圧倒的に<新しい有村架純>:『前科者』でアップデートされた没入感

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今をときめく若手女優から着実に演技派女優への道を歩みつつある、有村架純

THE 女優な華やかさがありながらも、同級生や後輩のような健気な親近感でスッとお茶の間に溶け込んでくる。この独特な持ち味、彼女ならでは。

「この人が出ている映画やドラマはついつい見てしまう」ってこと、よくあると思う。かといって、そのように思わせられる女優はそう多くはない。

ーーいつからだろう、有村架純がわたしにとってそんな存在になったのは。

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女優・有村架純、兵庫県伊丹市が生んだ奇跡。

(C)2011 「阪急電車」製作委員会

兵庫県伊丹市出身・南野陽子に次ぐ大スターとなった、有村架純。

映画デビュー作となったのは、兵庫県出身である戸田恵梨香、南果歩、芦田愛菜、相武紗季、鈴木亮平らも出演した『阪急電車 片道15分の奇跡』。
女優デビュー作であるドラマ「ハガネの女」から約1年後、錚々たる面々に囲まれながら、主要人物である門田悦子を好演して脚光を浴びた。

実は筆者も、兵庫県伊丹市出身で幼少の頃より女優を目指し演劇に勤しんでいた。
バイト先に共通の友人もいて高校生の頃から彼女の話をよく聞いていたし、朝ドラのオーディションで鉢合わせしたこともあった。

そんな彼女が、熱心に現在の所属事務所・フラームのオーディションを何度も受け、見事合格し「週刊ヤングジャンプ」で芸能界デビュー。続々とドラマや映画に出演する姿を見て、ますます憧憬の的になると同時に、多大なる悔しさを感じたことを今でもよく覚えている。

だからこそ、彼女の輝かしい活躍は心から嬉しいし、尊敬の念が尽きない。

女優という茨の道を歩んでいくには、運だったり、ずば抜けた容姿だったり、天才的な演技力だったり、様々な要素が必要。しかしこれらは“絶え間ない努力”あってこそ生み出されるものでもある。

それは、有村架純の活躍の変遷を見守っていれば、誰の目にも明らかなはずだ。

挙げたら止まらない、有村架純の推し作品

「有村架純といえば」という映画やドラマは数多くあるし、思い入れも人それぞれ異なるだろう。今回は個人的な推し作品について述べたい。

ドラマ部門

1つ目、「SPEC」での“ミショウ”の係長・野々村の愛人役・雅ちゃんはもうかわいすぎてかわいすぎて……。悶絶する人、続出。

2つ目、連続テレビ小説「あまちゃん」でのアキの若年期。あんなに聖子ちゃんカットが似合う子、他にいる?いや、いない。実はヒロインオーディションにて落選したものの、違う役柄で見事飛躍したというエピソードも好き。
そして、この3年後に「ひよっこ」で見事ヒロインを射止めるというエピソードはもっと好き。

3つ……じゃなくて4つ目、「失恋ショコラティエ」のまつりちゃん。毎年バレンタイン前後は決まってこのドラマが見たくなるよね。溝端淳平演じるオリビエとの純粋な恋模様、ごちそうさまでした。

(C)フジテレビ

5つ目、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の音ちゃん。大物女優・有村架純が形成されてきたのはこの頃からのような気がする。白桃の缶詰を見るたび音ちゃんのことを思い出すよ。

6つ目、「有村架純の撮休」の有村架純。これはもう本当に本人のプライベートを覗いているのではないかと錯覚してしまうくらいにはリアル。特にエピソード2「女ともだち」は神回で、パーカーにメガネ、片手にビール、そして勘違い男を淡々と突き放す架純、最高です。

(C)日本テレビ

7つ目、「コントが始まる」の中浜さん。はい!!待ってました!!マクベスオタクな中浜さん!!真面目すぎるがゆえに人生に挫折してファミレスでアルバイトを始め、心の救いとなったマクベスのコントを見漁る中浜さん。彼女に対して「わかるよ……中浜さんの気持ち、痛いほどわかるよ……!」とどっぷり感情移入してしまう人も多くいただろう。

…気がついたら、ドラマだけで7つもピックアップしてしまった……。

映画部門

(C)2011 「阪急電車」製作委員会

1つ目、『阪急電車 片道15分の奇跡』のえっちゃん。彼女の地元が舞台となったこの作品を外さないわけにはいかない。初々しさはあるものの、関西弁での芝居が板についていて大物女優の可能性をひしひしと感じる1本だ。

(C)2015 映画「ビリギャル」製作委員会

2つ目、『ビリギャル』のさやか。清純派なイメージが強かった有村架純が、まさかまさかのギャル役。驚いたものの、ギャルな架純も最強かわいい。見違えるように優等生になり、のし上がっていくその姿に誰もが勇気をもらったことだろう。

(C)2016 映画「何者」製作委員会

3つ目、『何者』の瑞月。佐藤健に菅田将暉、二階堂ふみ、岡田将生、山田孝之、そして有村架純……全員主役?な豪華すぎる布陣にも注目。元カレのライブを恍惚とした表情で聞く瑞月を見たら、二宮じゃなくても誰だって「惚れてまうやろー!」ですよあんなん。

(C)2017「ナラタージュ」製作委員会

4つ目、『ナラタージュ』の泉。教師との許されざる恋という状況に見ているこちらも終始ドキドキだし、泉の少女から大人へと移りゆく“女”になる瞬間に、彼女の新境地を見た。

(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

5つ目、『花束みたいな恋をした』の絹ちゃん。有村架純ベストどころか歴代邦画ベストに入る歴史的作品。サブカル度満点な絹ちゃんを演じてくれてありがとうと感謝を伝えたい。はじめて麦くんの家に行った時にドライヤーで後ろから髪の毛を乾かしてもらっているときの表情、優勝。

他にも推したい作品はあるが、キリがないので一旦このへんで。
いつだって役に本気で向き合い、ベストを出し切っているからこそ、どの過去作品を見返しても“全力の有村架純”を感じ取ることができる。

そんな有村架純が、2022年1月28日公開『前科者』で保護司・阿川佳代を熱演し、女優としてさらなるアップデートを仕掛けてきた。どうやら彼女の勢いはとどまることなく燃え盛り続けるみたいだ。

–{映画・ドラマ「前科者」から推し測る、有村架純の尋常じゃない“没入感”}–

映画・ドラマ「前科者」から推し測る、有村架純の尋常じゃない“没入感”

(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

「ビッグコミックオリジナル」にて2018年1月より連載中の「前科者」
原作をベースとした物語がWOWOWオリジナル放送された連続ドラマ「前科者 -新米保護司・阿川佳代-」として、オリジナルストーリーであるドラマの3年後が描かれた物語が映画『前科者』として実写化された。

(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

映画『前科者』はドラマを観なくても充分楽しめる内容になっている。
それでも、阿川佳代(有村架純)にとっての初めての保護観察対象者であり今では親友でもある斉藤みどり(石橋静河)や、保護司として奮闘する佳代を見守る保護観察官の上司・高松直治(北村有起哉)と佳代がアルバイトをしているコンビニの店長・ 松山友樹(宇野祥平)との関係性を知っておいた方がより入り込めるとは思う。

WOWOWオンデマンドAmazon Prime Videoにて配信されているので、ぜひチェックしてみてほしい。

ドラマは、全6話で1話30分ほど。新米保護司・阿川佳代が、3人の前科者ーー斉藤みどり(石橋静河)、石川二朗(大東駿介)、田村多実子(古川琴音)ーーとともに成長する姿が描かれている。

(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

映画『前科者』ではその3年後が描かれる。保護司として元受刑者に対して自身の生活もなにもかも放り投げ全力で向き合う姿は変わらず、相手を思った上での厳しさを持ち逞しくなった阿川佳代の姿が印象的だ。

1つだけ注意しておきたいのは、映画『前科者』を「WOWOWやアマプラで配信されてるドラマの映画版ね〜」くらいの軽い気持ちで観ない方がいいということ。さもないと、想像を絶する虚無感に襲われて鑑賞後もずるずると引きずることになってしまう。
まぁ、この覚悟をしたうえで観てもこのザマだったので、申し訳ないが抜け道はない。

(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

過酷すぎる運命を辿ってきた工藤誠(森田剛)、実(若葉竜也)、滝本真司(磯村勇斗)、そして有村架純演じる阿川佳代に傾注しすぎてしまい、涙でスクリーンが霞むほどに、手が震えてしまうほどに心苦しくなってしまうのだ。
それも、この言うまでもない実力派キャストが揃っているのだから尚更である。

映画『前科者』を通して、有村架純が阿川佳代に、いや阿川佳代が有村架純に取り憑いたようにその姿を体現していて、あらゆるシーンで彼女の感情に没入してしまった。
これは、有村架純自身がその役に没入していることが大前提であり、そのパワーにぐいぐいと引き込まれまるでノンフィクションかのような錯覚をも起こす“不思議体験”だ

見れば見るほどに良い、スルメのようなうまみを持つ演技力

(C)2017「ナラタージュ」製作委員会

有村架純のお芝居は、どの作品のどんな役においても安心して見ていられるのが特徴だ。
ドラマであれば初回より2話、3話というように、見れば見るほどに良くなっていく、スルメのようなうまみを持っている。

10代で初々しいデビューを飾った有村架純も間もなく30代に突入。
女優としてますます脂が乗ってくるこの時期に、初の大河ドラマへの出演も控えている。

これはもう間違いなく、新垣結衣や長澤まさみ、戸田恵梨香、石原さとみなどに続く黄金世代女優への仲間入りを果たす切符となるだろう。
彼女のさらなる活躍を、テレビの前で、スクリーンの前で全力待機して迎え入れたい。

(文:桐本絵梨花)

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