『ナイル殺人事件』レビューのついでにアガサ映像作品リストも作ってみた

ニューシネマ・アナリティクス

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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

2月25日よりケネス・ブラナー監督・主演の『ナイル殺人事件』が公開されます。

コロナ禍で幾度も公開が延期となってやきもきしていた方々(私のことです)、お待たせしました!

そして、かつてジョン・ギラーミン監督の『ナイル殺人事件』(78)を見て、その虜になっていた方々(私のことです)、今回はどうなっているのか期待と不安が入り混じっていることかと思われます。

しかし正直に申して、今回初めて“ナイル殺人事件”の映画に触れる方も、ギラーミン版をご覧になっている方も、もちろん原作を読んでらっしゃる方々も、等しくその面白さを堪能できる逸品に仕上がっています!

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  1. 壮大なスケールを必要とする原作世界への挑戦
  2. ブラナー版のポアロ映画は常にポアロが主人公!
  3. アガサ・クリスティーの主な映像化作品チェック
    1. ●「秘密機関」
    2. ●「クィン氏登場」
    3. ●「アクロイド殺し」
    4. ●「ブラックコーヒー」
    5. ●エッジウエア卿の死
    6. ●「ナイチンゲール荘」
    7. ●「そして誰もいなくなった」
    8. ●「オリエント急行の殺人」
    9. ●「検察側の証人」
    10. ●「蜘蛛の巣」
    11. ●「ミスタ・ダヴンハイム氏の失踪」
    12. ●「パディントン発4時50分」
    13. ●「葬儀を終えて」
    14. ●「マギンティ夫人は死んだ」
    15. ●原作なし!?
    16. ●「ABC殺人事件」
    17. ●「終りなき夜に生れつく」
    18. ●「招かれざる客」
    19. ●「ナイルに死す」
    20. ●「ホロー荘の殺人」
    21. ●「鏡は横にひび割れて」
    22. ●「ゼロ時間へ」
    23. ●「なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか?」
    24. ●「7つの時計」
    25. ●「白昼の悪魔」
    26. ●「カリブ海の秘密」
    27. ●「ポケットにライ麦を」
    28. ●「殺人は容易だ」
    29. ●「無実はさいなむ」
    30. ●「魔術の殺人」
    31. ●「死者のあやまち」
    32. ●「三幕の殺人」
    33. ●「死との約束」
    34. ●「茶色の服の男」
    35. ●「邪悪の家」
    36. ●「ねずみとり」
    37. ●「ゴルフ場殺人事件」
    38. ●「親指のうずき」
    39. ●「婦人失踪事件(おしどり探偵)」&「復讐の女神」
    40. ●「ひらいたトランプ」
    41. ●「ねじれた家」
    42. ●「予告殺人」
    43. ●「蒼ざめた馬」
  4. アガサ・クリスティ作品、長期テレビシリーズ
    1. ★『名探偵ポワロ』シーズン1~13(1989~2013)
    2. ★ミス・マープル・シリーズ
    3. ◎『ミス・マープル』シリーズ(84~92)
    4. ◎『アガサ・クリスティーのミス・マープル』(06~14)
    5. ★「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」(04~05/全39回)
    6. ★「トミーとタペンス」シリーズ
    7. ◎「おしどり探偵」(83~84・英TV)
    8. ◎「アガサ・クリスティー トミーとタペンス―2人で探偵を―」(15/英TV)
    9. ★「アガサ・クリスティー 名探偵ヤルセン」(21/TV)
  5. 失踪時期のアガサ・クリスティーを題材にした作品たち
    1. ◎『アガサ 愛の失踪事件』
    2. ◎「アガサ・クリスティー~謎の失踪 失われた記憶~」
    3. ◎『アガサと殺人の真相』
    4. ◎『アガサとイシュタルの呪い』
    5. ◎『アガサと深夜の殺人者』
    6.  ●「私は作者に殺される」
  6. 『ナイル殺人事件』作品情報

壮大なスケールを必要とする原作世界への挑戦

『ナイル殺人事件』はミステリの女王とも謳われるアガサ・クリスティーの「ナイルに死す」の映画化で、先にも触れたように1978年にはジョン・ギラーミン監督のメガホンで『ナイル殺人事件』が発表されました。

今回の映画化は実にそれ以来で、TVでも1回(「名探偵ポワロ」シリーズ内「ナイルに死す」)しかドラマ化されていないようです。

エジプト・ロケなど壮大かつ豪華絢爛なスケールを必要とする「ナイルに死す」の映像化は、やはりそうそう簡単にはいかなかったようですが、2017年に『オリエント急行殺人事件』で初めてクリスティー原作に挑戦したケネス・ブラナーとしては、前作をはるかに超える規模のものを構築してみたかったのでしょう(前作の最後でも、次は「ナイルに死す」を映画化することを匂わせていましたね)。

また彼自身、アガサ・クリスティー・ワールドの代表格ともいえる名探偵エルキュール・ポアロを演じるに足る年齢と風格を備えてきたことを前作で実感し、今回はそれ以上の存在感をもってブラナー=ポアロを決定づけたかったのかもしれません。

(ちなみに日本語だと20世紀後半までは「ポワロ」と表記されるのが一般的でしたが、最近は「ポアロ」が普通になっています。正直、個人的には「ポワロ」のほうがしっくりくる世代ではありますが、今回は本作品の表記に倣って「ポアロ」としておきます)

ブラナー版のポアロ映画は常にポアロが主人公!

さて、ブラナー版『ナイル殺人事件』ですが、前作『オリエント急行殺人事件』がポアロを主軸にドラマが動いていくスタイルだったのと同じように、いや、今回はそれ以上に、事件そのものを描きながらも実は“ポアロの映画”として屹立しています。

それは驚きのファースト・シーンから一目瞭然で、一瞬別の映画を間違って見始めたのではないかと勘繰る方もいらっしゃるでしょう(それが何かは見てのお楽しみ)。

それに比べるとジョン・ギラーミン監督版は割かし原作に忠実な作りで、まさにグランドホテル形式の群像劇足り得ていましたが、ブラナー版の主人公はあくまでもポワロであり、彼の内面なども深く明確に描かれていきます。

これに従い、ブラナー版は登場人物の設定などもギラーミン版よりもさらに改変されていますので、その点でも双方を見比べると楽しみが倍増することでしょう。
(人種も多彩に設定されていますが、これは昨今の事情を反映させてのものでしょう)。

その伝で驚いたのは『オリエント急行殺人事件』にも出演していたブーク(トム・ベイトマン)がここにも登場することで、これが何を意味しているのかも、見ていくうちにおいおい理解できることと思われます。

もちろん本筋のミステリ描写におろそかなどありようはなく、またギラーミン版に負けじとばかりのゴージャスさ、ここではジャズ・ヴォーカルの披露などでも工夫を凝らしています。

出演者もギラーミン版がいかにもオールスター・キャスト!といった体裁だったのに対し、今回は実力重視の布陣ではありますが、美貌の大富豪リネットに扮しているのが“ワンダーウーマン”ガル・ガドットというのも意表を突くキャスティングで、それゆえか彼女の傲慢さよりも世間知らずの純粋さが後々に悲劇を呼ぶといった空気が醸し出されています。
(ギラーミン版でリネットを演じたロイス・チャイルスは、もっとクールで傲慢な趣がありました)

事件が起きてからの捜査シーンの数々で「灰色の脳細胞」たるポアロの性格の悪さ(?)が露呈してしまうのは他のポアロ作品でもよく目にするところですが、今回のブラナー=ポアロの尋問時のきつさはかなりのもので、これもまた名探偵と呼ばれる所以の闇の側面をも物語っているように思えます。
(ギラーミン版のポアロも結構きつい物言いでしたが、演じるピーター・ユスティノフの太っちょパパ的な大らかさもあってか、雰囲気がかなり緩和されていた感があります)

このように、原作もギラーミン版も接してない方は、犯人探しや衝撃のトリックなども含めて新鮮な想いで本作を堪能できることでしょうが、逆に知っている方々こそ、原作小説とギラーミン版との比較を大いに楽しめる作品になってることは断言できます。

ここは原作のほうが良かったとか、この改変はギラーミン版のほうが上、でもあそこの描写は今回が一番素晴らしいとか、2時間強の上映時間の間、基本ストーリーを把握している分、さまざまな論考を脳裏で駆け巡らせてくれること必至でしょう。

–{アガサ・クリスティーの主な映像化作品チェック}–

アガサ・クリスティーの主な映像化作品チェック

ここでアガサ・クリスティ―の小説を原作とする映画やドラマをざっとリストアップしてみました。

さすがに戦前から世界中で映像化され続けているアガサ・クリスティー・ワールドゆえに、とても完全版など作成するのは不可能に近いものがありますが、おおまかなものくらいはチェックできるかと思います。

(「●」は小説の邦題。「→」は映像化作品/長期にわたるTVシリーズは別記します)
 

●「秘密機関」

1922年発表。クリスティーの出版第2作目で、おしどり夫婦が活躍するスパイ&探偵「トミーとタペンス」シリーズの第1作。なおこの作品では結婚前のふたりが描かれています。

→『DIE ABENTEUER GMBH.』
28・独/日本劇場未公開/監督:フレッド・サウアー
アガサ・クリスティー原作、初の映画化は何とドイツでした。

→「秘密機関」
83・英TV/日本では「秘密組織」のタイトルで放送。
このときの主演ふたりで、その後「おしどり探偵」シリーズがスタートしました。

●「クィン氏登場」

1924年発表/クィン氏とは、職業も経歴も一切不明の謎めいた探偵ハーレ・クィンのこと。
1930年に刊行されたクリスティー3冊目の短編集「謎のクィン氏」内に収録されています。

→『THE PASSING OF MR.QUINN』
28・英/未公開/監督:ジュリアス・ヘイゲン/脚本:レスリー・S・ヒスコット

●「アクロイド殺し」

1926年発表。クリスティー6作目の長編で、ポアロ・シリーズ3作目。犯人像とそのトリックに関してフェアかアンフェアかで論争が起きた作品でもありますが、アガサ・ファン人気も高い作品。

→『ALIBI』
31・英・未公開/監督:レスリー・S・ヒスコット
正式にはクリスティの小説に基づくマイケル・モートンによる1928年の戯曲「ALIBI」から脚色された映画。

監督は『THE PASSING OF MR.QUINN』で脚本を担当していたレスリー・S・ヒスコットで、以後も彼はポアロ役のオースティン・トレヴァーとともにアガサ映画を連打していきます。

→「ポアロの犯した過ち(ロシア語表記)」
02・露・未公開

→「黒井戸殺し」
18・日TV/脚本:三谷幸喜/演出:城宝秀則
ミステリ・ファンの三谷幸喜がアガサ・ワールドを翻案したTVスペシャル第2弾。野村萬斎扮する名探偵ポアロならぬ勝呂武尊が再び登場!

●「ブラックコーヒー」

1930年に発表された、クリスティー自身が執筆した初の戯曲作品。1997年にはチャールズ・オズボーンがこれを小説化しています。

→『BLACK COFFEE』
31・英・未公開/監督:レスリー・S・ヒスコット/ポアロ役はオースティン・トレヴァー

→『LE COFFRET DE LAQUE』
32・仏・未公開/監督:ジャン・ケム/ポアロに相当する人物名はプレヴェで、ルネ・アレクサンドルが演じています。

→「BLACK COFFEE」
73・独TV・未放送

●エッジウエア卿の死

1933年に発表されたポアロ・シリーズ。「E男爵の死」「エッジウェア卿殺人事件」の邦題で出版されているものもあります。

→『LORD EDGWARE DIES』
34・英・未公開/監督:レスリー・・ヒスコット
『ALIBI』『BLACK COFFEE』そして本作の3本でポアロを演じたオースティン・トレヴァーは、1965年の『THE ALPHABET MURDERS』にも助演しています。

→「名探偵ポアロ/エッジウエア卿殺人事件」
85・英TV/監督:ルー・アントニオ/ピーター・ユスティノフが映画『ナイル殺人事件』『地中海殺人事件』に続いて、TVムービーでポアロを演じた第1弾。

なおジャップ警部に扮しているのは、後に「名探偵ポワロ」シリーズでポアロを演じることになるデヴィッド・スーシェ。
 

●「ナイチンゲール荘」

1933年に発行された「リスタデール卿の謎」内に収録された1924年発表の短編小説。「うぐいす荘」と表記されることもあります。

→『血に笑ふ男』
37・英/監督:ローランド・V・リー/正式には「ナイチンゲール荘」を原作とするフランク・ヴォスパーの戯曲「LOVE FROM A STRANGER」の映画化。

→『LOVE FROM A STRANGER』
47・米・未公開/監督:リチャード・ウォルフ/こちらも上記と同様に、戯曲の映画化。

●「そして誰もいなくなった」

アガサ・クリスティー・ワールドの代表作。小説は1939年に記され、1946年には彼女自身の脚本で戯曲化。その内容は結末などが異なります。

→『そして誰もいなくなった』
45・米/監督:ルネ・クレール
戯曲版に沿った内容で、ルネ・クレール監督は舞台劇風な演出を試みています。脚本は『駅馬車』の名手ダドリー・ニコルズ。日本では1976年8月7日に岩波ホールにて初公開。

→「TEN LITTLE NIGGERS」
49・英TV・未放送

→「TEN LITTLE NIGGERS」
59・英TV・未放送

→「TEN LITTLE INDIANS」
59・米TV・未放送

→『姿なき殺人者』
65・英/監督:ジョージ・ポロック
舞台をロープウェイでしか辿り着けない山小屋に設定。製作のハリー・アラン・タワーズは1974年版もプロデュース。

→『GUMNAAM』
65・印・未公開/監督:ラジャ・ナワセ

→「ZEHN KLEINE NEGERLEIN」
69・西独TV・未放送

→『そして誰もいなくなった』
74・西独&仏&西&英/監督:ピーター・コリンソン
舞台をイランの砂漠に設定。オリバー・リードやリチャード・アッテンボローなど、渋めながらも国際的オールスター・キャストの布陣。

→「ACHRA ABID ZGHAR」
74・レバノンTV・未公開

→『TEN LITTLE INDIANS』
81・比・未公開/監督:トニー・パスクア

→『DESYAT NEGRITYAT』
87・露・未公開/監督:スタニスラフ・ゴヴォルーキン

→『サファリ殺人事件』
89・米/監督:アラン・バーキンショー
クリスティー生誕100周年記念として、舞台をアフリカの村に設定して作られたキャノン・フィルムズ作品。74年版にも出ていたハーバート・ロムが別役で出演しています。

→『サボタージュ』
14・米/監督:デヴィッド・エアー/主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
「そして誰もいなくなった」をベースにしたアクション映画というフレコミでしたが、内容も設定もほぼ別物で、クレジットもなし。ちょっとインスパイアされた、くらいに留めておいたほうが賢明でしょう。

→「ACHRA ABID ZGHAR」
14・レバノンTV

→「そして誰もいなくなった」
15・英TV/監督:クレイグ・ビベイロス/脚本:サラ・フェルプス
アガサ・クリスティ生誕125周年記念作品。全3話。サラ・フェルプスは本作以外にもクリスティ―原作ドラマの脚本を多数執筆しています。

→「そして誰もいなくなった」
17・日TV/監督:和泉聖治/脚本:長坂秀佳
人気刑事ドラマ「相棒」シリーズの生みの親・和泉聖治監督による翻案ドラマ第1弾。渡瀬恒彦の遺作ドラマにもなりました。

→「そして誰もいなくなった」
20・仏TV/監督:パスカル・ロジェ/全6話
 

●「オリエント急行の殺人」

1934年発表されたポアロ・シリーズ第8弾。「そして誰もいなくなった」同様、アガサ・クリスティーの代表作。日本では1935年に「十二の刺傷」のタイトルで初版されました。

→「HERCURE POIROT KLART DEN MORD IM ORIENT-EXPRESS AUF」
55・独TV/未・ドラマシリーズ「偉大なる探偵たち」の1編

→『オリエント急行殺人事件』
74・英/監督:シドニー・ルメット
アルバート・フィニーが本人とわからないほどのメイクでポアロを演じています。錚々たるオールスター・キャストの中で、イングリット・バーグマンがアカデミー賞助演女優賞を受賞。

もしアガサ映画の人気投票が行われたら、間違いなく本作が1位になることでしょう。アガサ自身、1976年に亡くなるまでの自作の映画化で評価したのは、本作と『情婦』のみだったとのことです。

→「オリエント急行殺人事件 死の片道切符」
01・TV/監督:カール・シェンケル
ポアロにはアルフレッド・モリーナが扮しています。

→「オリエント急行殺人事件」
15・日TV脚本:三谷幸喜/監督:河野圭太
ミステリ・ファンの三谷幸喜がアガサ・ワールドを翻案したTVスペシャル第1弾。野村萬斎扮する名探偵ポアロならぬ勝呂武尊を野村萬斎が独特の風貌で演じ、クリスティー財団に喜ばれたとか。

前後編仕立てで第1夜は原作通りに、第2夜は犯人側の視線で事件を描くという構成が採られていました。

→『オリエント急行殺人事件』
17・英/監督・主演:ケネス・ブラナー
久々に名探偵ポアロが銀幕に登場! シドニー・ルメット監督版とは異なるポアロ主体のアプローチを貫きながら、事件の全貌を描いていきます。
 

●「検察側の証人」

1925年に発表され、1933年に短編集「死の猟犬」内に収められた短編小説。後にクリスティー自身が戯曲化し、1953年に初演。小説とはラストが異なります。

→『情婦』
58・米/監督:ビリー・ワイルダー
戯曲寄りの作りで、名匠ワイルダー監督ならではの演出が光る名作。エルザ・マンチェスターがゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞しましたが、チャールズ・ロートンやマレーネ・ディートリッヒらの個性も輝いています。タイロン・パワーの実質的な遺作にもなりました。

→「検察側の証人」
82・米TV/監督:アラン・ギブソン
ラルフ・リチャードソンを始め実力派キャストでおくるTVムービー。『情婦』のリメイク的側面もあります。

→「アガサ・クリスティー 検察側の証人」
16・英TV/脚本:サラ・フェルプス/前後編

●「蜘蛛の巣」

クリスティーの戯曲。コミカルな推理劇で1954年に初演され、上演回数774回のロングランになりました。

→『THE SPIDER’S WEB』
60・英・未公開/監督:ゴッドフリー・グレイソン

→「SPIDER’S WEB」
20・米TV・未放送/監督:カスティ・パトリック・ウォード/主演:デレク・ジャコビ
 

●「ミスタ・ダヴンハイム氏の失踪」

1923年発表の短編小説。1924年発行の短編集「ポアロ登場」内に収められています。

→「THE DISAPPEARANCE OF MR DAVENHEIM」
61・米TV・未放送/ポアロにはホセ・フェラー

→「THE DISAPPEARANCE OF MR DAVENHEIM」
62・米TV・未放送/ポアロにはマーティン・ガンベル

●「パディントン発4時50分」

ポアロと並ぶアガサ・ワールドの人気キャラクター、ミス・マープルが登場するシリーズの長編7作目。

→『ミス・マープル/夜行特急の殺人』
61・英・未公開/監督:ジョージ・ポロック 主演:マーガレット・ラザフォード
ミス・マープル・シリーズ初の映画化。

→『アガサ・クリスティー 奥さまは名探偵~パディントン発4時50分~』
08・仏/監督:パスカル・トマ
カトリーヌ・フロ主演のシリーズ第2作。前作は「トミーとタペンス」シリーズを原作にしていましたが、今回はミス・マープル・シリーズから採用。

→「嘘をつく死体」
06・日TV/岸惠子がミス・マープルにあたる馬淵淳子を演じた「ミス・マープル・シリーズ」第1弾。

→「パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~」
18・日TV/監督:和泉聖治/脚本:竹山洋/人気刑事ドラマ「相棒」シリーズの生みの親・和泉聖治監督による翻案ドラマ第2弾。ヒロインには天海祐希が扮し、この翻案シリーズのためのオリジナルキャラクターともいえる、沢村一樹扮する相国時竜也もノンクレジットで特別出演。

●「葬儀を終えて」

1953年発表。ポアロ・シリーズ長篇第25作で、日本でのアガサ・ファン人気が高い1作。

→『ミス・マープル/寄宿舎の殺人』
63・英・未公開/監督:ジョージ・ポロック/主演:マーガレット・ラザフォード
原作の探偵はポアロなのを、ミス・マープルに改変。

●「マギンティ夫人は死んだ」

1952年発表のポアロ・シリーズ長篇第24作目。

→『ミス・マープル/最も卑劣な殺人』
64・英・未公開/監督:ジョージ・ポロック/主演:マーガレット・ラザフォード
原作の探偵はポアロなのを、ミス・マーブルに変更。

●原作なし!?

→『ミス・マープル/船上の殺人』
64・英・未公開/監督:ジョージ・ポロック/主演・マーガレット・ラスフォード
クリスティの原作がないオリジナル・ストーリー。マーガレット・ラザフォード主演のミス・マープル映画シリーズは「脚色は自由」という契約にされてはいたものの、ここまでされるとさすがにクリスティーも激怒し、契約打ち切りに至ったとのことです。

●「ABC殺人事件」

1935年に発表されたポアロ・シリーズ長篇第11作。ファン投票で常に上位に入る人気作です。

→『THE ALPHABET MURDERS』
65・英・未公開/監督:フランク・タシュリン/ポアロ役はトニー・ランドール

→「名探偵赤富士鷹/ABC殺人事件」
05・日TV/演出:吉川邦夫/ポアロ=赤富士鷹に伊東四朗

→『GRANDMASTER』
12・印・未公開/監督:B・アニクリシュナン

→「ABC殺人事件」
18・/脚本:サラ・フェルプス/全3話/ポアロにジョン・マルコヴィッチ
 

●「終りなき夜に生れつく」

1967年に発表。アガサの孫マシュー・プリチャードの父方の祖母ノラ・プリチャードに捧げられた作品でもあります。

→『ENDLESS NIGHT』
72・英・未公開/監督:シドニー・ギリア

●「招かれざる客」

1958年に発表された戯曲。

→『DHUND』
73・印・未公開/監督:B.R.チョプラ

→「霧降山荘殺人事件」
80・日TV/監督:荻野慶人/栗原小巻、林隆三、高峰三枝子らが出演した翻案TVムービー

→傑作ミステリ―選集Ⅰ「アガサ・クリスティーの『招かれざる客』」「エラリー・クィーンの『三人の未亡人』」
93・日TV/監督:小田切正明
2大ミステリ作家の名作2作をオムニバスでドラマ化。「招かれざる客」の主演は松坂慶子。

→「招かれざる客 富士山麓連続殺人事件」
01・日TV/脚本:橋本以蔵/浅野ゆう子、野際陽子、三田村邦彦らの出演。

●「ナイルに死す」

1937年に発表された代表作の1本。1948年にはアガサ自ら戯曲化もしていますが、そこにはポアロは登場しません。

→『ナイル殺人事件』
78・英/監督:ジョン・ギラーミン
1974年の『オリエント急行殺人事件』に続き、英EMIが放ったオールスター大作。この作品でピーター・ユスティノフのポアロが当たり役となり、以後幾度も彼を演じることに。乗客一人一人に犯行の可能性があったことを画で説明する演出は、この作品が走りと思われます。

日本での初公開時は、エンドタイトル曲を本来のニーノ・ロータの楽曲とは違うサンディー・オニールの歌「ミステリー・ナイル」に差し替えられていたことが後年明るみになり、ファンは騒然となりました。

→『ナイル殺人事件』
20・英/監督:ケネス・ブラナー/ブラナー監督&主演による名探偵ポアロ・シリーズ第2弾

●「ホロー荘の殺人」

1946年に発表したポアロ・シリーズ。アガサは後年、この作品にポアロを登場させたことは失敗だったと述懐。それを裏付けるかのように1951年に戯曲化した際、ポアロを登場させませんでした。

→「LA TANA」
80・伊・未放送/監督:ラッフェーレ・メローニ

→『危険な女たち』
85・日/監督:野村芳太郎
ポアロに相当する人物を演じているのは、市川崑監督版の金田一耕助でもおなじみの石坂浩二。野村監督はエラリー・クィーン「災厄の町」を翻案した『配達されない三通の手紙』も発表しています。そして本作が野村監督の遺作になりました。

→『華麗なるアリバイ』
07・仏/監督:パスカル・ボニゼール
舞台をフランスに変更し、ポアロ的な存在も登場しません。

→「THE HOLLOW」
20・米TV・未放送/監督:チェルシー・ウォーカー/出演:ローラ・ハドック、サイモン・キャロ

●「鏡は横にひび割れて」

1962年に発表された「ミス・マーブル」シリーズの長編第8作。

→『クリスタル殺人事件』
80・英/監督:ガイ・ハミルトン
EMIによるアガサ・クリステイー原作映画第3弾。ミス・マープルには78年版『ナイル殺人事件』にも出演したアンジェラ・ランズベリーが扮しました。エリザベス・テイラーとキム・ノヴァクが繰り広げる大女優同士の悪口雑言シーンも話題になりました。

→『SHUBHO MAHURAT』
03・印・未公開/監督:リツパーノ・ゴーシュ

→「大女優殺人事件」
07・日TV/岸惠子がミス・マープル=馬淵淳子を演じた「ミス・マープル」シリーズ第2弾

→「大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~」
18・日TV/監督:和泉聖治/脚本:長坂秀佳
和泉誠治監督の翻案シリーズ第3弾。ミス・マープルに相当する女性キャラは登場せず、代わって沢村一樹扮するシリーズの主人公・相国時竜也が事件に挑みました。

●「ゼロ時間へ」

1944年発表。アガサが創造したキャラクターの中でも異彩を放つ、ロンドン警視庁のバトル警視が登場。

→「VERSO I’ORA ZERO」
80・伊TV・未放送/監督:ステファノ・ロンコローニ

→『ゼロ時間の謎』
07・仏/監督:パスカル・トマ
『奥様は名探偵』に続いて、トマ監督がクリスティー原作に挑戦。フランソワ・モレルがバトルならぬバタイユ警視に扮しています。
 

●「なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか?」

1934年に発表。

→「なぜエヴァンスに頼まなかったか」
80年・英TV/監督:ジョン・デイヴィス&トニー・ホーンビイ/フランチェスカ・アニス主演

●「7つの時計」

1929年に発表。1925年「チムニーズ館の秘密」に続くバトル警視シリーズ第2作。

→「7つのダイヤル」
81・英TV/監督:トニー・ホーンビイ/シェリル・キャンベル主演
 

●「白昼の悪魔」

1941年に発表したポアロ・シリーズ長編第20作。

→『地中海殺人事件』
82・英/監督:ガイ・ハミルトン
ピーター・ユスティノフが再びポアロに扮したEMIのアガサ・シリーズ第4弾で、舞台をアドリア海のリゾート地に変えたり、キャラクター設定にも変更あり。コール・ポーターの楽曲が効果的に劇中用いられていて、全体的に軽やかな仕上がりです。

●「カリブ海の秘密」

1964年に発表。「ミス・マープル」シリーズの第9作。

→「ミス・マープル/カリブ海の秘密」
(83・米TV/監督:ロバート・マイケル・ルイス
ヘレン・ヘイズがミス・マープルを演じたTVムービー。日本では「アガサ・クリスティー/カリブ海殺人事件」のタイトルでTV放送されました。
 

●「ポケットにライ麦を」

1953年に発表された「ミス・マープル」シリーズ長篇第6作。

→『TAYNA CHYORNYKH DROZDOV』
83・露・未公開/監督ヴァジム・デルベニョフ

●「殺人は容易だ」

1939年に発表。終盤でバトル警視が登場。

→「アガサ・クリスティ/ロンドン殺人事件」
82・TV/監督:クロード・ホワッタム
レスリー・アン・ダウン、ヘレン・ヘイズなどが出演。時代を現代に移し、コンピュータなども登場するも、原作の内容に忠実な作り。「殺人は容易だ」の邦題でビデオ発売。
 

●「無実はさいなむ」

1958年に発表・「ねじれた家」とともに、アガサが自作で最も愛したとされる作品。

→『ドーバー海峡殺人事件』
84・英/監督:デズモンド・デイヴィス
1980年代のアメリカ映画界を席巻したキャノンフィルムズがアガサ・ワールドに参入してのオールスター大作。

→「アガサ・クリスティー 無実はさいなむ」
18・英TV/監督:サンドラ・ゴールドハッカー
日本ではAXNミステリーで放送。ビル・ナイ、アンナ・チャンセラーなどが出演。
 

●「魔術の殺人」

1952年に発表。「ミス・マープル」シリーズ長篇5作。

→「ミス・マープル/魔術の殺人」
85・米TV/監督:ディック・ローリー
ヘレン・ヘイズが再びミス・マープルを演じたTVムービー。日本では「アガサ・クリスティー/魔術の殺人」としてTV放送されました。

●「死者のあやまち」

元々は1955年に執筆しながらも未発表に終わった中編小説を長篇に直して、1956年に発表したもの。ポアロ・シリーズ長篇第27作。

→「名探偵ポアロ/死者のあやまち」
86・英TV/監督:クライヴ・ドナー/TVムービー・シリーズでピーター・ユスティノフがポアロに扮した第2弾。

 

●「三幕の殺人」

1934年に発表。イギリスとアメリカの版で内容に違いがあります。

→「名探偵ポアロ/三幕の殺人」
86・英TV/監督:ゲイリー・ネルソン
TVムービー・シリーズでピーター・ユスティノフがポワロを演じた第3弾にして最終作。
 

●「死との約束」

1938年に発表。ポアロ・シリーズ長篇第16作にして、「メソポタミヤの殺人」「ナイルに死す」に続く中近東シリーズの第3作。

→『死海殺人事件』
88・米/監督:マイケル・ウィナー
ピーター・ユスティノフがポワロを演じた最後の作品。彼は映画3本TV3本と稀代の名探偵を演じ切りました。なお本作は英EMIではなく米キャノンフィルム製作のオールスター作品です。

→「死との約束」
21/日TV/脚本:三谷幸喜/演出:城宝秀則
ミステリ・ファンの三谷幸喜がアガサ・ワールドを翻案したTVスペシャル第3弾。野村萬斎扮する名探偵ポアロ=勝呂武尊も、すっかり板についてきました。なお三谷幸喜は、アガサ小説の中でこの原作が一番好きとのことです。
 

●「茶色の服の男」

1924年に発表。ポアロの知人でもある英国特務機関員レイス大佐が初登場した作品でもあります。

→「アガサ・クリスティー/殺しのブラウンスーツ」
88・米TV/監督:アラン・グリント
日本ではビデオ発売作品ですが、「茶色の服の男」のタイトルでテレビ放送もされました。

●「邪悪の家」

1932年に発表。ポアロ・シリーズ第6作。

→「ZAGADKA ENDHAUZA」
89・露・未公開/監督:ヴァデイム・デベニョフ/ポアロにアナトリー・ラヴィコヴィッチ

●「ねずみとり」

クリスティーンが1947年にBBCラジオドラマのために執筆した「三匹の盲目のねずみ」を1950年に自ら短編小説化し、さらに1951年にそれを戯曲化し「ねずみとり」と改題したもの。

1952年に初演され、2000年までの上演回数は2000回を越えます。2020年のコロナ禍で中断を余儀なくされるまで、世界で最も長い連続上演をし続けている演劇。日本では「マウストラップ」の題で上演されることも。

→『MYSHELOVKA』
90・露・未公開/監督:サムソン・サムソノフ

→『THE MOUSETRAP』
21・米・未公開/監督:ジョセフ・ハミク/出演:アッシュ・イートン

●「ゴルフ場殺人事件」

1923年に発表。ポアロ・シリーズの長編第2作。

→「名探偵赤富士鷹/愛しのサンドリヨン」
05・日TV/演出:渡辺一貴/ポアロ=赤富士鷹に伊東四朗

●「親指のうずき」

1968年に発表。「トミーとパテンス」シリーズの長編第3作で、老境にさしかかった夫婦の活躍が描かれます。

→『アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵』
05・仏/監督:パスカル・トマ
現代フランスを舞台に翻案。“フランスのパテンス”ともいえるカトリーヌ・フロの好演が話題になりました。
 

●「婦人失踪事件(おしどり探偵)」&「復讐の女神」

前者は1929年に発行された「おしどり探偵」に収録の短編、後者は1971年に発表された長篇です。

→『ASSOCIES CONTRE LE CRIME』
12・仏・未公開/監督:パスカル・トマ
トマ監督&カトリーヌ・フロ&アンドレ・デュソリエの名トリオによる『奥さまは名探偵』シリーズ第3弾。今回は「トミーとタペンス」シリーズの短編に「復讐の女神」を組み合わせての映画化。日本未公開が惜しまれます。
 

●「ひらいたトランプ」

1936年に発表。ポアロだけでなくバトル警視やアリアドニ・オリヴァ夫人、レイス大佐と、アガサ・ワールドのキャラクターが多数登場。

→『CHORABALL』
16・印・未公開/監督:サブラジ・ミラ
 

●「ねじれた家」

1949年に発表。アガサが「無実はさいなむ」とともに自作で最も満足していると語った作品。

→『アガサ・クリスティー ねじれた家』
17・英/監督:ジル・パケ=プランネール/登場人物の設定が原作から一部変更。

●「予告殺人」

1950年に発表されたマープル・シリーズ長篇4作目。シリーズの中でも屈指の傑作と名高い作品です。

→「予告殺人」
(19・日TV/監督:和泉聖治/脚本:長坂秀佳
「相棒」シリーズの和泉監督による翻案ドラマ・シリーズ第4弾。今回もミス・マープルに相当する女性ではなく、沢村一樹扮するシリーズ・オリジナルの主人公・相国時竜也が事件に挑みました。

●「蒼ざめた馬」

1961年に発表。ポアロの知人でもある推理作家アリアドニ・オリヴァ夫人が登場します。

→「アガサ・クリスティー 蒼ざめた馬」
20・TV/脚本:サラ・フェルプス/監督:レオノラ・ロンズデール
設定やキャラクター設定などに大幅な変更が施されています。

–{アガサ・クリスティ作品、長期テレビシリーズ}–

アガサ・クリスティ作品、長期テレビシリーズ

 
さて、ここで長期テレビシリーズをご紹介しておきましょう。

★『名探偵ポワロ』シーズン1~13(1989~2013)

およそ四半世紀にわたって、ほとんど全てのポアロ小説を映像化した画期的なTVシリーズ。主演のデヴィッド・スーシェは「もっとも原作に近いポアロ」として、多くのファンからリスペクトされ続けています。アガサ・ファンならずとも、いつか全70話を制覇してもらいたい逸品です。

★ミス・マープル・シリーズ

ロンドンから25マイルほど離れたセント・メアリ・ミード村で静かに暮らす老嬢ながら、名探偵顔負けの頭脳明晰な推理で難事件を次々と解決するジェーン・マープル(アガサの祖母がモデルと言われています)を主人公にしたもので、長期ドラマ・シリーズとしては、以下の2作があります。

◎『ミス・マープル』シリーズ(84~92)

ジョーン・ヒクソンがミス・マープルに扮して、、長篇12作をすべてドラマ化。ヒクソンは生前のアガサから「年をとった暁には、ミス・マープルを演じてほしい」と言われていたという逸話も残されています。

◎『アガサ・クリスティーのミス・マープル』(06~14)

シーズン1~3までジェラルディン・マキュークイーアン、シーズン4~6をジュリア・マッケンジーが務めました。「親指のうずき」「シタフォードの秘密」「無実はさいなむ」「ゼロ時間へ」「殺人は容易だ」「なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか」「チムニーズ館の秘密」「蒼ざめた馬」など、マープル・シリーズではない小説も導入されています。

★「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」(04~05/全39回)

こちらはポアロ&ミス・マープル作品を日本でTVアニメ・シリーズ化したもので、ポアロに里見浩太朗、ミス・マープルに八千草薫、さらには毎回のゲストも実に豪華な声優キャステング作品でした。また、両者を結びつけるオリジナル・キャラクターとして、マープルの甥の娘でポアロ事務所の助手を務めるメイベル・ウエストという少女が登場します。

★「トミーとタペンス」シリーズ

夫婦で探偵もしくは諜報部員というユニークな設定のシリーズは大きく2本、TVシリーズ化されています。

◎「おしどり探偵」(83~84・英TV)

ジェームズ・ワーウィック&フランチェスカ・アニスの共演で全10話が製作。ちなみにこの本放送が始まる1週間前に、同じスタッフ&キャストでTVムービー「諜報機関」(83)が放映されています。

◎「アガサ・クリスティー トミーとタペンス―2人で探偵を―」(15/英TV)

デヴィッド・ウォリアムス&ジェシカ・レインの競演で、「秘密機関」と「NかMか」を3話ずつ、全6回で放送しました。

★「アガサ・クリスティー 名探偵ヤルセン」(21/TV)

こちらは実にユニークな作品で、ポアロ・シリーズにたびたび登場する良き友人の推理作家アリアドニ・オリヴァが創作したキャラクターを主人公にした、いわばアガサ作品のスピンオフともいえる作品なのでした。ちょうど現在AXNミステリーチャンネルで放送中なので、お見逃しなく!

 
他にも「アガサ・クリスティーのフレンチ・ミステリー」シリーズなど、世界中でアガサ作品は映像化されているようですが、もう追いきれないのでこのへんで。

–{失踪時期のアガサ・クリスティーを題材にした作品たち}–

失踪時期のアガサ・クリスティーを題材にした作品たち

最後に、アガサ・クリスティーは1926年に11日間謎の失踪事件を起こし、一大スキャンダルとなりましたが、その時期の彼女を題材にした作品群を紹介したいと思います。

◎『アガサ 愛の失踪事件』

79・米/監督:アイケル・アプテッド
アガサにヴァネッサ・レッドグレーヴ、彼女を追う新聞記者にダスティン・ホフマン。一応フィクションではありますが、両者の関係性の中から、当時のアガサの複雑な心情が巧みに見えてくる作品です。長身のヴァネッサとおちびのダスティンのダンス・シーンが秀逸。

◎「アガサ・クリスティー~謎の失踪 失われた記憶~」

04・英TV/監督:リチャード・カーソン・スミス
アガサ自身の言葉や文献などに基づいて当時の事件を再現した実録ドラマ。アガサにはオリヴィア・ウィリアムスが扮しています。

◎『アガサと殺人の真相』

18・英TV/監督:テリー・ローン
公私ともにスランプで失意に陥っていたアガサが、現実逃避するかのように殺人事件の謎に挑んでいくうちに世間では失踪と騒がれていくという、ユニークな切り口の空想ミステリ・ドラマ。アガサにはルース・ブラッドリーが扮しています。

◎『アガサとイシュタルの呪い』

19・英TV/監督:サム・イエーツ
1928年、離婚したばかりのアガサがオリエント急行に乗ってバグダッドへ赴き、遺跡発掘作業に参加した事実から発想されたアガサ・フィクショナル・ミステリ・ドラマの第2弾。アガサにはリンゼイ・マーシャル。ちなみに後に彼女と再婚することになる年下の考古学者マックスも登場しますが、実際は出会うのはもう少し後のことだそうです。

◎『アガサと深夜の殺人者』

20・英TV/監督:ジョー・A・ステファンソン
アガサ・フィクショナル・ミステリ・ドラマの第3弾。前作から時を経ての1940年代ロンドンを舞台に、破産寸前のアガサが空襲のさなかに原稿を盗まれてしまい、さらには殺人事件に巻き込まれていきます。アガサにはヘレン・バクセンデイル。第1作で容疑者トラヴィスを演じていたブレイク・ハリソンも再登場しています。

そして最後の最後に……

 ●「私は作者に殺される」

86・英TV

ペギー・アシュクロフトがアガサ・クリスティ―に扮し、イアン・ホルム扮するポワロと奇妙なやりとりを展開するドラマとのこと。これ以上の詳細は調べきれなかったのですが、このキャストと内容だけで見てみたくなってきますね!

(文:増當竜也)

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–{『ナイル殺人事件』作品情報}–

『ナイル殺人事件』作品情報

ストーリー
エジプトの神秘・ナイル川を巡る豪華客船の中で、新婚旅行中だった大富豪の娘リネット(ガル・ガドット)が殺される。容疑者は、彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員。ナイル川に浮かぶ船内という密室で起きた難事件に挑む名探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)だったが、その真相はポアロの人生を大きく変える……。

予告編

基本情報
出演:ケネス・ブラナー/ガル・ガドット/アーミー・ハマー ほか

監督:ケネス・ブラナー

公開日:2022年2月25日(金)

製作国:アメリカ