<さとうほなみに注目>ラブシーンの女王に君臨?今こそ知りたい魅力

俳優・映画人コラム

(C)2021「愛なのに」フィルムパートナーズ

「あれ、この人ってもしかして『ゲスの極み乙女。』のドラマー?」

『窮鼠はチーズの夢を見る』を観ている時にそう驚いたことは、記憶に新しい。

それ以来、Netflix映画『彼女』やABEMAオリジナルドラマ「30までにとうるさくて」、そして2022年2月25日公開『愛なのに』でめまぐるしい活躍を魅せる。

ーーそう、ドラマーのほな・いこかではなく、女優のさとうほなみとして。

>>>【関連記事】映画『愛なのに』さとうほなみインタビュー

>>>【関連記事】「菅田将暉、ヤバい」と思った映画3選

>>>【関連記事】成田凌の魅力:「クズ役を演じる天才」と呼ばれる理由

ドラマー界屈指のクールビューティー、ほな・いこか。

「ゲスの極み乙女。」というバンドの存在を知ったのは、2014年秋クールドラマ「すべてがFになる」のオープニング曲・「デジタルモグラ」を聞いたことがキッカケだった。

著者は中学時代、吹奏楽部でパーカッションを担当していたということもあり、音楽を聞くとどうしてもドラムの音に耳が傾いてしまう。
軽快なメロディと耳に残るベースに心地よく合わさるキーボードはもちろんのこと、それらをリズミカル且つ力強く支えるドラムスに、完全に虜になった。

このドラムスを演奏している彼女こそが、ほな・いこかだ。

飛び飛びで入れ込まれるドラムスパートのカットの中で、一度見たら忘れられないほどの鋭い眼光を放つその姿、ドラマー界屈指のクールビューティー。
彼女の類まれなる存在感は、MVを見れば一目瞭然である。

どうしても気になってしまうこのほな・いこかという名前は、「ゲスの極み乙女。」を率いる川谷絵音が勝手に命名したというエピソードがある。

佐藤穂奈美という本名をうまいこともじっているが、関西出身でもないのになんでこの名前なんだろう、と思ったりはする。なお、本人もこの命名に納得していないらしいが、このあたりにバンドの仲の良さがにじみ出ているように思う。

以前より、音楽活動とは別にタレント活動も行っていた彼女。
2017年頃より本格的に“さとうほなみ”として女優活動をスタートし、2020年公開『窮鼠はチーズの夢を見る』を皮切りに女優としても頭角を現しはじめることになる。

『窮鼠はチーズの夢を見る』:女同士の戦いより恐ろしい冷戦に注目

(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会

「失恋ショコラティエ」や「脳内ポイズンベリー」などを手掛ける水城せとなによる原作を元に、行定勲監督がメガホンをとった『窮鼠はチーズの夢を見る』(20)。
さとうほなみは、今ヶ瀬(成田凌)が思いを寄せる恭一(大倉忠義)の元カノ・夏生を演じた。

>>>Amazon Prime Videoで『窮鼠はチーズの夢を見る』を観る

女同士の戦いは醜い。男が絡んでくるとより一層に。
だが、自身のライバルが同性ではなく異性だったらどうなるのだろうか。

今のところこのような苦境に立たされたことはないので想像もできないのだが、相手がもともと同性愛者であればまだしも、そのライバルの影響により同性愛に踏み込もうとしている瞬間を目の当たりにしてしまったら、それはもうぶつけようのない呆れと悲しみに苛まれることになるだろう。

(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会

さとうほなみ演じる夏生が今ヶ瀬に向ける鋭い刃物のような視線と、恭一に見せる毅然とした態度から、その感情の変遷が手に取るようにわかる。

本作品には恭一の元妻・知佳子(咲妃みゆ)や浮気相手・瑠璃子(小原徳子)、後の彼女となるたまき(吉田志織)と夏生を合わせて四人の女性が登場するが、さとうほなみの存在感は群を抜いている。

『窮鼠はチーズの夢を見る』は、さとうほなみの女優としての秘めたる可能性をまじまじと魅せつけられる作品となった。

–{『彼女』:衝撃的なストーリーと壮絶な人生を見事纏った会心作}–

『彼女』:衝撃的なストーリーと壮絶な人生を見事纏った会心作

衝撃作と言われている原作「羣青」を、『余命1ヶ月の花嫁』や『ここは退屈迎えに来て』などで知られる廣木隆一監督により映像化された『彼女』(21)。日本初のNetflix映画第一弾作品として、世間の注目を集めた。

本作品でさとうほなみは、水原希子とともに初の映画主演を果たした。

>>>Netflixで『彼女』を観る

裕福な家庭に生まれ育つも、自身が同性愛者であることを家族に言えずにいるレイ(水原希子)。そんなレイが学生時代から思いを寄せていた同級生・七恵(さとうほなみ)から連絡を受け、10年ぶりの再会を果たす。が、七恵は旦那から激しいDVを受けていた。それを知ったレイは旦那を殺害し、二人で逃避行に出るがーー

立場や状況は異なるものの、まるで『窮鼠はチーズの夢を見る』の恭一のポジションと思わせられるような配役に、歪んだ運命を感じた。

さとうほなみ演じる七恵は、貧しい家庭で父親から暴力を受けて育ち、結婚してやっと幸せになれたと思いきやその夫からもDVを受けることになるという絶望的人生の持ち主。

さらには過激で大胆なヌードシーンも多々あり、誰が見ても“女優としての看板を背負う覚悟”が強く感じられた、さとうほなみの新境地となる作品となった。

–{「30までにとうるさくて」:友だちになりたい系サバサバ女子を好演}–

「30までにとうるさくて」:友だちになりたい系サバサバ女子を好演

(C)AbemaTV, Inc.

今、20〜30代女性を中心に共感を生みまくっている「30までにとうるさくて」。ABEMAにて絶賛配信中。

>>>ABEMAで「30までにとうるさくて」を観る

東京在住独身アラサーである著者もまたぶっ刺さりにぶっ刺さっている1人。中でも共感が止まらないのが、さとうほなみ演じるだ。

本作品で“性欲が強すぎる女性”と描かれている遥は、彼氏以外の男性と頻繁に一夜をともにする。
そう、『彼女』に続いて、ベッドシーンが多い。

(C)AbemaTV, Inc.

さとうほなみ、めちゃくちゃ美人でナイスバディなのに、変にいやらしくないあたり、超推せる。
「男ウケする女は女ウケしない」と言われがちだが、彼女には男ウケも女ウケもするヘルシーさがある。仮に遥に寝取られたとしても「まぁしょうがないか」となってその後一緒にお酒なんか飲めちゃえるようなサバサバ感。

クールビューティーだった印象の彼女が、エロさと同時にハツラツとした親近感を醸し出しているあたりも、女優として躍進している証と言える。

>>>【関連記事】「30までにとうるさくて」“令和の日本版SATC”に共感する「2つ」の魅力

–{『愛なのに』:エモさとエロさの化学反応が美しい}–

『愛なのに』:エモさとエロさの化学反応が美しい

ピンク映画のトップランナー・城定秀夫が監督、恋愛群像劇の旗手・今泉力哉が脚本を務める『愛なのに』が、2022年2月25日に公開される。
さとうほなみは、古本屋の店主・多田(瀬戸康史)の憧れの女性・一花として、またしても映画界に爪痕を残すことになる。

婚約中の彼・亮介(中島歩)とは最近セックスしてないし、というか結婚式の準備でそれどころじゃない。これってもしかして、マリッジブルー?そんな状況の中、多田と異質な関係になってしまう一花。

(C)2021「愛なのに」フィルムパートナーズ

セックスレスという点においては「30までにうるさくて」の遥っぽさもあるし、自身を思い続けてくれる人に助けを求めるという点においては『彼女』の七恵っぽさもある。
さとうほなみの女優人生を追いかけていることでわかるこの共通点は、ちょっとしたサプライズだ。

著者は今泉力哉の大ファンということもあり、城定秀夫と今泉力哉という異色のタッグは、正直少し不安だった。だが、観はじめるとその不安は一気に吹っ飛んだ。

今泉力哉特有のエモーショナルさは強固に存在しながらも、城定秀夫が描く情事が波のように重なり合い、よりリアルに感じられる。
そして、そのようなシーンを牽引するのは、紛れもなくさとうほなみだった。

これまでのさとうほなみとはまた一味違う、女性特有のたゆたう様子としなやかさを放つ彼女を、ぜひ劇場で体感してほしい。

ラブシーンの女王に君臨?ほな・いこかとのギャップにも注目

(C)2021「愛なのに」フィルムパートナーズ

改めて振り返ってみると、話題作のすべてにおいてラブシーンを経験しているさとうほなみ。(共通して黒い下着を身に着けているのは、偶然なのだろうか……)

『彼女』が顕著だが、女優といえどここまで振り切れる人はなかなかいない。新・ラブシーンの女王に君臨するのも時間の問題だ。

さとうほなみを見ていると、ほな・いこかの存在を忘れてしまう。
ほな・いこかを見ていると、さとうほなみの存在を忘れてしまう。

芝居と音楽。表現するということは同じであれ、その手法が異なるとここまで人間は変わるのか。

今後、2022年春公開『恋い焦れ歌え』にも出演予定で、さらなる飛躍が期待されるさとうほなみ。
引き続き、ドラマーのほな・いこかとのギャップに驚かされながらも、女優のさとうほなみとしての活躍を追っていきたい。

(文:桐本絵梨花)

>>>【関連記事】映画『愛なのに』さとうほなみインタビュー

>>>【関連記事】「菅田将暉、ヤバい」と思った映画3選

>>>【関連記事】成田凌の魅力:「クズ役を演じる天才」と呼ばれる理由