ベネディクト・カンバーバッチの魅力&『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』<最速レビュー>

映画コラム

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ゴールデンウイークの中盤戦の目玉映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

1月に公開されて、記録的な大ヒットした『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でのメンター(=導き手)役の印象もまだ色濃いところですが、ドクター・ストレンジの単独主演作としてはなんと6年ぶりのとなります。

主役はもちろん、ベネディクト・カンバーバッチ

2022年はそんなベネディクト・カンバーバッチの俳優デビューから20年目の節目の年でもあります。

※本記事後半の『ドクター・ストレンジMoM』レビューはネタバレなしでお届けしています。

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“あの名探偵”で大ブレイク

世界(=世間)にベネディクト・カンバーバッチの存在が知れ渡ったのは、やはり英国BBCのドラマの「SHERLOCK/シャーロック」でしょう。

コナン・ドイルの元祖名探偵ものというべきミステリー小説を、現代的にアップデートしたこのドラマシリーズはこれまで4シーズンと特別編が作られました。

オリジナルの要素をしっかりと押さえつつ現代的にアップデートしたこのドラマは世界的にも大ヒット、各シーズ3話(+特別編の長編映画)しかないので、今からイッキ見するのにもオススメです。

相棒のワトソン医師を演じたマーティン・フリーマンも本作で大ブレイクして、その後、映画『ホビット』3部作に主演するなどスター俳優になりました。

ちなみに『ホビット』にはボイスキャストでベネディクト・カンバーバッチも参加しているというのは「SHERLOCK」ファンにはお馴染みのトリビアですね。

シャーロック・ホームズというキャラクターにも改めて注目が集まり、この時期にはロバート・ダウニー・ジュニア&ジュード・ロウの映画『シャーロック・ホームズ』、ニューヨークに舞台を移しワトソン役が女性に変わった「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」が立て続けに作られました。

日本でも竹内結子主演の「ミス・シャーロック/Miss Sherlock」や6月に劇場版が公開されるディーン・フジオカ主演の「シャーロック」などの翻案ものが放映されました。

実在もフィクションも“天才”は任せろ!

(C)2014 BBP IMITATION, LLC

「SHERLOCK」で世界的な名声を得たベネディクト・カンバーバッチ。

ドラマデビューした2002年から映画にも出ていましたが、やはり「SHERLOCK」のファーストシーズンが放映された2011年以降は、やはりキャスティングの面でもその扱いのグレードが数段階アップしました。

2011年の『裏切りのサーカス』や『戦火の馬』を経て2012年には『ホビット』3部作がスタート。

続く2013年にはメインゲスト&ヴィランとして『スター・トレック イントゥ・ダークネス』に出演して、この時には来日も果たしています。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(C)2014 BBP IMITATION, LLC

翌年2014年には『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』に出演。

現在のコンピュータの原型を作ったと言われる天才数学者アラン・チューリングを演じ、本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。

このアラン・チューリングという人はイギリスの国家の秘密に関わる事柄に関わったり、当時は違法だった同性愛者であったりと、国家と歴史の闇に封殺されてきた存在で、イギリス政府が2009年に公式に謝罪するまであまり語られない存在でした。

映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』で、ベネディクト・カンバーバッチはコミュ障で我が道を行くスタイルと天才数学者を快演しました。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(C)2014 BBP IMITATION, LLC

この頃にはかつて、ベネディクト・カンバーバッチが2004年のテレビ映画「ホーキング」で“車椅子の天才科学者”スティーブン・ホーキングを演じていたことも知られるようになり、シャーロック・ホームズから、アラン・チューリング、ホーキング博士まで「天才役はベネディクト・カンバーバッチ」というような状態になりました。

天才キャラは一歩間違えるとただ嫌味な奴になりがちですが、軍人と外交官の一家に生まれて名門パブリックスクールから名門大学で演劇を学んだという彼の育ちの良さが、そのまま品の良さにつながっています。

万人受けする天才という意外と難しい立ち位置を、巧くこなしているのです。

ちなみに2017年の『エジソンズ・ゲーム』では発明王トーマス・エジソンを演じています。もう、歴史上の天才偉人は「ベネディクト・カンバーバッチ一択状態」と言えます。

『ドクター・ストレンジ』でマーベルへ合流

(C)2016 Marvel. All Rights Reserved.

そして、ベネディクト・カンバーバッチは「MCU(=マーベル・シネマティック・ユニバース)」に合流を果たします。2016年の『ドクター・ストレンジ』です。

ベネディクト・カンバーバッチは「SHERLOCK」での大ブレイクを果たした後、意外にもブロックバスター大作への出演は少なかったのです。

そんな中、彼がマーベル作品に主演することになり、大きな話題を呼びました。

本作でもドクター・ストレンジが元天才外科医で魔法使いという役(またしても天才役)で、本当に“天才役”というパブリックイメージは綺麗にはまりました。

『ドクター・ストレンジ』(C)2016 Marvel. All Rights Reserved.

マッツ・ミケルセン、キウェテル・イジョフォー、レイチェル・マクアダムス、ティルダ・スウィントンなど豪華キャストに囲まれながらもしっかりと主役のドクター・ストレンジを演じ切ったベネディクト・カンバーバッチはその後“アベンジャーズ”に合流。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』で“アイアンマン”や“キャプテン・アメリカ”らと共に、最強の敵サノスに立ち向かいました。

ドクター・ストレンジは登場順で後追い組とはいえ、ベネディクト・カンバーバッチのハマリぶりもあって物語の重要キャラクターとして活躍を見せました。

その後もドクター・ストレンジはアイアンマンの跡を継いで、スパイダーマンのメンター(導師)役を務めた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に登場し、MCUのメインキャラクタ―となりました。

–{ネタバレなし!『ドクター・ストレンジMoM』最速レビュー}–

最速レビュー!『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

ドクター・ストレンジは2016年の単独主演作の後アベンジャーズに合流し、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』にゲスト出演と、立て続けにMCUに登場していますが、単独主演は何と6年ぶりです。

前作からの続投組に加えてスカーレット・ウィッチが参加と、相変わらず賑やかなキャスト陣に加えて、ファンの注目を浴びたのが監督がサム・ライミということでしょう。

トビー・マグワイアの『スパイダーマン』3部作を手掛け、アメコミ映画=ドル箱企画という図式を作り上げた男が、15年ぶりにアメコミ映画に帰ってきました。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が素晴らしい映画だったこともあって、『ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス』には多くの期待が寄せられていましたが、本作はその期待を軽く上回ってくれました。

「サム・ライミお見事」の一言です。

本作については、私も『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』やMCUドラマ「ワンダビジョン」など見返してあれこれ考え、ネット上に多くの考察が上がっていました。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』以上にネタバレ厳禁な内容ですが、私の予想やネット上の多く考察は根本的な部分で外れています

MCUのフェーズ4からの方向性はまだ読めない部分がありましたが、『ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス』は大きなマイルストーンになってくれる1作になるのではないでしょうか?

映画ファン、シリーズファン、コミックスファン、ベネディクト・カンバーバッチファン各方面を満足させるサービス演出もたっぷりあり、しかもストレートなものからブラックなものまで笑いをふんだんに盛り込み、さらに深いドラマをしっかりと描き……と映画監督サム・ライミの真骨頂を見た気がします。

盛りだくさんな内容にもかかわらず、上映時間126分と近年の大作の中ではとてもタイトにまとめ上げれています。あれこれ考えて向かうもよし、素直に劇場で驚くもよし、まさに娯楽大作というべき1本でした。

また本作は久しぶりに“3D推し”の映画なので、1回目は2Dでストーリーを楽しみ2回目以降に3Dでアクションに熱中するという楽しみ方もおすすめです。

マーベル大作の狭間で、俳優デビュー20周年のふり幅

2016年の『ドクター・ストレンジ』以降、カメオ出演・スピンオフアニメを含めると6年で6本のマーベル大作に出演しているベネディクト・カンバーバッチは、その一方で2019年には『1917 命をかけた伝令』に決して大きな役ではないところで出演しています。

さらに、2020~21年には『クーリエ:最高機密の運び屋』『モーリタニアン 黒塗りの記録』などの賞レースに絡むような作品に出演して、巧い具合に出演作品にバランスを取ろうとしているのがわかります。

2017年の『エジソンンズ・ゲーム』そして、『クーリエ』『モーリタニアン』にはプロデューサーとしても作品に関わるなど、自身の持つスターバリューを巧く活かしています。

そして2021年のジェーン・カンピオン監督のNetflixオリジナル映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』に主演し、2度目のアカデミー賞ノミネートを果たすなど、高い評価を得ました。

「SHERLOCK」で一躍世界的なスターとなったベネディクト・カンバーバッチは、アイドル的ともいえる人気の中でも、自分を忘れずに手堅い作品に出演していた印象です。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を経て『ドクター・ストレンジ』に辿り着き、その後も大作から文芸作品まで幅広く出演しています。

ベネディクト・カンバーバッチは2022年で俳優デビュー20年となり、この先の可能性を感じる活躍を見せてくれているので、まだまだ楽しみは続きます。

(文:村松健太郎)

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–{『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』作品情報}–

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』作品情報

ストーリー
ベネディクト・カンバーバッチ/エリザベス・オルセン/ベネディクト・ウォン/レイチェル・マクアダムス/キウェテル・イジョフォー/ソーチー・ゴメス ほか

予告編

基本情報
出演:ベネディクト・カンバーバッチ/エリザベス・オルセン/ベネディクト・ウォン/レイチェル・マクアダムス/キウェテル・イジョフォー/ソーチー・ゴメス ほか

監督:サム・ライミ

公開日:2022年5月4日(水・祝)

製作国:アメリカ