間宮祥太朗が地上波ゴールデン・プライム帯ドラマ初主演を務める「ナンバMG5」が、4月13日より放送開始した。
本作は、小沢としおによる人気漫画『ナンバMG5』『ナンバデッドエンド』を実写化した“脱ヤンキー”物語で、本広克行監督がメガホンを取る。
cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
難破剛(間宮祥太朗)は、10代のころ千葉最強のヤンキーと恐れられたトラック運転手の父・勝(宇梶剛士)、レディースの総長だった専業主婦兼パチプロの母・ナオミ(鈴木紗理奈)、高校時代に関東を完全制覇したカリスマヤンキーだが現在は無職の兄・猛(満島真之介)、改造自転車を乗り回す能天気な中学2年の妹・吟子(原菜乃華)という筋金入りのヤンキー一家・難破家の次男。一家の愛犬・松は、剛の弟分的な存在だ。そんな家族のもとで育ち、千葉14校を傘下に持つ超有名ヤンキー中学校・萬田中のアタマを張るまでになった剛は、県内屈指のヤンキー校として知られる市松高校への入学を期待されていた。兄の猛がアタマを張っていた城南高校ではなく、家から離れた市松高校を選んだのは、自分自身の腕でのし上がるためだという。
初登校の日の朝、特注の特攻服に身を包んだ剛は、家族から派手に見送られながら家を出た。だが、その途中で公園のトイレに立ち寄った剛は、何故か特攻服から学生服に着替えると、市松高校ではなく、白百合高校の門をくぐる。実は剛は、「普通の青春がしたい!」と願い、家族にも内緒にして健全な普通の高校に入学していたのだ。そこで藤田深雪(森川葵)や守田巻(富田望生)らと同じクラスになった剛は、この二重生活を3年間やり通して見せると固く決意していた。
一方、市松高校には、伍代直樹(神尾楓珠)という男が入学する。不良だらけの上級生からも恐れられるほど、ケンカが強い一匹狼だった。
剛は、猛に憧れ、ヤンキーを目指して”高校デビュー”したクラスメート・島崎登(春本ヒロ)と親しくなる。剛は、島崎のおごりで一緒に牛丼を食べに行くことになったが、その途中、中学時代に島崎をパシリにしていた市松高校のヤンキーたちに遭遇してしまう。ヤンキーたちに連れ去られ、痛めつけられる島崎。剛は、カバンの中に隠していた特攻服に着替えると島崎を助けに行くが……。
第1話のレビュー
間宮祥太朗のフジテレビ系ドラマ初主演作となる「ナンバMG5」で、間宮が演じるのは難破家の次男・剛。中学時代には千葉県内14校を傘下に持つ萬田中学のアタマになるが、「普通の青春を送りたい!」と、家族に内緒で普通の高校に入学するという役どころだ。
剛の家は、トラック運転手で学生時代は“千葉最強”の名を轟かせていた父・勝(宇梶剛士)を筆頭に、主婦兼パチプロでかつてはレディース総長だった母・ナオミ(鈴木紗理奈)、高校時代に関東制覇した兄・猛(満島真之介)や、派手な自転車を乗り回す中学生の妹・吟子(原菜乃華)、という筋金入りのヤンキー一家。
剛は彼らの期待を裏切れず、特攻服=特服を着て家を出るも、途中のトイレで髪も整え通常の学生服に着替えてから登校するという二重生活を送っている。なんと健気なんだろう。
県内屈指のヤンキー校・市松高校ではなく、その隣にある白百合高校に入学し、最初は椅子の座り方や教師が教室に入ってきたときに起立、礼をすることにも戸惑いを見せる剛。本当に初めての“普通の学校生活”なのだなと感じる瞬間だった。
隣の席の藤田深雪(森川葵)とも、消しゴムの貸し借りをきっかけに仲良くなる。一緒に美術部にも入部するなど上々の滑り出しに、よかったね……! と祝福の気持ちでいっぱいになった。でも、もちろんそんな簡単にはいかない。
廊下で肩がぶつかったことをきっかけに同級生・島崎登(春本ヒロ)と仲良くなるのだが、島崎は高校デビューのヤンキーで、中学時代はパシリにされていた。そのヤンキーたちが市松高校に入学していたため、下校途中にあっさり見つかってしまった島崎は、ほとんど拉致のような形で連れて行かれてしまう。見かねた剛は特攻服に着替え、簡単に彼らを追っ払うのだった。暴力は決して褒められたものじゃないけど、なんだか剛が正義のヒーローみたいに見える。
この一件をきっかけに、剛は正体不明の最強“特服”として市松高校のヤンキーたちから追われることに。友達を助けたばっかりに、剛の平穏な高校生活が脅かされるなんてあんまりだ。そもそも、1回負けたんだから、もうそっとしておいてくれればいいのに。
しかも、市松高校1年生の伍代直樹(神尾楓珠)には、“特服”=難破剛であることがバレてしまう。だが、一匹狼の伍代は“特服”の正体を市松の連中に明かすことはせず、剛とやたらとタイマンを張りたがる。落ち着いていてケンカの強い人って、こういう物語の上では信頼できそうな匂いがするが、伍代はまさにそんな感じだ。
そしていざ、剛と伍代がタイマンを張ろうとしたところへ、市松の奴らがぞろぞろと伍代を潰しにやってくる。何人いるんだよという大人数で、金属バットを振り回す。喧嘩にフェアを求めるのはナンセンスだが、フェアじゃなさ過ぎてあまりにダサい。
伍代とのタイマンのために特攻服に着替えに行っていた剛は、離れたところからしばし行方を見守っていたが、卑怯なやり方を見かねて乗り込んで行く。結局1人で壊滅させてしまい、なんやかんやで伍代と意気投合。だが、やられた市松の連中もこれで黙っているわけもなく……。
学生時代に「ごくせん」シリーズを見て育ってきた筆者にとって、「ナンバMG5」はどこか懐かしさを感じる作品だった。暴力はダメだが、人と人とが共存していく中で大切なものを、それとなく教えてくれるのがいい。
そして、改めて印象的だったのは間宮の目力だ。特攻服のときにはマスクをしているからこそ、その強さがより際立って見えた。守るものや信念がある役が、間宮祥太朗にはよく似合う。
それにしても、間宮祥太朗をはじめ神尾楓珠に満島真之介、これから存在感を増していきそうな大丸大助役の森本慎太郎……どこを見ても“ビジュがいい”。難破家の愛犬・松もかわいい上にナレーション含めよきアクセントになっていた。来週も楽しみだ!
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
難破剛(間宮祥太朗)や藤田深雪(森川葵)が所属する白百合高校美術部は、次の日曜日に公園で写生大会を行うことに。休日だから私服でいい、といわれたものの、ヤンキー服しか持っていないため、どうすればいいか悩んでいた剛は、下校途中、市松高校の伍代直樹(神尾楓珠)に出会う。市松高校の2年生グループとケンカになり、左腕を負傷した伍代はギプス姿だった。伍代から、何故白百合に通っているのかと尋ねられた剛は、ヤンキーには向いていないから普通に勉強したり、部活したりしたかった、と正直に打ち明ける。その時、ふと伍代の服装を見た剛は、一緒に服を選んでほしいと頼む。
写生大会当日、伍代に選んでもらった服で参加した剛は、公園のベンチに深雪と並んで座り、デッサンを始める。そこに、男連れのガラの悪そうな女性がやってきて、深雪が描いていた絵をバカにし始めた。しつこく絡んでくる女性に怒り、思わず振り返って怒鳴ってしまう剛。すると、女性と一緒にいたのは、剛の兄・猛(満島真之介)だった。剛は、慌てて顔を隠すが……。
同じころ、市松高校2年の番格・最上克己(米本学仁)の一派は、特攻服の男=剛を探し出すために、特服のイラスト入りのビラを配り始めていた。情報提供者には10万円の謝礼をするという。賞金首となった剛の運命は……!?
第2話のレビュー
2週間ぶりとなった「ナンバMG5」。冒頭、まず驚かされたのは剛(間宮祥太朗)と伍代(神尾楓珠)の関係性だ。1話の最後で市松高校のヤンキーたちを相手に共闘したとはいえ、一気にここまで仲良くなるなんて……! しかも、私服がないという剛の頼みで、一緒にお買い物まで。ヤンキー同士のこういう距離の縮まり方、無条件にグッとくる。
洋服を選んでもらったお礼に、伍代を自宅へ招待する剛。お礼にご飯をご馳走するというのが、まさか母ちゃんの手料理だなんてかわいすぎでは……?
「いつも1人でコンビニ弁当」「何時に帰ろうが俺んち誰もいねぇし」「手料理の味なんて忘れちまったよ」……ぽつぽつと語る伍代に、毎回しっかりしんみりする難波家の人々がまたいい。雨の中で捨てられた子犬に傘を差し伸べる王道のヤンキー×5といった感じ。
そういえば、この家族が毎晩そろってご飯を食べているの、いいなって思ってた。それぞれに事情はあるだろうけど、やっぱり家族たるもの、こうであるのが理想だよなぁとしみじみ感じてしまった。唐揚げを食べて美味しい、とつぶやいた伍代に対し「まだまだあっからよ、どんどん食えよ」と優しすぎる笑顔を向けるナオミ(鈴木紗理奈)の母の顔がたまらない。
その頃、深雪(森川葵)は危機を迎えていた。なんとスマホの料金が5万円を超えてしまっていたらしい。一体どんな使い方をしたんだ……というツッコミはさておき、この局面を乗り越えるため、10万円の懸賞金がかけられた“特服”を探し出そうとする。
策士な深雪はクラスメイトの島崎(春本ヒロ)を使って、“特服”を誘い出すことに成功。 正体を突き止めるため尾行するも、“特服”が入っていった公衆トイレから出てきたのは剛だった。
剛が“特服”であることを認めさせるため、市松の人たちに喧嘩を吹っかける深雪。島崎を使ったときもそうだったけど、自分がよければそれでいいのか……?
深雪の前でヤンキーの顔を見せるわけにはいかない剛は、殴られっぱなしで頭から血を流している。本当は強いんだからやり返しちゃってよ! という気持ちと、夢の高校生活のために耐えて! という気持ちが、観ている側の心の中で喧嘩する。
やられっぱなしの中、ついに拳を握りしめた剛。万事休すかと思われたが、一部始終を見ていた伍代が、剛の特攻服を着て現れる。しかし、前回の喧嘩でひびの入った彼の左腕は、まだ完治していないのだ。案の定、応戦もむなしくボコボコにされてしまった。
なんとか逃げ延びた剛と伍代だったが、剛は自分の二重生活を守ろうとしたばかりに伍代を巻き込んでしまったことで自責の念に駆られていた。出会ってから間もないはずの2人なのに、ここまで相手のことを思い合える熱い友情が胸に迫る。これぞヤンキー作品の醍醐味……! 回を重ねるごとに、より絆が深まっていくんだろうなと期待が高まる。
同時に、顔中血まみれになってなお美しい間宮と神尾がずるい。喧嘩に強いキャラクターだからこそ、この姿はきっと貴重なので、しかと目に焼き付けた。
伍代をボコボコにされた仕返しに、剛は“特服”として市松2年の最上と闘い、ものの数発のパンチで撃沈させてしまう。事実上の市松2年の制覇だった。とにかくぶっちぎりで喧嘩に強い剛は、やっぱりかっこいい。
突如伍代の家にやって来た剛。大けがをしている息子を心配する母は、剛が伍代をそそのかして悪い遊びに誘っていると勘違いする。それにキレる伍代の頭をたたき、剛は「母ちゃんにてめぇはねぇだろ」と諭す。「ごめんなさいは?」とせっつくも、謝らない伍代に代わって自ら「ごめんなさい」と言う剛がかわいくてキュン死案件。ギャップの鬼だ。
殴り殴られ、さらに友情を深めた剛と伍代。だが、“特服”として目立った立ち回りをするほどに厄介な敵も増えるだろう。ずっとお預けを食らっている大丸(森本慎太郎)も、次回から本格的に登場するようだし、ますます楽しくなりそうだ。
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
夏休み最後の日、難破剛(間宮祥太朗)は、伍代直樹(神尾楓珠)と島崎登(春本ヒロ)を誘って釣りに出かける。すると、剛に藤田深雪(森川葵)から緊急事態だと連絡が入った。
伍代たちと別れ、深雪と会うために白百合高校へと向かった剛は、その途中、バイクに乗った男・真宮翔(神田穣)から声をかけられる。真宮は、伍代を探しているらしい。剛は、知らないととぼけるが……。
深雪の緊急の用事とは、まったく手を付けていなかった宿題を写させてほしいというものだった。深雪の頼みを聞いてノートを貸した剛は、「夏休み、あのゴリラみたいなヤツに会ったりしたの?」と尋ねた。
実は7月のある日、剛と深雪は、駅の近くで市松高校と千鳥商業のヤンキーたちがケンカしている場面に出くわしていた。その時、巻き込まれた子どもが転倒してしまったことに怒った深雪は、子どもにぶつかったヤンキーを怒鳴りつけたのだ。その姿にひと目ぼれしてしまったのが、千鳥商業の大丸大助(森本慎太郎)だった。剛は、いきなり深雪に交際を申し込むなど猛アピールをしてきた大丸のことが気になっていたのだ。
同じころ、釣り糸を垂らして寝転んでいた伍代たちの前に真宮が現れる。真宮は、中学時代に伍代とつるんでいた仲間だった。1週間前に少年院を出てきたばかりだと言う真宮は、「また一緒にやらねえか」と伍代を誘うが……。
第3話のレビュー
前回、剛(間宮祥太朗)の嘘を守るために身を挺して戦った伍代(神尾楓珠)。なんと今回も彼の身に危険が及ぶ。
夏休み最終日、釣りに出掛けていた伍代のもとに、真宮(神田穣)と名乗る男が尋ねてくる。一旦は上手くあしらった伍代だったが、手段を選ばない真宮は島崎(春本ヒロ)をさらい、伍代に宣戦布告。毎度毎度いいように利用されちゃう島崎、虚勢を張る割にどこまでも弱いが、なんだか憎めないんだよな。
伍代は剛に加勢を頼もうとするが、剛は絵のコンクールに向けて追い込み中。やっぱりなんでもない、と言って1人で真宮のもとへ向かってしまった。剛と伍代、2人の間にある相手を思いやる気持ちが本当に尊い。伍代は喧嘩に生きがいを感じているタイプではなさそうだし、明らかに罠と分かっている場所へ向かうって、どれだけ怖いだろう。剛という“ツレ”がいる今となっては、尚更だ。
どうやら、中学時代は一緒につるんでいたらしい伍代と真宮。しかし、次第に真宮はよくない方向へ流されはじめ、先日まで少年院に入っていたらしい。
有名な料理家の母を持つ伍代と、殺人犯の父を持つ真宮。そんな2人が一緒にいることを、教師たちはよく思っていなかったのだ。「伍代は有名人の息子。それに比べてお前は親が親だから」と笑う教師たち。最悪だ。教師という立場でこんなことを言う人がいるとはちょっと考えたくない。それをきっかけに、真宮は伍代のことも信じられなくなってしまった。
「おめーを笑った奴らに負けてんじゃねーか」と吠える伍代。周りがどんなことをいってきたとしても、伍代にとって真宮は大事な“ツレ”だと思っていたのだ。1匹狼で寡黙だが、めちゃくちゃ情に厚い伍代に泣かされる。
丸くおさまるかに思われたが、真宮が仲間に加わろうとしていたヤクザがやって来て大ピンチに。また伍代の腕が折られちゃう……! と目をつむりかけたとき、間一髪のところで特服姿の剛のお出まし!! 凶器を振り回すヤクザたちを相手に、その場を収めて見せた。
こういう場面で登場する剛は正義のヒーローだし、そうなると救われる側=伍代はヒロイン……? それもまた、なんかいい。
そして第3話で特筆すべきは、ついに本格参戦となった大丸大助(森本慎太郎)だろう。
子どもにぶつかってしまったヤンキー相手にひるむことなく謝罪を要求した本作の本物のヒロイン・深雪(森川葵)に一目惚れしてしまった大丸は、そこから熱烈にアプローチする。アプローチというか、もはや初対面でいきなりの告白。正直、ちょっと怖い。
その後も、剛が「ゴリラみたいな奴」と表現したように、森本の恵まれた体格を活かしたゴリラっぷりが妙にハマっていて面白い。それだけでなく、恐らくは盗撮と思われる深雪の写真をしげしげと眺めたり、剛と2人で深雪の好きなところを言い合ったり、深雪との恋路を「正々堂々やろう」と剛と握手を交わしたり……くるくると変わっていく表情が、見ていて飽きない。そしてメリハリの効いたお芝居をしているはずなのに、めちゃくちゃナチュラルだった。すごい。
大丸の魅力が最大限に発揮されていたのが3話の最後。トイレで特服に着替える剛を偶然見かけ、それはもう驚くべき速さで後を追って一部始終を見届けた大丸は、制服姿に戻った剛を見つけて殴りかかる。自分が騙されていたことではなく、「てめぇが惚れた女まで騙してること」を責めているのだった。
ここでハッとした視聴者も多かったのではないだろうか。わたしたちは剛が理想の高校生活を送ることを応援していたが、その前提として家族や友人を騙すことになってしまっていたのだ。そういえば、特服に身を包み家族から関東制覇の夢を託されるたび、剛は何度も少し傷付いたような表情を浮かべていたではないか……。
そのことに瞬時に気付き、苦しそうな顔をして詰め寄る大丸は、熱血漢という言葉がまさにしっくりくる。こうやって人のことを思える大丸は、間違いなくいい奴だ。そして、演じている森本の人柄ゆえだろうか、その説得力がすさまじい。さっきまで完全に3枚目に徹していたのに、なんたる振り幅だ。
それにしても、今季「恋なんて、本気でやってどうするの?」に出演中の松村北斗しかり、今作の森本慎太郎しかり、出演作に触れるたびにイメージをアップデートしていくSixTONESのメンバーって面白い。個人的には、昨年放送された「うきわ」での好演が光っていた田中樹もとっても気になっているので、もっと色んな役をやってほしいとひそかに思っている。
キャラ(と顔)の濃い出演陣が出揃った「ナンバMG5」。伍代を助けた場面ではヒーローに見えた剛も、美術部退部の危機を迎えている。彼の高校生活はこれからどうなってしまうのか、秘密を打ち明けたら仲間たちとの関係性はどう変わっていくのか。奥行きが増す物語の続きが気になって仕方ない!
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
「男なら自分で正体明かせ。でねえといつか、みんなを傷つけることくらい、テメエだってわかってんだろ」。
難破剛(間宮祥太朗)は、千鳥商業の大丸大助(森本慎太郎)から言われた言葉が頭から離れない。剛が美術部から追い出されたことを心配していた藤田深雪(森川葵)は、一緒に行くから部長の東ミチル(加藤諒)に謝ろうと提案する。剛は、そんな深雪に、コンクールに出展する予定だった絵を完成させると約束し、その時には深雪にも言わなければならないことがある、と返す。
一方、大丸は幼いころからのツレで、同じ高校に通う斎藤ヒロ(一條恭輔)が市松高校の伍代直樹(神尾楓珠)にやられたと知る。伍代が卑怯な手を使ってヒロを痛めつけたと聞かされた大丸は、人数を集めて市松高校に乗り込もうとする2年の郷田健吾(うえきやサトシ)を制し、「伍代はオレがやる!」と宣言した。
大丸は、工事現場で伍代と対峙する。伍代にとっては身に覚えのない話だったが、ヒロがやられた場所に落ちていた、と言って伍代が使っていたバイクのグローブを見せる郷田。それをきっかけに、伍代と大丸の激しいバトルが始まり…。
そんな争いの後、剛は本屋で万引きしようとする関口正宏(岩男海史)を目撃。関口は剛にとって深いつながりを持つ男。関口が万引きに手を染めるのはある理由があった。剛はその理由を知ることになる。
第4話のレビュー
前回に引き続き大丸(森本慎太郎)の魅力に打ちひしがれ、剛(間宮祥太朗)と伍代(神尾楓珠)と大丸、剛と関口(岩男海史)、それぞれの友情の形に涙腺を刺激される、ジェットコースターのような情緒の第4話だった。
まずは今回もかわいさ全開だった大丸に触れさせていただく。
大丸と伍代をよく思っていない千鳥と市松の先輩たちにはめられ、まんまと伍代に喧嘩を吹っ掛けてしまった大丸。瞬時にすべてを悟った伍代に対し、大丸はずっと鼻息が荒い。
もうこの単細胞な感じ(失礼)が厄介でかわいいのだが、伍代と少しやり合ったあと、ようやく状況を理解し、先輩に「うっせんだよ、AV男優!」なんて言ってしまう。思考と言葉が一直線に繋がっている感じも、こんなフレーズを大真面目に言っちゃうところも好きしかない。そしてこれを寒くならずにコメディタッチに落とし込めている森本慎太郎の技量もさすがだ。この人、コメディの天才では……?
はめられたとはいえ自身の行動に負い目を感じた大丸は、伍代を食事に誘う。ラーメン屋さんでやたらとよく食う大丸、実に気持ちがいい。ここで大丸は伍代から、剛がどんな思いで嘘の高校生活を送っているかを聞くことになる。
すると、愛しき単細胞=大丸は、剛に土下座で謝罪。当の剛は大丸からの言葉を受けて、美術部の部員たちに自分が“特服”であることを言いかけていたから、大丸は「ドッキリ大成功!」なんて小細工までする。「てってれ~」と効果音をつけちゃった瞬間には、もはやかわいいを通り越して愛おしくすらあった。
それにしても、みんな自分の考えに固執せず、ちゃんと人の話を聞き、しっかり自分の頭で考えている。だからこの作品の登場人物たちは、誠実で素直ですがすがしい。観終わったあとに爽快感が残るゆえんだろう。
思いをぶつけ、時に拳を交えるなどしても最終的には絆を深めていく剛と伍代、大丸。今回は、このヤンキー同士の友情と同等かそれ以上に熱い友情物語が、もうひとつ繰り広げられた。
剛は本屋で中学時代の同級生・関口が万引きをしようとしているところを目撃する。関口は高校でいじめを受けており、そのせいで万引きを強要させられていたのだった。
そんな関口を助けようとする剛。正直言って筆者は、それはちょっと出しゃばりすぎなんじゃないかと思った。かつての同級生とはいえ、他校の生徒がいきなり殴り込みというのはいかがなものか……。
だけど、それにはきちんと理由があった。普通の高校生活を手に入れるために図書館で勉強をしていた中学時代の剛。金髪のツンツン頭、顔は喧嘩で血だらけのまま図書館を利用していたせいで、周りの学生から陰口をたたかれていた。
それを見て見ぬ振りせず、声を震わせながらも「がんばってる人をそういう風に言うことないでしょ」「あなたたちに彼を馬鹿にする権利なんてない」と言ってのけたのが、他でもない関口だった。きっぱりと言う関口は間違いなくかっこよかったし、そのおかげで剛は応援してくれる人がいることの心強さを知ることになる。
だから剛は関口に、「もしお前さえよかったら、俺があいつらやってやろうか?」と言ったのだ。全然出しゃばりでも何でもなかった。そして関口は、剛の言葉により同級生と戦う気になった。たった1人だったとしても、味方がいるって心強い。
結局関口は同級生が金で買ったガラの悪い男たちにボコボコにされてしまったが、最後は剛がきっちり落とし前をつける。剛の努力を思って異議を唱えた関口も、身体を張って関口の借りを返した剛も、べらぼうにかっこいい。そして何より、時を経ても色褪せない友情に目頭が熱くなる。
いじめ主犯格の高校生が最後の最後まで胸糞悪い奴で、最低以外の言葉が出てこないが、そのおかげで関口が剛のことを「友だち」と言うのを聞けたし、2人の友情の尊さが際立ったので、そこだけは感謝したい。
腹を割って時に殴り合いながらも互いを知り、気付けば意気投合している剛、伍代、大丸と、見た目や境遇だけで判断せずお互いのいいところをちゃんと見極めて奥深くで分かり合っている剛、関口。友情の形は様々だし、何よりも友だちっていいなと改めて思った。今回も気分爽快のいいラストだ。
……と思いきや、帰宅した剛を待っていた市松の陣内(栁俊太郎)。「誰~」という剛の心の声には大いに笑わせてもらったが、柳俊太郎演じるミステリアスなヤンキー高校生が楽しみでたまらない!! 最後の最後まで情緒をかき乱されたが、見どころ満載の神回だった。
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
難破剛(間宮祥太朗)が帰宅すると、見知らぬ男が家に上がりこんでいた。市松高校の剛のツレだとうそぶくその男を警戒する剛。男の正体は、他校のヤンキーたちからも恐れられている市松高校のアタマ・陣内一久(栁俊太郎)だった。
ナオミ(鈴木紗理奈)の手料理でもてなされた陣内は、帰り際、猛(満島真之介)から名前を尋ねられる。陣内は、そこで初めて名を名乗ると、途中まで送るといって一緒に難破家を出た剛に対し、「調子に乗るなよ、特服」と言い放つ。
一方、剛の妹・吟子(原菜乃華)は、高浜一中3年の佐藤淳一(小田将聖)と知り合う。佐藤が吟子の後をつけていると勘違いした難破家の愛犬・松が、吠えたことがきっかけだった。佐藤と親しくなった吟子は、ひょんなことから彼に勉強を教えてもらうことになる。が、実は佐藤はヤンキー嫌いらしく……。
そんな折、伍代直樹(神尾楓珠)、大丸大助(森本慎太郎)と一緒にラーメン店に立ち寄った剛は、陣内が訪ねてきたことを打ち明ける。伍代から、陣内が市松のアタマだと教えられて驚く剛。続けて伍代は、陣内に関する数々の“ヤバい伝説”を剛たちに話して聞かせ……。
第5話のレビュー
前回、剛(間宮祥太朗)が帰宅すると家に上がり込んでいた陣内(栁俊太郎)。一見するとただのオシャレなお兄ちゃん(褒めてる)に見えるのは、演じているのが栁だからか、それとも……。
“市松のツレ”という陣内の言葉を信じた家族は、いつも通りしっかり彼をもてなす。陣内は3年だけど剛にはかなわないと言ってみせるなど、家族にしっかり溶け込んでいた。一方の剛は、陣内が誰なのかわからず混乱&警戒の表情。自分が市松高校に通っていないとバレるわけにはいかないし、苦しい立ち位置だ。とはいえ、うまく話を合わせて夕食まで一緒に食べられるのはすごい。ノリと勢い、大事。
陣内は吟子(原菜乃華)を「お嬢さん」と読んだり、ナオミ(鈴木紗理奈)の手料理を褒めたり、食べ終わった食器を下げようとしたり、ヤンキーってなんだっけ? と思うほどのジェントルマンぶりを見せる。難波家を油断させるためにしたことかもしれないが、後述される「OLの彼女が5人いる」という陣内の伝説を聞くに、これがナチュラルな彼の振る舞いなのかも。そんなちょっと危険な優男の空気が、栁にはよく似合う。
しかし、もちろん一筋縄では行くわけがない。帰り際、猛(満島真之介)に名前を聞かれたあたりから、陣内の目が変わる。さらに、送りに出た剛と2人きりになったところで「調子に乗るなよ、特服」とすごんで見せた。とっぷりと黒い瞳は明らかに只者ではない。
後日、伍代(神尾楓珠)とラーメンを食べに行った剛。陣内が訪ねてきたことを話すと、伍代から陣内が市松のアタマであること、さらに数々の伝説の持ち主であることを教えられる。その伝説の内容もさることながら、「コスプレ感覚で変身しすぎだ」という伍代のツッコミが面白すぎた。完全同意である。
一方、吟子は愛犬・松の散歩中に他校の男子・佐藤(小田将聖)と知り合う。佐藤が塾のテキストを忘れていったことをきっかけに、距離を縮める。「1人でご飯を食べるのが寂しいから」という佐藤に付き合って、ファミレスへ。2人の初々しいやりとりが見ていてくすぐったくなるほど、とてもよかった。
これをきっかけに2人は一緒に勉強をするようになるのだが、最近吟子の帰りが遅いと怪しむ家族たち。ダイニングテーブルにだらりと腰掛ける剛&猛の画力が強すぎたし、何よりも吟子に男の影を感じ取った瞬間、一気に詰め寄ってくる難破家が最高すぎた。顔よし、掛け合いのテンポよしで、ずっと見ていられる気がする。
家族のリクエストに応え、家に佐藤を招待することに。しかし、佐藤はヤンキー嫌い。吟子からの条件で、その日は家族全員が“普通”を装うことになった。いつものリーゼントではなく、髪を七三分けに撫でつける猛と勝(宇梶剛士)は大学や勤務先の話をするもいまいちトンチンカン。「専攻は?」と聞かれ、「山田です。山田先公」と答えたところで、思わず声を出して笑ってしまった。その“センコウ”じゃないよ猛……!
極めつけはナオミだ。ラブリーなワンピースとエプロンに身を包み、まさかのツインテール。金髪を指摘されると、とっさに吟子が「アメリカ人なの」とむちゃくちゃなことを言い出し、迷った挙句、海外ドラマの吹替風の口調で喋りだす。上質なコントを見ている気分で大いに笑わせてもらった。
吹き出してしまった家族に、「もういいよ!」と泣き出しそうな吟子。それを見て、改めて取り繕おうとするが、実は佐藤は難破家が生粋のヤンキー一家であることを知っていた。いつものヤンキー姿に戻った家族たちに、吟子のためにがんばる姿をうらやましいと思ったことを打ち明ける佐藤。そして、「何が不良で何が普通か分からない」と話す。
この佐藤の言葉に、頷いた視聴者も多いのではないか。難破家を見ていると、ヤンキーで何が悪い、という気持ちになる。こんなに結束力の強い家族ってなかなかいない。まずこの年齢の子どもたちが3人集まって、両親へのクリスマスプレゼントを考えている時点で、ある意味子育てに大成功している気がする。1話で松が「難破家、最高~!」と言っていたが、まさに。今こそ松とともに、そう叫びたいと思った。
その頃、剛は陣内とタイマンを張っていた。本当に戦いたい相手に丸腰のまま1対1で臨む、敬意ある喧嘩は見ていても清々しい。結局、両者ぼろぼろになりながらも、僅差で剛が勝利したようだ。
これを機に、市松を辞めてしまった陣内。栁の出番はこれっきりだろうか。前回の関口を演じた岩男海史といい、ゲストで登場する俳優陣がことごとくいいので、ぜひまた姿を見たいのだが……。
今回、陣内の目を見ただけで何かを察したり、剛は本当に全国制覇を望んでいるのかと問われてひそかに悲し気な顔を浮かべたり、能天気なニートではない側面が透けて見えた猛。この人、もしかして剛の二重生活も気付いているのでは……? と勘ぐってしまったが、果たして。
それにしても、第5話の間宮祥太朗のビジュアルがいつもに増していいように感じた。家族愛がそう見せていたのか、単純に筆者の剛への思いが増しただけか。次回の赤い特服姿も楽しみだ。
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
家族に嘘をついてまで白百合高校に通う二重生活を送って1年、いつの間にか千葉を制覇していた難破剛(間宮祥太朗)は無事2年生に進級した。美術部は、卒業した東ミチル(加藤諒)に代わって西田リョウ(藤田真澄)が新部長に、そして剛が副部長、藤田深雪(森川葵)が副々部長に就任。牧野弥生(鈴木ゆうか)ら新1年生も入部していた。
深雪とはまた同じクラスになったものの、いまの剛の一番の心配事は、深雪の人気がどんどん上がっていること。伍代直樹(神尾楓珠)や大丸大助(森本慎太郎)とラーメン店を訪れた剛は、その悩みをふたりにも打ち明けた。どうやら彼女らしき存在がいるらしい伍代にアドバイスを求める剛。すると伍代は、このまま何もしなければ、いつかは誰かに取られるのは確実だ、と言い出す。意を決した剛は、「ずっと好きでした。明日、直接お話させてください」と書いた手紙を深雪の下駄箱に入れ……。
あくる日、剛たち美術部員は、写生大会で横浜を訪れる。ところがそこで思わぬ騒動が起きる。深雪が、気に入った構図の中に入り込んでいて邪魔だといって、揃いの特攻服に身を包んでたむろしているレディース『横浜魔苦須(マックス)』に話をつけに行ってしまったのだ。するとそこに、『魔苦須』の二代目総長を狙うヤンキー『ケルベロス』の面々が現れ、『魔苦須』と一触即発の状態に。仕方なく特服に着替えた剛は、襲いかかってきた『ケルベロス』のメンバーを倒すが……。
第6話のレビュー
早いもので剛(間宮祥太朗)の高校生活1年目が終わり、美術部部長・東(加藤諒)の引退&卒業に伴い副部長に就任、“特服”としては意図せず千葉制覇に成功していた。
2年生になり、部活に後輩も入ってきたある日、美術部は横浜で写生大会をすることに。例によって藤田(森川葵)は、自分が描きたい構図の妨げになっているという理由で、赤い特攻服に身を包んだレディース・横浜魔苦須(マックス)に話をつけに行ってしまう。明らかにガラが悪いのに、相変わらず危機管理能力がバグっている藤田。でも、この無鉄砲さはクセになる。こんな子が近くにたら、放っとけないよな剛! と、肩でも組みたい。
さらに横浜魔苦須に因縁のあるケルベロスというグループもやって来て小競り合いがはじまり、剛が特服に変身して藤田を助けた。あまりの着替えの早さにも驚くが、剛ってば一体どこに特攻服を隠し持っていたんだろう。もはや戦隊モノのように変身シーンがあっても違和感がなさそうだ。
藤田は特服が自分のピンチを毎回助けてくれることに気づき、「私を助けてくれたんだよね?」と尋ねる。たまたまだと答える特服に、「本当に? たまたま? 横浜で?」と食い下がる藤田。前言撤回、危機管理能力うんぬんではなく、この人はただ思い立ったらすぐ行動してしまうだけだ。でも、裏表がなくて気持ちがいい。
「ばっかじゃねーの!」と逃げ帰る剛だったが、ケルベロスを速攻で撃退したことで、横浜魔苦須のメンバーに「あたいらを強くしてくれ!」と土下座される。そこへ魔苦須の総長・弥生(鈴木ゆうか)がやって来るのだが、なんと彼女は美術部の新入部員だった。
横浜魔苦須とケルベロスの因縁……それは、ケルベロスでキングと呼ばれ恐れられている光一が、弥生とよりを戻したいことに端を発していた。光一は何をしでかすか分からないヤバい奴。横浜魔苦須では歯が立たないが、弥生を守るために強くなりたいのだった。
事情を知った剛は、横浜魔苦須を心の拠り所としている彼女たちに「喧嘩なんかで勝っても人生なんも変わんねーぞ」と解散を勧める。ずっと傷なめ合って生きていくのか、と諭す剛は、喧嘩じゃ測れない本当の強さが何かを知っている人だ。第4話で登場した関口の顔が過る。
一旦は剛の言葉に反発したメンバーだったが、自分たちが逃げていたことに気づき解散を決意。しかし、タイミング悪く光一を含めたケルベロスのメンバーがやって来てしまう。部活中だった弥生も呼び出され、最悪の展開に。
横浜中を探し回り、剛がなんとか弥生たちの居場所を突き止めた頃には、すでにぼろぼろにされていた魔苦須。多勢に無勢、しかも力の差は火を見るよりも明らかなのに。それでも、「仲間守ることすらできなかった。あたいらやっぱりクズなんだ」と言う。筆者は悔しくてたまらなくなったのだが、それは剛も同じだったようだ。「お前らはクズじゃねぇよ。クズはお前ら殴ったこいつらだ」と言う剛の目は血走り、うっすら涙が溜まっていたようにすら見えた。
結局、神奈川最強を謳うケルベロスも瞬殺してしまった剛。またしても意図しないまま、関東制覇へ1歩駒を進める形となった。
そんなある日、剛は兄の猛(満島真之介)に呼び出される。猛は最近の剛はギラつきが消えたと言う。実は、猛は剛が横浜で魔苦須のメンバーに解散を進めるところをたまたま目撃してしまっていたのだった。
「喧嘩なんてくだらねぇことしてる暇あったら、勉強したり恋愛したりしてぇと思ってるのか?」
剛は心の中では、「俺は変わった。白百合に入った日から、普通の友達、勉強、宿題、楽しい部活、好きな人だってできた」と言うが、実際には「なわけねーじゃん、兄ちゃん!」と笑う。笑うが、その表情は明らかに曇っていた。そんな目をしていたら、兄ちゃんはすぐに気付いちゃうよ……。弟に夢を託す兄の気持ちも、自分の人生を生きるべく苦渋の選択で家族に嘘をついている弟の気持ちも、どちらも尊重したくて胸が痛くなる。
すると近くには花火をしている家族が。子どもの頃に見た花火大会の思いで話をする2人。剛に花火を見せるため、猛はずっと肩車をしていたという。「あのとき全然花火見えてなかったべ」「バリバリ見えてたぜ」……嘘が下手な兄弟のやりとりが切ない。
普通の高校生活を送りたい、なんて言ったら家族を傷つけてしまうかもしれないという剛の優しさが生んだ嘘で、今、猛を傷つけている。優しさって難しい。
ところで、シリアスな場面も多かった今回だが、作品のテンポは相変わらずピカイチだった。それもこれも緩急が効いているからこそだろう。“緩”の部分で特筆すべきは、やっぱり剛&伍代(神尾楓珠)&大丸(森本慎太郎)がそろうラーメン屋のシーン。会話が軽快で、できればずっと見ていたいと思った視聴者も多いはず。
剛も2人にはすっかり心を許しているようで、藤田が特服を好きになったと聞いて爆笑する大丸に「ちっともおもしろくねーよ!」と拗ねるように言ってみたり、伍代にバイクで横浜まで連れて行ってもらうときに「あ、あんなところにヘルメットが~」と白々しく言ってみたり、なんだかとってもかわいい。そのときだけ難破剛くん(5歳)になっている感じ。改めて、間宮の振り幅の広さは圧巻だ。
エピソードをふんだんに盛り込みながら、メリハリをつけて観る者を魅了する本作も、早いもので第6話。次回は剛が生徒会長に……? これはまた目が離せない展開になりそうだ。
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
難破剛(間宮祥太朗)は、白百合高校の次期生徒会長に立候補することになった。各クラスから1名ずつ候補者を出さなければならないため、多数決で選ばれてしまったのだ。その話を聞いた伍代直樹(神尾楓珠)や大丸大助(森本慎太郎)は、目立ち過ぎだと言って剛のことを心配する。実際、特服のウワサはすでに関東中に知れ渡っており、この日も剛は遠征してきた埼玉のトップとやり合ったばかりだった。それでも剛は、応援してくれている藤田深雪(森川葵)たちクラスメートのためにも、真剣に選挙活動に挑もうと決意していた。
生徒会長選挙当日、演説の壇上に立った剛は、自身の置かれている状況を重ね合わせたかのように、「僕はこの白百合高校での毎日が本当に楽しくて……。明日、この生活が終わっても後悔しないように毎日を過ごしたいと思っていて」と話す。そんな演説の効果もあってか、次期生徒会長に選ばれたのは剛だった。一方、伍代は、剛の負担を少しでも減らそうと、特服を狙って茨城から遠征してきたヤンキーたちの相手をして……。
ところが、帰宅した剛は思わぬ事態に直面することに。ずっと受験勉強に取り組んできた中3の妹・吟子(原菜乃華)が、何と白百合高校を受験することになったのだ。剛はぼう然となり……。
第7話のレビュー
美術部の部長に続いて、見事、生徒会長になった剛(間宮祥太朗)。彼だからこそ言える偽りのない「明日終わっても後悔のない毎日を過ごしたい」という言葉が全校生徒の心に刺さったようだ。ついでに特服として埼玉と茨城も制覇してしまった。
剛は、どこへ行っても何をしていても一目置かれる存在だ。ちょっと表現は古いかもしれないけど、カリスマってこういうことだろう、なんて思う。
順調な学生生活を送っていた剛にピンチが訪れる。第5話での佐藤(小田将聖)との出会いをきっかけに勉強に目覚めた吟子(原菜乃華)が、剛のいる白百合高校に入学してきたのだ。
生徒会長として吟子を含む生徒の前で登壇するときは漫才風の“べしゃり”でごまかすなど、なんとかバレないように工夫をする剛。吟子も吟子で同姓同名と知り疑ってみては、美術部の部長と聞かされ、違うか~を繰り返す。
しかし、まさか周囲は剛が家族に嘘をついて白百合に通っているなんて微塵も思っていないわけで、生活指導の教師によってあっさり関係が明らかになってしまう。
自分のついた嘘で大事な家族を傷つけてしまうことは、剛にとっては身を裂くような痛みだったはずだし、尊敬している大好きな兄ちゃんが、2年間も家族を騙していたことを知ったときに吟子が受けた衝撃は計り知れない。2人の目に、戸惑い、痛み、怒り……様々な感情が浮かんでいた。
この一件をきっかけに、剛とまともに話すことができなくなってしまった吟子。そんな吟子に、伍代(神尾楓珠)は「ヤンキーの難破もアイツだし、生徒会長の難破もアイツ」と声を掛ける。
これは、剛を表現するのにぴったりな言葉だった。吟子はこの意味を実際に知っていくこととなる。
吟子の入学とともに新しく赴任してきた校長は、出世のためだけに進学率を上げようとする人物だった。そのため、毎月の学力テストで赤点の生徒が3割以上いた部活は活動休止にすると言い出した。部活に打ち込む学生からそれを奪おうなんて非道すぎる。
美術部をはじめ、野球部、新体操部……と、多くの部活が軒並み活動休止を余儀なくされそうな成績。そこで剛はみんなのために勉強を指導することに。諦めかける生徒たちを鼓舞する剛を、吟子は廊下から目撃する。
結局、みんなの頑張りもむなしく、いくつかの部活が活動休止を通達される。野球部の3年生にとっては最後の大会が迫っていることを校長に訴えても、甲子園を狙えるならともかく……と取り付く島もない。高校の部活って、そういうことじゃないんだけどな。
しかし、ここで声を上げるのが剛だ。校長が学力アップを目指しているのは「本当に僕たちのためですか?」と核心をつき、食い下がる。これを見抜かれてしまっては、ヤクザなオーラを発している校長とてぐうの音も出ない。「勝手にしなさい」と去って行った。剛が必死にみんなの大切な高校生活を守っているのを、吟子は目の当たりにする。
吟子が元・横浜魔苦須の弥生(鈴木ゆうか)とボーリングに行ったときに、さらなる事件が起きる。カツアゲされている人を助けたことで、2人はガラの悪い連中に拉致されてしまった。
しばらくすると、吟子たちが乗せられた車を外側から蹴る音がする。それだけで剛が来てくれたことを悟った吟子。子どもの頃に迷子になったときにも剛が助けにきてくれた回想とシンクロしていく。吟子にとって剛は、いつだって頼りになるかっこいいお兄ちゃんなのだ。安堵もあってか、吟子ははらはらと涙を流す。
剛も剛で、大事な妹を守るため、特攻服に着替えることもしないまま学ラン姿で相手に殴りかかっていく。兄妹の絆に、涙が止まらなくなった。
その後、剛と吟子、弥生は3人でもんじゃ屋さんへ。剛は吟子に、喧嘩以外の何かを見つけたかったのだと話す。吟子も美術室で剛の絵を見たときに「兄ちゃん本気だって思った」と言う。
ヤンキーではなく、普通の高校生活を送るために本気になった剛は、十分すぎるくらい充実した毎日を過ごしている。中学までは喧嘩という方法で仲間を守ってきたが、特攻服を脱いだ剛は違うやり方で戦い、仲間を守っている。そして、必要なときには体を張って守ってもくれる。特攻服を着ていようとシャバい制服姿だろうと、等しく“気合い”が入っていることに吟子は気づいた。伍代の言葉は、まさにこのことを指していたのだろう。
それからは身だしなみを整えて登校するようになった吟子。剛の腕を引っ張って校舎へと走る笑顔を見られて、心底ほっとした。吟子にはいつも笑っていてほしい。
前述した剛に宿っているカリスマ性は、この“気合い”に裏打ちされたものだろう。そう考えると、ドラマ開始当初はなんだか恥ずかしく感じていた「気合い入ってる」も、いい言葉だなと思う。筆者も今日から“気合い”を意識して生きてみようと思った。
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第8話ストーリー&レビュー}–
第8話ストーリー&レビュー
第8話のストーリー
難破剛(間宮祥太朗)や藤田深雪(森川葵)たち白百合高校の3年生は、修学旅行で広島へ行くことになっていた。出発前夜、剛は、伍代直樹(神尾楓珠)、大丸大助(森本慎太郎)とつるんで遊びにいく。そこで大丸は、中学時代の同級生・水野友美(森迫永依)と偶然再会する。友美は、大丸がずっと片想いしていた相手。だが、その思いを伝える前に彼女が急に引っ越してしまったため、思いを伝えられずにいた。再会を喜び、いまどこで何をしているのかと尋ねる大丸。だが友美は、「大ちゃんには関係ない」とそっけなく言うと、キャバクラ店が入る雑居ビルの中に消えてしまう。
友美のことが心配になった大丸は、剛と別れた後、伍代とともに雑居ビルの前で彼女を待つ。やがて店を出てきた友美は、母親が再婚相手だったDV男から逃げるために福岡の親戚を頼ったため、友美は兄の幸男(田本清嵐)と暮らすことになり引っ越さなければならなかった、と大丸に打ち明ける。ところが、引っ越し先で幸男がスロットで負け、悪い友だちから700万円もの借金をしてしまったのだと言う。友美が働いている店も、借金の返済のために紹介されたものらしい。その悪い友だちとは、ヤクザの息子で、西日本最強と恐れられる高校生・安藤綱平(葵揚)だった。
あくる日、大丸は、安藤と話をつけるために、伍代、友美とともに新幹線に乗る。3人が向かった先は、広島だった――。
第8話のレビュー
修学旅行を楽しむ剛(間宮祥太朗)と、初恋の相手を救おうとする大丸(森本慎太郎)。物語序盤、初心な恋模様にドキドキする剛の平和な学生生活の一大イベントと、ヤクザを相手にした大丸と伍代(神尾楓珠)がボコボコにされる展開がシンクロした。ものすごいコントラストだ。奇しくも、すべては広島で起きていた。
夜、男子の部屋に集まってお菓子を食べたり恋バナをしたり、「先生が来るぞー!」と布団に隠れたり。ああいうベタな胸キュンもいい。特に、同じ布団に入り至近距離で見つめ合っていた剛と藤田(森川葵)はいつもの3割増しでかわいかった。
しかし今回はとにかく、大丸大助を“大ちゃん”と呼べる学生時代を過ごした水野友美(森迫永依)がうらやましくてたまらない。それくらい、大丸の魅力が溢れている回だった。その部分を中心に振り返りたい。
剛&伍代と夜道を歩いていた大丸は、偶然、初恋の相手・友美に再会する。中学時代と比べてすっかり派手になってしまった友美を放っておけず、理由を聞き出そうとする大丸。「ちょっと話そうや」からの、ドレス姿の友美に自分の上着をしっかり羽織らせているのがもうたまらない。
聞けば友美は、兄が作ってしまった借金(700万円……!)を返済するために働いているという。実際には安藤(葵揚)というヤクザまがいの男に相当吹っかけられている様子だ。好きな相手が困っていると知ると、大丸はじっとしてなんかいられない。伍代を連れて、すぐさま安藤に会いに広島へ乗り込んだ。
安藤とタイマンをはる前、「中坊のとき、俺ずっとお前が好きだった」と、恥ずかしがる風でもなく堂々と友美に言ってのける姿は男気に溢れすぎていた。こんなにストレートに言われて、ドキドキしない人はいないだろう。
友美を助けたい一心で勝負を挑んだ大丸だが、安藤は「広島1ヤバい男」。これまでの喧嘩で桁違いのパワーを発揮していた大丸でも歯が立たなかった。
治療に訪れた病院で、なんと伍代は剛に遭遇。「観光で来ている」と無理やりな嘘で完璧にごまかせたと思っている伍代、イケメンなのにこういうところが結構抜けてる。もちろん、そこもいい。
見るのも痛々しいくらいにけがをしているのに、「俺はあいつ(友美)に何もしてやれねーのかよ」と悔しそうに涙をにじませる大丸。こんな様子を横で見ていたら、代わりに蹴りをつけてやりたくもなるだろう。伍代は、1人で安藤のところへ向かった。
しかし大丸もこれを見抜いていて、飛び蹴りで参戦。いや、その登場かっこよすぎるってば……!
さらに、実は病院で立ち聞きをしており、事情を把握してしまった剛も大丸たちのもとへやって来る。猛(満島真之介)が勝手に荷物に特攻服を入れておいてくれてよかった(だが「殺」マスクはさすがに入っていなかったようだ)。
何で来たんだよ、という大丸に、剛は「大事なツレがそんなツラにさせられて黙ってられるほど人間できてねーんだよ」と答えるが、こんなところへ丸腰で助けに来られる人はある意味相当人間ができている気がする。常人には決して真似できることじゃない。
「わりぃ難波、楽しみにしてた修学旅行なのに……」とめそめそと泣いてみたり、体育座りで戦況を見守る大丸。さっきまであんなに威勢が良くてかっこよかったのに、突然ギャップがえぐい。
さらに、なんとか勝利を収め友美たちの借金をチャラにした剛に「まだあの子に惚れてんだな」と言われ、途端にモジモジし出す大丸。序盤であっさり「好きだった」と告白していたのに……? 本当に同一人物だろうか? 大きな体で、困った表情で、内股で……剛に「モジモジゴリラ」と揶揄されていたけど、大丸の“かっこいい”と“かわいい”のギャップが激しすぎて風邪をひきそうだ。
結果的に剛はホテルを抜け出していたことが生活指導の桐山(赤ペン瀧川)にバレて停学に。修学旅行の邪魔をしてしまったことも含めて猛省、というか、大感謝をしているらしい大丸。どの程度かというと、普段は伍代にお金を借りてばかりなのに、剛たちに飲み物をおごるくらいだから相当なものだろう。
大事な人や仲間は絶対に守る、下手な駆け引きはせずストレートに気持ちをぶつける、感情が動けばそのまま泣く、そしてたまにべらぼうにかわいい一面が覗いてしまう……大丸のいいところがぎゅっと凝縮された、つまりくるくる表情を変えていく森本慎太郎を観られる回だった。1つの作品の中で2枚目と3枚目のキャラクターをここまで自由に行き来して無理を感じさせない役者って、かなり稀有だろう。しかもそれでいて疑いようもないほど誠実で純粋なのだ。魅力的過ぎて手に負えない。物語としても味わい深い回だったが、そういう意味でも非常にいいものを観せてもらったと思う。
それにしても、ここのところの剛は、卒業が迫っていることもあるだろうが、自分の高校生活が突然幕を閉じてしまう可能性を感じている節がある。停学明けの登校の際にも「みんなで一緒に卒業しよう」とクラスメイトに声を掛けていた。なんだか嫌な予感がする……。
次回、どうやら剛の嘘が家族にバレるようだ。桐山も剛の動向を怪しんでいる。ここからどんな怒涛の展開が待っているのか、涙なしではいられなさそうなので、心して見届けたい。
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第9話ストーリー&レビュー}–
第9話ストーリー&レビュー
第9話のストーリー
難破剛(間宮祥太朗)と妹の吟子(原菜乃華)が通っている白百合高校に、突然長兄の猛(満島真之介)が現れた。吟子が家庭科の宿題だといって作っていた巾着袋を家に忘れていったことに気づき、届けにきたのだ。周りの目を気にしながらも、猛に感謝し、礼を言う吟子。すると猛は、市松高校のアタマを張っている剛も見たかった、と言い出し、隣の市松に向かって歩き出してしまう。幸い、猛に気づいた伍代直樹(神尾楓珠)が、「難破は、駅前まで昼飯を食べに行っている」と誤魔化してくれたため、剛のことはバレなかった。猛が帰っていくのを見て、ホッと胸をなでおろす剛と吟子。
そのころ、進路のことで悩んでいた剛は、伍代や大丸大助(森本慎太郎)にも相談する。自分の人生なのだから難しく考えないで好きにやればいい、と助言する伍代。そんな折、剛は、美術部のOBで、ともに美大を目指して浪人中の元部長コンビ、東ミチル(加藤諒)と西田リョウ(藤田真澄)に会う。東からも、「自分のやりたいことを妥協しちゃダメだ」とアドバイスされた剛は、美大受験を決意するが……。
第9話のレビュー
高校3年の夏を前に、進路問題に揺れる剛(間宮祥太朗)。進学するなら二重生活を続けるのは無理という吟子(原菜乃華)の言葉はもっともだ。剛もそのことはわかっており、家族に本当のことを話そうとする。しかし、2年半もつき続けた嘘を、なかなか明かすことができない。
伍代(神尾楓珠)からも喝を入れられ、やっと話そうと決意した矢先、事態が動く。部屋に忘れてきた進路調査票を兄の猛(満島真之介)に見られてしまったのだ。
伍代のところへ行き、正直に話せと詰め寄る猛。そういえば吟子も、剛への疑念を抱いたときに、真っ先に伍代のところへやって来た。兄妹だなぁと思うと同時に、家族を信じたいからこそ本人ではなく伍代を1度経由する行動に胸が痛くなる。
伍代の顔を見てすべてを理解した猛は、剛に問いただす。殴られながらも、「本当に今夜話そうと思ってて……」という剛がいたたまれない。
伍代と大丸(森本慎太郎)もやって来るが、やはり猛には歯が立たない。「こいつは俺のツレだ」と剛を庇い、「難破の気持ち聞いてやれ」と正論を述べる伍代。そう、お願いだから、剛の話を聞いてあげてほしい。こんな悲しい殴り合いは見たくなかった。
家に帰ると、勝(宇梶剛士)とナオミ(鈴木紗理奈)はいつもの通りハイテンションで出迎える。それが今日ばかりは辛い。そして剛の口から、市松ではなく白百合に通っているという事実が明かされる。いつかくるとわかってはいたが、とうとうこのときが来てしまった。
勝とナオミの表情は、怒りよりもむしろ困惑と悲しみの色が濃いように感じた。「何で俺らに嘘ついた」「私は嘘と曲がったことが大嫌い」という言葉からも、それがひしひしと伝わってくる。
難破家は、毎晩一緒に食卓を囲むなど、ちょっと珍しいくらい仲のいい家族だ。それなのに、息子が嘘をついていた。しかも、2年半もの長きにわたって。この事実を突然突きつけられる親の心を思うと、胸が張り裂けそうになる。何で話してくれなかったんだろう、話してくれればよかったのに、そもそも何で気づかなかったんだろう……きっと2人の中にはそんな感情が渦巻いていたことだろう。
一方で、剛の言い分もまたよく理解できた。猛が関東を制覇し、明らかに自分にも期待がかかっている状況で、ヤンキーを辞めて普通の高校生活を送りたいと言い出すのは簡単なことではない。なまじ、剛は喧嘩も強かった。それはつまり、成績優秀な中学3年生が、親に「高校には行かない」と宣言するようなものだろう。真面目に取り合ってもらうことは、おそらく難しい。
そして何より切なかったのは、剛の「自分の行きてー高校に行っただけ」「そんなに悪いことかな」という発言だ。剛がどれだけ努力して白百合高校の受験をパスし、慣れない高校生活の中でクラスや部活に居場所を作って来たかを、私たちは断片的だが見てきている。この過程は、せめて肯定してあげてほしいと思ってしまう。
だが、最終的に剛は、「こんな家に生んでもらって迷惑なんだよ」と、顔を血と涙でぐちゃぐちゃにしながら叫ぶ。あまりにも痛々しい叫びだった。行きたい高校にも自由に行けないのかという理不尽さも感じてはいるだろうが、こんなのは本心じゃないはず。むしろこれこそ1番大きな嘘なんじゃないかと思うからこそ、さらに痛々しい。
言い争いの末、家を出ることになった剛は、伍代のところへ。そして、学費を工面するために、夏休みは昼夜を問わずアルバイトをしているようだった。
そのバイト先で、剛は以前猛がボコボコにしたグレ(東啓介)とグロ(鈴之助)に絡まれる。剛があっさりと勝利を収めたが、諦めの悪い2人は剛がバイト先に提出した履歴書を盗み、高校を突き止めて白百合に乗り込んでくる。
バットを振り回し窓ガラスを割ったり、美術部員の描いた絵をナイフで切り裂いたり。想像を超える最悪の展開だった。剛が時間をかけてたどり着いた大事な場所が、悪意に満ちたやり方でどんどん壊されていく。こんな奴ら、どうせ剛に敵わないくせに! という気持ちと、ここで喧嘩をしたらダメ、絶対に出てこないで、という気持ちが交錯する。
しかし、自分の大事なものを踏みにじられて、剛が黙っていられるわけはなかった。特攻服に身を包んで校内を堂々と歩く姿は、もちろんかっこいい。かっこいいのに、見ているのが苦しかった。時間をかけて確実に積み上げてきたものが、こんなにも一瞬で崩されてしまっていいのだろうか。
伍代と大丸もやって来てなんとか剛を逃がそうとするも、剛は「俺の大事な場所なんだ」と食い下がる。その様子を、藤田(森川葵)はただ黙って見つめていた。大きな瞳が、いつもより数段黒く沈む。これまでの高校生活を思い返し、剛の中に“特服”の片鱗を見出す。すべてを悟った目だった。
剛によって相手が全滅しただろうかというタイミングで、やっと警察がやって来る。そして、警官に両脇を抱えられる剛。雨に濡れ、血にまみれ、体をだらりとさせている。藤田は思わず歩み出て、「難破くん!」と声を掛ける。黙っていることなどできなかったのだろう。
パトカーに乗り込んだ剛は、目に涙を浮かべ「終わっちまったな……」とポツリと呟いた。剛が自ら望んで手にした高校生活が終わるかもしれない。苦しくて悲しくてやるせない空気が支配する。間宮祥太朗にしか出せない空気感だ。この人は、なぜ複雑ないくつもの感情を、こうも自然に同居させることができるのだろう。ドラマの展開と間宮の演技力、両方に鳥肌が立った瞬間だった。
今回つけられていたタイトルの「二重生活、崩壊」、筆者はてっきり家族にバレるという意味だけだと思っていた。それならば、このまま高校生活を送れる可能性もあるだろうと考えていた。しかし、実際にはヤンキーであることが友人や学校にも明らかになり、在籍すること自体も危ぶまれることになろうとは。
最終回を前にして、深く心に刺さる回だった。勝は仕事で、義理や人情では超えられない壁に直面していた。ナオミは剛の部屋で、受験勉強の努力の痕跡を見つけていた。これまでの難破家からは異質でも、自分の力で、自分なりの生き方を、剛は身につけている。できれば2人には、「剛、よくやった!」「それでこそ難破家!」と、思いっきり剛の頭を撫でてあげてほしい。そして、願わくば剛がみんなと一緒に卒業できますように。
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{第10話ストーリー&レビュー}–
第10話ストーリー&レビュー
第10話のストーリー
>>>「ナンバMG5」第10話の予告を見る
難破剛(間宮祥太朗)は、白百合高校に乗り込んできた不良たちを相手に大立ち回りを演じてしまい、警察に連行されてしまう。知らせを受けた父・勝(宇梶剛士)と母・ナオミ(鈴木紗理奈)は、剛を引き取り、家に連れ帰った。そこで、勝たちに土下座して謝ろうとする剛。すると勝は、「何も悪いことしてねぇのに男が土下座なんかするな」といって制し、これからは遠慮しないで好きなことをやれ、と告げる。妹の吟子(原菜乃華)は、剛が戻ってきたことを喜び、号泣する。だが、兄の猛(満島真之介)だけはまだ剛のことを許せず……。
剛は正式な処分が決まるまで無期停学になっていた。伍代直樹(神尾楓珠)や大丸大助(森本慎太郎)も剛のことを心配していたが、連絡が取れないままだった。
そんな中、校長の岩城隆一郎(松角洋平)は、剛の退学処分を決定する。藤田深雪(森川葵)たちクラスメートは、剛から事情も聴かずに一方的に処分を下した岩城に猛反発。剛を救うためにある行動に出て……。
第10話のレビュー
剛(間宮祥太朗)の高校生活がダイジェストみたいに流れた冒頭。仲間たち、そして家族に、剛がどれだけ大事にされているかがわかるようで、早くも涙腺を刺激される。
暗転し流れる「終わっちまったな……」のセリフ。間宮が自身のTwitterに書いていたが、あれがクランクアップ前最後のシーンだったという。そんな裏話を知った後に聞くこの言葉は、先週よりもさらに奥行きのある、違った響きを持っていた。
剛が家を出て行き、口では「大丈夫」と言いながらも、全然大丈夫そうに見えないナオミ(鈴木紗理奈)のもとに、警察から電話がかかってくる。学校で乱闘騒ぎを起こした剛を迎えに来いというものだ。何度も歩いた河原を、勝(宇梶剛士)、ナオミ、剛の順で並んで歩く。
家族に対し散々なことを言ってしまった剛は、負い目を感じて足取りが重い。「帰れない」と言うも、勝の「帰るぞ、剛」という一言でまた歩き始める。威厳のある父ちゃんだなと改めて思う。
帰宅するなり、剛はすぐに土下座をする。嘘をついていたことや勢い任せにひどいことを言ってしまったことに、罪悪感を拭えずにいたのだろう。しかし、勝は謝るなと一蹴した。「何も悪いことしてねぇのに」「嘘だってついてねぇ」と続ける。
剛の心を軽くするためのうわべだけの言葉では、もちろんなかった。勝は自分たちが必要以上に剛に期待をし、自分たちが叶えられなかった夢をも託していたことに気づいていた。
多かれ少なかれ、どこの親もそうなってしまうのではないかと思う。だが、勝はそれを認め、謝り、好きに生きてくれるのがうれしいと伝える。勝に威厳があるのは、当たり前のようで実は難しいことを、しっかりと言動で示せるからではないか。その役に、宇梶の強面だが人間味のある風貌と、深くて柔らかい声がぴたりとハマる。
兄ちゃんが戻ってきてくれてよかったとわんわん泣く吟子(原菜乃華)。このとき、視聴者全員が彼女と同じ気持ちだっただろう。しかし、猛(満島真之介)だけは、剛のことを認めない。
教師たちによる緊急会議を経て、剛の退学処分が正式に決定してしまう。ざわつく生徒たちの中で、黙って逡巡していた島崎(春本ヒロ)。彼の頭の中にあったのは、剛とのこれまでだった。
腹を括り、壇上にいる校長に「難破からも話を聞いたのか」と、クラスメイト達の制止を押し切って詰め寄る。
今までの島崎には見られなかった行動だ。たくさん守ってくれた“アニキ”はかっこよかった。目の当たりにしてきた剛の言動が、島崎の心を強くしたのだろう。かつて部活動の停止について剛が校長に意見したときのような、理路整然とした雰囲気とは全然違ったが、ストレートな表現に胸を打たれる。島崎の中に剛が透けて見えた。
そしてそれは、藤田(森川葵)をはじめとするほかの生徒たちにも伝染していく。いかに剛が慕われていたかの証のようで、じんわりと温かい気持ちになった。
さらに、藤田らの行動はそれだけにとどまらない。なんと、剛の退学が撤回されるまで体育館に立てこもるというのだ。
大丸(森本慎太郎)の働きかけもあり、次第にその輪は他学年、教師にまで広がっていく。それは剛の人柄に裏打ちされた“人を殴る理由”を想像できたから。みんなにも、剛が白百合の生徒を、白百合という大事な場所を守ろうとして喧嘩していたことが伝わっていたからこそだろう。
一度起きたうねりは、そう簡単にはおさまらない。結局、剛の退学は一旦白紙となった。
通学路で剛を待つ藤田。停学処分中の剛は、金髪にいつものヤンキー風の私服で現れた。「白百合には戻れないよ」と頼りなげに言う剛に、藤田は「一緒に卒業しよ?」と声を掛ける。
さらに「もう喧嘩はやめて」と、剛の手を無理矢理とって指切りをしてみせる。横顔しか映らなかったけれど、あのときの藤田はきっとものすごくかわいかったことだろう。正面で見られた剛がうらやましい。これまでコメディ要素が強かった藤田だが、最終回にして急にフルスロットルでヒロインとしての存在感を発揮していた。
残る問題は、剛と猛の関係だけ。
猛は難破家に松を返しにやって来た伍代(神尾楓珠)にも「人ん家の揉めごとがそんなに面白いか」と突っかかる。それに対し伍代は、「難破は夢中になれるものを見つけた」「兄貴のくせに何で喜んでやれねぇんだよ」と殴り掛かった。
これは筆者がそう思いたいからというのも多分にあるのだが、猛は自分の道を見つけた剛を苦々しく思っているわけではないと思うのだ。自認するように「バカで単純だから」かもしれないし、ヤンキーという生き方に誇りを持っているからかもしれない。どちらにしても、受け入れるのにちょっと時間がかかっているだけ。だって、散らばった落花生をあんな風に拾える人に、悪い人はいないはずだから。
だが、この伍代の言葉が背中を押すきっかけになったのだろう、またしてもグレ(東啓介)に絡まれそうになる剛を助けに、ついに猛が登場する。猛の喧嘩は、音からして違った。1発1発が剛とも比べ物にならないくらい、重い。強さを武器に生きてきた男の本気を見せられ、背筋が伸びる思いがした。
あっさりグレを追い払い、向かい合う難破兄弟。剛の「兄ちゃん」という言い方があまりに優しくて驚く。2人はそれぞれに謝って和解した。「卒業できるといいな」という猛の言葉にほっとしたように泣きはじめる剛。この人は家族の前だと本当に子どもみたいになる。実年齢29歳の間宮が高校生にしか見えなかった。
家族って厄介で面倒だが、だからこそ愛おしい。難破家を見ていると、自分も家族に会いたくなってくる。
晴れて停学期間を終えた剛。登校すると、みんなの大歓迎が待っていた。今や校門には旗を持った難破家の面々もそろっている。これこそが、剛が2年半かけて築いてきたものだ。
家族、仲間、そして自分の居場所。どれもこれも、あって当たり前ではない。大事だからこそ、迷ったり悩んだり、時に傷つけてしまったりする。それでも逃げずに向き合い、剛はこんなにも晴れやかな顔で、その中心に立っている。シャバい恰好で、さわやかな笑顔で、全力で言った「夜露死苦~!」が、目を覆いたくなるほどに眩しかった。
3か月間、ずっと熱いものを見せ続けてくれた「ナンバMG5」も、今回でついに最終回となった。来週には特別編として「全開バリバリでアリガト編」もあるというが、剛の卒業まで、まだあと半年残っている。剛と藤田の恋模様も気になるし、校長の執拗なまでの剛への嫌悪も、まだ払しょくされていない。
続編か、映画化か。期待を抱きつつ、最高の作品を届けてくれた出演者の皆さん、制作者の皆さんに感謝を伝えたい。“最高のドラマ”をありがとうございました!!
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「ナンバMG5」の各話を1つにまとめたものです。
–{「ナンバMG5」作品情報}–
「ナンバMG5」作品情報
放送日時
2022年4月13日スタート 毎週水曜夜10時~
脚本
金沢達也
(『暗殺教室』『不倫食堂』『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』他)
音楽
宗本康兵
プロデュース
栗原彩乃(『SUPER RICH』他)、古郡 真也(FILM)
演出
本広克行
制作・著作
フジテレビ第一制作部