2023年をもって解散を発表した、“楽器を持たないパンクバンド”BiSH。12ヶ月連続リリースの真っ最中であることも話題を呼んでいるが、このタイミングで大きな知らせが。
なんと、BiSHのメンバー6人をそれぞれ主演に迎えた短編オムニバス映画『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL』が、6月10日(金)に全国公開されることが決定した。
cinemas PLUSでは、BiSHメンバー全員にインタビューを実施。映画『レコンキスタ』で”これまでにないハシヤスメ・アツコ”を見せた本人に話を聞いた。
ハシヤスメ・アツコの人生を取り上げた映画に
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――「ハシヤスメ・アツコ=コメディ」のイメージがあったので、今回の作風は意外でした。鬱憤をカッコよくぶちのめす爽快さがBiSHっぽいです。どのような思いで作られたのでしょうか?
ハシヤスメ・アツコ(以下、ハシヤスメ):今回、監督を務めてくださった大喜多監督は、映画を作るにあたって”私の過去”を深掘りしてくださいました。インタビュー記事まで読み込んでくれて、ハシヤスメ・アツコに寄り添った作品を作ろうとしてくれたんだと思います。
大喜多監督とは、BiSHの活動がスタートしてから割と早い段階で出会ったんです。楽曲「オーケストラ」のMV撮影も担当してくれていて、もう6年くらいのお付き合い。今でも定期的にライブを見に来てくれて、いわば”BiSHのお父さん的存在”ですね。
そんな大喜多監督が、私の人生を取り上げた映画を作ろうとしてくれている。BiSHの過程を近くで見守ってくれた大喜多監督だからこそ、できた作品だと思います。
――初めて脚本を読まれたときの感想を教えてください。
ハシヤスメ:忘れてた感情を取り戻させてくれましたね。
多くの清掃員(=BiSHファンの通称)が、ハシヤスメにはコメディやコント、いわゆるバラエティ的な要素があると思っているはず。私自身も、BiSHのメンバーになってからは怒ったり感情的になったりすることが少なくて。
でも、いただいた脚本には、感情的になるシーンがいっぱいあったんです。怒り、イライラ、もどかしさ、悲しみ……。撮影するにあたって、忘れてた感覚や感情を思い出せるかどうか、それが一番心配でしたね。
自分で自分を苦しめた撮影
――怒りの感情を思い出すのに、どんなことをしましたか?
ハシヤスメ:とにかく、自分がもがき苦しんだ過去を思い出すようにしました。オーディションを100社くらい受けても受からなかったり、警察官になる夢を実現できなかったりした過去を。忘れてた思い出を無理やり掘り返して、自分で自分を苦しめてましたね。
――映画のためとはいえ、苦しさを伴う作業ですよね。
ハシヤスメ:私はもともとポジティブ思考なので、怒りモードになっている自分が嫌でたまらなくて。でも、明るいままの自分だと、上手く撮影に入れないなと思ったんです。なので、撮影の合間もずっと下を向いてました。
私がそんな状態でも、いつも通り話しかけてくれた大喜多監督さんには、感謝しかありません。
伝えるために170%の勢いでネジを飛ばす
――客観的にご自身の演技をご覧になって、いかがでしたか?
ハシヤスメ:少し恥ずかしかったです。自分の作品『レコンキスタ』が流れた瞬間に「とうとう来てしまった……」って目を覆いたくなりました。でも、意外と最後まで観られたんですよね。なので「世界観に入り込める作品になったのかな?」と思えて、嬉しかったです。
――過去にドラマ「ボクとツチノ娘の1カ月」(2021)で主演をされてますよね。ドラマと映画を比較して、感じる違いはありましたか?
ハシヤスメ:演技経験が多いとは言えないので、語るなんておこがましいんですが……。強いて言うなら、演技表現には、BiSHと通じるものがあるなと思いました。
たとえば、自分がドラマや映画を見るときに「もう少し大袈裟にやったほうが面白いかも?」って思うことがあるんです。でも意外と、やってる側は120%くらい出してるつもりでいる。
自分では「ちょっと大袈裟過ぎない?」と思う動きや声の出し方でも、見る側にとっては違和感がないんだな、と気づいたんです。BiSHのライブでも、もっとネジを飛ばして170%くらいの勢いでやったほうが、観てる側は入り込めるんだなと学びました。
一歩殻を破るために、タイトルを叫んでみてほしい
――今回の映画作りは、ハシヤスメさんにとってどんな経験になりましたか?
ハシヤスメ:大喜多監督の優しさに救われました。好きなように叫んで、好きなようにセリフを言ってもいいって言ってくれたんです。怖いと思ったら、セリフになくても「怖い」って言ってもいいよ、って。自分の感情のままにやらせてもらえて、ありがたかったです。
大喜多監督はとても優しい方なので、私がやりやすいように空気感を作ってくれたんだと思います。ゼロから一緒に作品を作り上げて、その過程で私もたくさん学ばせてもらいました。大喜多監督だからこそ、安心して世界観に飛び込めたんだと思います。
――これからご覧になる観客の方へ、メッセージをお願いします。
ハシヤスメ:「一歩殻を破る」って大事だなと思うんです。殻を破るって、言葉では簡単に言えるけど、いざやろうと思うと難しいじゃないですか。でも、たった一歩踏み込めたら、人生って本当に変わるんですよ。
私もBiSHとして活動を始めた当初は、下ネタを言うのも恥ずかしかったです。だけど、いざ口に出してみたら「殻、破れたな」って思ってスッキリできる。
ほんのちょっとでも自分を変えたいと思う方は、この作品を見て一歩踏み出してほしいと思います。まずは、この映画のタイトルを叫んでみてください。
(撮影=Marco Perboni/取材・=北村有)
–{『 BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL』 作品情報}–
■『 BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL』 作品情報
ストーリー
#1『リノベーション』 〈主演〉アイナ・ジ・エンド×田辺秀伸監督
心に悩みを抱えるダンサーの女性が、不動産屋に連れられた内見先で不思議な出来事を経験していく。踊りと映像で魅せる、一人の女性が自身のルーツを探る物語。
#2『レコンキスタ』 〈主演〉ハシヤスメ・アツコ×大喜多正毅監督
鬱屈した日々を送るOLが、ある日社内のエレベーターで奇妙な時空のループにはまる。エレベーターの停止先に見つけたものとは。過去の自分をぶち抜く爽快ムービー。
#3『オルガン』 〈主演〉アユニ・D×エリザベス宮地監督
「山に行ってくる」と言って、遠くへ去っていった兄の竜一。山小屋に向かったあーこは、竜一が撮った一枚の写真と自分宛の手紙を見つける―。
#4『VOMiT』 〈主演〉リンリン×山田健人監督
どこでもない夜道を千鳥足で歩く一人の女性。彼女の不思議な旅路の終着地は―。人間の感情を圧倒的な映像美と音楽で魅せる異色のトリップムービー。
#5『PEACH CHAOS PEACH』 〈主演〉モモコグミカンパニー×渡辺淳之介監督
普通の高校生桃子がある朝目覚めると。。。これ以上はネタバレするとなんも面白くなくなってしまうような青春ドタバタコメディ。
#6『どこから来て、どこへ帰るの』 〈主演〉セントチヒロ・チッチ×行定勲監督
チヨはアキオのことを2番目に好きだといつも言った―。
許されない関係にある男女の濃厚な文学的恋愛物語。
作品情報
企画・制作:WACK
配給:松竹 映画営業部ODS 事業室/イノベーション推進部新領域コンテンツ室
映倫:PG-12
主題歌:I have no idea.(BiSH/avex trax)
公式HP:bish-movie.com