「めちゃ×2イケてるッ!」「シルシルミシル」「激レアさんを連れてきた。」「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」の「笑ってはいけない」シリーズなど数々の番組を手掛けてきた放送作家・深田憲作が1月26日、“企画”に特化したフリー素材サイト「企画倉庫」をオープンさせた。
深田氏によると、同サイトは現役YouTuberやチャンネル運営者、放送作家など企画を考える人たちのために生まれたウェブサイトとのこと。
具体的にどんなことが出来るのか、また同サイトを通して深田氏が叶えたいこととはなんなのか。企画作りのヒントと合わせて話を聞いた。
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企画を考える1歩は既存企画を見ることから
――深田さんが考案・運営する「企画倉庫」ですが、なぜ立ち上げようと思ったのでしょう?
深田憲作(以下、深田):日本のYouTubeチャンネルで登録者数が5万人を超えるチャンネルは9,000以上、登録者数が1万人を超えるチャンネルは20,000以上あると言われています。その数字を知ったときに、「YouTubeの企画を考えるのに苦労している人が数万人いるのではないか」と思いました。そこで、僕自身の原体験から、企画を考える時にヒントになるようなサイト、企画案がズラーっと掲載されているサイトを立ち上げることにしたんです。
――なるほど。「企画倉庫」を見てみると「グルメ系」「ゲーム・クイズ・チャレンジ」などのジャンルに分類され、それぞれのページに関連する企画が載っていますが、これも深田さん自身の経験が元になっているのでしょうか?
深田:そうです。僕自身、放送作家として駆け出しの頃から企画を考える時は、既存の企画を見て、それをズラして新たな企画を考えるということをしてきました。
例えば「ゴチになります」という有名企画、あれを分解すると「グルメ」×「値段」×「クイズ」になっているんですよね。この「値段」の部分を「嫌いなモノ」に変えると「食わず嫌い王」になりますし、「人気メニュー」に変えると「帰れま10」になります。既存の企画を分解して「ここに何を当てはめればいいかな~」と企画を考えるわけです。「カロリーを当てるクイズだとどうかな」「自分のお母さんが作った料理を当てるクイズだとどうだろう」といった具合です。
――既存の企画を見て、分解することが新しい企画を立てるヒントに繋がるんですね。
深田:はい。放送作家になった当初は「既存の企画をズラすことで新たな企画が考えられる」ということを意識出来ていたわけではないのですが、既存の企画を見て、そこからフワッと思いついて、ブラッシュアップするということを無意識にやっていました。
――「企画倉庫」では誰でも企画投稿ができるようですが、自分の企画を公開することって、少しハードルが高いようにも感じています。
深田:自分のアイデアを人前にさらすことに抵抗がある人はもちろんいるだろうなと思っています。そのため「どうやったら、多くの人から企画を投稿してもらえるか」「このサイトに企画を投稿するメリットをどう設計するべきか」ということに1番時間をかけて慎重に考えました。このサイトの価値は企画がたくさん載っていることにあると思っていて、そのためには多くの方に投稿していただくことが不可欠なので。
――どのように打ち出すことにしたのでしょうか?
深田:主に若手放送作家や放送作家志望の方に向けたメリットなのですが、希望者の方には企画掲載時にペンネームとSNSのリンクを載せられるようにしています。そうすることで、テレビ関係者やYouTubeの制作周りの人が「この人の企画はおもしろい!」と思った人のSNSに飛び、そこから仕事のオファーが来る可能性があるんじゃないかなと思ったんです。あとは売り込みをする時に、「私はこういう企画が考えられます」という名刺にもなりえるのかなと。
――経験の浅い方にとっては、ありがたいお話ですね。
深田:サイトを開設してまだ日は浅いですが、毎回のように面白い企画を投稿してくださる方が何人かいて、僕自身が「早くこの人の次の企画が見たい!」というファンみたいな気持ちになっている人もいます(笑)。テレビ局の人から「誰か良い若手作家いない?」と聞かれた時は、その人たちを優先的に紹介したいと思っています。
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–{企画を考える上で大切な2つのヒント}–
企画を考える上で大切な2つのヒント
――昨今、自分で発信する機会は増えたように思えます。その一方で母数もかなり多く生き残るのは大変そうなイメージです。深田さんは、自己発信をする際に大切なことはなんだと思いますか?
深田:YouTubeの運営面を勉強していて「続けることが大事」というのを痛感しています。YouTubeは「このチャンネルが定期的に動画を公開しているか」をAIが判定していて、それを認めたチャンネルの動画をおすすめや関連動画に積極的に上げてくれるらしいんです。
だから、まずは動画をコンスタントに100本は公開する、勝負はそこからだそうです。一方、チャンネル開設当初は再生数が伸びないので、ほとんどの人が100投稿もできずに辞めてしまうんです。逆に地道に動画を投稿し続けたチャンネルは登録者1万人を超える可能性が十分あるそうで、YouTubeこそ「継続は力なり」という言葉が当てはまるメディアなんだなと思いました。これはYouTubeに限らず、音声メディアやライブ配信も同じだと思うんです。「企画倉庫」が配信者のみなさんが発信を長く継続していくためのお助けサイトになればいいですね。
――「企画倉庫」に自身の企画を投稿したい人、自分自身の発信しているメディアの企画を考えたい人に企画を考えるためのヒントを教えてください。
深田:まずは、先ほど申し上げた通り「既存の企画をズラらす」ことだと思います。例えば年々大型コンテンツになっていっている「M-1グランプリ」って、やっていることだけを見るとよくある漫才番組じゃないですか。そこに賞金1000万円というご褒美や「ここで優勝したら売れる」という重みをプラスしたことで、ただ漫才を見る番組ではなく、芸人が人生を賭けて挑む大舞台を見届けるドキュメンタリー番組にもなっているんですよね。だからリアルタイムで見ることに価値があり、それが高視聴率に繋がっています。
巷にはあらゆる企画考案法が書かれた本がありますが、この「既存の企画をズラす」というのが誰でも出来て、最も効率的な企画の考え方だと思っています。だからみなさん「企画倉庫」に載っている企画を見て、ズラして新しい企画を考えてくださいという感じです(笑)。
――なるほど。一気に企画を考えることへのハードルが下がった気がします。
深田:あとは「日常のあるあるを意識する」こと。おもしろい企画には総じて共感できる要素があります。あるあるから企画が生まれることは多いのですが、それに気づけるかどうかが重要だと思います。日本を代表する名プランナーの秋元康さんでさえも、普段見ている景色は僕らとほとんど一緒です。ただ、日常のあるあるに気づけているかどうかの違いだけなんです。普段はスルーしていることを少しだけ意識して見ていると企画が浮かぶようになるのかなと思います。
――企画投稿フォームを見てみると、フォーマットは特に決まっていないようですが、これはなぜでしょうか?
深田:企画を考えることを苦行にしたくないなと思ったんです。サイト内にある企画案のクオリティは一定水準保ちたいのですが、採用される喜びを味わってほしいなと思っているので、自由に描いていただければおもしろいものを採用したいなと思っています。
コンテンツが生まれるプラットフォームに
――今後「企画倉庫」はどのように発展していくのでしょうか?
深田:元々このサイトはYouTube制作に関わる人向けに作ったのですが、いざ開設してみるとラジオ・音声メディア・ライブ配信などの配信者の方々が「いいサイトがある!」と反応してくれたんです。だから、そういった方々にも使ってもらえるような「映像がなくても成立するトーク企画」「1人しゃべりで使える企画」「生配信で使える企画」を強化していきたいと考えています
あとは数ヶ月以内にテレビ制作者向けのページ、「企画の図書館」のようなページを作ろうと思っています。テレビの歴史で放送されてきた名企画の数々や、今後行われていく企画を随時載せていくつもりです。また、企画案だけでなく、テレビマンが役に立つさまざまな情報を載せたいと思っています。
――具体的には、どのようなことを想定しているのでしょうか?
深田:目玉の1つと考えているのが「タレントリスト」です。現在、タレントの名前が年齢順にズラっと並んだ使い勝手の良い「タレントリスト」を作っています。さらにいうと将来的には「#筋肉」「#インテリ」「#歌がうまい」「#自宅公開してくれる」「#サウナ好き」といった具合にタレントごとにタグをつけて、不動産の物件を探す時みたいにチェックを入れて、タレントを絞り込み検索できる機能をつけたいと思っています。「タレント名鑑」は分厚過ぎて持ち歩くのが大変なので、これが実現出来たら番組のキャスティング会議で重宝される自信があります(笑)。
――制作者にとってもかなり便利なサイトになりそうですね。「企画倉庫」を通して、目指したいことがあれば教えてください。
深田:ここからコンテンツが生まれるプラットフォームにしていきたいなと思っています。Amazonプライムって買い物のために入った会員のお金で、会員だけが見られる動画コンテンツを作っているじゃないですか。あんな風に「企画倉庫」の会員だけが見られるコンテンツを作れるようになればいいなと。そして、それらのコンテンツを作るのも「企画倉庫」の会員。さらにはそこから世に出ていってヒットするコンテンツが生めれば最高だなと思っています。今はまだ夢のまた夢の話ですが(笑)。
――なるほど。自分の考えた企画がコンテンツとして世に出るだなんて、夢がありますね。
深田:問い合わせフォームから「自分の考えた企画を誰かにやってほしい」という要望を送ってきた方が何名かいたんです。先述した夢の手始めといってはなんですが、企画倉庫のYouTubeチャンネルを作って、サイトに掲載されている企画を実際にやって動画を作ってみる、という試みも考えています。
――会員のみが見られるコンテンツというお話を聞いて、収益化することも考えていらっしゃるのだと感じました。そのために今力を入れたいことがあれば教えてください。
深田:そうですね。いずれはお金を払ってでも使いたいと思えるようなサイトになれば夢は広がると思っています。明確に「こうやってマネタイズする」という方法は見えていないのですが、たくさんの人に使ってもらえるようにならないと何も始まらないので、まずはユーザーを増やすことだけを考えています。そのためには、企画を考える人の手助けをするサービスとしてしっかりと成立しないといけないと思っていて、当面の間は掲載する企画の数を増やしていくことが課題だなと思っています。現在は1000個ほどの企画を掲載していますが、目指すは掲載企画1万個です。
もし投稿を躊躇している方がいるとしたら、まずは覗くだけでも良いので、ぜひ見にきてください!
(取材・文=於ありさ)
企画倉庫:https://www.kikakusouko.com/
企画倉庫公式Twitter:https://twitter.com/kikakusouko