昨年末にYouTubeで公開になった短編映画「DEATH DAYS」。
生まれたときから自分が死ぬ日=DEATH DAYが決まっている世界で暮らす主人公の「俺」。DEATH DAYは何年にやってくるか分からない。死ぬかもしれない日を毎年迎える中で「俺」が感じ、考えるものとは――。
主人公を演じるのは森田剛、監督を務めるのは長久允。3月12日(土)からは劇場での公開もスタートする本作。
森田のオファーから始まったこの作品に込められた想い、自身が考える「DEATH DAY」についておふたりに語っていただいた。
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とにかく長久監督の作る世界に触れてみたいと思った
――今回、作品のオファーを森田さんのほうからされたとのことですが、どういった経緯だったんでしょうか。
森田剛(以下、森田):長久さんの『そうして私たちはプールに金魚を、』を観て、今まで触れて来なかった世界観だったので「おもしろいな」と思って。何か一緒にやりたいなあ、ということで、面識はなかったんですけど、お会いしたいというのを留守電に入れたところから始まったんですけど。
――それじゃあ、突然森田さんから留守電が。
長久允(以下、長久):そうです。突然、知らない番号から「森田です」って留守電が入っていたので、最初はいたずらかな、と思いました(笑)。
森田:(笑)。
長久: 基本的に役者さんからオファーされる経験がなかったので、そんなことが現実に起きると思ってなかったんです。しかも、相手は森田さん。びっくりしましたね。その時点で、どれだけ新しいものを作って届けたいのか、という想いを感じて、僕も何か一緒にできたら、と思いました。
――森田さんの中で、こういう作品が作りたい、というのはもともとあったんですか?
森田:長久さんの作品の世界観や、出てくる役者さんもすごく魅力的だったので、ものすごく惹かれたんです。とにかく、長久さんの作る世界に触れてみたい、というのが最初に思ったところですね。
――先に一緒にやってみたい、という気持ちがあったんですね。
森田:そうですね。かなりむちゃくちゃですけどね。勇気はいりましたね。僕もそんなことやったことがなかったので。
長久:いや、めっちゃ嬉しいですね。
2人で話してから、脚本は一気に書き上げた
――今回のテーマはどのように決まったのでしょうか。
森田:実際にお会いして、自分がやりたいことを話したときに、すごく面白がってくれたんですよね。じゃあなにしようか、となったときに、生きることや死ぬことについてはすごく考えてる、という話をさせてもらったら、一気に長久さんが書いてくれたっていう感じです。
長久:新しいことを始めるタイミングで、生死という根源的なテーマがいいな、と思いました。そこから派生することは書きやすかったですし、もともと物語の骨子は手元にあったんです。それを森田さんにお会いしてからあて書きして、1、2週間後ぐらいには完成していました。
森田:台本は、本当に面白かったですね。僕はやることが決まっているというか、長久さんを信頼していたので、長久さんが書いてくれた「俺」という役をやり切ることに集中しました。
――撮影で大変だったことなどはありましたか?
森田:一気にガガッと撮っていった感じですけど。20代から40代まで演じましたが、「俺」が関わる人との時間も本当に一瞬なんです。理屈じゃないけど、単純に寂しくなりました。めちゃくちゃ短くて、濃い時間だったんですけど、どんどんみんな死んじゃうから。切なかったですよ。
長久:撮影中は毎日、年齢が変わっていくし、友人たちや恋人が通り過ぎていくんですよね。本当に人生をギュッとして撮影しているみたいな気持ちで見ていましたね。
描きたかった人間の不器用さ
――恋人の紀子(石橋静河)とのやりとりのシーンが印象的でもあり、物語のひとつの転換点でもあると思います。作中では会話のことを「卓球」と例えられていましたが、演じられてみていかがでしたか?
森田:卓球という行為はしているんだけど、あまり相手に気持ちや言葉を届けないことを意識してやってましたね。
長久:感情のアプローチが強いシーンなんですが、そういうときこそ、人はその言葉にそぐわない距離感や熱量で伝えてしまうことにリアリティを感じるな、と思って。僕としては、それをデフォルメしていくような作り方をしたいな、という思いがありました。
人は不器用な生き物なので、「紀子」と「俺」のお互いの不器用さが出たらいいな、出たほうが愛おしく見えるんじゃないかと思って、距離感や、ガタついた関係を一緒に作っていけないかな、という話はしていました。
森田:それがめちゃくちゃ勉強になりました。自分でも心がけていたところなんですけど、長久さんにそういう演出をしてもらって、伝えないようにしているけど、伝えたい気持ちで自分が埋まっていたら漏れちゃう瞬間があったり……それが何か素敵に映るっていうのは、今回すごくおもしろかったな、というところでしたね。
長久:その漏れがいいんですよね。ウワーッ! とかドーン! と気持ちを伝えるより、抑えているものがちょっと漏れる、滲み感がすごく魅力的なんじゃないかな。
–{できるだけたくさんの人に届けたいメッセージ}–
できるだけたくさんの人に届けたいメッセージ
――今回「DEATH DAYS」をYouTubeで公開されたのはどういった想いからだったのでしょうか。
森田:まずは、より身近に、たくさんの人に見ていただきたいというところですね。
長久:YouTubeに置いていると、映画祭などにも出せなくなったりするので、評価や興行を狙うと、劇場公開前にYouTubeに置くということは普通はやらないですね。
でも、この作品のメッセージは劇場に行かない人にも観てほしいものだったので、それなら無料で誰でも観られる場所におくべきかな、という話は森田さんとしました。
――反響はいかがでしたか。
森田:いろんな世代の方からいただきましたね。
やっぱり人それぞれなんだな、ということは感じました。自分はいなくなるけど、遺された人のことも考えさせられると思うし、自分ひとりで強く生きていくんだ、と思う人もいるだろうし。
でも、自信を持って言えるのは、人に響く強さがある作品だということですね。
――YouTubeでの配信を経て、劇場公開となるわけですが……。
森田:単純に大きいスクリーンで観たいな、と思っちゃいましたよね。すごく楽しみです。
長久:YouTubeのときは、イヤホンで聞くと、脳内で喋ってたり、囁いているような音設計にしていて、スマホで観て没入感があるようにしていました。一方、映画は映画館用に5.1チャンネルの音で新しく作り直しています。
編集のテンポ感はほとんど変えてないからどのデバイスでも没頭できるように、という意識では作っていますね。
ただ、3話を一本化していて編集を変えたりとか、新しいカットが入っていたりします。編集しながらも印象が違うな、と感じていたので、YouTubeで観た方も劇場で観ると新しい感情になれるかと思います。
本当にDEATH DAYがあったとしたら……
――今回のテーマは長久監督もおっしゃられたように、根源的なものだと思うのですが、おふたりは「生きる」をどのように捉えていらっしゃいますか?
森田:普通がいいですかね、やっぱり。刺激がなかったとしても、自分らしくいられるのが幸せだなあ、と思うから。……うん、普通がいいです。
長久:僕、昔から妄想癖が激しくて。ホームに立っていると、5秒後に誰かに押されて、ホームから線路に落ちるんじゃないか、って。
森田:すげぇわかります。俺もありました。
長久:道を歩いてると車が1秒後に突っ込んでくるかもしれない、とか常に仮定しながら、「セーフ、セーフ」って言いながら生きているんですよ。子どもがいるんですけど、子どもに関しても「今、保育園にトラックが突っ込むかもしれない」とか考えてしまって。そういうのがあるから、「DEATH DAYS」を書いたのかもしれないですね。でも、ありえないことでもないじゃないですか。だからこそ、日常の些細なことをかみしめたいなと思っています。
――実際にDEATH DAYがあったらどう過ごされますか?
森田:どう過ごしますかねぇ……いつのDEATH DAYで死ぬかわからないから……慣れちゃう自分もいたりするんですかね。
長久:僕は家族と過ごすとは思うんですけど、死ぬかもしれないから、書きかけのシナリオを仕上げてクラウド上にアップする、ということを毎年する気がします。死んだらこれを発表してください、って。そうなると、毎年、新作シナリオが上がることになるのかな。シナリオを書くことが好きなので。
森田:うーん……長久さんみたいに何かやろうと思わないかな。そんなに好きなこともないし、残したいものとかも別にないから。
普通ではいられるのか……でも外に行くイメージはないので家にいるのかな。それは1人なのか、家族と一緒なのかはわからないですけど。
また2人で作品作りはしてみたい
――今後また、おふたりで何かやることになったとしたら、どういう作品を作りたいですか?
森田:やりたいですね、また。
長久:ありますよ、やりたい作品。でもちょっと言えないかな(笑)。言えないですけど、撮れば撮るほどこういう森田さんが面白いな、とか、こういうところは誰も見つけてないんじゃないかな、とかいろいろ発見できるので、それを形にしたいですね。
――撮影中に見つけた森田さんの新しい部分、良ければ少し教えていただきたいです。
長久:そうですね、僕は森田さんの人との距離の埋めなさがすごい好きですね。
森田:はははっ!
長久:いや、埋めたいんですけどね。そういう価値観がちゃんと役に出るものがやりたいな。何かを諦めた上で情熱がある感じがしていて、そういう魅力が物語に出ていたりすると、人間の大事な部分を伝えられる役柄を託せるんじゃないかな、と。
森田:長久さんみたいな人に「こういうのを撮ってみたい」と思われるのはやっぱり嬉しいですね。勉強になったって言いましたけど、本当にそうなんですよね。いろいろ教えてもらって、次もし何かやれるんだったら活かせることもあると思うし。今回初めましてですけど、やっぱり2回目のほうが嬉しいというか、2回目を期待している自分がいます。
――今回の作品を作られることも森田さんにとって新しい挑戦だったと思うんですけど、今後挑戦してみたいこと、やってみたい役柄、作品はありますか?
森田:ホワ~ッとしたのがいいですよね。長久さんにも言われたんですけど、重いのが続いているから、軽やかな。
長久:「DEATH DAYS」もそうですけど、シリアスなものが多かったですし。植木等さんがやられていたみたいな、お気楽なサラリーマン役とかやったらどうなるんだろう。イメージないじゃないですか。
森田:いいですね(笑)。
――これから観てくださる方に、メッセージをお願いします。
森田:作品がずっと残っているのがYouTubeのいいところなので、これからいつでも自分のタイミングで観られるし、観てほしいなと思います。やっぱり、大きいスクリーンで「DEATH DAYS」を見てほしいな、というのもあるし、山西(竜也)さんにドキュメントも撮ってもらって、それもめちゃくちゃ面白いんですよ。ぜひセットで、映画館で観てほしいです。
長久: YouTubeはまだ届いてない人もいる気がするので、この作品が必要そうなお知り合いの方がいたらリンクを飛ばしてもらったり、教えてあげてもらえると嬉しいです。
あと、告知ですけど、「A BOOK ABOUT DEATH DAYS」という本を作るので、フォトグラファーの方に撮ってもらった写真やテキストがのったパンフレット的なものなんですけど、一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。
(スタイリスト=TAKAI/撮影=Marco Perboni/取材・文=ふくだりょうこ)
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–{『DEATH DAYS』作品情報}–
■『DEATH DAYS』作品情報
キャスト
森田剛
前原滉、佐藤緋美、まもる。(もも)、せめる。(もも)
小沢まゆ、カトウシンスケ、渡辺陽万、吉村心、のえ、小坂井徹、野上信子
街裏ぴんく、根本隆彦、うらじぬの
石橋静河
スタッフ
企画・製作:MOSS
監督・脚本:長久允
プロデューサー:MOSS、鈴木康生、兼平真樹
撮影:武田浩明
照明:前島祐樹
サウンドデザイン:沖田純之介
美術:Enzo、後藤レイコ
装飾:安藤千穂
キャスティング:元川益暢
スタイリスト:小山田孝司
ヘアメイク:古久保英人
助監督:古田智大
録音:小林武史
音楽:山田勝也、小嶋翔太
編集:曽根俊一
カラリスト:根本恒
アートワーク:間野麗
スチール:夢無子
制作プロダクション:株式会社ギークピクチュアズ・株式会社ゴーストイッチ