7月15日(金)に、遂に公開された『キングダム2 遥かなる大地へ』。
興行収入57.3億円を記録した前作から3年、いよいよキングダムの本筋ともいうべき“戦(いくさ)”の物語が始まります。
前作から山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈らメインキャストが続投、もちろん圧倒的な存在感を発揮する大沢たかおも再登場します。
さらに今作からアクションに定評のある清野菜名がキーパーソンとして登場するほか、豊川悦司、小澤征悦、佐藤浩市など豪華な面々が揃いました。
そんなオールスターキャストの中で、非常に美味しい役どころを演じている演者が“2人”います。
※『キングダム2』の一部ストーリーに触れています。未鑑賞の方はご注意ください。
>>>【関連記事】<解説>『キングダム』が 邦画の域を超えた“10の魅力”
>>>【関連記事】俳優・大沢たかおの尽きない魅力:『キングダム』で見せた表現者としての凄さ
『キングダム2』アクションはバリエーションアップ!
オールスターキャストに加えて、第1作の『キングダム』では中国でも本格的なロケを敢行、圧倒的な絵はそれだけで映画に対してとても高い満足感を得られます。
そこに、隅々までオールスターキャストが配されるわけですから『キングダム』シリーズは本当にお金も手間も、ものすごい規模感です。
前作『キングダム』は2人の少年信と漂の成長と、王弟によるクーデーターまでが描かれ、後の始皇帝・嬴政が秦の王となる所までが描かれました。前作は「キングダム」の物語全体から見れば序章の段階にすぎませんでした。
一方で『キングダム2』は “戦(いくさ)”が描かれ、いよいよキングダムのストーリーである「信が天下の大将軍を目指す物語」が始まります。
アクションシーンは前作もインパクトがありましたが、今作は戦場が舞台であるため様々なシチュエーションのアクションシーンが展開されます。
嬴政の吉沢亮と河了貂の橋本環奈は王都に控える分、信(=山﨑賢人)の隣で獅子奮迅の働きをするのが羌瘣役の清野菜名。
(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会
清野菜名はもともと、アクションに関しては自他ともに認める素養の持ち主ということもあって、期待通りの活躍を見せてくれます。
それでも凄腕の暗殺者集団の1人という役に説得力を持たせるため、アクショントレーニングはかなり大変だったようですが……。
合戦シーンはもちろんCGなどの加工・増幅もされてはいますが、実物感のあるロケ中心で説得力と臨場感があります。
『グリーン・デスティニー』や『HERO』の路線に連なる武侠映画大作ともいえる、アクションのつるべ打ちは圧巻の一言です。
『キングダム2』で美味しいところを持って行った2人
見どころ満載の『キングダム2』にて、メインキャストに絡む立ち位置で実に美味しいところを持って行った2人の俳優がいます。
(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会
1人は千人将・縛虎申を演じた渋川清彦。
歩兵の犠牲も顧みず突撃を強行する将軍と見せて……クライマックスで本当にいいところ持っていきます。
「真犯人フラグ」などのドラマや『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』や『バスカヴィル家の犬シャーロック劇場版』などの映画など、話題作・ヒット作には欠かせない頼もしいバイプレイヤーです。
(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会
そしてもう1人が、歩兵の中でも剛の者・沛浪を演じる真壁刀義。
スイーツ大好きプロレスラーとしてお馴染みのあの真壁刀義です。
今回は持ち前のいかついビジュアルをいかんなく発揮して、言動や仕草は荒っぽいけど、実は仲間想いで頼もしい戦慣れした歩兵という“ほとんど当て書き”なキャラクターを演じています。
『キングダム2』を観てみて、「プロレスラーが意外と多くの映画に出演している」「本人役ではなく、キャラクターを演じることも少なくないのでは」と思いました。
–{映画に登場する日本のプロレスラー}–
映画に登場する日本のプロレスラー
日本プロレスの父・力道山から始まり、アントニオ猪木やジャイアント馬場といった往年のビッグネームは総じて映画出演歴があります。
その多くが本人役ですが、神無月のモノマネでおなじみの武藤敬司をはじめとする選手はちゃんとキャラクターのある役で映画に出演しています。
近年、演技の場で活躍している存在といえば、新日本プロレスの“100年に一人の逸材”こと棚橋弘至でしょう。
(C)2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会
同題絵本をもとにした『パパはわるものチャンピオン』では堂々の主役を演じています。
本作ではかつてはエースだったものの今はキャリアも下り坂で、悪役マスクマンとして前座を務めるという役どころ。
本作の凄いところは棚橋弘至がそのままプロレスラーを演じるという出オチで終わらせずに、豪華な共演陣を集めてウェルメイドな作品に仕上げたと点でしょう。
(C)2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会
棚橋弘至演じる木村考志を支える妻に木村佳乃、その息子に寺田心、プロレスファンのライターに仲里依紗、その上司に大泉洋、さらに大谷亮平や寺脇康文まで顔をそろえています。
棚橋弘至は新日本プロレスの暗黒期と言われた2000年代半ばからの10年間を支え続け、今のプ女子人気を作り出した功労者です。
彼は特撮ファンとしても知られていて『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』ではメイン悪役の1人を務め、竹内涼真と肉弾ファイトを披露しています。
また、“大人の特撮”として根強いファンがある「牙狼」シリーズでは特別編に主演してスイーツ真壁とド迫力のファイトを披露しています。
そのほかには、真壁刀義や棚橋弘至が所属する新日本プロレスで、今エースといえるのが“金の雨を降らせる=レインメーカー”オカダカズチカも挙げられます。
『パパはわるものチャンピオン』でも絶対的なエース役で登場するほか、「99.9-刑事専門弁護人-」シリーズではドラマから映画まで通して本人役で登場。
プロレスラーが馴染みにしているという設定の店とはいえ、本筋とは全く関係ない登場にクスッとします。
–{海外の「プロレスラー×映画」について}–
海外の「プロレスラー×映画」について
日本でもプロレスは人気のエンターテインメントではありますが、本場アメリカでの人気は桁違いです。
アメリカ最大の(つまりは世界最大のプロレス団体)プロレス団体WWE(旧WWF)はビジネス面でいえばアメリカ4大スポーツに匹敵するものがあります。
このアメリカンプロレスで20世紀中、最も成功したスーパースターといえば、アントニオ猪木のライバルとして日本でも活躍したハルク・ホーガン。
彼は1982年の『ロッキー3』でロッキーと異種格闘技戦をする役柄でスクリーンデビューを飾ります。その後も映画には出続けるのですが、持ち込まれる企画がB級ジャンル映画ばかりだったこともあって映画スターとしては成功したとは言い難いものでした。
B級の企画なら仕方ないという意見もありますが、A級のメジャーがハルク・ホーガンを重要なポジションに選ばなかったという見方もできます。
プロレスラーとしての圧倒的な人気とカリスマ性をハルク・ホーガンが持っていることを認めつつも、メジャー映画企画に彼をキャスティングしようという思考に至らなかったということなのでしょう。
以降、プロレスラーのハリウッドでの成功は難しいという見方が通説となっていました。
壁をぶち破ったのは“あの男”
21世紀に入ってWWFからWWEに団体名が変わりかける中で、1人のカリスマレスラーが登場します。ザ・ロックというリングネームの男でした。
今は、ドゥエイン・ジョンソンという名前で、ハリウッドのメガヒット大作の常連俳優として“ハリウッドの顔”にまで上り詰めた俳優です。
この頃はベビーフェイス(善玉)といってもチョイ悪なキャラが人気で、ザ・ロックは見事にはまりました。
そんな彼の映画本格デビューは大ヒットシリーズ第2弾『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』。本作でメインゲストの“スコーピオン・キング”を演じ、見事にハマりました。
その勢いのまま、主演スピンオフ作品『スコーピオン・キング』が公開されると全米興行収入1位を獲得という異例の大成功をおさめます。
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(C)Universal Pictures
その後の俳優としてのキャリアは改めて言うまでもなく、今ではハリウッドで最も稼ぐ俳優の1人となりました。今年もアメコミ大作『ブラックアダム』に主演しています。
これを見たWWEは同じくスーパースターのストーン・コールド・スティーブ・オースティンがスタローンの『エクスペンダブルズ』に、HHH(トリプルH)が『ブレイド3』の悪役に出演するなどありましたが、ザ・ロック=ドゥエイン・ジョンソンほどの成功を収めるまでには至りませんでした。
ドゥエイン・ジョンソンに次ぐ男、デイヴ・バウティスタ
ザ・ロック=ドゥエイン・ジョンソンの成功を見たWWEは自社に映画製作部門を作るなど本腰を入れますが、なかなか第二の男が現れませんでした。
そんななか、意外な形で登場したのが当時バティスタ、現在はデイヴ・バウティスタの名前で活躍する肉体派俳優です。
B級アクションでデビューしたバティスタ=バウティスタですは、タランティーノが絡んだラッパーのRAZが監督主演を務めたカンフー映画『アイアン・フィスト』で敵役を演じ、ラッセル・クロウやルーシー・リューといったトップスターと絡んで少し異なるキャリア形成を始めます。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(C)2014 Marvel. All Rights Reserved.
そして2014年には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のメインキャストを務めます。
本作で一気にジャンプアップした彼はその後、『007/スペクター』『ブレードランナー2049』といった文句なしの大作に登場して一気にハリウッドスターになりました。
『DUNE/砂の惑星』(C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
『ブレードランナー2049』で彼を起用したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はその後も『DUNE/砂の惑星』でもキャスティングしています。
第3の男、ジョン・シナ
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
そして、第3の男が登場します。その名前はジョン・シナ。
精悍な雰囲気を醸し出すジョン・シナは、軍人や警察官キャラがうまくハマりB級路線ではありましたが、コンスタントに映画に出演するようになります。
そして2018年の『バンブルビー』でメインキャストを務めます。『トランスフォーマー』シリーズのスピンオフ作品でもあるこの作品は、明らかなA級案件でした。
映画自体は本筋の『トランスフォーマー』シリーズの中でも興行で苦戦しましたが「作品に出演した」という既成事実は大きな武器になります。
そして2021年は大ブレイクの年になりました。『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』と『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』というメインキャストを務めた大作が連続公開し、一気に映画スターの仲間入りを果たしました。
『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』(C)2021 WBEI TM & (C)DC
『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』で演じた変則ヒーローのピースメーカー役が受けて、彼を主役にしたテレビのミニシリーズも作られています。
映画で活躍する“選手”たち
今回たまたま、『キングダム2 遥かなる大地へ』での真壁刀義の好演から、映画のおけるプロレスラーの活躍を探ってみました。
例えば格闘家となるとあのブルース・リーも格闘家であり、再編集版の『ロッキーⅣ』も話題のドルフ・ラングレンも極真空手の有段者でした。
彼らの身体能力をうまく活かす存在がいれば、彼らは見事に映画スターになってみせていました。
出自はどうあれ、エンターテインメントの場の住人であることは変わりないので、これからも彼らの活躍を素直に楽しむのというのが正解でしょう。
(文:村松健太郎)
>>>【関連記事】<解説>『キングダム』が 邦画の域を超えた“10の魅力”
>>>【関連記事】俳優・大沢たかおの尽きない魅力:『キングダム』で見せた表現者としての凄さ
–{『キングダム2』作品情報}–
『キングダム2 遥かなる大地へ』作品情報
ストーリー
紀元前の春秋戦国時代、中華・西方の国・秦。戦災孤児として育った信(山崎賢人)は、王弟のクーデターにより玉座を追われた若き王・えい政(吉沢亮)と出会う。えい政は、天下の大将軍になると一緒に誓いながらも死別した幼馴染の漂と瓜二つだった。信は国王に協力し、河了貂(橋本環奈)や山の王・楊端和(長澤まさみ)とともに王宮内部に侵入する。信は敵を打ち破り、内乱を鎮圧すると、玉座を奪還する。半年後、隣国・魏が国境を越え侵攻を開始したと知らせが届く。秦国は国王・えい政の号令の下、魏討伐のため蛇甘平原に軍を起こす。信は歩兵として戦に向かい、その道中、同郷の尾平(岡山天音)と尾到(三浦貴大)と再会する。戦績のない信は、尾兄弟に加え、残りものの頼りない伍長・澤圭(濱津隆之)、子どものような風貌に哀しい目をした羌かい(清野菜名)と最弱の伍(五人組)を組むことに。魏で総大将を務めるのは、かつての秦の六大将軍に並ぶと噂される軍略に優れた戦の天才・呉慶将軍(小澤征悦)。一方、秦の総大将は、戦と酒に明け暮れる豪将・ひょう公将軍(豊川悦司)だった。信たちが戦場に着くと、有利な丘を魏軍に占拠され、すでに半数以上の歩兵が戦死した隊もあるなど、戦況は最悪だった。秦軍は完全に後れを取っていたが、信が配属された隊を指揮する縛虎申(渋川清彦)は、無謀な突撃命令を下すのだった……。
予告編
基本情報
出演:山崎賢人/吉沢 亮/橋本環奈/清野菜名/満島真之介/岡山天音/三浦貴大/濱津隆之/真壁刀義/山本千尋/豊川悦司/高嶋政宏/要 潤/加藤雅也/高橋 努/渋川清彦/平山祐介/玉木 宏/小澤征悦/佐藤浩市/大沢たかお ほか
監督:佐藤信介
公開日:2022年7月15日(金)
製作国:日本