『おそ松さん』の実写化が決まったとき、楽しみな気持ちや応援する気持ちがある一方で、正直いろんな意味で困惑した。なぜなら筆者はアニメ「おそ松さん」1期の放送中からがっつりハマっていた一方で、Snow Manのファンでもあるという、両方好きな人間だったからである。
公開日に2回観てきて、いい意味で不安は覆された。本記事では、映画化を知った時の不安から実際に映画を観た感想を、おそ松さんとSnow Man、どちらも好きな者の視点で書きたいと思う。
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実写化が決まったときの正直な感想
(C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
まずそもそも6つ子が主人公のアニメ「おそ松さん」が実写化可能なのか、実写化していい作品になるのか疑問と不安があった。Snow Manは身長も年齢もバラバラだし、特に顔は似ていない。すでに舞台にはなっているとはいえ、そのあたりどうなるのだろうか。
さらにSnow Manは9人。6つ子役ではない3人はオリジナルキャラとして出演するという。実写×オリジナルキャラ……。嫌な予感がする取り合わせである。
Snow Manが9人で、しかもジャニーズの企画ではなく外部からのオファーで主演映画をやること自体はとてもうれしい。でもこれをきっかけにSnow Manが嫌な印象を持たれてしまったら嫌だな~という気持ちがあった。
自分がアニメ側だけのファンだったとして考えると、好きなアニメがよく知らんアイドルグループ主演で実写化されると聞いたら、少なくとも初めて聞いたときはちょっと嫌だと思う。
現にアニメの実写化が酷評されているのは聞かない話ではない。誰も悪いわけではなくても、そういう状況は起こりうる。
ただ一方で、「大丈夫では?」と思える要素もあった。
ひとつは、英勉監督だということ。
すでに数々の原作作品を映画化して定評があり、『おそ松さん』実写化発表時に公開されていた『東京リベンジャーズ』は素晴らしかったし、とても評判がよかった。
そしてもうひとつは、Snow Manは与えられた仕事に全力で取り組み、やり切る人たちだということだ。きっといいものにしてくれるに違いないという気持ちもあった。
–{映画『おそ松さん』感想}–
映画『おそ松さん』感想
実際観に行って、たくさん笑ったし、たくさん想定外があって「!!?」ってなったし、たくさん高まったし、一言で感想を言えない、カオスな映画だった。
「何の映画観に来たんだっけ?」「何を見せられているんだ……?」と終始思い続けていた。いろんな側面から感想を書いていく。
※以降は、一部ネタバレを含みます。結末には触れませんが、未鑑賞の方はご注意ください。
1:Snow Manの6つ子の再現度
まず6つ子について、顔が似ていないことを「設定ではそっくりということになっている」とあらかじめメタ発言で説明してしまうところがさすがだった。
それぞれかなり研究をしたのがよくわかった。声の出し方や話し方の間など、アニメオタクで元々「おそ松さん」のファンだった十四松役の佐久間大介に聞いたり、監督と相談したりしてキャラクターを作り上げていったという。
心配だったのは下ネタをどうするかだが、ここまでやるのか……? というシーンもあった。
佐久間は球技が苦手なのだが、十四松役に決まったと聞いてすぐバットを買いに行き、素振りを猛練習したほか、袖から手を出さないようにするなど徹底していた。
TikTokで公開された「踊ってみた」では、「十四松が完全に十四松だった」と、Snow Manのファンだけでなくおそ松さんのファンにも評判となった。「実写は観に行かないつもりだったが、観てみたい」と思ってくれた人もいるみたいでうれしい。
@osomatsusan_sn ◤6つ子と物語終わらせ師が踊ってみた?✨◢ #SnowMan #ブラザービート #佐久間大介 #岩本照 #深澤辰哉 ┊#映画おそ松さん 3月25日公開┊#みんなでシェー ♬ ブラザービート – Snow Man
それぞれが6つ子について研究したうえで、演じている本人の要素が少し足されたような印象だった(十四松は十四松だった)。
アニメの完全コピーを求めると物足りないかもしれないし、松同士の絡みはアニメに比べると少ない(例えば一松がカラ松に当たり強い、みたいなところはない)が、「全然違う」とはならないと思う。
(C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
おそ松のクズさ、カラ松の空気の読めなさ、チョロ松のイキった感じ、一松の猫背や陰気さ、十四松は全体的に、トド松の裏の顔などはよく再現されていた。そして6つ子のケンカのシーンや一体感あるシーンも違和感がなかったと思う。
予告編にもある通り、とあるお金持ちの老夫婦の養子の座を巡って、6つ子が「東大に入る」「最強の男を目指す」「野球(?)」など、それぞれの目標に向かって奮闘する。……かと思ったが、それぞれの話はおかしな方向へふくらんでいき、「誰?」「本来の目的どこいった?」的な話に発展していく。中にはその物語同士が合流することもあったりなかったり。「これ、何の映画だったっけ……?」と何度思ったことか。
どんな物語が展開するのかは、公式ツイートや主題歌「ブラザービート」のコラボMVで、少しだけチラ見せされている。
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2022年公開の邦画No.1⃣スタートざんす✨
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◎観客動員45万人突破?
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本当にありがとうございます‼4/2(土)<大ヒット御礼舞台挨拶&生中継>開催?https://t.co/LIha5VPe7l@osomatsusan_SN pic.twitter.com/v3vRsoVekG
— 東宝映画情報【公式】 (@toho_movie) March 28, 2022
2:いる意味がありすぎたオリキャラ「物語終わらせ師」たち
この広がりに広がってしまった物語を終わらせようとするのが「終わらせ師」エンド(渡辺翔太)・クローズ(阿部亮平)・ピリオド(宮舘涼太)。黒い神父服のようなものを着て現れるが、風呂敷が広がってしまった物語を終わらせるために、彼ら自身もさまざまなキャラクターとなり、髪型や服装もどんどん変わっていって楽しい。
もはや、「絶対に物語を続けたい6つ子VS絶対に物語を終わらせたい終わらせ師たちの壮絶な戦い」の物語のようである。映画化を聞いたときは「え~オリキャラ?」と思ったが、この物語には必要な役だったし、3人それぞれがアクションやらドラマやらエセ関西弁やらに挑戦していて見せ場も盛りだくさん。なんなら6つ子よりおいしかったかもしれない。
なかなか物語を終わらされず、うまく終わらせられなかったときの終わらせ師たちの顔がすごくかわいかった。あと6つ子はみんな同じ髪型だが、終わらせ師たちは髪型がかっこよくてちょっとずるい。好きになっちゃう。
3:イヤミ・トト子・チビ太が秀逸
イヤミ・トト子・チビ太が素晴らしかった。3人とも「この役引き受けていいんですか!?」と思うような方々だが、想像以上のなりきりっぷり。
テレビアニメ「おそ松さん」©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
イヤミを演じる前川泰之は、海外のランウェイでも活躍したモデル出身だが、かなり大きな付け歯をつけ、ギャグに振り切っていた。イヤミを実写でやろうとしたら違和感が出てしまうかコントのようになってしまうのでは? と思われたが、なんなら声も似ていて全く違和感がなかった。
(C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
桜田ひよりはチビ太のビジュアルだけでなく、べらんめえ口調でのツッコミも完璧だった。ツッコミどころが多すぎる作品で、最後までキレを保っていた。とあるシーンでかなり笑いをこらえているので見逃さないでほしい。
そして髙橋ひかるのトト子ちゃんがすごかった。まず、めっちゃくちゃスタイルが良くてかわいい。すれ違ったら絶対振り返るし、6つ子が夢中になるのも納得だ。
さらに、アニメのトト子ちゃんはかわいい見た目とは裏腹に性格がアレだったが、そのアレな性格も豹変する言葉遣いも見事に再現していた。
テレビアニメ「おそ松さん」©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
この3人が無駄に広がり続けるストーリーを見守りツッコミを入れることで、観客と6つ子たちを繋げてくれた。かなり言いたいことを言ってくれた感じがある。この3人が仲違いするシーンも、セリフが面白くて笑った。
松野家のお父さん(松造)・お母さん(松代)もよかった。2人とも目からビーム出てるし、松代役の濱田マリに関してはめちゃくちゃ変顔してくれるけどいいんですか? と思ったし、数々の映画やドラマで父親役を演じている光石研が松造をと思うと感慨深い。
4:個人的MVPはこの人
勝手にMVPを決めるなら、エンド役の渡辺翔太くんとトト子役の髙橋ひかるちゃん。
エンドはかわいいところもあり、かっこいいところもあり、おもしろいところもあり、ここはエンドじゃなくて渡辺翔太では? というシーンまであって、すべてをかっさらっていった。翔太くんにもっと演技のお仕事きてほしい。
トト子ちゃんは本当にめちゃくちゃかわいかったし、キレ芸がすごかった。キレ芸のノリで入れるツッコミが最高。今後髙橋ひかるちゃんにも注目していきたい。
「おそ松さん」の実写化として正しい形かも
それぞれ意外な方向に話が派生していくのはかなり面白いけど、「もはやこれはおそ松さんなのか? おそ松さんでやる必要があるのか?」と観ながら一瞬思った。
でも次の瞬間、こう考え直してその疑問は消えた。
そもそもアニメ「おそ松さん」は「おそ松くん」の基本的な設定だけはそのままに、さらにいろんな要素を足しに足しまくって好き勝手やる作品だった。アニメ本編以外にも、グッズ・ゲーム・ドラマCDなどでさらにさまざまに派生した設定があり、そこも楽しみのひとつだった。
(C)赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
そう考えると、アニメ「おそ松さん」の設定を借りてさまざまな物語が派生していくこの物語は、「おそ松さん」の実写化作品としてとても正しい形なんじゃないかな、と思って納得した。
アニメ「おそ松さん」の内容をそのまんま再現したら、アニメとの差がより気になってしまう作品になっていたかもしれないし。これでいいのだ(作品違い)。
というわけで、おそ松さんのカオスと、実写ならではの展開が楽しめる映画に仕上がっている。
観ようか観ないか悩んでいる人は、とりあえず1回観ておいて損はないんじゃないかなと思う。
そしてこの記事ではほんのさわりしかネタバレしていないので、実際どういうことだったのか、そして最後はどうなるのか見届けてほしい。
(文:ぐみ)
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–{映画『おそ松さん』作品情報}–
映画『おそ松さん』作品情報
ストーリー
松野家の6つ子、おそ松(向井康二)、カラ松(岩本照)、チョロ松(目黒蓮)、一松(深澤辰哉)、十四松(佐久間大介)、トド松(ラウール)は、20歳を過ぎても定職につかず、親の脛をかじるクズで童貞のクソニート。足を引っ張り合いながらも、仲良くひとつ屋根の下で暮らしていた。
そんなある日、ひょんなきっかけで長男のおそ松が出会ったのは、1人の老紳士。ところが、その老紳士の正体は、時価総額数十兆円の大企業アプリコッツのCEOだった。しかも、“事故で亡くした息子と瓜二つのおそ松を養子にしたい”という突拍子もない話が飛び出す。
おそ松と抜け駆けが許せない5人の弟たちの間で、自分が養子にもらわれたいと、他を蹴落とす骨肉の争いが勃発。そんな彼らの前に、超重要そうな雰囲気を醸し出す黒ずくめの3人が現れ、物語は思いもよらぬ方向へ。果たして、養子に選ばれ、勝ち組の人生を送るのは誰なのか……?
予告編
基本情報
出演:向井康二/岩本照/目黒蓮/深澤辰哉/佐久間大介/ラウール/渡辺翔太/阿部亮平/宮舘涼太/髙橋ひかる/前川泰之/桜田ひより
監督:英勉
公開日:2022年3月25日(金)
製作国:日本