『大怪獣のあとしまつ』、山田涼介&土屋太鳳はファンタ・ジャンルが良く似合う!

ニューシネマ・アナリティクス

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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

怪獣が現れると、人類が叡智をかけて戦うか、正義のヒーローか敵対する怪獣が現れて退治してくれる。

これが怪獣映画&ドラマのパターンでありますが、ではその後、やられてしまった怪獣の死体はどうなるの?

特撮ファンならずとも、誰でも一度はふと考えたことがあるような(ないような?)そんな奇抜なアイデアで攻めるユニークな怪獣映画『大怪獣のあとしまつ』がいよいよ2月4日から劇場公開。

この難題に山田涼介&土屋太鳳、魅力に満ちたふたりの若手俳優らが挑みます!

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笑えるけど意外にリアル!久々の特撮怪獣映画の醍醐味

幼い頃から楽しく見続けてきた特撮怪獣映画&ドラマではありますが、ずっと見ていくうちに、ふと思うことがいろいろありました。

本当に怪獣が出現したら、実際に国はどう対処するのか? 社会は、経済は、どうなるのか? またヒーローもしくは怪獣同士が戦っているとき、近辺のビルの中に人がいたら?

たとえば金子修介監督の平成ガメラ3部作(95・96・99)や庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』(16)は、こういった素朴な疑問に応えてくれる快作でした。

では、退治された怪獣の後始末は誰がやってるの?(爆発させられても、実際は肉片とかいっぱい飛び散ったりしてるでしょう)

これが本作『大怪獣のあとしまつ』の大きな命題になっているわけです。

要するに怪獣といっても動物なわけで、死骸をそのまま放置しておくとどうなるか?それはもう大変なことになります!

特に腐乱した死体の臭いなんて、正直たまったものではありません。猫やネズミみたいな小動物ですらそうですから、ましてや巨大怪獣なんて!

また腐乱によって病原菌などが発生するといった危険も出てくるので、そうなると半径何キロ圏内は危険区域みたいになっていくのも必然で、つまりは人民の生活そのものまで脅かしかねない!

本作では、大きく政治パートと実践パートに二分してドラマが展開されていきます。

政治パートでは総理大臣(西田敏行)を筆頭とする政府高官らのやりとりが、ドタバタ・コメディ・テイストで描かれていきます。

本作の三木聡監督は『インスタント沼』(09)『俺俺』(13)など人を食ったコメディ映画や、テレビドラマ「時効警察」シリーズでも人気のカルト的存在ですが、本作でもそうした個性は濃厚に描出されています。

もっともカリカチュアライズされてはいても議論している内容は意外と結構リアルでもあったりして、スラップスティックではあれ単なるオチャラケにはなっておらず、たとえるならスタンリー・キューブリック監督の名作ポリティカル・サスペンス・コメディ『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(64)あたりに倣おうとしていたのかな?とも思ってしまいました。

一方で、本作では“特務隊”なる首相直属の戦闘部隊が存在するといった設定の下、そのメンバーが大怪獣の死体処理実務を担当することになりますが、こちらはかなりのシリアス・モード!

まさに特撮怪獣映画に出てくる自衛隊やら特殊部隊さながらの張り詰めた空気感を保持しつつ、命絶えた巨大怪獣と対峙していくのです。

その意味では本作、久々に特撮怪獣映画の醍醐味を大いに堪能できる逸品に仕上がっているのでした!

そして、そのメンバーのひとりで本作の主人公となるのが、特務隊一等特尉・帯方アラタ役の山田涼介であり、その元恋人で今は環境大臣の秘書官を務めている天音ユキノ役の土屋太鳳。

このふたり、ここ10年ほどのファンタスティック・ジャンルの日本映画を見続けてきた方なら、何かピンとくるものがあるのではないでしょうか?
 
–{山田涼介&土屋太鳳が醸し出す 映像の虚構性の魅力}–

山田涼介&土屋太鳳が醸し出す映像の虚構性の魅力

Hey! Say! JUMPのひとりとして精力的に活動しつつ、俳優としても旺盛に活躍中の山田涼介ですが、個人的には彼が出演する映画はファンタスティック系のものが多いことに着目していました。

何せ初めての映画出演が、あの『暗殺教室』2部作(15&16)で(企画を聞いたとき、まさかあれが実写になるとは思わなかった!)、2017年のタイトルに偽りなく“奇跡”を描いた『ナミヤ雑貨店の奇蹟』および、実写版エドを魅力的に演じた『鋼の錬金術師』(原作ファンの賛否は知りつつ、私は彼の存在感ゆえに割かし気に入っています)ではキネマ旬報新人男優賞を受賞。

記憶を消去する記憶屋なる都市伝説を題材にした『記憶屋』(20)を経て、昨年は原田眞人監督の時代大作『燃えよ剣』(21/時代劇こそ最大のファンタ映画ジャンル!)で沖田総司を好演し、殺伐とした幕末の京都に爽やかな風を吹かせてくれていました。

TVドラマでも「探偵学園Q」シリーズ(06~07)や「金田一少年の事件簿」シリーズ(13~14)のようなミステリものが印象的で、「地獄先生ぬ~べ~」(14)第8話では絶鬼を演じてましたね。

一方で土屋太鳳は2010年代後半キラキラ映画ヒロインのイメージこそ強いものの(まあ、あれらも一種のファンタジーみたいなものかもしれませんが)、個人的にはブレイク前に出演した『ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10)やOV『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』2部作(11)、TV「ウルトラマン列伝」(12)などの惑星エスメラルダ第二王女エメラナ役が忘れられません。

小中和哉監督『赤々煉恋』(13)での、自殺して幽霊となって街を彷徨いながら人生の真理を見出していくヒロインも切ないものがありました。

かと思うと『るろうに剣心』シリーズ中盤戦(14~21)からの、さっそうとした殺陣を披露する操役!(そう、彼女はアクション女優としても実は絶品なのです)

芳根京子とW主演した『累―かさね―』(18)では口づけした相手と顔&声を入れ替えることのできる口紅をめぐっての、ドロドロ・ダーク・ファンタジーを展開してくれていました。

山田涼介にしても土屋太鳳にしても、どこかしら映像ならではの虚構性に魅力と説得力を与えることに巧まずして長けた天性の資質を持ち合わせているように思えます(もちろん、そのための日々の努力もあることでしょうけど)。

またそれゆえに、ファンタジーでもミステリでもSFでもホラーでも、ファンタスティックな題材に出演したとき、その資質が如実に浮かび上がってくれるような、そんな印象を抱いています。(一方では、ならば純文学的な作品に出演したらどうなるか?という興味と期待も大いにあります)

『大怪獣のあとしまつ』も、そんな両者の共演が単に役柄の関係性以上に映画的虚構の魅力を大いに醸し出すとともに、“大怪獣のあとしまつ”という一大プロジェクトに何某かのリアリティまで与えてくれていたことは紛れのない事実です。

はてさて、そんなふたりに加えてなかなかのオールスター・キャストで贈る特撮怪獣映画『大怪獣のあとしまつ』、実際はいかなる方法で後始末してくれるのか?

もちろんそれは見てのお楽しみです!

(ちなみに私、ほとんど事前の知識なしに本作を見始めて、割かしすぐに結末の予想をぼんやりたてていたところ、ほぼそれに近い終わり方になっていたもので、エンドタイトルを見ながら心の中で「ハハハ……」となってました)

(文:増當竜也)

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–{『大怪獣のあとしまつ』作品情報}–

『大怪獣のあとしまつ』作品情報

ストーリー
人類を恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然、大きな光に包まれて死んだ。国民は歓喜に沸き、政府は怪獣の死体に「希望」と名付けるなど国全体が安堵に浸る。一方で、河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗による体温上昇で徐々に膨張が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが判明。爆発が起これば、漏れ出したガスによって周囲が汚染される事態となる。国家崩壊にもつながりかねない終焉へのカウントダウンは始まった。

だが、首相や大臣らは「大怪獣の死体処理」という前代未聞の難問を前に、不毛な議論を重ね右往左往を繰り返すばかり。絶望的な時間との闘いのなか、国民の運命を懸けて死体処理という極秘ミッションを任されたのは、数年前に突然姿を消した過去をもつ首相直轄組織・特務隊の隊員である帯刀アラタだった。そして、この死体処理ミッションには環境大臣の秘書官として、アラタの元恋人である雨音ユキノも関わっていた。果たして、アラタは爆発を阻止し、大怪獣の死体をあとしまつできるのか。そして彼に託された本当の〈使命〉とは。

予告編

基本情報
出演:山田涼介/土屋太鳳/濱田岳/眞島秀和/ふせえり/六角精児/矢柴俊博/有薗芳記/SUMIRE/笠兼三/MEGUMI/岩松了/田中要次/銀粉蝶/嶋田久作/笹野高史/菊地凛子/二階堂ふみ/染谷将太/松重豊/オダギリジョー/⻄田敏行

監督:三木聡

公開日:2022年2月4日(金)

製作国:日本