初見のときから「熱量高くない?」と感じていた。
2021年11月26日に全国公開された『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』での嵐・二宮和也の話だ。
何年も嵐のコンサートを観てきたが、こんなに熱っぽい二宮和也を観たのは、初めてかもしれない。
何が彼をそうさせたのか、どうしても知りたくて何度も映画館に通った。過去のライブ映像や発言を振り返って、ようやく少しだけ分かった気がする。
ここからは、『ARASHI 5×20 FILM』内での魅力をピックアップし、映画内での二宮和也熱量の理由を紐解いてみたい。
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歌、ダンス、魅せ方を知り尽くしたパフォーマンス
『ARASHI 5×20 FILM』での二宮和也の素晴らしさとして、「歌」「ダンス」そしてその「魅せ方」の3つを挙げたい。
本作では、各メンバーのソロ曲はセットリストにないが、1人ずつにスポットライトを当てる曲が用意されている。二宮和也は「果てない空」で、他のメンバーとの掛け合いをするような歌割りでその歌唱力の高さを見せつけた。
2010年に主演したドラマ「フリーター、家を買う。」の主題歌をこんなアレンジで披露するなんて、映像も浮かんできてもう泣くしかないのだが……こんなに感情たっぷりに歌い上げられたらどうしたって聴き入ってしまう。
約3時間半もある長い公演時間中、嵐のメンバーはほとんどの曲を踊り続け、そのダンスにも惹きつけられる。
彼のダンスは、力が抜けていて柔らかいのに緩急がしっかりついている。キメてほしいところはビシッとキメるのだ。「あっその動き、好き」が連続して繰り広げられる。一挙一動が最高の角度でありながら、普段よりもやや熱っぽく踊るのである。好みの問題であることは承知のうえで、二宮和也のダンスの美しさったら……。
歌とダンスも最高だが、映画館でもこれだけの熱が伝わってくるのは、その“魅せ方”が大きい。嵐結成20周年を記念した本ツアーは、感謝の意味合いが強い。それに伴い、多数の楽曲の中から選ばれたセットリストも、感謝の気持ちが込められたメッセージ性の高いものが多く取り入れられている。
象徴するのは、本編の最後で歌われる『5×20』。作詞は嵐、Rap詞は櫻井翔が担当となっている歌詞をメインで書いたのは二宮和也だ。グループ結成からの20年間を振り返りながら、メンバー同士とファンの関係をたくさんの愛を込めて歌う、ツアーで伝えたいことがぎゅっと詰まった一曲になっている。
そんな最高のプレゼント曲でとりわけグッと来てしまうのが、「きっと他にいないだろう だって… そんなやつは他にいないんだ もう」の二宮パートだ。歌っているというより、話している。心からの「他にいないんだ」という言葉、そのときの表情、否定を表現する手の動き。そんなことされたら、どうやったって泣くしかないだろう。
グループへの愛の大きさが、歌のたった1フレーズでこんなにも伝わってくるのは、二宮和也だからこそ成せるワザだ。
–{二宮和也と演技、そしてカードマジック}–
二宮和也と演技、そしてカードマジック
『ARASHI 5×20 FILM』の二宮和也が一際輝いてみえるのは、これまでの芝居の経験が大きく影響しているためだと考える。
カードマジックを得意とする彼は、以前バラエティー番組の中で「カードマジックの勉強がお芝居に役立った」と話している。マジックの技法の1つに、観客の注意を意図していない別の所に向かせるテクニックの「ミスディレクション」という技がある。人の注意を操るこの技術が、ほかの出演者との会話をスムーズに見せたり、逆に注目してほしいところに目を向けさせたりするのに役立っているという。
何をもって演技の上手い・下手を決めるかは難しいが、わたしはニュートラルな状態を演じられることに二宮和也の演技力の高さを感じている。多くの人に見守られる中、カメラの前に立って自然にふるまうことは、怒りや喜びの感情を表現するよりずっと高度ではないかと思うのだ。それができるのは、彼が子どもの頃からアイドルとして多くの人に注目される立場であり続けたからではないか。バラエティ番組などでも常温でリラックスした印象が強いが、それは一人で家にいる状態とは違うはず。自然にふるまっているように見せることを、後天的に身に付けたのだ。
そう考えると良い意味で、彼は20年間「嵐の二宮和也」を演じ続けてきたとも言えるだろう。それはキャラを演じているというネガティブな意味ではなく、グループのためにより高みを目指す向上心だったはず。
アイドルとして魅せ方を意識し続ける中で、彼は映画『硫黄島からの手紙』で世界的に評価されたり、『母と暮らせば』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞したりと演技力で高い評価を受けている。それにもかかわらず、「僕は俳優ではなくアイドルです」と一貫して話してきた。
それは、個人での仕事もすべてはグループのためにやっていると公言してきたことにもつながっている。二宮和也のすべては嵐のためだったのだ。
–{収録日2019年12月23日に演じたのは「メンバーに見せたい嵐の二宮和也」}–
収録日2019年12月23日に演じたのは「メンバーに見せたい嵐の二宮和也」
持ち前のセンスの良さで状況を掴み、繊細な演技ができる二宮和也が、2019年12月23日の映画撮影のためのコンサートで普段より熱っぽいパフォーマンスをしたのはなぜか。
自身の魅せ方を知り尽くしている彼のことだ。「コンサートで気持ちが高まってしまっただけ」であるとは考えにくい。あれは、嵐のメンバーに見せるためではなかったのではないか。
2021年12月31日。グループ活動休止前最後のコンサートで彼は、「この21年間発してきた僕の言葉はすべて4人に向けたものだったし、すべて4人が生んでくれた言葉だった」と言っている。活動休止まであと数時間となったタイミングでそう言い切る彼だ。言葉はもちろん、歌もダンスも振る舞いも、すべて4人のためだったとしても、決して大げさではないだろう。
この映画を手がけた堤幸彦監督は、嵐の「人間性」と「表情」が伝わるよう作品づくりを進めたと話していた。きっと「メンバーへの愛にあふれた、グループのために力を尽くす二宮和也」を『ARASHI 5×20 FILM』に残したかったのだと思う。
以上のことから、すべてはグループのためだったというニノが、これまでで一番いい演技をしている映画は『ARASHI 5×20 FILM』だとわたしは思う。「嵐の二宮和也」以上に彼に合う役なんて、きっと他にいないだろう。
(文:荒川ゆうこ)
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–{『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』作品情報}–
『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』作品情報
◆映画タイトル:『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』
◆出演:嵐
◆監督:堤幸彦
◆撮影日:2019年12月23日 東京ドーム
◆日本公開:11/3(水・祝) ドルビーシネマ限定 先行公開 11/26(金) 全国公開
◆配給:松竹
◆海外セールス:ギャガ