2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第17回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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下地先生と歌子の追っかけっこで引っ張るとは
ゆったりしています。「ちむどんどん」のゆったり感は沖縄の時間の流れを表しているのでしょうか。地元の人間ではないため、断言はできませんが、南国の人はゆったりしていると聞きます。
「ちむどんどん」第17回はなかなか本題に進みません。暢子(黒島結菜)は産業まつりのヤング大会に出品する料理の試作に励み、良子(川口春奈)は御曹司・喜納金吾(渡辺大和)につきまとわれ、歌子(上白石萌歌)は下地先生(片桐はいり)にとうとう家にまで押しかけられます。
賢秀(竜星涼)はバーガーレストランで出会った金融業の我那覇良昭(田久保宗稔)からひみつの話を持ちかけられて……。「ひみつを守れるタイプだよね」と言われていましたが、賢秀は口が固いとは思えません。それよりも、この”ひみつ”の話が気になります。地道にコツコツではなく一攫千金を狙う賢秀の足元が掬われそうで心配しかありません。我那覇は絵に描いたような悪い大人という感じで、これは「ストップザ詐欺被害」のコーナーを見ているような気持ちになります。
ただひとりスピード感があるのが片桐はいりさん。キビキビ、せかせか、セットのなかを所狭しと動き回り、メリハリを効かせます。東京から赴任してきた設定ですから違う時間を生きているということなのでしょうか。
やかんの蓋を開けて、歌子を探すなんて絶対ありえないのに、おもしろい。全身にいい緊張感がみなぎっていて、歩く姿がバレリーナのようです。全員がそれだと濃すぎて疲れてしまうし、ひとりだからいいのでしょう。
下地先生が隠れた歌子を見つけるかーーで第17回は終わってしまいます。え、これで終わり? とちょっとびっくりしました。
どうやらこのゆったり感は沖縄時間ということではなさそうです。ドラマ的にはのんびり進行ですが、実時間としてはさほど長い時間ではありません。4人分のエピソードを1回にぶつ切りで入れているため、話の進みが遅いだけではないでしょうか。いっそ、「24」方式で、4つに画面を分割して同時並行で4人の物語をやってみるというのもいいのではないでしょうか(無理)。
だいじょうぶ。ほら、見ている。
ドラマを見ていて、額面どおりでは物足りないとき、人は想像で埋めようとします。連休の朝、第17回のゆったりした余白のなかに何かを見出そうと考えてみました。
「親という字は木の上に立って見るというからねえ」(前田善一/山路和弘)というセリフから。「見る」という行動が「ちむどんどん」では重要ではないかと考えます。主題歌「燦燦」の歌詞にもあり、宣伝ビジュアルのキャッチコピーにも「だいじょうぶ。ほら、見ている。」とあります。
優子(仲間由紀恵)が木の上に立って子どもの成長を見守るように、登場人物はみな、誰かを見守っています。歌子は、智(前田公輝)がフライドポテトを作るため農家に安くじゃがいもを卸してほしいと頭を下げているところを目撃します。
智は本来、目撃者の役割をよく担っています。例えば第14回では賢秀が労働しているところを目撃しています。また、第9回では、暢子(稲垣来泉)が和彦(田中奏生)宛の手紙を読み返しながら東京に行く決意を子ども心にしているとき、背後にまもるちゃん(松原正隆)がそっといます。
悩み苦しみ努力しているところを誰かが必ず見ていてくれる。それもそっと。見てどうこう言わず、その人のやりたいように見守るだけ。優子が言うように、他人に何か言われたことで動いたら、何かあったとき自分で背負うことができません。自分が決めたことでしか人はナットクも満足もできないのです。そういう意味で「ちむどんどん」は伏線とか考察とかふつうならこうあるべきとか結論を先回りすることなく、いま目の前に起こっていることをただただ見守っていくタイプのドラマなのかなと思います。
(文:木俣冬)
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–{「ちむどんどん」第4週目のあらすじ}–
「ちむどんどん」第4週目のあらすじ
暢子(黒島結菜)は決まりかけていた就職を断り、気塞ぎな日々を過ごしていた。だが、料理の腕を見込まれて、料理部に助っ人を頼まれることに。長男・賢秀(竜星 涼)は、家族のために一攫千金を夢見ていてチャンスを探していた。長女・良子(川口春奈)は友人・石川(山田裕貴)への思いがなかなかうまくいかず、三女の歌子(上白石萌歌)は音楽教師・下地(片桐はいり)から逃げ回る毎日だった。
–{「ちむどんどん」作品情報}–
「ちむどんどん」作品情報
大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――
ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。
放送予定
2022年4月11日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人
作:
羽原大介
語り:
ジョン・カビラ
音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)
主題歌:
三浦大知「燦燦」
沖縄ことば指導:
藤木勇人
フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子
制作統括:
小林大児 藤並英樹
プロデューサー:
松田恭典
展開プロデューサー:
川口俊介
演出:
木村隆 松園武大 中野亮平 ほか