『アイの歌声を聴かせて』聖地巡礼レポート!ミニシアター「ガシマシネマ」で74歳のお客さんが「猛反省」した理由を知ってほしい!

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現在、アニメ映画『アイの歌声を聴かせて』の期間限定の先行レンタル配信が行われている。

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本作は劇場公開時にSNSでの熱狂的な口コミが話題となり、映画.comが選ぶ2021年の映画ベスト10では10位、そして日本アカデミー賞優秀アニメーション映画賞にも選ばれた。たくさんのファンアートの投稿を鑑みれば、オリジナル企画のアニメ映画史上最高レベルに愛された作品と言っても過言ではない。



本作は、「2回目からが本番」など、複数回を観てこその感動があることも話題となっているので、すでに気に入った方はもちろん、あまりハマらなかったという方も、ぜひリピート鑑賞をしてみてほしい。今回初めて観るという方は、レンタル配信だからこそ「すぐにもう1回観られる」ので幸福だ。本作の素晴らしさについては、以下の記事および文中にリンクを貼った関連記事もぜひ、参照してほしい。

【関連記事】『アイの歌声を聴かせて』が大傑作である5つの理由|過去最高の土屋太鳳が爆誕!

さて、『アイの歌声を聴かせて』は、ファンが新潟県の佐渡島への「聖地巡礼」へと向かう報告も相次いでいる。劇中の設定では景部市という架空の都市であるが、風景のモデルは明らかに佐渡島なのだ。実際に行ってみた筆者がレポートしよう。

聖地巡礼レポート!神社の長い階段の先にあったのは……?

佐渡島へは、現在は新潟市から出港しているフェリーで向かうことができる。詳細および予約は佐渡汽船の公式サイトを参照してほしい。

両津港に降り立った後は、徒歩ですぐの「佐渡観光情報案内所」に行ってみるのがおすすめだ。なぜなら有志の方の手づくりによる「聖地巡礼(ファン交流)ノート」が置かれており、ここで聖地巡礼の情報も聞くことができるからだ。もしくは、旅の終わりに来て、楽しかった旅の記録をノートに綴るのも良いだろう。



そして、聖地巡礼でメインとなるのは、住吉地区だ。両津港から徒歩でも行くことが可能だが、到着するだけでも片道30分以上はかかるため、バスやレンタルバイクなどの利用がベターだろう。海沿いの道は(劇中のようなバス停はないが)とにかく気持ちがよく、ドライブすることも楽しいのは間違いない。

目標にするといいのが、寿月館という宿。この周辺で『アイの歌声を聴かせて』の劇中に、ヒロインのサトミが学校に向かうまで、ほとんどそのままの光景を見ることができるのだ。

寿月館から北に向かうと、劇中では「労働支援ロボット農作業実験」のAIへの注意書きになっていた、「トキ観察の3つのルール」の看板があった。もう少し西にも、同じ看板がもう1つある。なお、佐渡島のトキの森公園では本物のトキを見ることもできる。

また、この住吉地区からさらに東にある、宇賀神社に行ってみるのもいいだろう。標高100mの山頂にあり、596(ごくろう)段あるという長い階段を登らないといけないのは大変だが、その眺めは壮観で、劇中の高校の屋上から見た光景にもかなり似ている(劇中とは左右が反転している)。

また、劇中のバスの中で流れた、企業・ホシマエレクトニクスのプロモーションビデオでの景部市の街並みは、吉浦康裕監督がロケハン時に泊まった、朱鷺伝説と露天風呂の宿 きらくの窓から見た景色がモデルとのこと。現在は新型コロナウイルスの影響で日帰り入浴が実施されていない(公式サイトを参照)ため、筆者はその景色を見ることは叶わなかった。見たい方は、宿泊のうえでご覧になってほしい。3月31日まで実施中の「佐渡温泉紀行」のサービスを利用するのもいいだろう。



なお、吉浦康裕監督は、この『アイの歌声を聴かせて』のために、かつてないほどに怒涛の下調べ取材およびロケハンをしまくっていたそうだ。観た方であればご存知の通り、本作は日常の風景に溶け込む少し先の未来のSF描写も素晴らしく、そのリアリティが現実の風景を切り取ったからこそ成し得たものなのだと、聖地巡礼をすることで改めて納得できた

ちなみに、前述した宇賀神社よりさらに東に行けば、人気アニメ『SHIROBAKO』の24話(最終回)に登場した姫埼灯台もある。アニメファンは、こちらも合わせてチェックしてみるといいだろう。

また、佐渡島を観光するにあたって注意していただきたいことは、ものすごく広いということ。 854.76km²と言う面積は、日本の離島の中では沖縄に次ぐ大きさだ。島をめぐる際は、スケジュールや移動距離に注意をしてほしい。言うまでもなく、天気も要チェックだ。

–{ミニシアター「ガシマシネマ」のここがすごい!}–

カフェも楽しめる&迫力の音響がすごい!

現在、佐渡島で唯一の映画館ガシマシネマでは『アイの歌声を聴かせて』での上映が行われている(月曜日と火曜日は定休日)。劇場の定員は約20名とごく限られているため、公式サイトをチェックして、前もって予約して訪れてほしい。

筆者も聖地巡礼の後に訪れて『アイの歌声を聴かせて』を鑑賞したが、掛け値なしに最高オブ最高の映画館なのでとにかく行ってくれと言いたい。

おしゃれな雰囲気は言うまでもなく、カフェが併設されてもいて、歴史的な価値のあるさまざまな書籍(現在は『アイの歌声を聴かせて』の関連書籍も)読める。一日中ここにいられるのは間違いない。

80年代以前の映画館で利用されていた「カーボン式映写機」も見ることができた。

何より、極上の映画体験を与えてくれる、座席、スクリーン、そして「音響」が素晴らしすぎる。ズンズンと響く音そのものに鳥肌が立つほどの衝撃があり、『アイの歌声を聴かせて』の劇中のミュージカル、迫力の映像表現の感動もひとしお。後ろにもスピーカーがあり、立体的な演出もしっかり楽しめる。

余談だが、館内のスイッチも『アイの歌声を聴かせて』の劇中のスイッチと同じに見える。これは偶然……?いや、やはり佐渡島という場所をモデルにしたからこそだろう。

そして、何よりの感動は、ガシマシネマで『アイの歌声を聴かせて』の上映が決まったのは、ファンの方のTwitterでの推薦がきっかけだったということだ。作品への愛情がここにも届いたということも、嬉しくて仕方がない。




【参考記事】佐渡が”舞台” のアニメ 地元で上映 | 新潟日報デジタルプラス

–{ガシマシネマ支配人へのインタビューをお届け!}–

開業の経緯、そして上映作品の選定基準とは?

ここからは、開業の経緯や、上映作品を選定する基準などがわかる、ガシマシネマの支配人・堀田弥生さんへのインタビューをお届けしよう。

ーーガシマシネマを開業した経緯を教えてください。

私は元々、東京の映画館で働いていました。でも、映画館運営の仕事が好きで、家事育児が上の空になるような傾向があったので危険だな、と。一度リセットしてみようと。また、子どもには親の意識の届かないところでも遊んでほしい、豊かな自然体験をさせたい、等の気持ちがあり、家族で思い切って佐渡島に移住しました。佐渡島には映画館がないのは知っていたので、ビジネスチャンスかも!とは密かに考えていました(笑)。

ーー開業するまでに不安や苦労などはありましたでしょうか。

ものすごく不安でしたよ! 家賃は安く、椅子等も廃業になったホテルからお譲りいただいたりと節約に節約を重ねましたが、それでも本当にお客さんが来るのだろうかと、開業する時は眠れない夜が続きました。また、開業し何とか格好もついてきたかと思えた3年目に直撃した新型コロナの影響も大きかったです。そんな折、ミニシアター・エイドが突如立ち上がったのにはとても驚きましたし、助かりました。元が古民家なので雨漏りもあったのですが、そのミニシアターエイドと独自のクラウドファンディングでお金が集まり、屋根を修理できたのもありがたかったです。今は徐々に客足が戻りつつあり、「笑っていられる日が来るなんて」という気持ちでいます。

ーーこれまでの上映ラインナップを観ると、ややニッチではありつつ面白い映画が数多く公開されてきたという印象を持ちます。どのように作品は選定されているのでしょうか。

基本は予告編をたくさん観たり、サンプルを借りたりして、お客様の満足度の高そうな映画を選びます。この点、夫も映画好きなのでマメに予告編をチェックしてくれるので助かってます。私自身がなんとなく心がけているのは、季節感豊かなこの古民家に似合う映画、ということですね。

例えば、新潟の冬は曇り空が多く暗い印象ですが、その分落ち着いて手芸や編み物に勤しむ方も多いです。つい先月2月に上映した『ほんとうのピノッキオ』は、人形造形から衣装や美術、メイクアップに至るまで職人技が光り、画面の隅々まで見ごたえのある作品でした。

自分が作ったピノッキオをわが子のように慈しむジュゼッペ爺さんと、波乱曲折ありながらもどうにか人間になりたいと願うピノッキオがいじらしく、子どもたちにも心から観てほしいと願える作品でしたね。また、『ピノキオ』はロボット物語のはしりである、という評論も見かけました。続いてロボットが主人公の『アイの歌声を聴かせて』が上映できたのも良い巡り合わせだと思います。

また、その同時期に上映した『戦慄せしめよ』は佐渡島の太鼓芸能集団「鼓童」初の主演映画。全佐渡ロケ作品で、極寒の12月に撮影したこともあり、日本海側の曇天と凄まじいまでの荒波を背景に太鼓を叩く姿は圧巻でした。演奏というより“祈り”に近い音楽映画で、冬の日本海の荒々しさと神々しさを見事に切り取った作品でした。

ーー現在上映されている『梅切らぬバカ』も、劇中で明確に描かれているというわけではないですが、今の3月の季節の印象がありますね。

そうですね。タイトルにもなっている梅の木というモチーフも、ちょうどいいと思いました。

『アイの歌声を聴かせて』も、ファンの方に推薦していただいたことももちろん、劇中の設定では6月ではあるのですが、やっぱり学校の青春を描いた作品なので今の時期にピッタリだと考えましたね。

とにかく、作品の選定はなんとなくテーマを決めて、そのカップリングができれば良いと思いつつやっています。もちろん時にはうまく行かずに妥協することもあるのですが、できる限り、そうできれば我ながらカッコいいな、という感じですね。

ちなみに、ガシマシネマの第1回の上映は『ホドロフスキーのDUNE』と『リアリティのダンス』だったんですよ。その『ホドロフスキーのDUNE』からは、ものすごく勇気をもらいました! 不安でいっぱいだった開業時、確実に背中を押してくれましたね。“世界を変えるんだ”って(笑)。

ーー今までに反響を呼んだ上映作品はありますか。

特にお客さんがたくさん来てくれたのは、樹木希林さん主演の『日日是好日』ですね。

さらに樹木希林さん出演の『万引き家族』も大きな反響を呼びました。どちらも、古民家の雰囲気に合うのも良かったのだと思います。『万引き家族』は美術スタッフの方が観に来てくださったのも嬉しかったです。

ーーお客さんの反応で嬉しかったことはありますでしょうか。

つい先日、『アイの歌声を聴かせて』の上映で、まさにあったんですよ。上映後にカウンターまで女性の方がいらして、目を輝かせながら「私、74年生きてきたけど、映画でこんなに感動したのは初めて!」って。その方はかつて、息子さんが20代の頃に「声優になりたい」と口にした際に、「なにバカなことを!」と反対したことがあったそうです。でも、『アイの歌声を聴かせて』を観たことで、「声優ってなんて素晴らしい仕事なんだろう!土屋太鳳さん最高ね!」と、「今晩、久しぶりに息子に電話をしようと思って……」とおっしゃっていたんです。その言葉にもう……私がいちばん感動をもらいましたよ!

ーーなんて良い話なんでしょうか! 吉浦監督とスタッフたちにいちばん聞いてほしい感想ですね。

そうですね。ガシマシネマで、『アイの歌声を聴かせて』を上映して、本当に良かったと思いました。

ーーこれから、どういった方たちにガシマシネマに来てほしいですか。

今は50代以上の中高年の女性のお客さんが多いですね。佐渡島では80年代にいったん島内の映画館が全てなくなったため、やはりかつて映画館での体験がある方たちが観に来ている、お茶のみがてら連れ立って楽しんでいらっしゃる印象です。そうした方々はもちろん、今後は中高生くらいの若い方にも、主体的にバスにでも乗って遊びに来てくれると嬉しいです。

また、カフェの利用もぜひ! 上映中にカフェを利用して、シネマスペースから漏れ聞こえてくる映画の音を聴きながらお茶をするのも楽しいですよ。

ガシマシネマで『アイの歌声を聴かせて』は4月1日まで、朝10時から上映中(月曜日と火曜日は定休日)。
※4/16追記:大反響につき延長が決定、5月1日まで上映が継続とのこと!

今後のラインアップにも注目して、ぜひ訪れてみてほしい。聖地巡礼または観光とセットで訪れれば、かけがえのない体験になるはずだ。

そして、現在『アイの歌声を聴かせて』は期間限定の先行レンタル配信中。3月14日20時にはTwitter同時視聴イベントが実施され、筆者は同作のトリビアや考察を、吉浦監督をはじめスタッフからのコメントも、そしてファンのみなさんも「#みんなでアイうた」のハッシュタグでつぶやいてくれた。これからも、もっともっとアイされる映画になりますように!

【期間限定レンタル配信情報】
■配信期間:2022年3月11日(金)0:00~2022年6月10日(金)23:59
■販売価格:HD/SD 1,100円(税込)
■視聴時間:72時間
■配信内容:本編のみ
■配信サービス:・Amazon Prime Video・GYAO!ストア・Google Play Store・シネマ映画.com・J:COMオンデマンド・TELASA・dアニメストア・DMM.com ・ニコニコチャンネル・HAPPY!動画・バンダイチャンネル・ひかりTV・ビデオマーケット・milplus・music.jp・ムービーフル・U-NEXT・Rakuten TV

(取材・写真:ヒナタカ 一部写真はひし提供)