<Netflix>「金魚妻」で観る、篠原涼子の挑戦

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2022年のバレンタインデーに合わせて、Netflixで全世界同時配信されるドラマシリーズ「金魚妻」

タワーマンションの最上階で暮らすさくら(篠原涼子)は一見すると、誰もが羨む華やかな人生を送っているように思われていますが、実際は夫のDVやモラハラに苦しむ日々を送っていました。

そんなある日、金魚屋の青年・春斗(岩田剛典)と運命的な出逢いをし、一線を越えてしまいます。

二人の関係はただの逃避なのか?運命の恋なのか?

意外にもラブロマンス作品が少ない、篠原涼子が初の配信ドラマで本格的なオトナのラブロマンスに挑みます。

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篠原涼子、その始まり


 
今や、映画・ドラマに圧倒的な存在感と人気、そして実績を誇る篠原涼子。

個人的には世代ということもあってやはり、小室哲哉プロデュースの1994年のダブルミリオンシングル「恋しさと せつなさと 心強さと」の頃から、彼女の存在を知ることになりました。

もともとグループアイドルの一員だったところ、小室哲哉の目に留まり、この楽曲に大抜擢され、結果大ヒット。紅白歌合戦にも出場しました。

また、小室哲哉にとっても音楽プロデューサーとして大きな一歩となった楽曲でもあります。(ダブルミリオンを記録した4曲のうちの最初の一曲)

篠原涼子はまず大ヒット曲を持つアーティストとして世に認知されます。アーティスト活動はその後も2000年代前半まで続きます。

一方で同時期に俳優としてもキャリアをスタートさせています。

「anego[アネゴ]」「アンフェア」「ハケンの品格」

2020年「ハケンの品格」(C)日本テレビ

俳優として一気に“篠原涼子像”を作り上げたのは2000年代の半ばのこと。
 
2005年に「anego[アネゴ]」、2006年に「アンフェア」、2007年に「ハケンの品格」と後に代表作と評されるヒットドラマに連続主演します。

 この3作はすべて続編スペシャルや続編シリーズ、劇場版シリーズなどへ展開し、ここから篠原涼子=“頼りになるキャラ”というイメージが固まります。

これは2022年3月公開予定のバカリズム脚本作品『ウェディング・ハイ』でも踏襲されています。ちなみにこちらでも岩田剛典と共演しています。

(C)2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

俳優として極端な色(パブリックイメージ)がつくことは、後々のキャリア形成において必ずしも良いこととは言えません。

イメージが先行し過ぎて、本人に依頼する前のキャスティングの候補選びの段階で、“イメージと違う”ということで、対象から外されることもあります。

これまでも国内外の俳優たちは当たり役を見つけることと、当たり役から脱却することに、当たり役との巧い距離感を持つことに腐心してきました。

中には、もうその当たり役=パブリックイメージに殉じる覚悟を決めて最後まで、パブリックイメージ通りのキャラクターを演じ続けた人達も少なくありません。

篠原涼子は「anego[アネゴ]」「アンフェア」「ハケンの品格」の3作でついたパブリックイメージを巧くさばいている方だと思います。

2010年代からはその強さを“母性を持った”に変えたキャラクターへのスライドに成功しています。

(C)2018「人魚の眠る家」 製作委員会

「アンフェア」時からその萌芽がありましたが、2018年の映画『SUNNY強い気持ち・強い愛』と『人魚の眠る家』、良く2019年の映画『今日も嫌がらせ弁当』はそんなイメージのスライドを巧く果たした作品群と言えるでしょう。

一方で、ある意味の開き直りとも言うべきか『アンフェア』シリーズの劇場版は足掛け8年にも渡りました。主人公の雪平夏見は母親であり、新たな恋もしますが、目指すものは真実と巨悪の打倒です。

また2013年のドラマ「ラストシンデレラ」では“おやじ女子”というキャラクターを演じていて、劇中では中年男性のような生活を送っていった結果女性ホルモンが減少し、ひげが生えてきた美容師という、なかなかな設定のキャラクターを快演していました。

ここにきて篠原涼子は自身のパブリックイメージへのある種の“開き直り”=“コントロール”が巧みになっていくのを感じられます。

–{庇護する存在から庇護される存在へ「金魚妻」}–

庇護する存在から庇護される存在へ「金魚妻」

そんな中で2022年のバレンタインデーに配信されるのが「金魚妻」です。

美容師をしていたさくらですがある事故がきっかけにハサミを握れないことになくなり、多数のサロン経営を手掛ける夫のサポートに回ります。

一見すると幸せそのもの、誰もが羨む環境にいるさくらは、実際には夫からのDVとモラハラに苦しむ日々を送っていました。それでも、ほかに居場所がないと感じていたさくらは、今の立場で必死に生きていきます。

しかし夫は、隠れて浮気をしていたり、部下の前でもさくらに対して高圧的な態度で接したりするなど、さくらは息が詰まる思いを抱えています。

ある日、偶然立ち寄った金魚屋で、水槽の中で育てられる金魚に自分を重ねてしまいます。そしてその店主の青年・春斗と運命的な出逢いをします。 

ある夜、ついに夫からの束縛から逃げ出したさくらは春斗のもとへ。そして一線を越えた2人は新たな暮らしを始めます。これが逃避なのかはたまた運命の恋なのか、まださくらにはわかりません。

また、このさくらの行動と呼応するかのように同じタワーマンションで暮らす“妻”たちが、今までにない“自分らしさ”を求めた新たな選択を始めます。

篠原涼子出演作品の中でもここまで“他者の庇護”のもとにあるキャラクターは珍しいと思います。

これまでは家族や部下を庇護する立場のキャラクターが多かった中で、これはとても新鮮に映ります。ただ、さくらが最後まで“庇護を受ける者だけで終わる”のかはわかりません。

春斗との関係は、世間一般的な視点から見れば許されるものではありませんが、そこにいるさくらは今までにない明るさを取り戻していき、イキイキとした姿を見せ始めます。

ここからさくらが能動的に動き出すかもしれません。その時夫は?春斗は?周りの“妻”たちはどういう選択をしていくのか?この部分が「金魚妻」後半戦の見どころと言えるでしょう。

庇護を受ける者でありながら、徐々に生気を取り戻し、他者へ直接的、または間接的に影響を与えていくさくら。ドラマ「金魚妻」を見ていくと、今までにないタイプのキャラクターに挑んだ“篠原涼子の新たな一歩”と、新しい出会いとともに今までの人生になかったものを求めていく“さくらの新たな一歩”が重なって見えてきます。

刺激的な題材や設定、描写に目が行きがちですが、ドラマ「金魚妻」において、この2つの“新たな一歩”こそが最も重要なものなのかもしれません。

篠原はさくらを演じるにあたり「かよわいだけではない、芯の強い女性だと思ってもらえるように、というのを大切に演じていました。現場では体にアザを作ることもあって、まさに体当たりの挑戦でしたがその分やりがいも大きかったです。『金魚妻』は、これまでやったことのない事にチャレンジできる作品だったので、私にとって“運命の出会い”だったと思っています」と本作にかけた意気込みを明かしています。

篠原涼子の新たな一歩に注目しましょう。

(文:村松健太郎)

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–{「金魚妻」作品情報}–

Netflixシリーズ「金魚妻」

原作:「金魚妻」黒澤R(集英社「グランドジャンプめちゃ」連載)
出演:
篠原涼子、岩田剛典、安藤政信、長谷川京子
松本若菜、中村静香、瀬戸さおり、石井杏奈、眞島秀和、藤森慎吾、犬飼貴丈、久保田悠来
監督:並木道子(フジテレビ)/楢木野礼/松山博昭(フジテレビ)
脚本:坪田文/越川美埜子/的場友見
撮影::相馬大輔
エグゼクティブ・プロデューサー:佐藤菜穂美(Netflix コンテンツ・アクイジション部門 マネージャー)/牧野正(フジテレビ)
プロデューサー:中野利幸(フジテレビ)/浅野澄美(FCC)、小林和紘(FCC)
制作プロダクション:フジクリエイティブコーポレーション
製作:Netflix