振舞いをしたからだ。畠山重忠(中川大志)に「末代まで嗤い者になります」と言われていたが、早くも自分の行いが自分に返ってきてしまった。

せめて、そそのかした行家ぐらいは最後まで支えろよ……と思っていたら、「だから挙兵はならぬと申したのに」。さすがの義経も「叔父上が言いますか」と反論する。むしろもっと言っていい。

あえなく義経は逃亡することになる。静は残し、里は連れて行く。里は勝ち誇った顔をしていたが、里は比企の娘だから。静は義経の関係を言わなければ命は助かる。
「必ず迎えに行く」
里も不憫な女性である。

女癖の悪さでは頼朝も相変わらずだ。
突然、八重(新垣結衣)のもとを訪ねる。義経との関係をどう修復したら良いのか。
思わず「どのツラ下げて……?」とはっ倒したくなってしまう。
とは言え、すでに八重の中に頼朝に対する気持ちは遺っていない。元彼を蔑む視線でいろいろと気がついてほしい。
政子(小池栄子)との間にも距離ができてしまい、本音を話せる相手がいない。そこで八重を選んでしまうのが頼朝だ。

まだ希望は捨てていなかった、が……

義経が失踪したことで、後白河法皇は頼朝に義経追討の宣旨を与える。鮮やかな掌返しに、周囲も困惑顔だ。
そんな法皇と渡り合う役目を任されたのは時政(坂東彌十郎)だ。
「わしでないと駄目かなあ」「おっかねえよ」と行きたくないとダダをこねるが、法皇を前にすると堂々とした姿を見せる時政。もちろん、義時もそのそばで援護射撃をする。
義経追討が出たとは言え、誰も法皇を信用できない。そこを利用したのだ。

そんな時政と義時の元に、義経がひっそりと姿を現す。
「兄上とのことどうにかならんか」
義経はまだ、頼朝との和解を望んでいた。それがどんなに小さな希望だったとしても。
しかし、もう全てが遅い。平家を滅ぼしたのはついこの間のことだったというのに、すでに追われる身。
何がいけなかったのかと言う義経に、義時は「人を信じすぎる」と答える。今回だけでもそれがよくわかる。

「戦のない世で私のようなものはどうやって生きていけばいいのか」
知恵があれば、どこでも生きていける、という義時。
そして時政は言い聞かせるように口を開く。
「あなたはおっしゃった。経験もないのに自信もなかったら何もできぬと。では自信をつけるには何がいるか。経験でござるよ。まだまだこれからじゃ」
その言葉に振りむき、微笑む義経の姿には凄みがある。

全てを失おうとしている義経が、義時に伝言を託したのは政子だった。
「九郎は御台所の膝の温かさを生涯忘れない」
結局、義経が心から愛を感じられたのは政子だけだったのかもしれない。

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–{第20話ストーリー&レビュー}–

第20話ストーリー&レビュー

第20話のストーリー

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京を離れ、奥州へ逃れた源義経(菅田将暉)。しかし、温かく迎え入れてくれた奥州の覇者・藤原秀衡(田中泯)が程なく死去。これを知った義時(小栗旬)は、状況を探るため平泉行きを志願するが、義経の才を恐れる源頼朝(大泉洋)は、藤原国衡(平山祐介)・泰衡(山本浩司)兄弟の仲の悪さにつけ込み義経を討つように冷たく命じる。八重(新垣結衣)に見送られ、平泉へと発たつ義時。一方、捕らわれた静御前(石橋静河)は鎌倉で……

第20話のレビュー

「おまえが日の本一の英雄となった。平家を倒したのはおまえだ。ようやった、九郎!」
藤原秀衡(田中泯)の言葉に義経(菅田将暉)は唇をわななかせて涙をこぼす。
それはきっと、頼朝に言ってほしかった言葉なのだ。

義時、平泉へ

藤原秀衡を頼り、奥州平泉へ身を寄せた義経。このことで、平泉は鎌倉に対抗しうる勢力を持ったことになる。
しかし、まもなく秀衡が逝く。残されたのは国衡と泰衡という仲の悪い兄弟。秀衡は兄弟で力を合わせるように言うが……。

一方、義経を連れ戻したい義時(小栗旬)だったが、頼朝(大泉洋)は義経が生きて戻ることを許さないという。泰衡に取り入り義経を討たせて、勝手に義経を討った藤原を大義名分のもと鎌倉が討つ。この世界に信じられるものなどない、と思わされてしまう。

何か言いたげな表情をにじませる義時に頼朝は「あくどいか? あくどいよのぅ」と言う。
戦のない、平和の世にするためには鎌倉に抵抗し得る勢力は徹底的につぶさなければならない。
義経が頼朝に盾つくとは思えない。しかし、頼朝は信じられないのだ。

 奥州へ向かう義時。そのそばには善児(梶原善)の姿が。
「なにかと役に立ちますよ」という善児に視聴者は震撼するばかりである。

女たちのそれぞれの最期

平泉も義経をあっさりと引き渡すわけにはいかない。
だからと言って慌てふためき、右往左往する青さは義時は、もうない。
義経に鎌倉を討つよう煽り、危険性を感じた泰衡が動いてくれればそれでいい。

畑仕事に励み、一見、毒を抜かれたように見える義経に、義時はわざとらしく静御前の話をする。
自分の身元を明かすなと義経に言われていた静。しかし、比企能員の妻・道(堀内敬子)にあおられ、自分が静御前であると言い切る。
名を騙っているかもしれない、と実際に舞を見せることになるがそれでも、義時は今からでも間に合う、下手に踊って言い逃れをするように言い含める。できれば、義時としては静の命を救いたいのだ。

が、静は結局、頼朝たちの前で美しい舞を見せた。「女の覚悟」である。その覚悟を受け止められたのは政子(小池栄子)だけだっただろう。

静に向かって義時は「あなたは身勝手だ」と言ったけれど、確かに黙っていれば生き延びることもできた。おなかの子を殺されることもなかった。それでも、静には女のプライドがあった。そしてそのような道を選んだ静を義経は誇りに思ったかもしれない。

しかし、義経に静の話は効果てきめんだった。

 一方、平泉まで義経と共に来た正室・里(三浦透子)。まもなく泰衡が攻め入ってこようというところで、恨み言を口にする。こんなところへ来たくなかった、畑仕事もしたくなかった。まさか義経と夫婦になったことで、このような未来が待っているとは想像もしていなかっただろう。

そんな中、里は京で襲ってきた刺客は自分が手配したものだったと告白する。静を殺すつもりだった、と。あの事件が分岐点だった。頼朝が刺客を送ってきたと思った義経は周りのそそのかされたとは言え、挙兵を決意したのだ。

取り乱した義経はそのまま里を刺し殺す。一撃で。ハッとした義経は息絶えた里の体を抱きしめ涙を流す。

 里という女性をどう受け止めるかは人によって変わりそうだ。
なぜ、このタイミングで告白したのか。義経への恨みか、懺悔か。抱えたまま死ぬには苦しすぎたか。
静への嫉妬に狂った里が義経を破滅に導いたとも見える。その苦しみが里の中にあったのだろうか。
それともどちらにせよ奪われる命、それなら義経に殺されたほうがいいと思ったのか。
おそらく、里を殺したあと、義経は自らの手で娘も殺している。その荷をひとりで追うのは、義経がうけるべき罪なのか。

ある種、静も里も、自分の意思を貫き通し、生きたい道を全うしたとも言えるのかもしれない。最悪の中で選んだ最善なのかもしれないけれど……。

戦の天才、逝く

死の直前、義経は義時を呼び寄せて話をする。
義経は義時がわざと自分の憎しみを募らせようとしていたこと、頼朝の企みも気がついていた。
「自分の手を汚さず泰衡に討たせる。兄上の考えそうなことだ」
そんな義経に、義時はそれがわかっていながらどうして、と言う。

 「そこまで兄上にとって私は邪魔なのか。そう思うとどうでもよくなった」

 義経のこれまでの頼朝への想いの積み重ねはここに繋がる。
そして、義時に「人を信じすぎる」と言われた義経は「この首で平泉が守れるなら本望だ」と笑う。守れない。最後の最後まで義経は人を信じすぎた。

 そんな義経が披露したのは鎌倉の攻め落とし方だった。その方法を喜々として語る義経は、まるで楽しいゲームの話でもしているようだ。
さらに鎌倉に攻め入る場合、三浦を味方につけておく、という。

「親父ではなく息子のほうだ。あいつは損得の分かるやつだからな」

三浦義村……ちゃらんぽらんな風に見えて、いざというときに義時が頼ってしまう義村(山本耕史)……。しっかり義村の手綱を握っておけよ、というアドバイスだったとしたら……。

 戦が好きで天才で、兄である頼朝が好きで認められたくて義姉の政子を慕っていた義経。
兄とふたりきりで語り明かす。その夢は義経が生きているうちに叶うことはなかった。

義時がこれから進む道

少し前の義時なら、義経にわざとらしく静御前の話をすることはできなかっただろう。

多くの死が重なっていく中で、義時は頼朝に似てきてしまった。義村の言葉通りに。そしてこの時代を生き抜くためには必要なことだ。

が、無邪気に八重(新垣結衣)に山ほどのお土産を持ってきていた義時はもういないのだと思うと寂しくて仕方がない。息子の金剛が帰ってきた義時に「お土産は?お土産は?」と聞いていたけど、きっと八重が話して聞かせたんだろうなあ、と思うとほっこりする。

義時にとって、八重と金剛は唯一の安らげる場所で、守りたいもの。以前のような義時の表情も垣間見える……がすでに来週の予告が不穏である。このまま、八重さんには義時と添い遂げてほしいけれど……。

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–{第21話ストーリー&レビュー}–

第21話ストーリー&レビュー

第21話のストーリー

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源義経(菅田将暉)を失った奥州に攻め込み、藤原泰衡(山本浩司)を討ち取る源頼朝(大泉洋)。義時(小栗旬)・畠山重忠(中川大志)らが在りし日の義経をしのぶ中、頼朝は毅然と上洛に向けて動き出す。一方、京の後白河法皇(西田敏行)は丹後局(鈴木京香)と今後の動静を憂慮し、きたるべき日に備えていた。そんな中、鎌倉では八重(新垣結衣)が子どもたちの世話に奔走。八重の明るい表情に、政子(小池栄子)も目を細めるが……
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第21話のレビュー

気が重いが目が離せない。そんな回が続く。

ようやく幸せを得た八重

全国から兵を集め、奥州へと攻め入った源頼朝(大泉洋)。頼朝は泰衡を討ち、奥州藤原氏を滅ぼした。

源氏の世まであと少し。戦は終わりを告げ、ここからはまた別の意味で頼朝の手腕が試されることになる。

ホッと息が抜ける時間。その中で、義経(菅田将暉)の死を悼む御家人たちも多かった。苛烈な戦の天才。手を焼くことも多かったが、その才能はやはり人の心を惹きつけていた(だからこそ、現代にも義経が語り継がれるのだろうが)。
一方で、梶原景時(中村獅童)が頼朝に義経の告げ口をしなければ、と言う者もいる。景時と義経のやりとりをこれまで観てきた視聴者としては複雑なところである。

 
戦が続いていた中で、今回は少しばかり家族が集う時間が多く持たれていた。頼朝と北条家の家族が集うシーンも。
義時(小栗旬)の隣にいる八重(新垣結衣)を見て、政子(小池栄子)は幸せそうだという。ツヤツヤしていると。それはほかならぬ義時の力だろう。孤児を引き受け、共に暮らしていることも八重の生きがいとなっていることもあるかもしれない。

が、そんな八重を見て昔話をし出す頼朝。2人が恋仲だったころの話だ。
自分の妻と、相手の夫の前で。寝言は寝てから言ってくれ、という感じなのだが、気にせずペラペラと口が止まらない頼朝。
しかし、さすが政子、「わざと言っているのなら人が悪いし、わざとでないなら気遣いがなさすぎます」とピシャリ。どちらにしろ気分が悪いという話だ。

が、女性たちがいない場は、頼朝は「金剛は自分に似ている。自分の子の万寿よりも似ているかもしれない」などと言い出す。だから寝言は寝てから言ってほしい。それとも実は寝ているのだろうか。

義時はわかっていても不安になったのだろう。頼朝のその言葉を八重に聞かせる。
しかし、八重はきっぱりとその不安を打ち消した。
自分が選んだのは義時なのだと言い切る。頼朝に恋焦がれていたころの自分はどうかしていたのだと。
八重がどれだけ今、義時を愛しているのか。義時が足繁く八重のもとに通っていたころを思い出すと胸が締め付けられる。

義時の最愛の人、逝く

周りから見ても幸せそうな八重。そして義時の妻としても立派に勤めを果たしていた。

あるとき、八重は子どもたちを川で遊ばせていた。三浦義村(山本耕史)も一緒だ。義村が席を外したとき、子どもたちから声が上がる。新しく八重のもとにきた鶴丸という少年が川の真ん中で岩にしがみついて泣いていた。

八重の頭に過ったのは息子・千鶴丸だった。頼朝の子であったがために、川で溺死させられた千鶴丸。八重は無我夢中で鶴丸を助けに川に入る。鶴丸を助けた八重は、戻ってきた義村に鶴丸を託した。ホッとした様子の八重。しかし、少しして金剛が声を上げる。

「母上?」

八重の姿がどこにもなかったのだ。

懸命の捜索もむなしく、八重は還らぬ人となった。
義村、その筋肉があれば、鶴丸だけではなく八重も抱えて川に上がれなかったのか。
そんなふうに責めてしまいたくなるが、きっと義村は表情に出さずとも悔いているはずだ。

八重は幼い息子を奪われ、家族をみな失った。そんな八重を心から愛し、支えた義時と結ばれ、幸せを得た。そして、殺されてしまった自分の息子への想いを少しでも晴らすように親を失った子たちを愛した。八重の人生は悲しいばかりではなかったのだ。

しかし、遺された金剛はどうだろう。母は自分を愛してくれているのかと不安になり、母を求めた。その矢先に、他の子どもを守るために亡くなった母。その経験が金剛、のちの「北条頼時」にどのような影響を与えるのだろうか。

そして何より心配なのは義時である。この時、義時は伊豆にいた。奈良から招いた運慶という仏師が作った阿弥陀如来像を前に、酒をたしなんでいた義時。

阿弥陀如来像を見つめながら、運慶に向かって「ふと妻の顔を思い出してしまいました」と言う。きっとこの時、義時は八重に会いたいと思っていたのだろう。もしかしたら、実際に八重は義時に会いに来ていたかもしれない。

八重は最期の時、誰を想ったのだろう。幼くして亡くなった息子か、金剛か、それとも、自分を愛し続けてくれた夫か。

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–{第22話ストーリー&レビュー}–

第22話ストーリー&レビュー

第22話のストーリー

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源頼朝(大泉洋)の上洛が決まり、命に従い随行する義時(小栗旬)。大軍を率いて念願であった京へと上った頼朝は、後白河法皇(西田敏行)、九条兼実(田中直樹)と会談。今後の世のあり方を思い描く。そんな中、自分たちには利益のない上洛に、三浦義澄(佐藤B作)、岡崎義実(たかお鷹)、千葉常胤(岡本信人)らが不満を募らせていた。一方、比企能員(佐藤二朗)は比企家の地位を盤石にするため、一族の比奈(堀田真由)を……

第22話のレビュー

画面の中に、やはり、その姿を探してしまう。

八重(新垣結衣)がこの世を去ったことを悼む義時(小栗旬)、その義時に最期の言葉を伝える義村(山本耕史)。

幼いころから恋焦がれて、ようやく想いが通じて、夫婦になって。地獄のような日々の中、義時にとって八重との時間が何よりも癒しだっただろう。その時間も、愛しい人も奪われてしまった。もう戻ってこない。

悲しみに暮れる義時だが、自暴自棄にならないのが義時らしい。八重が面倒を見ていた親がいない子どもたちの面倒を見て、日々を過ごす。慣れないことにてんてこまい。それが今の義時にとっては癒しなのかもしれない。

頼朝が征夷大将軍に

義時が哀しみに暮れている中でも、政治は動いていく。

頼朝(大泉洋)の上洛が決まった。頼朝の命令で義時も共に京へと向かう。

戦のない世を作るという頼朝。そのために朝廷に力を貸してほしいという。頼朝の言葉に後白河法皇(西田敏行)は不安げだ。以前ならばきっと狐と狸の化かし合いのようだと言えただろうが、後白河法皇に覇気がない。盛者必衰。頼朝との対面から1年4ヶ月後、後白河法皇はこの世を去る。病がちだったというが、頼朝からのプレッシャーもありそうだ。

そして、頼朝は朝廷から征夷大将軍を任じられる。
祝福する政子に頼朝はしれっと「御家人どもを従わせる肩書にすぎない」と言うが、その直後、ふたりで喜びを分かち合う。

さらに、政子は第四子となる次男を出産。千幡と名付けられた子はのちの実朝である。乳母夫には実衣(宮澤エマ)と全成(新納慎也)が選ばれた。

しかし、これに万寿の乳母夫・比企能員(佐藤二朗)と道(堀内敬子)はおもしろくない。北条に力が偏りすぎてはならない、そこで、姪の比奈(堀田真由)を頼朝の側女にしようと道がひらめく。女性は政治の道具、しかし、それを女性が思いつくというのがなんとも……な時代である。

道の思いどおり、頼朝は比奈にメロメロ。本当にこの人はもう……まあ、政子が見逃すはずがないのだが。女性が政治の道具に使われてしまうのなら、阻止する者もいなければならない。それが御台所の役目のひとつとも言えるかもしれない。

不穏な風が吹く

視聴者から恐れられている善児(梶原善)が登場したものの、今回は誰も死ななかった。

が、不穏さはある。工藤祐経(坪倉由幸)を敵とする曽我兄弟の登場だ。
しかし、真の目的は頼朝を討つこと。曽我兄弟は比企能員に力を貸してほしいと申し入れる。能員は軽々しく応じない。頼朝を討てるはずがない、というが、曽我兄弟は北条の後ろ盾があるという。
北条時政(坂東彌十郎)は曽我兄弟の弟、五郎の烏帽子親でもあった。敵を討ちたいという曽我兄弟の心意気を称え、背中を押している。

能員としては、曽我兄弟の企みが失敗して北条家が失脚しても、頼朝が討たれても後継ぎの万寿の乳母夫は比企夫妻だ。結果がどうなっても、比企夫妻としてはおいしい。

頼朝は戦のない世の中を作ると言ったが、大きな戦がなくとも、血は流れる。

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–{第23話ストーリー&レビュー}–

第23話ストーリー&レビュー

第23話のストーリー

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嫡男・万寿(金子大地)の披露目の場とするため、御家人を集めて富士の裾野で巻狩りを行うことを決めた源頼朝(大泉洋)。工藤祐経(坪倉由幸)が賞賛する中、頼朝を憎む曽我十郎(田邊和也)・五郎(田中俊介)兄弟らが謀反を計画。梶原景時(中村獅童)から企みを知らされた義時(小栗旬)は、急ぎ五郎の烏帽子親である父・北条時政(坂東彌十郎)のもとへと向かう。不穏な気配が漂う巻狩りには、義時の愛息・金剛(坂口健太郎)も……

第23話のレビュー

頼朝(大泉洋)……あんたって人はほんとうにもう……とため息をもらしてしまった第23話。
しかし、戦がない世を作り出すために戦を続けてきた頼朝にとっては不穏な回でもあった。

成長著しい金剛と万寿の登場

今回の舞台は巻狩り。巻狩りとは、猪や鹿をしとめる大規模な狩りのことを言う。これが万寿(金子大地)の“初陣”となる。

巻狩りには御家人たちが集まっており、賑やかだ。義時(小栗旬)と金剛(坂口健太郎)もいる。
大河ならではあるが、突然大きくなった万寿と金剛。金剛登場時には「成長著しい金剛」のテロップが。著しすぎる(が、実年齢よりもなんだか幼く、かわいく見えるのがさすがである)。

みなが見守る中、なかなか万寿は成果があげられない。そんな中、金剛は早速小鹿を仕留める。万寿に「射てみろ」と言われて射れば鳥に命中。思わず謝る金剛。仕方がないわ、まだ10歳だもの……。

どうにかして万寿に獲物を射止めさせてやりたい。そこで比企能員(佐藤二朗)は動かない鹿を1頭用意してほしい、と言い出す。つまり、インチキで手柄をあげさせてやろうということだ。
翌日、万寿は大人たちの芝居のおかげで鹿を射ることができた。射ることができたというより、「射た事実」が作られた。しかし、万寿もこの企みを気づかなかったわけではない。

万寿は金剛に「いつか自分の力で鹿を仕留めてみせる」と決意を明かす。この巻狩りだけで十分すぎるほどに2人の関係性が分かったように思う。
万寿も良き鎌倉殿になる素質はあったのだろう。でも、きっと周りの大人たちが潰していったのではないか。

頼朝が死んだ? デマが混乱を呼ぶ

そして巻狩りの水面下で動いていたのが曽我兄弟の襲撃だ。かたき討ちと見せかけて、頼朝を討つ。時政(坂東彌十郎)も烏帽子親ということで、謀反と知らずに1枚かんでいる。義時、時政は畠山重忠(中川大志)の協力を得て、頼朝の守りを固める。

また、ほかにも企みが動いていた。能員が比奈(堀田真由)を巻狩りの宿舎に呼んでいたのだ。もちろん、頼朝を喜ばせるためである。巻狩りに政子(小池栄子)はいないもの……。デレデレと鼻の下を伸ばす頼朝。おまけに、三日目の夜、比奈のもとに忍んで訪れる。が、そこには義時の姿も。比奈の居所を探っていた工藤祐経(坪倉由幸)の動きを不審に思って、念のためにとやってきていたのだ。

諫める義時に頼朝は一言ビシリと「お前と女を取り合うのは、もうごめんじゃ!」。
あまりにも八重(新垣結衣)と義時が仲睦まじく、かつ八重が幸せそうだったので忘れていた……確かにそんなこともあった。
送っていこうという義時を振り払い、頼朝はひとり部屋を出ていってしまう。

一方、頼朝の寝所には曽我五郎(田中俊介)が侵入していた。そして、寝ていた頼朝を討ち取り、首を取る……が、これは頼朝のフリをしていた祐経だった。

しかし、御家人の間では情報が錯そうする。頼朝が死んだ、万寿も安否は定かではない……そんな情報が鎌倉にも飛ぶ。一足先に鎌倉に戻っていた能員は頼朝が死んだと信じ込み、頼朝の弟・範頼(迫田孝也)に鎌倉殿になるように迫る。大江広元(栗原英雄)らは反対するがまとまらない。頼朝の安否がわからないことで鎌倉はパニック状態となっていた。

範頼は頼られ、良かれと思ってしたこと……しかし、これが身の破滅へとつながっていく。一方、頼朝にも陰りが見え始める……。

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–{第24話ストーリー&レビュー}–

第24話ストーリー&レビュー

第24話のストーリー

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源頼朝(大泉洋)と万寿(金子大地)が巻狩りを終えて無事に戻り、喜ぶ政子(小池栄子)。しかし、頼朝は自身に代わって鎌倉殿の座に就こうとした弟・範頼(迫田孝也)を許さず、余波が鎌倉を揺るがしていた。比奈(堀田真由)を傍らに、三浦義村(山本耕史)、金剛(坂口健太郎)と思いを巡らせる義時(小栗旬)。そんな中、亡き許嫁・源義高(市川染五郎)を慕い続ける大姫(南沙良)は、頼朝が用意した縁談話を歯牙にもかけず……

第24話のレビュー

いい人だけでは生き残れない鎌倉

頼朝(大泉洋)が討たれたかもしれないと聞いた範頼(迫田孝也)は、鎌倉が危険にさらされるのを恐れて、頼朝の跡を継ごうとする。

実際には頼朝は無事で事なきを得たが、頼朝不在時の範頼の行動が問題視されてしまう。

なぜ急いで跡を継ごうとしたのか? 本当は頼朝の死を願っていたのではないか? 頼朝は疑心暗鬼だ。

 そもそも、範頼は比企能員(佐藤二朗)の懇願を受け入れた形だ。範頼は能員にとりなしを頼もうとするが、能員は仮病を使って逃げてしまう。能員は会おうとしたのだが、妻・道(堀内敬子)が止めたのだ。そんな比企に範頼は「風邪は寝るのが一番!」という。いい人か……。

確かに、能員も範頼を推したとなれば、立場が危うくなる可能性は大いにある。むしろ、下心があるのは範頼よりも能員。だからこそ、道は巻き込まれることをより恐れたのだろう。

さらに大江広元(栗原英雄)が範頼への疑念を口にする。曽我兄弟との関わりも疑われているようにも見えるし、もはや言いがかりでしかない指摘を受けてしまう。義時(小栗旬)は抗議をするが聞き入れられない。範頼はいい人だよ、頼朝! とテレビの前で言ってみても頼朝には届かない。

「さあ、どう言い逃れする?」と言われたところで! もうどうにもこうにも処罰する気ではないか、と。「もう結構にございます」と、範頼は引き下がる。

 範頼は修善寺に幽閉された。実の弟へのせめてもの頼朝の情けか。

比企尼(草笛光子)が説得しようとしたが、頼朝の気持ちは固い。そして、範頼には更に辛い未来が待っていた。

悲しき姫、大姫

後鳥羽天皇へ入内予定だった頼朝の娘・大姫(南沙良)。しかし、後白河法皇が亡くなったことで棚上げになっていた。そこで、頼朝は公家の一条家長男・高能に大姫を嫁がせることを考える。一条家は今、都で力を伸ばしている存在だからだ。が、大姫は鎌倉まで来た高能に「許嫁がいる」と言って断ってしまう。許嫁とは木曾義高(市川染五郎)のこと。大姫の心にはまだ義高がいた。初恋の人で、望まない別れ方をした。初恋が大姫の運命を変えてしまった。

どうにか大姫に前を向かせようと、全成(新納慎也)が義高の霊を祈祷で自身に下ろし、言葉を伝えようとする。が、あっさり見破られる。茶番でしかなかったし、余計に傷つけるだけなのだが、もう打つ手がないのだろう(とはいえ、大姫の想いが強すぎて成仏できないというのはひどい……)。

そんな中、大姫は巴御前(秋元才加)を訪れる。自分の中から義高の面影が消えてゆくのが大姫は辛かったのだ。巴から話を聞いて、その面影を引き留めたい。しかし、巴が伝えたのは、今、生きていてよかったということだった。

義仲が亡くなったとき、自分も死のうと思ったが、和田義盛(横田栄司)に出会えて、今を生きることができている。

「面影が薄らいだということは、義高が前へ進めと言っているということ」と巴は大姫の手を握る。

 大姫は前を向き、帝への入内を受け入れ、頼朝、政子(小池栄子)と共に京に行く。が、京は甘くなかった。丹後局(鈴木京香)の洗礼を受ける。彼女から見て所詮、政子も大姫も田舎者。

辛辣な物言いに、大姫は目に涙をいっぱい溜めて丹後局を見つめる。怖い。その場にいないのに、丹後局に怒られているような気持ちになる。

 求められているは男の子を生むことだけ。

その事実に打ちひしがれた大姫はその夜、そっと寝所から抜け出す。

その先で大姫が会ったのは三浦義村(山本耕史)。苦しい気持ちを吐露する大姫に「姫は悪くない。生きたいように生きればいい」「人は己の幸せのために生きる。当たり前のことです」と義村は優しく言い聞かせる。

「私の幸せ……」

大姫は小さくつぶやき、そのまま倒れてしまう。

高熱を出し床に臥せった大姫の具合は悪くなっていくばかり。鎌倉に戻っても回復しない。

看病をする政子に、大姫は「私は私の好きに生きていいんですか」と問いかける。

そして「好きに生きるということは、好きに死ぬということ」とつぶやく。

「死ぬのはちっとも怖くない」「だって死ねば義高殿に会えるんですもの。楽しみで仕方がない」

母である政子にとっては辛い言葉だ。

「生きることを拒んだ体は衰弱の一途をたどり……」という淡々としたナレーションに大姫の苦しみが込められている。

頼朝に翻弄された大姫の人生。義高に会えたことだけが、大姫にとっての幸せだったとしたら、こんなに辛いことはない。

 
大姫を失った頼朝は、誰かが自分を呪っている、と言う。「誰か」というのは範頼のことだ。範頼は善児(梶原善)の手にかかり、この世を去る。頼朝は自分を慕っている人をまたひとり、失った。

それぞれの静かな演技で鬼気迫ったストーリーとなった今回。

要所でキーマンとなる義村。

ゾッとするような迫力を見せる丹後局。

大姫の死に泣きじゃくる時政(坂東彌十郎)。
 
そしてすっかり人相が変わってしまった頼朝。

全てを手に入れたはずだった。しかし、実のところ、全てを失ったのかもしれない。もはや、彼は誰のことも信じられないのだから。

そんな頼朝も、先は長くはない。頼朝も自覚している。だが、焦れば焦るほど、己を追い詰めていく。

「全部頼朝のせい」などと言っていたころが懐かしい。それらは全て、頼朝の元に返っていく。

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–{第25話ストーリー&レビュー}–

第25話ストーリー&レビュー

第25話のストーリー

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身に降りかかる不幸が続き、不安にさいなまれる源頼朝(大泉洋)。政子(小池栄子)が心配する中、過剰に助言を求められる全成(新納慎也)は困惑し、実衣(宮澤エマ)と思案する。一方、源頼家(金子大地)に長男・一幡が誕生。比企能員(佐藤二朗)は鎌倉殿の継承に心を躍らせ、比企の台頭を危惧するりく(宮沢りえ)は北条時政(坂東彌十郎)をたきつける。そんなとき、頼家に呼び出された義時(小栗旬)は、三浦義村(山本耕史)から……

第25話のレビュー

頼朝(大泉洋)は死に怯えていた。

毎日同じ夢を見る。自分の亡骸を囲む、政子(小池栄子)を始めとした家族たち。自分の死期は近いのか。まだ生きたい。そう願う頼朝は全成(新納慎也)に相談をする。

相性の良くない色(赤)を近づけてはならない、恨みを持つ者の縁者に気をつける、久しぶりの者との対面を控える、昔を振り返らない、仏事神事は欠かさないこと、赤子を抱くと命を吸い取られる……。途中から、全成は適当に言っていたのだが、頼朝はその助言通りに行動しようとする。

当然と言えば当然なのだが、このような助言を信じ込むと行動に辻褄が合わなくなってくる。
義時(小栗旬)だって恨みを持つ者の縁者だ。ここに来て、頼朝の不安は大きくなってきている。北条は信じていいのか。頼朝は範頼(迫田孝也)を焚きつけたのは比企だという噂も耳にしていた。もう誰も信じられない。

しかし、頼朝の周りでは少しずつ状況が動いていた。頼朝の嫡男・頼家(金子大地)のもとに長男・一幡が生まれた。比企能員(佐藤二朗)の娘・せつ(山谷花純)との子だ。能員は野心を燃やす。頼家が頼朝の跡を継ぎ、その次は一幡だということを周囲にもアピールしたい。が、実は頼家には別に妻にしたい女性がいた。それも源氏の血を引く女性。頼家から相談を受けた義時は、頼朝との仲介役として仲を取り持った。話がややこしくなってきたぞ!
それにしても頼朝の息子らしく、頼家も女性に手を出すのが早い……。

日々、気持ちが落ち着かない頼朝。そんな中、稲毛重成(村上誠基)の妻・あき(尾碕真花)の供養が相模川の橋のたもとの寺で行われることになる。あきは北条時政(坂東彌十郎)の四女。北条家揃っての供養に頼朝も参列するが、縁起を担いで方違えをして向かうことにする。
景時(中村獅童)に縁起のよい方角を調べさせ、和田義盛(横田栄司)の別邸の立ち寄る迂回路を選ぶ。そこで、頼朝は義仲(青木崇高)の愛妾・巴御前(秋元才加)と会い、義仲討ちを詫びる。巴に悪いと思って謝っているというよりは、自分が楽になりたいから謝っているだけのように思うが……。そもそも、巴は恨みを持つ者の縁者のような気もするのだが。もはやどれもこれも頼朝の死のフラグにしか見えない。

さらに、供養が終わったあとは吹っ切れたように政子や義時に「源氏は帝をお守りし、武家の棟梁としてこの先100年も200年も続いていかねばならん」と話し、義時には頼家を支えるように言う。そして、鎌倉殿は頼家に継がせ、自分は大御所になるつもりだ、と。さらに「人の命は定められたもの。抗ってどうする」と憑き物が落ちたのか朗らかに笑う。

スッキリとした様子の頼朝は、酒宴を行う予定の北条家の者たちよりも先に、頼朝は安達盛長(野添義弘)が引く馬に乗り御所に戻ることに。

盛長と昔話をしながらの岐路。しかし、頼朝は突然右手にしびれを感じる。回らなくなるろれつ。意識が遠のき、そのまま馬から落ちる頼朝。

そのあとに、虫の知らせを受け取ったような表情を見せる政子、頼家らの表情が映し出される。響く鈴の音。しかし、義時のアップでは鈴の音は響かない。

頼朝の死は脳卒中では? という推測がSNSでも多く見られた。ただ、義時が直前に水を渡していたり、鈴の音が義時にだけ聞こえていなかったり……。実は義時が毒を盛っていて、頼朝が倒れることを知っていた……という可能性はなきにしもあらず、なのだけれど、それをここで言うのは少し突飛かとも思う。万が一明らかになるとしたら、少し先だろう。死に怯える頼朝が政治を乱すかもしれない、と考えてやったことだとか……と、想像する余地が残されるのが憎い。

しかし、頼朝が死ねば、鎌倉はまた混沌に飲み込まれていくことになる(あと頼朝はまだ死んだわけではない)。
また新たな争いが、起きる。

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–{第26話ストーリー&レビュー}–

第26話ストーリー&レビュー

第26話のストーリー

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安達盛長(野添義弘)が涙に暮れる中、義時(小栗旬)は先を見据え、大江広元(栗原英雄)らと頼朝の嫡男・頼家(金子大地)を次の鎌倉殿とする新体制作りを始める。しかし、比企能員(佐藤二朗)の力が増すことを嫌うりく(宮沢りえ)が、夫・北条時政(坂東彌十郎)をたきつけてこの流れに対抗。鎌倉に不穏な空気が流れる中、狩りから戻った頼家は……

第26話のレビュー

頼朝(大泉洋)は、まだ生きている。

が、義時(小栗旬)を始め、周りは頼朝が死んだあとのことを考え始めていた。

次の鎌倉殿について、である。

素人考えだと、頼朝の息子である頼家(金子大地)が継ぐのでは? と思うが、頼家はまだ17歳。御家人たちがついてこないだろう……という話になるが、それぞれの思惑は別のところにある。

いかに自分が力を発揮できる人物を鎌倉殿にするかだ。

北条家は、娘・政子(小池栄子)が頼朝の妻だった。だからこそ安泰、だったわけだが、頼朝が亡くなれば事態は変わってくる。そこで時政(坂東彌十郎)……というより、りく(宮沢りえ)が考えたのは全成(新納慎也)だ。全成は今や頼朝のただひとりの弟。そして、全成が鎌倉殿になれば御台所は北条家の娘・実衣(宮澤エマ)になる。変わらぬ権威が持てるというわけだ。

一方、頼家を推したいのは乳母夫の比企能員(佐藤二朗)。頼家が鎌倉殿になれば、実権を握ることができる。鎌倉を牛耳ることを比企は虎視眈々と狙っていたのだ。

 
そんな中、政子だけは、頼朝が目を覚ますと信じ、看病を続ける。少しずつやつれていく政子。
なのに、とても美しい。ああ、この人はずっと頼朝を愛していたんだ、と分かる。

頼朝の別れのシーンはまだまだ朗らかだった頼朝と政子の関係を思い出すようなものだった。女好きでしょうもないことをたくさんしていた頼朝。結局、一番愛していたのは政子だったのだろう。
そして、結局、誰にも看取られず、ひとりで死んでいくことになったのは頼朝の業なのかもしれない。

頼朝が死んだ。が、政子にかなしんでいる暇はない。主人がいなくなった鎌倉で、中心人物となるのはほかでもない政子なのだ。

義時は政子に次の鎌倉殿に誰を選ぶのか、託す。
時政は、政子なら全成を次の鎌倉殿に選ぶと思っていたのだろう。

しかし、政子が選んだのは頼家だった。そんな決定をした政子を時政はなじる。
実衣は「私に御台所の座を譲るのが嫌なんでしょう?」と言い出す。鎌倉がバラバラになる前に、北条家がバラバラになっていく。

一方、義時は次の鎌倉殿が決まり、鎌倉を離れようとする。優秀な人材が多くいる今の鎌倉なら大丈夫だろう、と。が、政子は逃がさない。

「あなたに言われて腹をくくったんだから、少しは責任を持ちなさい!」

ここで伊豆に帰られては困る。「鎌倉殿の13人」はここからが始まりだ。

(文:シネマズ編集部)

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