「この人を好きになっても絶対に幸せになれないはずなのに…」
お金や性にだらしない、でもどこか惹かれてしまう。離れたいのに離れられない。そんないわゆる「クズ男」に実際に想いを馳せた経験のある方も多数いることだろう。
映画やドラマを観ていても、ヒロインをたぶらかすクズ男はありとあらゆるところに現れる。そして、そんなクズ男たちを演じるプロこそがわたしの推し、成田凌だ。現在放送中のテレビドラマ「逃亡医F」でも人気を集める彼は、女性の心を惹きつける独特の世界観を醸している。
今回は成田凌が演じる「魅力的すぎるクズ役」の数々を辿りながら、彼が私たちの心を掴んで離さない本当の理由を探っていく。なお本記事は一部ネタバレを含む可能性があることを、あらかじめご容赦頂きたい。
【関連記事】「逃亡医F」第1話レビュー:ラストの「泣いたら、すするからね」では鳥肌ゾゾゾッ!
【関連記事】『ニワトリ★スター』は超必見の傑作!成田凌の濃厚濡れ場を見逃すな!
【関連記事】『愛がなんだ』非リア充必見の恋愛映画である「5つ」の理由!
「愛がなんだ」(2019)
(C)2019「愛がなんだ」製作委員会
成田凌はクズ俳優として名高い俳優である。その一因として「愛がなんだ」のマモルが火付け役になったことは大きい。おそらくこの作品から、成田凌の沼に落ちて抜け出せなくなった方も多いだろう。
マモルは岸井ゆきの演じるテルコの一途な想いを踏みにじる。平気な顔でテルコの恋心を弄ぶマモルのクズっぷりに憤りを感じつつも、いつでも余裕がある態度と恋人さながらのテルコとの甘い時間に、胸がときめいてしまったことは否めない。自分への想いを知ってか知らぬか、いつでも飄々と母性本能をくすぐってくる成田凌のクズ役代表作こそが「愛がなんだ」なのだ。
【関連記事】『愛がなんだ』非リア充必見の恋愛映画である「5つ」の理由!
2.「チワワちゃん」(2019年)
(C)2019「チワワちゃん」製作委員会
「リバースエッジ」や「pink」などの数々の有名漫画を世に送り出した岡崎京子の短編を原作とした「チワワちゃん」では、成田凌はヨシダという青年を演じている。
ところがこのヨシダもなかなかの曲者である。グループの人気者・チワワと付き合ったかと思えば、途中旅行先で浮気をし、しまいには門脇麦演じるミキに欲情して体を重ねてしまう。
ヨシダの口説き文句である「お前だけなんか違う」は映画を見終わった後に、つい口にしたくなる清々しさがあった。人のことをどこか小馬鹿にしているようで誰よりも就活に力を入れていたり、欲に弱い人間らしい一面は、暗い部分も含めて「ありのまま」を曝け出すからこそ生まれる魅力に繋がっていたのだろう。
【関連記事】『チワワちゃん』が傑作映画である「5つ」の理由!青春の爆発と終わりがここにある!
3.飛べないコトリとメリーゴーランド(2015)
(C)2015 Sony Music Artists Inc.
「飛べないコトリとメリーゴーランド」で成田凌が演じるのは、主人公コトリがインターン先で知り合った好青年、江南。そして、もうここまでくると例に漏れず、江南にも女性の影がちらつき、結果としてコトリは江南に裏切られてしまう。
しかし、成田凌の演じるクズ男の凄いところは「ひどい事をしているにもかかわらず執着しているのは女性」という点だ。コトリが江波に何度メールしても返事は全く来なくなり、電話をかけてみると江南の番号は変わっていた。いつだって追うのは女性で成田凌が演じる男たちは華麗に逃げる。ミステリアスに遊んで、深追いはせずにいなくなる。クズ男の鉄則と理解していても、成田凌の曖昧で掴みどころのない態度にどうしようもない色気を感じてしまうのだ。
4.ニワトリスター(2017)
(C)映画「ニワトリ★スター」製作委員会
「ニワトリスター」での成田凌は、今までとは少し異なる方向のクズ男を演じている。成田凌演じる楽人は好きなだけ大麻を吸い、個性豊かなアパートの住民たちと珍騒動を繰り広げながら、自堕落でもそれなりに楽しい日々を送っていた。
楽人は心根もいい奴で女性に対しても漢気のある性格だが、生きている世界がヤバすぎる……!
恋をする相手も覚醒剤中毒のシングルマザー。ここまでくると、なかなか真っ当に幸せを掴めない推しが愛おしくもある。乙女心としては、そろそろ成田凌に幸せになってほしい……!(笑)
【関連記事】『ニワトリ★スター』は超必見の傑作!成田凌の濃厚濡れ場を見逃すな!
–{実は純粋なハートの持ち主を演じるのも得意?}–
実は純粋なハートの持ち主を演じるのも得意?
ここまで成田凌の魅力溢れるクズ役について語ってきたが、実は彼はクズとは真逆の純粋さ溢れるキャラクターを演じている作品でも評判を集めている。筆者が思うに、成田凌は人間の微妙な感情の移り変わりをリアリティ溢れる表現に落とし込むのが上手なのだ。
成田凌の演技を観ていると、例えば「泣いているような笑っているような表情」や「怒る5秒前の心情」をとても的確に形にしていると思った。人間は多面的な生き物だ。クズな側面だけを持つ人間はいない。それはフィクションでも同じことが言える。だからこそ、成田凌の各登場人物をベースとした人柄が滲み出るようなハイレベルな演技ゆえに「なぜか許してしまいたくなる」「ハマってしまう」現象が起きるのではないか。
5.窮鼠はチーズの夢を見る(2019)
(C))水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
ジャニーズの大倉とのツーショットが印象的な「窮鼠はチーズの夢を見る」では、セクシャリティを超え、純粋な愛をひたむきに貫き続ける今ヶ瀬を演じた。今ヶ瀬と恭一の共同生活の中に垣間見える、今ヶ瀬の柔らかな笑顔は恋をすることの楽しさに満ち溢れていた。そして今ヶ瀬のマイペースでありながらも一歩も引かない純真な恭一への想いからは、誰よりも想い人の近くにいるのに叶うことのない恋の切なさがひしひしと伝わってくる。
この物語が私たちの胸を締め付けるのは、作品に散りばめられた詩的な言葉の数々だけでなく、成田凌の何かを諦めたような笑顔や恭一への視線などのディテールまでこだわった演技あってのことだろう。ボーイズラブ作品にあまり普段触れてきていない筆者から見ても、この美しい今ヶ瀬と恭一の物語には心惹かれるものがあった。
【関連記事】『窮鼠はチーズの夢を見る』レビュー:大倉忠義&成田凌が体現する自然体の愛
6.まともじゃないのは君も一緒(2021)
(C)2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会
成田凌演じる大野は何が「普通」なのかわからない。勉強以外に興味を示さない予備校の数学教師だ。何より笑い方や話し方が独特で、タイトル通り、いかにも「まともじゃない」雰囲気がひしひしと出ている。ここまで述べてきたような圧倒的恋愛経験値の高そうな成田凌が演じてきた登場人物から一変して、この作品の大野の恋愛経験値はゼロに近い。しかし、大野はありのままを受け入れてくれる1人の女性と出会い、少しずつ変わっていく。
成田凌の演じる役はクズでも純粋でも、とにかく周囲から好かれる。否、好かれるというよりかは相手の心の柔らかいところに入っていくという表現が正しいのかもしれない。そしてその過程で心を射止められてしまう対象には、観ている私たちも含まれているのだ。知らぬうちに成田凌を受け入れ、彼に染まっていく自分がいることにハッと気がつく。
【関連記事】『まともじゃないのは君も一緒』“普通”じゃないラブコメ快作!
成田凌が生み出すのは「リアリティ溢れる愛の形」
ここまでに挙げた映画は成田凌の軌跡を辿る上で、特に重要な作品であると同時に、これらは成田凌の魅力を掴む手がかりのほんの一部だ。成田凌が演じるキャラクターたちは私たちの過去の記憶を物語に沿って呼び起こし、妙な既視感すら覚えさせる。数々の映画やドラマの中で魅力溢れるキャラクターを演じ、そのどれもが正直「王道愛されキャラ」とは言い切れない要素が強い。
しかし登場人物の欠けている人間らしい部分と、成田凌が持つ憂いを帯びた独特の色気がマッチしたとき、目の離せない存在として物語の中で彼の魅力は一際光る。ビターテイストなクズさも愛くるしい純真さも全部ひっくるめた人間のあらゆる側面を、私たちのパーソナルな部分に訴えかけてくる表現力の幅こそが成田凌しか持ち得ない最大の武器だ。それこそが、彼が誰からも愛されるクズ役として活躍する所以なのだろう。
(文:すなくじら)
【関連記事】「逃亡医F」第1話レビュー:ラストの「泣いたら、すするからね」では鳥肌ゾゾゾッ!