寺島進主演の金曜8時ドラマ「駐在刑事Season3」が2022年1月14日より放送スタート。
元・警視庁捜査一課の刑事だった江波敦史(寺島進)が、持ち前の洞察力で次々と難事件を解決していく大人気シリーズ第3弾。今度はどんな事件に立ち向かっていくのだろうか?
cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
奥多摩を舞台に、駐在さんこと江波(寺島進)が事件を解決するさまを描く。ある日、ベンチャー企業の社長・本郷(今井翼)が詐欺罪で指名手配される。本郷は奥多摩に実家があり、今も母・八重子(かたせ梨乃)が一人で暮らしていた。その直後、本郷を告訴した被害者の会代表・安西(中山卓也)が遺体で発見される。
第1話のレビュー
寺島進演じる”駐在さん”、江波が帰ってきた!
加倉井管理官(北村有起哉)、奥多摩専任特別管理官の軽部翔平(佐藤寛太)、山岳ガイドで旅館の若女将・内田遼子(笛木優子)など前シリーズから引き続きのレギュラーキャストに加え、警視庁捜査二課刑事の和泉玲香(藤井美菜)が新たに参加。
記念すべき第1話、起こった事件は「支援金詐欺」と「殺人」である。
ロボット開発に勤しむベンチャー企業「ロボキャスト」の社長・本郷(今井翼)が詐欺容疑で指名手配。そして殺人事件の容疑までかけられてしまう。歩行支援ロボット開発のため、クラウドファンディングで1億円の支援金を集めたものの、一向に開発に踏み切らないことで支援金詐欺とみなされた。
その後、支援金詐欺の被害者会代表・安西が殺害される。行方をくらませた本郷には、詐欺と殺人、両方の容疑がかけられた。
本郷と過去に付き合っていたという遼子。仮小屋作りの天才だったという父にならい、山中に仮小屋をこさえながら身を隠す本郷を見つけた遼子は、なんとか彼の容疑を晴らそうと苦心する。
本郷は父を亡くしており、母・八重子(かたせ梨乃)とも疎遠だった。「奥多摩に住みたい」という父の意向に沿って越してきたものの、父が亡くなった後も山仕事を続けた八重子は、無理がたたって足を怪我してしまう。
本郷が歩行支援ロボットの開発を試みたのも、母親のためだった。
本郷の身柄を拘束するため、動き出す警察。捜査二課から一課に戻ろうと尽力する和泉の働きにより、ギリギリのところまで本郷を追い詰めることに成功した。しかし、足を滑らせた本郷は崖から転落。生死の淵をさまようことに……。
昏睡状態に陥ってしまった本郷が目を覚ますまでに、事件の真相が明らかになっていく。
奥多摩で”駐在さん”として親しまれている江波。その人脈を生かし、町の人たちに話を聞きながら事件解決のヒントを探っていく。その過程で明らかになった、衝撃の事実とは……。
なんと、黒幕は詐欺被害者の副代表・大和田(田山涼成)だった。
彼が裏で手を引き、ロボキャストの岩城専務と財務担当・戸部を使っていたのだ。1億円を騙し取った挙句、すべてのことに気づき始めた代表・安西を殺害。彼らはこれまで、ロボキャスト以外の会社でも支援金詐欺を繰り返していた。
無事に大和田を捕まえることができたが、「ゆっくり次の計画を考える時間ができたわ!」と悪びれる様子もない。彼は今後も、物語に関係してくるのだろうか。
この一件をきっかけに、疎遠になっていた本郷親子は、その関係を修復することができた。本郷にとっては人間不信になってもおかしくない顛末だったが、江波や軽部のユーモラスなやりとりが、このドラマ全体の味をまとめているように感じる。
次回はどんな事件が巻き起こるのだろうか?
※この記事は「駐在刑事Season3」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
水根旅館の女将・美也子(市毛良枝)の元にオレオレ詐欺の電話がかかってくる。江波(寺島進)は犯人を捕まえるが、奥多摩ではオレオレ詐欺が多発していた。
そんな中、男の変死体が見つかり、男がオレオレ詐欺グループのリーダーだと判明。事件前に男と治子(茅島成美)の孫だという若い男(田中偉登)が揉めていたという目撃情報が入り、江波は孫から事情を聞く。しかし治子の孫・流星は8年前に落石で亡くなっていて…。
第2話のレビュー
奥多摩でオレオレ詐欺事件が発生!
平和な奥多摩を脅かす事件を解決するため、またもや動き出す駐在さん・江波(寺島進)。水根旅館にかかってきたオレオレ詐欺の電話をきっかけに、詐欺グループの一員を現行犯逮捕した。これで、オレオレ詐欺は無事に収まるかと思いきや……。
直後に「ずっと知らない車が山中に停まっている」と奥多摩の住民から知らされる江波。
現場に向かい調べてみると、車中から「木島秀樹」の身分証明書が見つかった。大量の携帯や個人情報リストなども発見されたことから、詐欺グループの一員であると推測される。停められた車の近くには、血痕が付着した石が……。
転々とする血痕を追う江波。すると、木島の遺体に行き着いた。彼は何らかの理由で、すでに亡くなっていたのだ。
なぜ木島は亡くなっているのか? 何者かに殺されてしまったのか?
捜査を進めるうちに、木島と”若い男”が口論しているのを見た、と情報が入る。その若い男とは、治子(茅島成美)の孫・流星のことだとわかった。流星に話を聞けば、何かわかるかもしれない。
しかし、ここで驚愕の事実が。なんと、本物の流星は、中学3年生の頃に落石事故ですでに亡くなっている。つまり、流星を名乗る男は別人である可能性が高い。治子も、それを承知で流星を家に上げているというのだ。
流星を騙る謎の男は、加山(田中偉登)だと判明。やはりオレオレ詐欺グループの一員だったようだ。しかし、一度治子から100万円を騙しとるも「必要なくなった」と言って返しに来たという。その後、まるで恩返しをするかのように治子の家に滞在していたらしい。
加山には木島の殺害容疑がかけられたが、治子の証言によりアリバイがあるとわかった。オレオレ詐欺グループ内での内輪揉めだと認識されかけていたが、その線も薄い。そもそも、彼がわざわざ100万円を返しに来た理由、そして逃げなかった理由がわからない。
果たして、木島が亡くなった原因とは……?
江波の独自の捜査により、名前が上がったのは、浜野まなみ(山谷花純)だ。
将来、小学校の教師になることを夢見ながら、奥多摩の山岳ガイドセンターでアルバイトをしている女性。まなみは、山中で不法投棄をする木島と、たまたま遭遇してしまった。奥多摩を愛するがあまり、彼に注意をする。それがきっかけでトラブルとなり、揉み合った末に木島を殺してしまったという。
なぜ、江波は彼女が犯人だと突き止められたのか?
きっかけとなったのは、殺害現場である山中に生息する「山漆」だった。捜査のため現場に入り込んだ者たちは全員漏れなく、山漆による肌のかぶれに悩まされていた。特効薬となるのは、ものすごい香りを放つ「サワガニをすり潰した薬」しかないという。
浜野まなみも、現場にいたのではないか。山漆による肌のかぶれに悩んでいたのではないか。特効薬が放つ激臭をごまかすため、香りのキツい香水を使っていたのではないか。
些細なきっかけから、ここまで推理を繰り広げる江波。奥多摩に住んで長いからこその洞察力なのかもしれないが、やはり元・捜査一課の刑事であることも関係しているのだろう。
罪を償って、改めて奥多摩に戻ってくることを誓ったまなみ。
そして、容疑が晴れた加山が語ったのは、実に予想外な心温まる結末だった。
実は、本物の流星が亡くなった落石事故の現場に、加山もいたのだという。流星は加山を助けるために、落石事故に巻き込まれてしまった。そのことをずっと悔やんでいた加山は、せめて何かできることはないかと切実な思いで、治子の元を離れなかったのだ。
奥多摩で起こった殺人事件が、復讐・怨恨などによるものではなくて、よかった。そう胸を撫で下ろした第2話。このまま平和な奥多摩に戻ってほしいと願うが、次の事件の予感はすぐそこに迫っている。
※この記事は「駐在刑事Season3」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
奥多摩の質店「翡翠堂」の店主・吉井(橋本じゅん)の他殺体が見つかる。吉井はお人よしで有名で、懇意にしていた江波(寺島進)もショックを受ける。そんな中、警視庁捜査二課刑事・和泉(藤井美菜)は店頭に置かれていた品が偽物だと見抜き、さらに過去の逮捕歴から吉井が犯罪に加担していたのではないかと主張する。
第3話のレビュー
質屋店主・吉井(橋本じゅん)が殺害された。
蔵から盗まれたダイヤのネックレス、頭から血を流し倒れている吉井。彼は奥多摩で大のお人好しと言われるほど優しく親切な人物だった。恨みを買って殺されるなど、想像もできないという。
通常、蔵で保管されている品は売物ではないため、店頭には並ばない。誰が何の目的でネックレスを盗んだのか。そして、吉井はなぜ殺されてしまったのか。
捜査線上に上がったのは、フリーターの男性・城戸(曽田陵介)だ。
彼こそが、蔵から盗まれたとされるダイヤのネックレスを、吉井の質屋に売りにきた人物だった。城戸の話によると、誤って自転車事故を起こしてしまい、相手への見舞金が必要になった。自身の母に相談したところ「資金の足しにするように」とダイヤモンドのネックレスをくれたらしい。
吉井の質屋に持ち込んだところ「そんな大事なものを簡単に売ってはいけない、預かっておくからお金は3ヶ月以内に返しにきなさい」と言って、30万を渡してくれたという。
なんて良い話だ……と吉井の親切ぶりに心があたたまるが、奥多摩の駐在さん・江波(寺島進)は、とある違和感をもった。「自転車事故のときにできた」と話す城戸の額の傷が、どうも一ヶ月前の傷にしては”新しい”ような気がしたのだ。
果たして、城戸の話は真実なのか。30万円を返すのが惜しくなり、こっそりネックレスを取り戻しに蔵へ忍び込んだ可能性は考えられないだろうか。その際に吉井に見つかってしまい、誤って殺してしまったのでは?
捜査が進むにつれ、江波は吉井の娘と出会う。
吉井はだいぶ前に離婚しており、妻子と離れて暮らしていた。当時、吉井が勤めていた会社で金銭の使い込みが発覚し、その濡れ衣を着せられた吉井は逮捕されている。それが原因で離婚に至ってしまったのだ。幼かった娘は、父のことを「よくは覚えていない」と話す。
娘は、未だに父のことを「会社を私物化した人間」だと思っている。人のことを想い、親切すぎるくらいにお人好しな彼のことを、勘違いさせたままで終わらせたくない。そう考えた江波は、さらに捜査に力を入れる。
そんな矢先、吉井の質屋に便利屋として出入りする、山之内(佐伯大地)に出会う。
吉井が亡くなる少し前から便利屋として売り込み、蔵の掃除などを手伝っていたという。吉井が亡くなったと聞きショックを受けた様子。その後も「ただ帰るのは申し訳ない」と仕事をしていたようだが……。
ここで、元捜査一課刑事の江波、持ち前の洞察力が光る。
城戸の着ているTシャツ、そして山之内が首からかけているタオル。双方についているマークが共通のものだと気づいた江波。同じフットサルチームに所属しているという城戸と山之内は、なんと先輩・後輩同士。糸が繋がった瞬間である。
暴かれた事実は、こうだ。
せっかく便利屋を開業するも、なかなか軌道に乗らず悩んでいた山之内。ほんの出来心でダイヤのネックレスを盗んでしまう。たまたま山之内の自宅にやってきた城戸は、これまた出来心でネックレスを盗み、質屋に売ってしまったのだ。
山之内は、そのネックレスを取り戻すために、便利屋として吉井の質屋に入り込んだ。吉井の信頼を得たタイミングで蔵に入り込み、ネックレスを盗み出そうとしたところ、見つかってしまう。誤って吉井を殺したのは、山之内だったのだ。
吉井は、どこまでも親切で、大のつくお人好しだった。
盗品と知らずにネックレスを受け取り、かわいそうな若者に30万円を渡した。どこぞの者と知らない便利屋を店に入れ、ネックレスを盗まれそうになっても「これはなかったことにしておくから」と主張した。
そもそも離婚の原因となった会社の金銭使い込みに関しても、吉井の人の良さにつけ込んだ、同僚による罠だったのだ。
吉井は、犯罪組織に加担していたわけでも、誰かの恨みを買って殺されたわけでもなかった。全てを知った娘は、父に対する想いを吐露する。
お互いに星空が好きだった父と娘。地球から254万光年離れた、肉眼で見られる最も遠い銀河とされる”アンドロメダ銀河”。父娘の想いが、254万光年の時を超え、ようやく繋がった瞬間だ。
事件を解決するとともに、人の想いも繋ぐ江波。次回の活躍も楽しみに待ちたい。
※この記事は「駐在刑事Season3」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
美也子(市毛良枝)がおかみを務める水根旅館で、将棋のタイトル戦が行われることに。現役最年長のタイトル保持者・重盛(小木茂光)とその弟子・白石(金井勇太)の師弟対決とあって注目度も高く、江波(寺島進)も警備を担当する。そんな中、空き地で元棋士でゴシップ記者の港(中村織央)の変死体が見つかる。
第4話のレビュー
奥多摩の水根旅館で、将棋のタイトル戦が行われることになった。その様子がメディアに報道されることによって、水根旅館や奥多摩の魅力をより広く伝えられるかもしれない。水根旅館の女将・美也子(市毛良枝)をはじめ、駐在さん・江波(寺島進)も活気付く。
戦うのは、九段竜神の重盛幸三(小木茂光)と、九段三冠の白石喜与彦(金井勇太)。二人は師弟同士であり、師匠の重盛が冠を守り抜くか、それとも弟子の白石がそれを奪い取るかで、世間の注目を集めている。
師匠に挑む白石は、このところ調子が悪いと噂されつつも、婚約者である早瀬茜(井上小百合)と結婚間近であることを報告。このタイミングでタイトルを奪取し、勢いをつけたいところだ。
しかし、いざ二人の対局が始まった頃、またもや奥多摩で不穏な出来事が。ゴシップ記者・港基晴の変死体が、奥多摩の山中に放置された車内で発見されたのだ。
このゴシップ記者は、元棋士であることがわかっている。満26歳までに四段になれなければ引退となる厳しい将棋の世界で、彼は過去に白石と対戦し、棋士としての道を絶たれていた。そのことを恨み、以前から白石を強請っていたのだ。
「あんな奴、いなくなって清々する」と婚約者の茜に漏らしていた白石。港と白石の関係性をつかんだ警察は、白石に疑いの目を向ける。
港は練炭自殺に見せかけて殺害されていた。タイミングを見計らって、白石が手を下したのではないかと推理されるが……、対局中だった彼にはアリバイがある。
果たして、誰がゴシップ記者・港を練炭自殺に見せかけて殺害したのか?
そこには、師弟愛と切っても切り離せない真実が隠されていた。なんと、犯人は白石の師匠・重盛だったのである。
彼も同じく対局中だったが、途中でお手洗いのため離席していた。前もって、車内にいた港を睡眠薬で眠らせ、練炭をセットしていた重盛。離席したタイミングでこっそりと旅館の外へ出て、車のキーについている遠隔機能で窓とドアをロックした。アリバイを確保しつつ、港を練炭自殺に見せかけることが可能である。
なぜ、個人的な恨みのない重盛が、港に手をかけたのか?
それは、弟子である白石を思ってのことだった。
港が白石を脅しているのを知っていた重盛。可愛い弟子のため、なんとか強請るのをやめてくれないかと直談判しに行くも、港は「1000万払え」と理不尽な態度をとる。言われた通りに振り込んでも約束を守らない港に腹を据えかね、今回の犯行に及んでしまったのだ。
病気で、もう長くはない重盛。そんな状態で弟子との一戦に賭けていた。その傍らで、弟子を救うために心を砕いていたのだ。
彼がそれほどまでに弟子の立場を考えるのと同時に、大事な局面で奥多摩を選んだのはなぜか。
実は、重盛には結婚を約束した女性がいた。現在は亡くなってしまったが、彼女が終のすみかとして選び、10年前に移住してきたのが奥多摩だったのである。
大切な人が眠る土地で、自身の進退を決めたい。それが、重盛の望みだったのである。
重盛の愛した女性と、弟子・白石の婚約者である茜は、母娘だったこともわかった。師弟の絆が、不思議な縁で結ばれた瞬間である。
重盛は後悔していた。大切な女性を捨て、将棋人生を選んだことを。しかし、その娘である茜は言う。「母は重盛さんをずっと応援していた。奥多摩に移住してきたのも、あなたとの思い出があるからだ」と。
二人で何度もお参りした神社で、最後の命を終えようとしていた重盛。またもや持ち前の洞察力でそのことを察知した江波は、重盛の自死を阻止する。
江波が止めたおかげで、重盛は目の前の苦しみとあらためて向き合うことになる。しかし、それと同時に、大切な人たちとの絆にも気づき直すことになるだろう。
悲しく切ない死と、それが浮き彫りにする人の絆。なんとも人情味あふれる駐在さん・江波は、事件を解決に導くことで人の心を守っている。それを見届ける私たち視聴者の心とともに。
※この記事は「駐在刑事Season3」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
水根山で滑落事故が発生し、江波(寺島進)は現場に急行する。滑落した人物は大学教授・奥田(河西健司)で、病院に搬送されたものの死亡してしまう。しかし、死因に疑問を持った江波と玲香(藤井美菜)は、殺人の可能性も視野に入れ捜査を進める。一方、江波はバッグアーティスト・真澄(映美くらら)にときめく。
第5話のレビュー
奥多摩で起こった次の事件は、山中での滑落事故。東京科学大学の面々が微生物研究のために水根山に入ったところ、不運な事故が起こってしまった。奥田教授(河西健司)が誤って足を滑らせ、加えてマムシに刺された毒により、亡くなってしまったのだ。
奥田教授の助手である河瀬明日香(野村麻純)が補助についていたにも関わらず、事故を防ぐことはできなかった。その件について、同じく教授である柿沼(神尾佑)は彼女のことを酷く責める。
果たして、この事故は予期せぬものだったのか。
それとも、第三者の意図による殺人だったのか……?
今回の事件捜査にあたって、奥多摩の駐在刑事である江波(寺島進)と刑事課長・和泉(藤井美菜)の間に、一種の信頼関係が生まれた。
35歳を目前に、仕事で目立った実績も上げられないまま、周りに置いていかれている感覚に悩まされている和泉。母からの頻繁な連絡にも心を疲れさせている。
奥田教授の死亡事故は確実に”殺人”であるとみて、少々、一方的な捜査に乗り出す和泉。なんとか手柄を立てようとする焦りが、全面に出てしまっている。そんな和泉の様子を軽部刑事(佐藤寛太)から聞いた江波は、上手く彼女をなだめながら捜査を進めていく。
やがて、捜査線上に浮かんできたのは、やはり柿沼教授と河瀬助手だった。
自身の出世のため、日頃から奥田教授の存在を邪魔に思っていた柿沼教授。同じく、奥田教授から”アカハラ”に遭っていた河瀬助手。利害が一致したことにより、柿沼教授が半ば無理やりに河瀬助手を従わせ、奥田教授を死に追いやったのだ。
アカハラ=アカデミックハラスメントとは、研究職員が「助手」→「助教授」→「教授」とステップを踏んで出世していく過程を、圧力によって封じる動きを指す。大学内で起こるパワハラといったイメージだろうか。
日々、奥田教授の元でせっせと研究に励み、論文を提出していた河瀬助手。しかし、奥田教授は「私の元で勉強した方が確実に実績を積める」と言って、河瀬助手が他の大学へ移ろうとするのを間接的に阻止した。
その様子を知っていた柿沼教授は、良い機会だとばかりに利用したのだ。
女性だから。まだ若いから。そんな理由でまともに仕事もできず、実績も上げられない。和泉は、河瀬助手の立場に大いに同情し、自身を重ね合わせた。
河瀬助手から見たら、若い女性である和泉が刑事課長にまで昇りつめている状況を見て、単純に羨ましく思うだろう。
しかし和泉は「あなたが思っているほど、上手くはいってない」と応じる。まだまだ女性の社会進出が前途多難である、現代の時勢を反映していると言っていいかもしれない。
江波と和泉で協力しながら捜査を進め、無事に真犯人を特定できた今回の事件。
和泉が警察になりたいと夢見るようになったきっかけは、幼少期、江波のような駐在員に世話になった記憶が残っているからだという。
これまで、なんとか実績を残し、出世したいという欲が強く出ていた和泉だが、自分のために捜査に協力してくれる江波の姿を見て、その態度が少しずつ軟化しつつある。
物語も、そろそろ折り返し地点。奥多摩に平和が訪れてほしいと願うが、どうやら次回も不穏な事件が幕を開けてしまう予感がする。
※この記事は「駐在刑事Season3」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
展望台で変死体が見つかる。被害者は、江波(寺島進)が前日に職務質問をした男性で、7年前にストーカー規制法違反で逮捕された前科があったと判明する。捜査本部は世間で話題となっている、SNS上で警察の不祥事を暴く「リタ・ヘイワーズ」を名乗る日比野(竹財輝之助)が、この事件に関わっているとにらむ。
第6話のレビュー
奥多摩のキャンプ場で発見された変死体。犠牲となったのは森神琢磨(河原健二)という男性であることがわかった。彼は過去に麻生つむぎという女性にストーカーとしてつきまとっていた過去がある。
なんとも痛ましいことに、麻生は森神から逃げる道中で車に轢かれ、そのまま亡くなってしまった。事前に警察に相談していたにもかかわらず、死を免れることはできなかった。同時期に殺人事件が起こっていたことにより、警護にまで人員を割けなかったのだ。
森神さえ何とかしていれば、麻生が亡くなることはなかったかもしれない。しかし、なぜ今になって森神の変死体が奥多摩で見つかったのか……?
ここで、捜査線上に浮かんできた人物がいる。日比野達矢(竹財輝之助)だ。
彼は軽部刑事(佐藤寛太)の元家庭教師で、麻生とは恋人同士だった。森神の変死体が見つかったタイミングで、奥多摩にソロキャンプをしに来ていた。麻生が亡くなった間接的な原因として、森神に恨みを抱いていてもおかしくない。
加えて、日比野には、もうひとつの疑惑がある。
ネット上を騒がせている「リタ・ヘイワーズ」と呼ばれる謎の存在。ひたすらに警察の怠慢を糾弾するような内容を投稿し続けているSNSのアカウントだ。このリタ・ヘイワーズも日比野ではないかと思われている。
麻生の警護のために、たった一人でも警察の人員を割いてくれていたら、悲しい事故は起きなかった。森神に向ける恨みが、等しく警察に向いていても何らおかしくはないだろう。
森神殺人容疑と、リタ・ヘイワーズ。双方とも、黒幕は日比野で間違いなさそうだ。少なくとも、現場に残されたすべての証拠がそう物語っている。
しかし、何かがしっくりこない……。
軽部は言った。あまりにも証拠が揃いすぎている。まるで周到な罠が張り巡らされているかのようだ。このやり方は、過去に日比野から教えを受けていた軽部にとっては、感覚的に覚えがあるものだった。
外堀を埋められ、気づいたら時すでに遅し……。今回の事件も、何か裏があるに違いないと思わせられる。
加えて、筆者にとってまったくノーマークだった、とある女性の存在が気になり出す。前回いきなり登場した、バッグアーティストの真澄(映美くらら)だ。
バッグアーティストとして腕に磨きをかけ、将来は個展を開くことを夢見ている女性。奥多摩でソロキャンプをしながら、バンライフ(車中泊)を楽しんでいる。
奥多摩の駐在さん・江波(寺島進)とも気が合い、互いに独身であることが分かって以降は、なんだか良い雰囲気になったりも。ちょっとした恋愛要素を入れ込むためのキャラクターだと思い、事件には関係しないと思い込んでいたのだが……。
警察は、状況証拠から日比野が犯人だと断定し、逮捕状を発令。しかし、日比野は「顧問弁護士が来るまでは一切なにも話さない」と断固たる態度。やがて、日比野には完璧なアリバイがあると判明し、森神の殺害は物理的に不可能であることがわかる。
果たして、森神を殺害した真犯人は? リタ・ヘイワーズとの関係性は?
そして、バッグアーティストの真澄が、奥多摩へやってきた本当の理由とは?
次回、早くも最終回。
※この記事は「駐在刑事Season3」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
捜査一課が殺人容疑で逮捕した日比野(竹財輝之助)のアリバイを証言する人物が現れ、誤認逮捕だったことが判明。加倉井(北村有起哉)は会見後、捜査から外されてしまう。上の判断に納得できない江波(寺島進)は、独自で捜査を開始。軽部(佐藤寛太)も迷いながらも、日比野の証拠に疑問を持ち江波の捜査に協力する。
第7話のレビュー
森神琢磨(河原健二)が変死体となって発見された事件。日比野達矢(竹財輝之助)を真犯人とし、警察は逮捕まで漕ぎ着けたが……最後の最後で覆せないアリバイがあることがわかり、釈放せざるを得なくなった。
森神を殺害したのは、日比野ではないのか?
だとしたら、真犯人は誰なのか?
誤認逮捕をしてしまったことで、警察は謝罪会見を開くことに。全責任を押し付けられた加倉井管理官(北村有起哉)は、本件の捜査本部から外されることになってしまった。
しかし、江波(寺島進)をはじめとする加倉井チームは、このまま黙って終わらない。警察本部とは別口で捜査本部を置き、独自に捜査を進めることを決めた。
決定的なアリバイによって、日比野は捜査線上から外れた。まるで罠のように張り巡らされた数々の証拠には、何かメッセージが込められているのだろうか?
ここで、数日前から奥多摩に滞在しているバッグアーティスト・真澄(映美くらら)の存在が浮上する。彼女は事件に関わりのない存在だと勘違いしていたのだが……。
なんと、森神を殺害した真犯人こそが、真澄だったのだ。
当初、日比野が森神を殺害したとみられていたのは、森神が麻生つむぎという女性をストーキングしていたから。日比野は麻生つむぎのことを「大切な女性」と表していたため、てっきり二人は恋人同士だと思い込んでいた。そのため、彼女に危害を加えていた森神を恨んで犯行に及んだと捉えられていたのだ。
しかし、実際は違った。
真澄こそが、日比野と恋人関係にあった。真澄の本名は「麻生真澄」ーーつまり、森神にストーキングされ、不運にも命を落とした女性・麻生つむぎの姉だったのだ。森神は麻生姉妹に対して、しつこくつきまとっていたことになる。
バッグアーティストとして、ニューヨークで個展を開く夢を持っていた真澄。しかし、奥多摩の地まで追いかけてきた森神の存在に頭を悩ませていた。鉢合わせ、揉みあった末に誤って殺害してしまったのだ。
日比野がわざと自分を誤認逮捕させたのは、より一層、警察に対して「日比野こそが森神殺害の真犯人である」と植え付けさせるため。罠のように証拠を散りばめたのも、真澄に捜査の手が及ばないようにするためだった。
大切な人の、大切な夢を壊さないために、自分が身代わりになろうとしたのである。
学生時代に日比野と親交があった軽部刑事(佐藤寛太)。利他の精神について教えてくれた日比野が、人を殺すはずはない……。そう信じていた彼にとって、この事実は吉なのか、それとも凶なのか。
ただひとつ言えることは、やはり軽部にとって、日比野は日比野のままだったのだ。人のためを思い、人のために行動できる人。恋人のために殺人の罪を被ろうとした彼の行動は、まさに利他の精神に則っていると言えるだろう。
「やっぱり、先生は先生だった」ーー軽部のこの言葉が、苦々しくも沁みる一言だった。
そんな軽部は、奥多摩を去って警視庁官を目指す道を選んだようだ。「寂しくなるな」と江波が言うように、Season3まで続いた本シリーズが幕を閉じるのも、何とも寂しい。
しかし、彼らは再び帰ってくるはず……。なぜかそう思えるから、不思議だ。
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「駐在刑事Season3」の各話を1つにまとめたものです。
–{「駐在刑事Season3」作品情報}–
「駐在刑事Season3」作品情報
【放送日時】
2022年1月14日(金)スタート(初回2時間スペシャル)
【予定】
毎週金曜よる8時
【放送局】
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
【原作】
笹本稜平 「駐在刑事」「駐在刑事 尾根を渡る風」(ともに講談社文庫)
【主演】
寺島進
【出演】
北村有起哉 笛木優子 佐藤寛太 藤井美菜 鈴之助
梨本謙次郎 徳井優 山口祥行 小林星蘭 / 市毛良枝
【脚本】
田子明弘 入江信吾
【監督】
小林義則 皆元洋之助 元村次宏
【音楽】
諸橋邦行
【主題歌】
鈴木雅之「メロディー (Remix’22)」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
【チーフプロデューサー】
濱谷晃一(テレビ東京)
【プロデューサー】
阿部真士(テレビ東京)田中智子(テレビ東京)元村次宏(東通企画)
【製作】
テレビ東京 東通企画