<徹底解説>バットマンの魅力:過去作品から紐解く人気の”謎”

デフォルト

2022年3月11日より、映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が、ついに公開された。

本作は、悪と敵対するヒーロー・バットマンが、史上最狂の知能犯・リドラーによる連続殺人事件に挑むサスペンス調のアクション・エンターテインメント。

今回は、そんなヒーロー映画の新章公開を記念して、有名キャラクター・バットマンの魅力や過去作について、徹底解剖。

最新作の題材に合わせて、「謎」を解き明かす形で、その秘密に迫ります。

バットマンは、なぜ人気?

『ダークナイト ライジング』より (C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC

1939年にアメリカのコミックで初登場した人気ヒーロー・バットマン。
その歴史は約80年以上に及びます。

日本の国民的アニメ・サザエさんの誕生が1946年なので、それよりも7年も早い誕生からも、いかに長きに渡って、愛されてきたヒーローなのかは分かるでしょう。

そもそも、バットマンの人気の秘密とはなんでしょうか。
その答えはさまざまですが、筆者が3つ挙げるとすれば、

個性豊かなキャラクター

圧倒的な世界観

作品毎に異なるヒーロー像

です。

個性豊かなキャラクターという点では、腐敗した街・ゴッサムシティで戦う孤高のヒーロー・バットマンはもちろん、魅力的な悪役も見逃せません。

狂気じみた犯行を繰り返す男・ジョーカーや、その恋人で周囲を魅了するハーレイ・クイン、時にはバットマンと恋仲にもなる盗人・キャットウーマンなどなど。

その人気は確かなもので、ジョーカー、ハーレイ・クイン、キャットウーマンの3人のキャラクターたちは、それぞれスピンオフ映画が作られるほどの人気を誇っています。

また、各監督が作り上げる圧倒的な世界観もシリーズの魅力と言えます。

ティム・バートン監督(『チャーリーとチョコレート工場』『アリス・イン・ワンダーランド』)のセット撮影によるダークな街並みや、クリストファー・ノーラン監督(『インセプション』『TENET テネット』)によるリアリティのある犯罪都市など、その描写は大きく異なります。

本シリーズの成功を機に両監督が世界的に名を馳せたことからも、その描写が高く評価されたことは明らかでしょう。

そして、作品毎に異なるヒーロー像も、シリーズを語る上では欠かせないポイントと言えます。

上記で述べた両監督のシリーズを比較するだけでも、その違いは明白です。

ティム・バートン版では、周囲から疎まれる悪役も含め、バットマンを孤独な存在として描いてたことが象徴的。

これはダークファンタジーを得意とする監督ならではのカラーとも言えます。

一方、クリストファー・ノーラン版では、表向きはプレイボーイを演じつつも、裏では自己の恐怖や弱さと向き合うストイックな主人公像が描かれています。

とりわけ、ノーラン作品では自己と葛藤する主人公が繰り返し描かれています。

このことからも、バットマンは監督のカラーによって、大きく物語が変わる題材とも言えるのです。

シリーズは繋がっているの?

新作映画『THE BATMAN-ザ・バットマンー』も、その系譜は引き継いでおり、過去作とは何ら関係を持たない物語なので、これまでの過去作を観ていない人でも安心して楽しむことができます。

バットマンシリーズは、基本的に各作品が独立したエンターテインメントとして楽しめるように工夫されています。それがバットマンが長年愛され続ける所以なのかもしれません。

ちなみに、過去に作られた作品では『バットマン』から『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』の4作品がセリフなどでゆるく繋がっているほか、『バットマン ビギンズ』から始まるダークナイト三部作、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』と『ジャスティス・リーグ』など、同じ役者がバットマンを演じている作品は繋がる部分もあります。

作品によっては同名キャラクターが異なる設定で登場することもあり、シリーズを追っていると、より楽しめる場合もあります。

–{過去作は何本あるの?}–

過去作は何本あるの?

バットマンが登場する映画は数多く存在しますが、バットマンが主役を務めた代表的な作品は、過去に7本作られています(TVシリーズの映画版、他ヒーローとの共演作、外伝作品などは後述)

とりわけ、シリーズの中で人気なのはティム・バートン監督などがメガホンをとった90年代版4作品と、クリストファー・ノーラン監督が手がけたダークナイト3部作です。

これらの作品に登場するバットマンは、誰もが目にしたことがあるはず。

ここからは、バットマン初期の代表作4本を紹介します。

初期4作品

バットマン



ティム・バートン
監督が手がけた初のバットマン映画。

プレイボーイの大富豪・ブルース・ウェインが、ダークヒーローとして悪と戦う物語が描かれます。

本作では、ティム・バートン監督らしいダークな世界観が印象的です。 薄汚れたゴッサムシティの街並みと奇抜なヴィジュアルの狂人・ジョーカー(演:ジャック・ニコルソン)は、一度見ると忘れらないほどの衝撃。

また、バットマンを演じたマイケル・キートンは、本作を機に世界的な有名俳優になり、近年ではこの役柄を踏まえた配役が続いています。

過去に人気ヒーローを演じた落ち目の役者を演じた『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』や、空飛ぶ悪役として登場した『スパイダーマン:ホームカミング』、公開が予定されているヒーロー映画『ザ・フラッシュ』では、バットマン役を再演することも発表されています。

バットマン リターンズ

前作に続き、監督:ティム・バートン × 主演:マイケル・キートンの布陣で制作されたシリーズ第2弾。

本作では、町を恐怖に陥れる悪役・ペンギンキャットウーマンが登場します。

両親がおらず、下水道で孤独に育った異形の存在・ペンギンの描写には、監督の他作にも通ずる変わり者に対する愛情を感じられる部分も……。

バットマンという男性ヒーローに対して、女性ヒーロー・キャットウーマンの活躍を意識的に描いている部分は、今だからこそ再評価されるべきでは?

バットマン フォーエヴァー

ティム・バートン監督の世界観を引き継ぎ、ジョエル・シュマッカー監督がメガホンをとった第3弾。

バットマン役はヴァル・キルマーが務め、最新作にも登場する悪役・リドラーをジム・キャリー、トゥー・フェイス役をトミー・リー・ジョーンズが熱演しています。

本作ではバートン版に対し、ポップな色合いの衣装やセット、コミカル要素の強い悪役の演技が特徴的です。

バットマンの相棒となるロビンも登場し、教える立場となったバットマンの奮闘や、ヒロイン・チェイス博士(演:ニコール・キッドマン)との間で自身の二面性に揺れる主人公の葛藤が描かれています。

バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲

ジョエル・シュマッカー監督が続投した第4弾。

本作では、ジョージ・クルーニーがバットマン役、凶悪な敵・Mr.フリーズをアーノルド・シュワルツェネッガーが演じるなど、映画ファン垂涎の豪華キャストとなっています。

第18回ゴールデンラズベリー賞の最低作品賞にノミネートされるなど、不名誉な評価も多い本作ですが、個性豊かなキャラクターの出演には大注目。

前作に引き続き、バットマンの相棒・ロビンほか、新たな仲間・バットガールも登場。
ポイズン・アイビーベインなど、原作コミックで人気が高い悪役たちがバットマンたちに襲いかかります。

–{続いて、ダークナイト3部作を紹介!}–

ダークナイト3部作

続いて、ここからは映画ファンからの人気も高いクリストファー・ノーラン版3作品(ダークナイト3部作)をご紹介。

バットマン ビギンズ

伝説の幕開けとなったノーラン版バットマン第1作。

本作ではバットマン誕生の起源を掘り下げ、よりリアリティのある物語が展開されます。

幼少期のトラウマに向き合い、腐敗した街・ゴッサムシティの”闇の騎士”となる大富豪・ブルース・ウェインをクリスチャン・ベールが熱演しています。

謎の男・ラーズ・アル・グールが組織する忍者軍団・影の同盟での修行や、幻覚を扱う強敵・スケアクロウとの戦いなど、過去作品とは一味違う設定も魅力的。

渡辺謙、リーアム・ニーソン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマンといったベテラン俳優の起用や、バットモービルや武器といったガジェットの数々など、こだわりのディティールが、多くの映画ファンを魅了しました。

ダークナイト

第81回アカデミー賞において8部門にノミネートされ、見事、助演男優賞、音響編集賞の2部門を獲得。アメコミ映画の伝説となったシリーズ第2作。

狂気的な犯罪者・ジョーカーとバットマンとの戦いを軸に、単なる勧善懲悪では終わらない、正義の本質をえぐる深い人間ドラマが描かれます。

故・ヒース・レジャーの怪演が話題を呼んだほか、911後以降のアメリカを隠喩した社会派エンターテインメントとしての内容が高く評価され、のちのアメコミ映画のみならず、多くの映画群に影響を与えることになった傑作です。

ダークナイト ライジング

『ダークナイト』の衝撃を経て、シリーズの完結編となった第3作。

本作では、ジョーカーの凶行により、大きな犠牲を払うことになったゴッサムシティの8年後を舞台に、闇の騎士”バットマン”の最後の戦いを描きます。

トム・ハーディ演じる肉体派の悪役・ベインに、シリーズの人気キャラクター・キャットウーマンをアン・ハサウェイが快演。

伝説的な3部作を見事にまとめあげる大団円には、思わず、拍手を送りたくなるほどの感動と興奮が待ち受けています。

–{他には、どんな作品があるの?}–

他には、どんな作品があるの?

これまでに紹介した作品以外にも、バットマンが登場する映画は複数あります。ここからは、初代TVシリーズの劇場版と他のヒーローたちと共演した2作品の計3作品、アニメ映画の代表作3作品をご紹介。

その他の実写映画(3作品)

バットマン オリジナル・ムービー

日本では『バットマン』および、『怪鳥人間バットマン』として放送された1966年のTVシリーズ。

その劇場版となったのが『バットマン オリジナル・ムービー』です。

本作では初期の原作コミックに近いポップな世界観が特徴的と言えます。

キャラクターの奇抜な服装やバトルシーンに登場する効果音の吹き出し、子供向けながらも毒のあるジョークが利いたシュールな作風は唯一無二。

近年、リアル志向な作品が続いているバットマンゆえに、改めて立ち返りたいシリーズの原点と言えます。

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

スーパーマンバットマンのドリームマッチを描いた作品。

有名ヒーロー・スーパーマンの起源を描いた映画『マン・オブ・スティール』の続編として、スーパーマンに大切な人々を奪われたバットマンが復讐を決意するというオープニングからはじまる、シリーズ屈指の衝撃作です。

「映画はヴィジュアルだ」と公言する名匠・ ザック・スナイダー監督によって再現された原作コミックの美しい画作りと、ベン・アフレック演じるやさぐれた中年バットマンが本作の見どころ。

中盤には、思わぬゲストキャラクターが登場するなど、続くヒーロー大集合映画『ジャスティス・リーグ』への大いなる序章ともなった壮大なスケールの一作です。

ジャスティス・リーグ

DC映画シリーズとしては初のヒーロー大集合映画となった作品。

ワンダーウーマン、アクアマン、フラッシュ、サイボーグなど、DCコミックのヒーローたちが勢ぞろいし、最強チーム”ジャスティス・リーグ“を結成する本作では、バットマンが彼らをまとめ上げるリーダー的存在になります。

前作では怒りに身を任せ、復讐に燃える孤高のヒーローとして描かれていたバットマンが、どのように変化していくのかにも注目してほしい一作です。

–{続いて、アニメ映画版3作品を紹介!}–

アニメ映画版(3作品)

ここからは、隠れた名作の多いアニメ映画版バットマンの3作品をご紹介。 

ニンジャバットマン

悪役との戦いの末、戦国時代にタイムスリップしてしまったバットマンという荒唐無稽な設定で作られたシリーズ最大の異色作。

劇団新感線による人気公演『髑髏城の七人』シリーズで戦国時代を、『天元突破 グレンラガン』シリーズでロボットバトルを描いた脚本家・中島かずきさんのカラーが大爆発しています。

ハイテンションな作風と息つく暇もないスピーディーな展開、その独創性には賛否も分かれますが、原作コミックの人気キャラクターたちを、これでもかと盛り込んだ脚本は見事。

CG、水墨画風、2次元と多彩なアニメーション表現を用いた作風にも圧倒される一作です。

レゴバットマン ザ・ムービー

『LEGO(R) ムービー』で初登場となったレゴバットマンのスピンオフ映画。

一見、子供向けに見える作品ながら、過去のバットマンシリーズを総括するような見事な脚本に、初心者もファンも圧倒される隠れた大傑作です。

孤独なヒーロー・バットマンというイメージや、共依存に近い名悪役・ジョーカーとの関係性など、過去作を分析した上で思わぬ着地を迎える展開が見事。

ワーナーブラザーズ制作という名のもとに、「レゴであれば、どんなキャラクターでも登場させることができる」と言わんばかりに、思わぬキャラクターが集結するサプライズ要素も嬉しいお祭り映画でもあります。

DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団

日本を代表する(?)人気アニメーション・秘密結社鷹の爪と、DCコミックスのスーパーヒーローたちが、まさかのコラボレーションを果たしたのが本作。

制作予算が少なくなると広告やスポンサー企業の重役が登場する鷹の爪団の映画らしく、本作では膨大な予算を持ったバットマンが重要な存在になります。

ジャスティス・リーグを脱退したバットマンを追いかけ、鷹の爪団のメンバーが思わぬ作戦を実行することに……。

バットマンの声を山田孝之が担当しているほか、無駄に(?)豪華な声優陣にも注目です。

以上、過去に作られたさまざなバットマン映画を紹介してきました。

それぞれに異なる魅力があり、どの作品から見ても楽しむことができるバットマンシリーズ。

まずは、最新作『THE BATMAN-ザ・バットマンー』を鑑賞して、その人気に隠された”謎”を解いてみてはいかがでしょうか。

(文:大矢哲紀)