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古川雄大主演の「私の正しいお兄ちゃん」(フジテレビ系)が2022年1月10日(月)より放送スタート。
モリエサトシによる同名漫画を原作とした、ジェットコースター・クライムサスペンス&ラブドラマで、ヒロインを山谷花純が務める。
cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
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大学生の木崎理世(山谷花純)は、アルバイト先で幼少期に離れ離れになった兄に面影の似た内田海利(古川雄大)と出会う。眠れないという海利に肩を貸すうち、理世は、海利に惹かれていく…。
しかし、海利のアパートで見てしまった日記には「人を殺した罪からは逃れられない」という文章が…。
第1話のレビュー
FODオリジナルドラマ「私の正しいお兄ちゃん」が地上波初放送となった。
主演は前クールのドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(日本テレビ系)で杉咲花演じる弱視の主人公・ユキコが、学生時代にバイトしたハンバーガーショップの茶尾店長を好演した古川雄大。
茶尾店長の親しみやすいキャラクターをイメージしている人は驚くだろう。本作の古川雄大は、どこか危うく近寄りがたいオーラを放っているからだ。
物語は、大学生のヒロイン・木崎理世(山谷花純)がカフェでのアルバイト初日を迎えるところから始まる。そこで出会ったのが、古川雄大演じる内田海利だ。
理世が自己紹介で「どこでも寝られる」ことが特技だと話し、和気藹々とした空気が流れる中、海利だけは何故か思いつめた表情を浮かべている。一方、理世にとっても海利は気になる存在だった。それは海利が幼い頃に両親の離婚で離れ離れになった兄に面影が似ていたから。
海利の人の顔を覗き込む仕草にドキドキし始めた矢先、理世はあることを打ち明けられる。
どこでも寝られる理世に対し、海利は長い間不眠に悩まされていた。しかし、バイトの休憩中にうとうとしていた理世の肩にもたれかかっていたら自然に眠れたという。
疲れ切った海利の顔を見かね、理世は肩を貸してほしいというお願いを了承。出会ったばかりなのに、不思議と互いの温もりから安心感を得る二人のハートフルなラブストーリーが始まる……。そう思いきや、早くも第1話から不穏な展開が待ち受けていた。
ガラリと空気が変わったのは、海利の出身地を理世が当ててしまった時から。海利が鼻歌で歌っていたのは富山にしかないスーパーのCMソングだった。それまで理世に人懐こい笑顔を浮かべていた海利の表情が雲がかる。
「誰にも気を許すな。まだ2年しか経っていないんだ」
そう日記に書き綴る海利は何かに追い詰められているようだった。その日から海利は理世と距離を置くようになり、理世もまた海利が別の人の肩にもたれかかっているところを目撃してしまったことから、ほのかに芽生えた恋心を抑えようとしていた。
しかし、海利から再び理世に肩を貸してほしいと申し出が。結局他の人の肩では眠れることができず、幼い子どものような顔で理世にすがる海利がズルすぎる。こんな押しては返す波のように心乱されたら、誰だって好きになってしまうはずだ。
古川雄大が本気で視聴者を落としにかかっている……恐るべし。でも、このまま安心して沼にハマっていけたらどんなに良かっただろう。理世は海利の家で恐ろしい秘密が書かれた日記を見つけてしまう。
「人を殺して、逃げられるのだろうか」
その言葉はこれから訪れる理世の壮絶な運命を物語っていた。
愛してしまった人の罪と理世はどう向き合っていくのか。気になるのは、彼女と親しげに話していた「立花」という名の刑事(堀井新太)。二人が出会ったきっかけは謎だが、彼はどこか理世に特別な感情を抱いているように見える。
もし海利が本当に人を殺して逃げているのであれば、彼の逃亡劇に幕を降ろすのは立花かもしれない。サスペンスでありながら、これまで見たこともない三角関係の行く末からも目が離せない。
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
海利が人を殺したかもしれない。そんな疑いを持ちながら海利のアパートを出る理世。名前を呼ばれ振り返ると、そこには日記を持った海利の姿が。「俺があいつを殺したのは…」そう言った海利に怯え、理世は慌てて逃げ帰る…。
第2話のレビュー
「人を殺して、逃げられるのだろうか」
海利(古川雄大)の部屋で、衝撃的な秘密が書かれた日記を見つけてしまった理世(山谷花純)。受け入れがたい現実に直面すると、人は“そんなはずない”と自分に暗示をかけてしまうもの。理世もまた、海利が小説家だと思い込むことにした。
しかし、日記を見られてしまったことに気づいた海利は、理世を追いかけてきて「違うんだ。俺があいつを殺したのは……」と言い訳を始める。咄嗟に逃げた理世だったが、海利が人殺しだった事実に苦しむとともに、自分の中で芽生えた恋心に気づいてしまった。
「私の正しいお兄ちゃん」第2話は、繊細で傷つきやすい海利と理世が共依存の入り口に立たされていく姿が印象的だった。
人を傷つけるのは、感情をセーブできない人が多い。立花(堀井新太)に聞いた特徴に海利は当てはまらなかった。幼い自分をいつも守ってくれた兄に容赦なく暴力を振るっていた親、お店の中で声を荒立てるクレーマー。彼らとは違い、海利はいつも穏やかで誰かを傷つけたりしない。
理世の心に変化が現れた時、そこへ更に揺さぶりをかける出来事が。クレーマーに盗まれた自転車を、海利が身体を張って取り返してくれたのだ。
店長(ダンディ坂野)の話によれば、海利は相手から一方的に殴られても一切手を出さなかったという。感謝を伝えるため、理世は勇気を出して海利の家を訪れた。
自転車が盗まれた時、「どうして私なんだろう」と泣いた理世を何も言わず抱きしめてくれた海利。互いの温もりを感じながら、二人はあることに気づいてしまったのだろう。
この人は自分と同じように理不尽な出来事に大切なものを奪われ、傷つけられてきた人間なのだと。そして、その瞬間に生まれる「自分にしか相手の傷をわかってあげられない」という思いが恋愛を加速させる。海利と理世の場合は秘密を共有することで、より深く“二人だけの世界”に入り込んでしまった。
一緒に眠りにつく海利と理世は、大切な人がそばにいる幸せを噛み締める。ある出来事が二人を引き裂くことも知らずに。
理世は後日、立花が兄の行方を密かに追ってくれていたことを知る。年齢、性別、居住地域で調べた結果、何人か理世の兄に該当する人物が浮かび上がった。捜査資料の中に兄と似た男性は見つからなかったが、一つだけ気になる写真が。
それは背中だけを映した写真で、被虐待児の兄と同じ特徴的な傷がついていた。お兄ちゃんが見つかるかもしれない……。そう期待を抱いた理世だったが、すぐに「これは2年前に富山の神通川で見つかった身元不明の遺体の背中にあった火傷の写真なんだ」という立花の言葉に打ち砕かれる。
もし本当に兄が亡くなっていたとすれば、理世にとって残された唯一の希望は海利だけになってしまう。二人が共依存の沼にはまっていく未来が容易く想像できてしまうが、予告を見る限り、もっと残酷な運命が待ち受けていそうだ。
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
アルバイト先を無断欠勤した理世。心配になった海利は、理世のマンションを訪れる。そこには茫然とした姿の理世が。「お兄ちゃんいなくなっちゃった」という理世に対し、とにかく休もうと部屋に入る海利。2人で布団に入り、眠る。理世は海利にそばにいてほしいと話す。そして、やらなきゃいけないことがあるからと、2人で海利のアパートへ向かう。そこで明らかになる衝撃の真実とは…。
第3話のレビュー
立花(堀井新太)の調べで、幼い頃に生き別れた兄と背中に同じ傷を持つ遺体が2年前に見つかったことが分かった。いつか兄と再会する日を待ち望んでいた理世(山谷花純)は意気消沈し、バイトを無断欠勤。心配した海利(古川雄大)がマンションに駆けつける。
「私の正しいお兄ちゃん」第3話は、山谷花純が演じる理世の変わり果てた姿が凄まじかった。あんなにひたむきで明るかった理世は唯一の希望を失ったことで、心惹かれているはずの海利さえも全力で拒絶する。
しかし、どんなに酷い言葉を投げかけられても、ひるむことなく理世の苦しみを真正面から受け止める海利。孤独感から寒さに震える二人は同じ布団に入り、互いの温度を感じる。
「海利さん、ずっとここにいてくださいね」
その言葉は海利が向き合うべき罪から逃れ続けることを意味していた。
理世はこのまま海利との逃避行に走ってしまうのかと思われたが、それより遥かに予想を超える過酷な運命が待ち受けていた。やらなきゃいけないことがあると二人で向かった海利のアパートで、理世はある真実に辿り着く。
海利に殺されてしまった人が唯一大事にしていたもの。それは両親の離婚で離れ離れになる間際、理世が兄に渡したフェルトの怪獣だった。2年前に富山で人を殺した海利と、2年前に富山で身元不明の遺体として発見された兄。つまり、兄を殺したのは現在目の前にいる海利だったという最悪の結論が導かれる。理世にとってみれば、大切な人を2人同時に失ったようなものだ。
お兄ちゃんを殺して逃げるなんて許さない……。海利を自身の手で追い詰める機会を伺う理世は平然を装うとするが、自然と身体が彼を拒否してしまう。そんな理世の態度に不安になった、海利の気持ちを確かめるような行動が少し切ない。
どんな理由はあっても海利が罪を犯したことには変わりないのに、なぜか放っておけず、つい理世がほだされてしまうのも分からなくはないと思わせるのが古川雄大の魔力。彼の優しい笑顔が今回のタイトル通り、「恋しい兄を殺したのは最愛の人」という頭の抱えるような状況をより複雑にしていく。
だが一方で、時折見せる強引な一面が得体の知れない恐怖を呼び覚ます。特に刑事の立花と親しくしている理世に「どういうつもり?」と詰め寄る海利の必死な表情が印象的だ。古川雄大と山谷花純が全身全霊で演じるノンストップのサスペンスラブストーリーからどんどん目が離せなくなる。
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
立花(堀井新太)に警察手帳を突き付けられた海利。海利のことがバレたのかと思ったが、家出中の女子高生に似た子がアルバイト先のカフェにいたので、話を聞きたいとのことだった。しかし、女子高生は若い男たちに連れて行かれそうになる。今すぐには対処できないという立花を無視して、女子高生を助ける海利。そのただならぬ様子の海利を見て、立花が「何に怯えてるんだ?」と聞くと、海利は自分の過去について話し始める…。
第4話のレビュー
海利(古川雄大)が理世(山谷花純)と話しているところに、立花(堀井新太)が警察手帳を見せながら接触してきた。「ちょっと聞きたいことがある」と言われ、人を殺してしまったことがバレたのかと海利は怯える。
しかし、立花が聞きたかったのは、二人のアルバイト先のカフェに訪れていた女子高生について。その時、家出中の女子高生に似ているという彼女が若い男性に連れて行かれそうになり、海利は立花の制止を振り切って助けに行く。
「僕はもう正しいと思うことを曲げたくない」
「私の正しいお兄ちゃん」第4話では、何かに取り憑かれるように正義を貫く海利の過去が明らかとなった。
立花から何に怯えているのかと問われ、転機となった出来事について語る海利。当時高校生だった海利は教育員会の教育長を務めていた父親(阪田マサノブ)のことを心から尊敬していたが、そんな父が自分の在学していた女性教師(佐津川愛美)を性的暴行し、訴えられる。それだけでなく、父親は動画を使って女性教師を脅していた。
真実を知りたい海利は父親の部屋に忍び込み該当の動画を見つけ出す。しかし、そこに父親がやってきて、判例から同意の有無を立証することは難しく、被害届を取り下げる方が女性教師も傷が浅くて済むと諭す。若い頃の海利は思わず父親の意見に納得してしまい、結局動画のデータを盗むことはできなかった。
その際、女性教師から言われた「あんたはあいつの息子。どうせあいつと一緒なのよ」という言葉に海利はずっと支配されていたのだ。
父親とは違うと示さなければ、父親と同じ側の人間になってしまう……。そんな恐怖から正しさに囚われたままの海利に、立花は「そんなことしなくても、君は父親とは違う」と優しく微笑む。海利が高校生だった頃に彼のような人がいてくれたらどんなに良かったか。現実は残酷で、その後の海利は取り返しのない罪を犯してしまった。
海利の過去を知り、最愛の兄を殺した人物であるにもかかわらず、同情してしまいそうになった理世。今回の「憎ませて」というタイトル通り、理世は意を決して海利が兄を殺した時の状況を聞くことにした。
すると、明らかになってきたのは別人に成り果てた兄・マサキ(長谷川純)の姿。理世の知っている優しい兄は自分たちの父親と同じように暴力で人を支配する大人になっていた。
たまたまマサキが、当時海利のバイト先である居酒屋にやってきたことで知り合った二人。性格は正反対だったが、父親を恨んでいるという共通点で不思議と仲良くなり頻繁につるむようになった。しかし、海利はマサキが家に連れ込んだ女性に暴行を加えているところを目撃してしまう。
すぐさま自首を促すも、二人は揉み合いに。「お前だってな、お前の親父と同じなんだよ」と過去の傷を掘り起こされ、海利はマサキを殺してしまった。
この時点では海利が嘘をついている可能性もあったが、立花の調べでマサキが非行グループの一員だったことが分かる。また、海利は自分の言っていることを信じてもらうため、マサキの関係者から集めた証言を理世に渡した。これによって希望を全て失ってしまった理世は、「一緒にいるためにできることは僕がする。いてくれるだけでいいって言ったのは僕なんだから」と自分だけを見てくれる海利にすがってしまうのだ。
しかし、真実は一つの方向からだけじゃ語れない。理世は写真や関係者からの話だけで、海利と同じように兄は殺されても仕方のない人間だと判断してしまったのかもしれないが、マサキの目線から物語を見ればまた違った印象を持つだろう。
理世と生き別れた後、マサキはどんな家庭環境で育っていたのか。虐待を受け続けていたのであれば、だれか彼を助けてくれる人はいたのか。マサキが死んでしまった以上、もう本人の思いは誰も知る由がない。
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
身も心も結ばれた海利と理世。幸せなひとときが流れる。一方その頃、海利を怪しんでいる富山県警の刑事・佐久間(飯田基祐)が訪れる。佐久間は海利に2年前富山で見つかった遺体の似顔絵を渡し、徳本正己(長谷川純)ではないかと尋ねるが…。
第5話のレビュー
兄の正己(長谷川純)は理世(山谷花純)が思っているような人間じゃなかった……。絶望の淵で理世が縋ったのは、自分が側にいてくれるだけで構わないと言ってくれた海利(古川雄大)。二人はついに身も心も結ばれ、「誰かを起こしたくなくて息をひそめる」ような幸せを一身に享受する。
しかし、第5話のタイトル「束の間の幸せ」が物語るように、二人の穏やかな日々は突然終わりを迎えた。
2年前に富山で見つかった遺体は身元不明で処理されていたが、立花(堀井新太)と理世の証言により失踪した徳本正己のものである可能性が浮上し、再捜査が始まる。そして、富山県警の刑事・佐久間(飯田基祐)は関係者を洗い出し、ある人物に目をつけた。正己の失踪直後、富山を離れた海利だ。
佐久間は海利に接触。遺体の似顔絵を渡され、正己ではないかと尋ねられた海利は「お互い富山を離れた後もしばらく連絡を取っていたので、その遺体が正己なわけありません」と咄嗟に否定するも、動揺を見破られてさらに疑いは深まる。
海利から話を聞き、ようやく手に入れた幸せが壊れてしまうことを恐れる理世。そんな理世の不安定な姿を見て、ずっとそばにいるという約束を守ろうと必死になる海利だが、まだ彼女が自分の殺した正己の妹であることを知らない。
しかし、警察は遺体の身元を特定するために理世にDNA鑑定を依頼。理世の身の安全を守るために名前を伏せた状態ではあるが、事情聴取で正己に妹がいたことを海利に話す。これによって、海利が自分自身の罪を正当化していた「この人間が死んでも誰も悲しまない」という理由が崩れてしまった。
「悲しむ人間がいるなら、僕は罪を償わなければならないんじゃないのか?」
そんな海利に「その人が妹を切り捨てたように、妹もその人のことを切り捨てているかもしれない」と、あたかも他人事のように語る理世。しかし、正己は本当に理世を切り捨てていたのだろうか。海利の話によれば、正己はずっと理世からもらったフェルトの怪獣を大事に持っていた。彼もまた理世と同じように、妹と再会する日を夢見ていたのかもしれない。
大切な人がそばにいる幸せを噛み締める理世と海利の日々が続いてほしいと願うのと同時に、殺されてしまった正己の思いを含めた真実が知りたくなる。そんな視聴者の揺れ動く気持ちを反映させているような人物が立花だ。立花は理世の幸せを願いながらも、刑事として容疑者の一人である海利に疑いの目を向けなければならない。
しかし、不自然すぎるほど理世を見守る立花の行動に疑問を持った海利は一つの真実に辿り着いてしまう。それは理世が正己の妹ではないかということだ。
最愛の人の、最愛の人の命を奪ってしまった罪と海利はどう向き合って行くのだろうか。
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
正己は理世の兄だった…。自分は理世の兄を殺してしまった…。その真実に気付いてしまった海利。海利は立花に「犯罪の被害者は何を望むのか」と聞く。それに対して「一番望むのは現状の回復」と答える立花。理世と立花が楽しそうに話しているのを見て、海利はあることを決意し…。
第6話のレビュー
自分は愛する理世(山谷花純)の兄を殺してしまったのかもしれない……。「私の正しいお兄ちゃん」第6話では、犯した罪の重さに耐えられず、海利(古川雄大)の心が壊れていった。
取り調べを担当した刑事の反応から、理世が正己(長谷川純)の妹なのではないかと思い始めた海利。最初はただの偶然だと自分に言い聞かせる海利だったが、正己が生き絶える前に「り…ぜ…」と呟いていたこと、正己が大切にしていたフェルトの怪獣を見せた時の理世の反応、何かに急き立てられるように就寝中の自分に覆いかぶさる彼女の表情がピースとなって繋がる。
理世はたしかに、海利を憎んでいたこともあった。しかし、生前の兄が犯した罪を知り、理世は復讐を果たすのではなく、自分をまっすぐに愛してくれる海利と共に生きることを決めたのだ。
でも海利は、理世が悩み抜いた末に出した答えを知る由もない。「理世が真実を知りながら警察に通報しなかったのは、自らの手で罰を与えるためだ」と海利は異なる結論を導き出してしまった。
海利がこれまでの幸せな日々を振り返るバックで、古川雄大の主題歌「指先、手」が流れる。
この楽曲では、古川自身が作詞作曲を担当。二度と自分には平穏で幸せな日々は訪れないと思っていた海利の前に、理世という一筋の光が差す“希望”と、残酷な運命が二人を引き裂いていく“絶望”が同時に表現されているようで切ない。
罪を犯してしまったことには変わりないが、本来の海利は自分を犠牲にしてでも愛する人を守り抜く正義感の強い人間だ(ゆえに正己を殺してしまったとも言える)。
きっと理世の人生を、自分への復讐で終わらせてしまわないようにと思ったのだろう。海利は自ら命を絶ち、理世の前からいなくなることで彼女を楽にすることを決意。理世が海利のために初めて自分の手を汚したことも知らずに。
理世は立花(堀井新太)からDNA鑑定を催促され、同僚が使用したコームから“自分のものではない”髪の毛を採取して手渡した。これまではただ事実を警察に黙っていただけだったが、理世は初めて海利が犯した罪の隠蔽に手を貸してしまったことになる。
二人の気持ちのすれ違いが綻びを生み始め、少しずつ別れの足音が近づいてきた。
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
海利の手紙を読み、急いで海に引き返す理世。そこには倒れている海利の姿が…。救急車に乗りたかった理世はとっさに兄妹とウソをつき、海利は「徳本正己」として治療を受けていた。一方、DNA鑑定の結果が分かり、遺体と理世は兄妹ではないと証明された。しかし、その結果に立花は納得が行かず…。
第7話のレビュー
ついに次週、最終回を迎えるドラマ「私の正しいお兄ちゃん」。本作は幼い頃に生き別れた兄と再会する日を待ちわびる大学生・理世(山谷花純)が、バイト先の先輩・海利(古川雄大)と出会うところから始まった。
理世はどこか兄に似た面影を持つ海利に心惹かれていくのだが、次々と衝撃的な事実が明らかに。なんと海利は2年前に殺人を犯しており、しかも被害者は兄の正己(長谷川純)だったのだ。当然、幼い頃に両親の虐待から自分を守ってくれた兄を失った理世は海利を憎む。最初は自らの手で復讐を果たそうと思ったほど。
しかしながら、海利が語る話によれば、正己は不良グループの一員で女性に暴力を振るう、理世の記憶に残る兄とは似ても似つかない最低の人間に成り下がっていた。もちろん、どんな理由があるにせよ殺人を正当化することはできない。でも正義を貫こうとした結果、罪を犯してしまった海利に同情した人も多いはず。身内である理世すらも、もはや「兄は殺されても仕方のない人間だった」と思ってしまい、そんな兄の代わりに海利を心の拠り所にしてしまっている状況だ。
ここで気になるのが、「私の正しいお兄ちゃん」というタイトルだ。理世が兄に抱いていた理想は海利に出会ったことで崩れ去ったにもかかわらず、タイトルで“正しい”とされているのは何故なのか。その理由が最終回を目前にした第7話で少しずつ明らかになってきた。
理世は、愛する人の兄を殺してしまったことに気づき、自ら命を絶とうとした海利にこう語る。
「私にとってお兄ちゃんっていうのは、一緒にいるだけで幸せだと思える人のこと。同じように思ってくれる人のことで、その人がいるから辛いことも耐えられて。その人が兄だったから、“お兄ちゃん”って名前が付いてるだけだったんです」
この言葉からわかるのは、理世が求めていたのは“お兄ちゃん”そのものではなく、寄り添い生きる幸せを分かち合える存在だということ。両親からの暴力に怯えていた幼き日の理世にとって、それは正己だった。
あの頃のようにいつかお兄ちゃんと共に平凡な幸せを噛み締めたい。きっとお兄ちゃんもそう思ってくれているはずだ。そんな風に自分を奮い立たせてきた理世は、正己が負の感情に呑み込まれてしまったことを知り、裏切られた気分になったのだろう。一方で、海利は「理世ちゃんのそばにいれるだけでいい」と言ってくれた。
理世にとって“正しいお兄ちゃん”とは、正己の代わりに自分の願いを叶えてくれた海利のことだったのだ。
しかし、そんな理世の考えを間違っていると指摘するのが、刑事の立花(堀井新太)。彼は海利の罪を明らかにすべく、理世のDNAを無理矢理採取しようとする。それは刑事だからというのもあるが、それ以上に何も後ろめたいことのない幸せを理世には掴んでほしいからだろう。
最後に神様が味方するのは正義なのか、愛なのか。
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{第8話ストーリー&レビュー}–
第8話ストーリー&レビュー
第8話のストーリー
無理矢理、立花にDNAを採取されそうになる理世。間一髪で海利が助けに入る。そして、立花に佐久間から「遺体が徳本正己ではないと証言している人物が現れた」と着信が入る。海利と理世が辿り着いた未来とはー。
第8話のレビュー
こんなにモヤモヤとした終わりがあっただろうか。大学生の理世(山谷花純)が幼い頃に生き別れた最愛の兄を殺害したバイト先の先輩・海利(古川雄大)と恋に落ちてしまう様を描いたドラマ「私の正しいお兄ちゃん」が最終回を迎えた。
しかし、私たち視聴者は「これが果たしてハッピーエンドか、はたまたバットエンドなのか」とひどく頭を悩ませることになる。
前回、刑事の立花(堀井新太)に2年前見つかった兄・正己(長谷川純)との血縁関係を調べるために無理やりDNAを採取されそうになった理世。その瞬間に海利が現れ、間一髪で理世を救い出す。直後、立花の元に先輩の佐久間(飯田基祐)から「遺体が徳本正己ではないと証言している人物が現れた」と連絡が入ったのだ。
その人物とは、正己の殺害現場に居合わせた女性・長谷川京香(橋本マナミ)。彼女はナンパを冷たくあしらったことで正己から見るも無惨な扱いを受け、意識を失っているかと思いきや、実は密かに一部始終を目撃していた。佐久間は正己が失踪する直前、京香にしつこく声をかけていたという証言を聞き、彼女をわざわざ富山から東京に呼び寄せたのだ。
自分が犯した罪を知る人物が現れて動揺を隠せない海利だが、意外にも自ら彼に協力を申し出る京香。正己に暴力で人権を侵害され、自分のことが物であるかのように感じていた彼女は海利に優しくしてもらったことで心を取り戻したという。
きっと、卑劣な父親との違いを証明しなければと必死だった海利は京香からの感謝の言葉に救われたことだろう。手段は間違っていたかもしれないが、彼の正義感が一人の人間を絶望の淵から救ったのだ。
京香はあの日、自分に声をかけてきたのは“徳本正己”を名乗る海利だったと取り調べで証言。以前から正己は海利の名前を悪用していたため、度々二人が入れ替わっていたということにしても不自然ではないからだ。しかし、この嘘の証言が思わぬ勘違いを生むことになる。
事件がふりだしに戻る一方、あることを確信した佐久間は海利に接触。
「もう嘘はやめにしましょう。あなたは徳本正己さん本人でしょう?」
“徳本正己”を名乗る内田海利が身元不明のまま死亡したことで、徳本正己は人生をやり直すために内田海利を名乗って妹の前に現れた……そう解釈した佐久間は海利の母親に遺体を確認させていた。もちろん、遺体は正己のものなのだから母親は息子ではないと否定するはずだ。
しかし、父親が交通事故で半身不随になったことで両親は離婚。母親はすべてを忘れて新たなスタートを切るため、「死んだのは息子で間違いない」と証言した。自ら家を飛び出した海利だったが、このことで彼は家族から本当の意味で“捨てられた”と思ったのだろう。理世と家族になるため、海利は徳本正己になることを決意する。
一方、理世の方は家族を“捨てる”覚悟を決める。海利が正己になることを受け入れるということは、本物の正己、つまりはお兄ちゃんを消し去ることになるからだ。幻影となって現れた兄に泣きながら謝罪し、理世は正己を名乗る海利と新たな家庭を築く。
まさか海利の罪が裁かれることなく、二人の幸せが貫かれることになるとは。同じ布団で抱き合いながら眠る海利と理世は本当に幸せそうで微笑ましくなる。でも、この先ずっと二人は一人の人生を奪った罪悪感と向き合っていかなければならないだろう。
ハッピーエンドか、バットエンドか。その判断は視聴者一人ひとりに委ねられている。
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「私の正しいお兄ちゃん」の各話を1つにまとめたものです。
–{「私の正しいお兄ちゃん」作品情報}–
「私の正しいお兄ちゃん」作品情報
放送日時
2022年1月10日(月)スタート 毎週月曜 25:05~25:35
出演
古川雄大、山谷花純、堀井新太、ダンディ坂野、喜多乃愛、佐津川愛美、橋本マナミ、長谷川純、飯田基祐ほか
脚本
加藤綾子、井上テテ、阿部沙耶佳、河原瑶(テレパック)
プロデュース
田淵麻子(フジテレビジョン)
プロデューサー
河原瑶(テレパック)、三本千晶(テレパック)
監督
河原瑶(テレパック)
主題歌
古川雄大「指先、手」(シンコーミュージック・エンタテインメント)
制作協力
テレパック
制作著作
フジテレビジョン