2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第61回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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愛の気持ちを尊重するという和彦のずるさ
第13週「黒砂糖のキッス」(演出:中野亮平)は恋愛ばなしが本格化しそうな気配。サブタイトルの「キス」ではなく「キッス」に力みを感じます。
和彦(宮沢氷魚)への恋を認識した暢子(黒島結菜)はすっかり仕事に身が入らなくなってしまいました。
智(前田公輝)は「つきっきりで看病してくれた」とますますやんばる行き(親に結婚報告)を進めようとします。
「つきっきり」は智の思い込みです。それほど「つきっきり」ではなく、暢子は夜、房子(原田美枝子)に呼び出されて朝まで古酒を飲んでいたわけです。しかもそこで和彦への恋を意識したことを知るよしもない智がお気の毒です。
困る暢子を見かねた二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)は”先輩”の例をあげ悶絶するような恋の悩みは仕事の原動力にするといいとアドバイスします。この”先輩”は二ツ橋自身のことであることを暢子は気づいています。
二ツ橋さんのこのわかりやすい例え話は2度目ですが、おもしろいので、コーナー化されてもいいように思うのは、高嶋さんの演技の賜物でありましょう。高嶋さんはエキセントリックな役もお似合いですが、素朴で非力な、でも懸命に生きている庶民の哀愁を演じさせたら抜群です。
二ツ橋のコントのような場面に、なぜかトランペットの音色が晴れ晴れとしているようでどこか切ない劇伴がかかるんですよね。どういう意図なのか。
もうひとり、ドラマをもり立てているのが、田良島役の山中崇さん。愛(飯豊まりえ)の悩みに助言します。田良島は混沌としたこの世界で珍しい正論を言う人物です。正論過ぎることを言って「恥ずかしい」と去っていくところまでメリハリをつけて演じています。
愛も真っ当な人物です。順調に交際していた和彦が結婚話を前に突如、様子がおかしくなったとき、あくまで冷静に話し合いをしようとします。愛の気持ちを尊重するという和彦に、自分で決めずに逃げているという彼女の主張と自身の自己矛盾への悩みはいたって当然のものです。
6年つきあって結婚をまったく考えていなかった愛と和彦。フランス好きな愛ですから、いっそ、ふたりをサルトルとボーヴォワールのような自由恋愛カップルに描いたほうが結婚を考えずに長くつきあっていることも不自然に見えずに済んだように思います。
朝ドラでそれをメインに描くのは難しいでしょうけれど、ルールに縛られない自由に着目するのなら自由恋愛もあっていいのではないか。ちょっと飛躍し過ぎでしょうか。この時代、そういう先鋭的な生き方も認めると考えるインテリカップルではあったと想像します。
飛躍過ぎといえば、フォンターナの従業員が突如3人、辞めてしまいました。
矢作(井之脇海)、桃木(池田航)、玉島(櫻井圭佑)の3人。桃木と玉島。やっと名前を認識できました。
(文:木俣冬)
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–{「ちむどんどん」第13週目のあらすじ}–
「ちむどんどん」第13週目のあらすじ
暢子(黒島結菜)は、房子(原田美枝子)と酒を交わすうちに、和彦(宮沢氷魚)への恋心を自覚する。生まれて初めての感情に、仕事ができなくなるほど振り回される暢子。しかし、フォンターナで起こるとある大事件をきっかけに、暢子の中で何かが変わり始める。一方で、和彦と愛(飯豊まりえ)の縁談は進んでいき、関係にも変化が…。智(前田公輝)は事業独立を機に暢子に改めて気持ちをぶつけて…。
–{「ちむどんどん」作品情報}–
「ちむどんどん」作品情報
大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――
ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。
放送予定
2022年4月11日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人
作:
羽原大介
語り:
ジョン・カビラ
音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)
主題歌:
三浦大知「燦燦」
沖縄ことば指導:
藤木勇人
フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子
制作統括:
小林大児 藤並英樹
プロデューサー:
松田恭典
展開プロデューサー:
川口俊介
演出:
木村隆 松園武大 中野亮平 ほか