菅田将暉が主演、伊藤沙莉や門脇麦など豪華俳優陣が脇を固める月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」が2022年1月10日(成人の日)より放送スタート。
物事を深く考える癖があり、特徴的なヘアスタイルが印象に残る、土日のカレー作りが趣味な大学生・久能整(菅田将暉)。カレー日和な休日に鍋を煮込んでいた矢先、近くで殺人事件があったことを知らせにくる二人の刑事が。やがて、整は身に覚えのない容疑を着せられてしまい……?
cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
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大学生の久能整(菅田将暉)は、朝から自宅アパートでカレーを作っていた。そこに、アパートの大家が大隣警察署の刑事、薮鑑造(遠藤憲一)と池本優人(尾上松也)を連れて現れる。昨夜10時の行動を薮に問われた整は1人でカレーを作っていたと答えた。すると、薮は付近の公園で寒河江健(藤枝喜輝)の遺体が発見されたことを整に伝え、警察署へ任意同行を求めた。
整は薮、そして青砥成昭(筒井道隆)の聴取を受ける。公園で殺害された寒河江は整と同じ高校の出身で同じ大学に通っていた。さらに、寒河江が殺害された時刻に整と争っているのを見た目撃者もいる。そのため、整は容疑者となっていたのだ。だが、薮たちの追求に整は淡々と無実を訴える。目撃情報もはっきりと自分だと言えるのかと理屈を並べて返して行く。
夜になると、整は明日も取調べに応じるという条件で解放された。刑事の風呂光聖子(伊藤沙莉)に預けていた携帯電話を返してもらいに行った整は、彼女がペットロスであることを知る。また、池本が間もなく父親になるという話も整の耳に入った。
翌日、整が警察署に行くと、薮から指紋を採るよう命じられた風呂光と池本が取調室にいる。整は風呂光のペットロスを言葉で癒し、池本にも間もなく出産を迎える妻への労りをアドバイスした。薮はそんな整が犯人に違いないと青砥に告げる。
取調べ三日目、整は署内での立ち位置に悩む風呂光に希望を与えた。そこに藪が来て、寒河江を殺害した果物ナイフが見つかり、整の指紋が検出されたと伝える。
第1話レビュー
特徴的なヘアスタイルがトレードマークの、土日にカレーを作るのが趣味な大学生・久能整(菅田将暉)が、近所の公園で起こった殺人事件の容疑者として警察に連行された。
刑事の薮(遠藤憲一)、青砥(筒井道隆)、池本(尾上松也)、風呂光(伊藤沙莉)が事情聴取をするも、久能は「やってない」の一点張り。
やがて、整の部屋にあった果物ナイフが凶器として出てきたり、被害者に金を借りていたことを示す借用書のデータが発見されたりと、ご都合主義な証拠ばかりが出てくる。
お察しの通り、真犯人は整ではなかった。
だいぶ早い段階から「あいつがやった」と”刑事のカン”を働かせていた薮。青砥や池本など他の刑事と比べると、明らかに温度差があった。何がなんでも整を真犯人に仕立て上げ、逮捕に踏み切りたいかのように……。
彼は約3年前に、妻と息子を”ひき逃げ”されたことにより亡くしていた。実は、そのひき逃げ犯は、今回の殺人事件の被害者である。そう、真犯人は整ではなく、家族の復讐に燃えた薮だったのだ。
家族の復讐のために人を殺してしまい、あまつさえ、その罪を他人(整)に着せようとした薮。それだけならまだしも、復讐のために殺害した相手が、実は「家族を殺したひき逃げ犯ではなかった可能性」まで浮上。
自身の”取り返せない過ち”に気づき、絶望し、憔悴しきる薮。このシーンで魅せた”遠藤憲一の男泣き”に、涙を誘われた方も多かったのではないだろうか。
近年はドラマ「ドクターX」や「ラジエーションハウス」などで見るコミカルな役でも存在感を発揮してきたが、今回のような渋い演技でも、しっかりと魅せてくれる役者だ。
原作に対する愛とリスペクトを感じさせるドラマの構成、キャラクターのリアルさ、音楽のマッチ具合、絶妙な間……。どこを取り上げても、申し分ない仕上がりだと感じた。
原作ファンの方もそうでない方も、この1話を見た時点で、その再現の忠実性とクオリティの高さに惹き込まれてしまっただろう。
筆者がとくに注目したのは、「音楽」と「エピソードの取捨選択」だ。
整の淡々とした、あの畳みかけるような話し口を邪魔しない、クラシカルな音楽。この物語の世界観を引き立たせる音楽が選ばれ、適切に配置されている。
ドラマにおける要素は、役者の演技や脚本構成など様々あれど、音楽の重要性をあらためて認識させられる体験だった。
それに加えて、原作をドラマに再構成するにあたっての、エピソードの取捨選択も秀逸である。
1話は「整、殺人事件の容疑者として疑われる!?」から「図らずも巻き込まれたバスジャック事件」の冒頭までが描かれているのだが、過剰でもなく不足でもない、これ以外にないほどのドラマ構成になっていると感じた。
強いて言うなら、原作にある「海外では”いじめをする側の人間”ほどメンタルケアが必要」といったエピソードが省略されていたのが残念だったくらいだ。整の価値観を表す良いエピソードなので、原作未読の方でご興味があれば、ぜひ読んでいただきたい。
さて。次回は「図らずも巻き込まれたバスジャック事件」の続きからである。
永山瑛太やヒコロヒーなど、サプライズなキャスティングも目立つ本ドラマ。次回はどんな”原作愛”と”リスペクト”を見せてくれるのか、楽しみで仕方がない。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第2話ストーリー&レビュー}–
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
美術館に行くため久能整(菅田将暉)が乗った路線バスがジャックされた。乗客に名前を尋ねる犯人に、整は逆にバスジャックの目的と名前を聞く。すると犯人は犬堂オトヤ(阿部亮平)と名乗るが、目的はそのうちわかると教えなかった。
その頃、大隣警察署には連続殺人事件の捜査本部が立っていた。朝には新たに4体目の遺体が発見されている。被害者に共通点はなく、容疑者の目星すらつかない状態だ。青砥成昭(筒井道隆)や池本優人(尾上松也)らが忙しく動く中、風呂光聖子(伊藤沙莉)は捜査に加わらせてもらえない。そんな時、風呂光は後輩警官からバスジャックの通報があったと報された。だが、付近の路線バスや観光バスは問題なく運行している。風呂光は青砥たちに話すが、ただのイタズラだと一蹴されてしまった。
整の乗ったバスは公園に停まり、オトヤは乗客たちを1人づつトイレに行かせる。真っ先にトイレに向かわされた整は外部に連絡する方法を考える。出がけ前に池本から連絡先を知らされていた整はメモ用紙に現状を書いて、犯人に見つからなさそうな場所に置いた。
再びバスが走り出すと、整がオトヤを理詰めにして怒らせてしまう。逆上したオトヤはナイフで切りかかるが、乗客の熊田翔(永山瑛太)が整をかばった。さらに、乗客の坂本正雄(久保田悠来)がオトヤを殴り倒す。乗客たちは安堵するが、坂本は落ちたナイフを乗客たちに向け…。
その後、バスは犯人の指示で、ある屋敷にたどり着く。
第2話のレビュー
前回の終盤で発生したバスジャック事件。整(菅田将暉)含む数人の男女が監禁され、山奥の屋敷へ連れて行かれてしまった。
整以外にバスジャックの被害者となったのは、金髪イケメンの熊田翔(永山瑛太)、工場で事務員をしている露木リラ(ヒコロヒー)、オドオドしがちな淡路一平(森永悠希)、主婦の柏めぐみ(佐津川愛美)、元役員の奈良崎幸仁(金田明夫)、バス運転手の煙草森誠(森下能幸)。
犬堂オトヤ(阿部亮平)が本バスジャック事件の首謀者である。坂本正雄(久保田悠来)と名乗った男性も最初は被害者だったが、途中から共犯者であることが判明した。
ちなみに、原作では小林大輔という男性もいるが、話の本筋には関係しないと判断されたのかドラマでは省略されている。
バスジャック事件と同時平行で進むのは、連続生き埋め殺人事件。性別も職業も共通点のない男女が、脈絡もなく埋められ殺されている。刑事の池本(尾上松也)や風呂光(伊藤沙莉)が真犯人を追うため捜査を開始するが、決定的な証拠は得られない。
まさにバスジャックが発生している車内や、屋敷に移動したあとも、整のマシンガントークは衰えを見せない。
筆者が特に好きなシーンは、オトヤが「どうして人を殺してはいけないのか?」と問う場面。「捕まるから」「自分が殺されたくないから」など各々の返答をする乗客たちを遮るように「人を殺しちゃいけないってことはないんですよ」と切り返す整。
「罰則はあるけど、人を殺しちゃいけない法律はない」
「秩序を守るために、便宜上そうなっているだけ」
屋敷に連れ込まれた後の、淡路一平の「罪の告白」に対する持論展開も興味深い。
昔からいじめられていた、無理やり駄菓子屋の万引きも強要されたと過去を吐露する淡路。それを聞き「僕は思うんですけど」と前置きしてからの、整の言葉はこうだ。
「欧米の一部では、虐める側の方を”病んでる”と判断し、セラピーなどをすすめるんです」
「日本では逆。どうして、いじめられる側にばかり逃げさせるんだろう」
もちろん、原作にも盛り込まれているエピソードである。筆者は、この整の言葉を目にしたことで、この物語と添い遂げることを決めた。それほど、価値観がひっくり返ったのだ。
面々が屋敷に連れ込まれた後、さまざまな事実が判明する。
どうやらバスジャック事件と連続生き埋め殺人は関係しているらしいこと。屋敷の壁に飾られていた「犬堂愛珠」という女性が、その生き埋め殺人の最初の被害者であること。犬堂兄弟は”復讐”のためにバスジャック事件を計画したこと。
屋敷への道中に立ち寄ったお手洗いで、なんとか整が残したメモや、風呂光の懸命な聞き込みにより、警察はバスジャック被害者が犬堂家の屋敷に監禁されていることを突き止める。
バスジャック犯の目的である”復讐”の真相とは?
そして、生き埋め連続殺人の真犯人は誰なのか?
真実が明かされるのは、次回3話へと持ち越される。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第3話ストーリー&レビュー}–
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
久能整(菅田将暉)たちが監禁された犬堂邸に、いち早く気づいた風呂光聖子(伊藤沙莉)と青砥成昭(筒井道隆)、池本優人(尾上松也)たち大隣警察署・強行犯一係が急ぐ。その頃、邸内では犯人に促された乗客たちによる“これまでに自分が犯した一番重い罪”の告白が続いていた。露木リラ(ヒコロヒー)、柏めぐみ(佐津川愛美)、淡路一平(森永悠希)の次に話したのは、奈良崎幸仁(金田明夫)。部下に自殺された奈良崎は、遺族から自分のせいだと突きつけられて悩んでいる。話を聞いた整はリラたち同様、言葉で奈良崎の心を癒してゆく。
奈良崎の話が終わると、犬堂ガロ(久保田悠来)、オトヤ(阿部亮平)犯人兄弟ではなく、乗客の1人、熊田翔(永山瑛太)が運転手の煙草森誠(森下能幸)にも告白するよう指名した。驚く煙草森だが、幼い頃、親が飼っていた金魚をうっかり死なせてしまい思わず隠してしまったと話す。そんな時に、SATを先頭にした風呂光たちが飛び込んで来た。
警官隊の突入に、犯人は抵抗するものと思われたが、ガロとオトヤは素直にバスジャックを認めた。警察は連続殺人事件の最初の被害者の遺族だと分かったからここに来たのだろうとガロが告げると、整はこの中に連続殺人犯がいると後に続いた。整は今まで観察して来た乗客たちの行動から、連続殺人事件の犯人が誰なのかの特定を始める。しかしその前に、整はバスジャック犯の犬堂兄弟について話し出した。ガロは家に飾られた絵を自分が描いたと言ったが、整は彼が本物のガロではないと言い出した。
第3話のレビュー
「これまでの人生で犯した、一番の罪は何か?」
罪の暴露大会のようになっていた屋敷内に、SATを引き連れた警察が突入。犬堂たちは素直にバスジャック犯であることを認め「復讐のためだ」と理由も明かした。そう、彼らがこんなことを計画したのは、亡くなった犬堂愛珠(白石麻衣)を殺した真犯人を炙り出すため。
熊田翔と名乗っていた男が、本物の犬堂我路(永山瑛太)であることも明かされた。愛珠は我路の実の妹なのだ。
愛珠はなぜ殺されてしまったのか。普段はバスに乗らない彼女が、なぜこの日に限ってバスに乗ったのか? 物語は徐々に真相へと迫っていく。
愛珠は心臓病を患っていた。治療のため定期的に通院していたにもかかわらず、姿が見えないことを心配した我路たちは愛珠の自宅に向かう。3ヶ月分も薬を服用していないことがわかった。このままだと発作を起こし、倒れてしまう。
案の定、愛珠は”たまたま乗った”バス内で発作を起こし、意識を失った。この時に乗り合わせた者たちが今回集められ、バスジャックの被害者となったのだ。
犬堂たちは、愛珠の最後の足取りである”バス”に狙いを定め、居合わせた乗客たちが何かを知っていると踏んだ。もっと言えば、その中に愛珠を殺した殺人犯がいると検討をつけたのだ。
果たして、愛珠を”生き埋め”にした真犯人とは……?
煙草森誠(森下能幸)は、バスの運転手だ。
勤務態度は真面目。普段から「最後の一人まで乗客が降りたか」をしっかり確認してから、バスを車庫に戻すことを徹底している。しかし、そのモットーが崩れた日があった。愛珠がバスに乗車した日だ。
薬が切れ、社内で発作を起こした愛珠。他の乗客に助けを求めるも、手を貸してくれる者はいない。そのまま倒れ込んでしまった愛珠に、煙草森は気づけなかった。そのままバスを車庫に戻そうとしたところで、愛珠が車内に残っていることを知った。
煙草森も、自身の罪について告白していた。子供の頃に飼っていた金魚を死なせてしまい、両親にバレないように”見えないところに隠した”のだという。
整(菅田将暉)は煙草森の習性に気づいていた。屋敷に入った後、落ちてしまったゴミを拾った煙草森は、それをゴミ箱に入れずにカーペットの下に押し込んだ。見えなくなれば、ないのと一緒。金魚を隠した時と同じ経緯で、愛珠のことも埋めて隠そうとしたのだ。
彼が連続殺人犯になるまで、時間はかからなかった。愛珠は土に埋められた時点で息を吹き返したが、煙草森はそれを上から押さえつけた。その時に伝わってきた震えが、たまらなく気持ちよかったのだという。それ以降、人を生き埋めにして殺す所業にハマってしまった、と流れるように告白した。
真の悪人はバスジャック犯ではなく、バスの運転手だった。なんとも奇妙な事件である。煙草森が逮捕されたことで、事態は一件落着……となるはずが。
無事に解放された整の元へクール便で送られてきた、煙草森の右腕。青砥(筒井道隆)の話では、煙草森は移送中に車ごと連れ去られ、そのまま行方しれずだという。そして、犬堂たちの姿も見えない、と……。
我路たちは、とことん「復讐」をやり切ったのかもしれない。
愛珠を殺害した真犯人が判明したはいいものの、愛珠の死そのものには未だ謎が残る。
そもそも彼女はなぜバスに乗ったのか? バスに乗ってどこへ行こうとしていたのか? わざと薬を3ヶ月分も服用しなかったのはなぜか?
犬堂たち3人は、香川県にある「漂流郵便局」の存在を知る。亡くなった人間宛に手紙を出せる郵便局で(実在するらしい)、どうやら愛珠が書いたハガキが存在するらしいのだ。
無事に犬堂たちが見つけ出した愛珠のハガキは、さながら遺書のようだった。自殺にしろ他殺にしろ、自分がもうすぐ亡くなることを知っているかのような文面。最後には「ジュートに頼もう」と謎の言葉を残している。
愛珠の死の真相とは? そして、謎の人物・ジュートとは誰なのか?
次週以降、物語は再び新たな展開へ。
記憶喪失の爆弾魔を始め、実にさまざまな人物との出会いが整を待っている。果たして、整と我路は再び対面できるのだろうか?
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第4話ストーリー&レビュー}–
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
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久能整(菅田将暉)がカレー作りを楽しんでいると、スマホに風呂光聖子(伊藤沙莉)から着信。イヤな予感を覚えながらも応答した整に、風呂光は案の定、事件の謎解明を手助けしてほしいという。それは、闇サイトにアップされた爆破予告場所の特定だ。予告にはアルファベットの暗号文が付記されているが警察官たちは解明出来ない。昨日は品川に仕掛けたとアップされたが、幸い予告に書かれてたビルが特定されたため爆弾が発見されて未遂に終わる。だが、再度予告があり、今回は大隣署管内に仕掛けられたため、池本優人(尾上松也)が整に協力を求めようと風呂光を向かわせたのだ。
風呂光の迎えで、整はまたしても取調室へ。民間人への捜査協力は青砥成昭(筒井道隆)たちに知られるわけにはいかないからだ。整は昨日の暗号文の謎を解く。そんな時、二つ目の爆弾が発見されたと知らせが入る。整は風呂光に暗号解読力を褒められるが、何かが引っかかる。そんな中、闇サイトへの投稿アドレスから容疑者が割り出され、被疑者が取調べを受けるが犯行を否定。池本と風呂光は容疑者を、ほぼ黒だと確信するが、青砥はアドレスが簡単に特定出来たため、ぬれぎぬではないかと疑う。
次の日、青砥の懸念通りに3度目の予告がアップされた。そんなことを知らない整は雨の中を食事に出かける。すると、見知らぬ男(柄本佑)に声をかけられた。しばらく会話を交わした整は、男が記憶を失っていることに気づく。
第4話のレビュー
突如起きた連続爆弾騒ぎ。犯人から送られてくる「爆発予告文+暗号」が大きな手がかりだ。風呂光(伊藤沙莉)をはじめとする警察は「無事に暗号を解けたら爆発物の在処を突き止められる(=爆発を止められる)」とし、整(菅田将暉)に協力を要請する。
持ち前の洞察力で、暗号を解き明かしてみせた整。ランダムに並んだアルファベットは小説のタイトルを表しており、その作家名=場所であることが判明した。いつものことながら、警察よりも頼りになる整は健在である。
このとき、整は一つの疑問を持つ。
なぜ、犯人はわざわざ暗号を送ってくるのか?
仮に、ただ恨みを晴らすだけなら、警察には知らせずに爆発物を仕掛けるだけで事足りるはず。爆弾を仕掛けた犯人の目的は「何かを伝える」ことにあるのではないか。もしかしたら、世の中に対する大きな恨みを持っているのではないか。整の想像は膨らんでいく。
そんな矢先、またもや新しい予告文+暗号が。次は墨田区にある3階造りの建物で「人生最悪の思い出の場所」に仕掛けたとのこと。
タイミングを同じくして、整はとある男と出会う。
雨に降られながら、三好達治の詩を朗読する男。なんと彼こそが一連の爆弾騒ぎの犯人(柄本佑)であり、今まさに”新しく仕掛けた爆弾が爆発する瞬間を見に行くところ”だったのだ。
しかし、不運なことに(?)爆弾魔はその道中で交通事故に遭い、記憶をなくしてしまう。記憶喪失の爆弾魔の出来上がりだ。
ポテトサラダを食べに行く途中だった整。「ポテポテしちゃうぞ」の歌がなんともかわいらしく、実写で再現してくれてありがとう……! と思わずにはいられなかった。前回の「サラサラになってもイケメンになるわけではない」のシーン同様、かわいい整くんが再現された瞬間である。
それにしても、ご飯を食べに向かう最中で爆弾魔と遭遇するなんて、整も運が良いのか悪いのか。風呂光に爆弾魔の存在を電話で伝えたところ「なんとか爆弾の在処を聞き出してください」「残り1時間、話をつないでください」「整さんが頼りです!」と言われてしまい、壮大な責任を背負わされてしまう。
すっかり記憶をなくした爆弾魔を相手に、爆弾の在処を聞き出すミッションを与えられた整。わずかな取っ掛かりを頼りに話を進める中で、少しずつ爆弾魔の背景が明確になっていく。
どうやら彼は地下鉄に乗ろうとしていたらしい。時計を30分早く進めているのは、小学4年生の頃の担任教師の教えだ。遅刻癖を治すための措置らしい。この担任教師とは、一緒に三社祭や東京タワーへ出かけたこともあるという。
彼の母親は、父親と離婚して家を出ていってしまった。父親も別の女を作って自宅に帰らない日が続く。部屋は荒れ、食べるものはなく、身なりに気を遣う余裕もない。どんどんみすぼらしくなる彼は、同級生からイジメに遭う。
イジメに遭う彼を見かね、担任教師は色々と世話を焼いてくれたのだろう。しかし、それも妬みの対象となり、攻撃を受けた担任教師は別の学校へ飛ばされてしまう。
寂しく悲しい過去を持っているらしい爆弾魔に、整は問いかける。
「なぜ、あなたの母親は出て行ってしまったのですか」
その質問に、爆弾魔は「捨てられたんだ」と答えた。そのせいで身なりに気を使う余裕もなくなり、イジメに遭い、楽しいと思えることは一切なくなった。すべて母親のせいだ。いつか思い知らせてやりたかったのに「あの女は俺が小6の頃に亡くなった、俺の知らない場所で、俺の知らないうちに」。
ここまでの一連の話で、整は新しい爆弾が仕掛けられた場所を突き止める。
三好達治の詩を朗読し、時計を30分早く進め、担任教師には三社祭や東京タワー(333メートル)に連れて行ってもらった。やけに「3」のつく話ばかり繰り返していた爆弾魔に、整はピンときたのだ。
爆弾魔が乗ろうとしていたのは、地下鉄メトロ3号線の「銀座線」。彼は浅草の三社祭には「行った」、東京タワーには「連れて行ってもらった」と表現したことから、子供の頃は「浅草に近く東京タワーからは遠い場所」に住んでいたと推測できる。
浅草駅から隅田川を渡り向島方面へ向かうと、雨乞いで有名な「三圍神社」がある。爆弾魔が学校をサボって行っていたのはこの神社であると予想。
近くに、彼の母校である花輪小学校がある。彼にとって「最悪の思い出の報いを受けるべき場所」は、イジメに遭い、大切な相手(=担任教師)を失った小学校なのではないか。
脅威の洞察力で、これまでに爆弾魔から与えられれた予告文+暗号を3つ俯瞰して解き明かし、爆弾が仕掛けられているのは音楽室であることまで警察に教えた整。無事に爆弾は処理され、記憶喪失の爆弾魔は逮捕されるに至った。
彼の名前は三船三千夫。「3」は神聖な数字であり、名前に入れると縁起が良いそうだ。
記憶を取り戻し、爆弾騒ぎも阻止された三船は、力尽きたように滔々と話す。実は、自分を助けてくれた担任教師こそ、自分を捨てた実の母親だったのだ、と。彼は本当は母を恨んでなどおらず、母校のことも、大切な思い出の場所だと認識していた。
覚えているのがつらいから、なくしてしまいたい。けれど、守りたい。相反する記憶の間で、彼も苦しんでいたのかもしれない。
またもや、整の不思議な喋りで、一人の命があたたかく救われた。大学で心理学を勉強している整、ぜひ多くの人を救うカウンセラーになってほしいと思いながら、見届けた4話だった。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第5話ストーリー&レビュー}–
第5話ストーリー&レビュー
第5話のストーリー
爆弾魔事件で頭を打った久能整(菅田将暉)。外傷もなく、整も何ともないのだが、念のため大隣総合病院で検査入院をすることになってしまった。事情を知った池本優人(尾上松也)は青砥成昭(筒井道隆)に整は警察に協力したためなので入院費ぐらいこちらで持っても良いのではないかと進言。青砥が許可すると、風呂光聖子(伊藤沙莉)が手続のため病院に向かう。
売店で買い物をした整が病室に戻ると宛名と依頼主が自分の名前という小荷物が届いていた。身に覚えのない箱を開けると、中にはドライフラワーと手紙が入っている。手紙の文章から整は犬堂我路(永山瑛太)からのものだと気づき、また良からぬものが入っているのではと警戒しながら箱を改めると何かが落ちた。そこへ、整が探していると風呂光が来た。整が拾い上げた指輪に風呂光は動揺し、手続の用紙を渡してすぐに帰ってしまった。
その夜、整が寝ようとすると隣のベッドの老人から声をかけられる。老人は牛田悟郎(小日向文世)と名乗り、定年退職した刑事だと言う。そして、牛田は相棒の刑事、霜鳥信次(相島一之)と担当した事件を話し出した。牛田は事件の解決までは話さず、整に問題として謎を解かせる。嫌々ながらも整は2問目までを見事に正解した。
3問目は22年前に売春する女性が次々に殺害された未解決事件に関するもの。当時容疑者は羽喰玄斗と特定されるが逮捕には至らない。そんな時、羽喰に狙われているという女性から保護を求める連絡が警察に入った。牛田は霜鳥と女性に指定された場所へ向かうのだが…。
第5話のレビュー
前回の終盤、崖から転落して怪我を負ってしまった整(菅田将暉)。幸い軽傷ではあるが、念の為に入院し、精密検査を行うことに。隣のベッドには、元刑事の牛田悟郎(小日向文世)がいた。
マルクスアウレーリウスの「自省録」を読む牛田。同じく入院している女の子にもらったのだという。整も愛読しているようで「あたかも一万年生きるかのように行動するな、というくだりにドキッとさせられる」と話している。これを聞いてドキッとした視聴者も多いのではないだろうか。
長い入院生活で暇なのか、元刑事である牛田は整にさまざまな”クイズ”を出し始める。
過去に起こった「3人連続殺人事件」の真犯人は誰か。
物証がまったく出ない「通り魔殺人」の真犯人は誰か。
そして、売春婦ばかり狙った連続殺人の4人目の被害者だけ、真犯人との明確な接点がないのは何故か。
売春婦連続殺人の真犯人は、羽喰玄斗(千原ジュニア)であることが判明している。余談だが、若い頃に”ジャックナイフ”の異名をとっていた千原ジュニアが”切り裂きジャック”羽喰の役をやるとは、粋なキャスティングだ。
当時、牛田は相棒刑事・霜鳥(相島一之)とともに、羽喰玄斗を追っていた。羽喰の殺害方法は、一言で表すなら”雑”。血液で手形や足跡がついてもそのままで、凶器も丸出しなのだ。証拠を残して捕まるのを恐れる、といった思考回路ごと抜け落ちているような殺し方をする。
羽喰の行方を追い、その足取りをつかんだ牛田と霜鳥。しかし、立て続けの張り込みで風呂にも入れずにいた牛田は、いったん着替えに自宅へ戻る。すると、何と自宅が空き巣に遭っていた。その対応と処理に追われた牛田は、あと一歩のところで羽喰を逃がしてしまう。
羽喰の次のターゲットにされていた女性は死亡。霜鳥も犠牲となり、一生杖なしではまともに歩けない体になってしまった。
なぜ、羽喰は接点のない女性を殺害したのか?
なぜ、羽喰はその場から完璧に逃げ果せたのか?
一連の話を聞いた整は「牛田さん、これは問題ですか?」と問う。シンプルに考えて、ある一つのケースが浮かび上がる、と。それは、相棒の霜鳥が真犯人だった場合だ。
整の推理はこうだ。
1〜3人目の犠牲者たちは、もちろん羽喰の手によって殺された。しかし、4人目は違う。霜鳥が”羽喰がやった”と見せかけて殺したとしたら、すべての辻褄が合う。霜鳥が女性を殺し、自分自身に刃を立てたのだ。
推理は当たっていた。
4人目の犠牲者となった女性と霜鳥は不倫関係にあり、何があっても奥さんにバレるわけにはいかない事情があった。羽喰の仕業と見せかけるため、彼をつかまえて殺害し、所有していた箱根の別荘に埋めた。あらかじめ採取していた羽喰の髪の毛を、4人目の女性を殺した現場に置き、自分もその場で攻撃を受けたフリをしたのだ。
牛田はすべてを知っていた。その上で、秘密は墓に持っていくと決めていた。
しかし、霜鳥が見舞いに来たのをきっかけに、気が変わった。
「入院費の面倒を見させてくれないか」と申し出た相棒のことを、許せないと思ったからかもしれない。そういった言葉を心底嫌う性格である自分のことを、知らなかったか、忘れてしまったのか……。なんにせよ、経った時間と開いた距離は戻せないと悟ったからだろう。
牛田から自省録を受け継いだ整。その後、なんとも不思議なことが起こる。
病院内に掲示されている貼り紙に、ことごとく”誤字”を発見するのだ。
まるで何かの暗号のような、その誤字をたどっていくと……「温室三時招待」の文章が浮かび上がる。実際にその場へ向かってみると、またもや床に謎の”数字の羅列”が。
どうやらその数字は「自省録」のページ数・行数に照らし合わせると、言葉や文章が浮かび上がる暗号になっているらしい。暗号を解くのは整のお家芸である。見舞いにやってきた風呂光(伊藤沙莉)とともに、その暗号を解いてみると……「夜三時にもどって来るがよい」。
ギリギリまで迷った手前、整は夜三時に再び温室へ向かうことに。
そこで出会ったのは、ライカと名乗る謎の女性(門脇麦)だった。
今後、整や風呂光たちと、ライカはどう関わってくるのだろうか。少しずつ原作とは違うオリジナル要素も入り始めたドラマの展開から、ますます目が離せなくなりそうだ。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第6話ストーリー&レビュー}–
第6話ストーリー&レビュー
第6話のストーリー
大隣総合病院に検査入院している久能整(菅田将暉)は、退院を翌日に控えた夜、病院の掲示板に秘められた暗号に導かれて院内にある温室へ。そこで整は『自省録』のページや行を組み合わせた数字で言葉を伝えるライカ(門脇麦)と出会った。ライカは数字で、翌日午後3時に再び温室に来るよう整に指示して姿を消す。
翌日、退院手続きを済ませた整は、ライカが指定した時間まで昼飯を食べようと病院のレストランへ。すると、患者の下戸陸太(岡山天音)とぶつかってしまう。整は謝るのだが、陸太は難癖をつけて許さない。だが、冷静に理詰めで返す整に陸太は辟易して去った。
3時になり、整が温室へ行くと床に数字が書かれている。『自省録』で確認すると、ある場所の土の中となっていた。整がそこを掘ると、何かが入ったビニール袋が出てくる。その時、整を静止する女性の悲鳴が。温室を管理する梅津真波(阿南敦子)だ。ビニール袋は、事情があって真波が埋めたものだった。真波から事情を聞いて、整は悩みを解決する。真波と別れた整は、桜の幹にピンで止められた封筒を発見。中を見ろというライカの数字に整が開封すると、落書きが描かれた塀の写真が入っていた。落書きは炎を象ったようなマークに見える。写真の裏には住所が記されていた。
整が写真に書かれた住所に行くと、一軒家が全焼したようだ。整は消防官や警官、野次馬の中に陸太を見つけた。整に見られていると知った陸太は話をしていた井原香音人(早乙女太一)と姿を消した。すると、いつの間にか整の隣にライカがいて…。
第6話のレビュー
病院の温室で出会った謎の女性・ライカ(門脇麦)。彼女から下される暗号により、整(菅田将暉)はとある”放火現場”に引き寄せられる。
放火によって両親が亡くなり、子どもだけが生き残ったという現場。その家屋の塀には、謎のマークが描かれていた。一見すると山のような形で、赤いスプレーのようなもので描かれている。
前後して、整は池本(尾上松也)と風呂光(伊藤沙莉)から、ここ最近の間で連続発生している放火殺人の情報を聞かされていた。二人の話によると、とある都市伝説サイトに助けを書き込めば、危害を加えてくる親から助けてくれる”天使”が降臨するのだという。
自宅の壁や塀に”合図のマーク”を描けば、その天使が放火をし、悪い両親だけを殺してくれる。そんな噂が飛び交い、件の都市伝説サイトには書き込みが絶えないのだそうだ。
なぜ、ライカは整を、放火現場へ呼び寄せたのだろうか?
ライカの意図と、虐待する親から子どもを救う”天使”の存在。
この二点を繋ぐ鍵となりそうなのが、整が病院でたまたま出会った青年・陸太(岡山天音)である。
彼はたまたま整とすれ違い様にぶつかり、肩が痛いと異様に絡んでは「土下座して詫びろ」とまで言ってきた。「土下座でいいんですか?だって土下座ってただの動作だから、熱々の鉄板の上でしろと言わない限り意味はないと思います」とかなんとか、お決まりの”整節”で事なきを得たのだが、その後も何かと陸太とは顔を合わせることになる。
どうやら、陸太は香音人(早乙女太一)という青年と二人で、虐待されている子どもを救うべく放火殺人を行なっているようなのだ。
陸太から見たら、放火現場でウロウロしている整の存在は気になるだろうし、自分たちのやっていることを知られる前に口を封じたいと思うだろう。
一方、整としては、放火現場に居合わせたのもライカによって導かれただけにすぎない。
午後3時・午前3時のそれぞれで待ち合わせを提案する彼女のこと、大した理由も説明せずに、暗号を使って整をいいように操る彼女のこと、千夜子という妹がおり、無断でベッドを抜け出している、次の春までは生きられない彼女のことを、整はどう捉えているのだろうか?
ライカの存在と、謎の連続放火殺人。
重なり合いそうで重なり合わない、二つの存在が怪しく浮かび上がる。
ライカと整が「クリスマスだから」と互いにプレゼントを交換するシーンはなんとも微笑ましいものだった。しかし、展開は終盤にかけて不穏になっていく。
「クリスマスイベントの手伝いを頼まれたから」と夜の23時に病院の倉庫へ整を呼び出した陸太。夜23時や午前3時の待ち合わせに、文句のひとつも言わずに出ていく、整のフットワークの軽さがすごい。しかし、そのフットワークゆえに、陸太に捕まってしまう。
同じ倉庫内には、子どもを虐待している疑惑のある両親の姿が。
整は”天使”の犠牲になってしまうのだろうか? それとも……。展開は次週に持ち越される。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第7話ストーリー&レビュー}–
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
ライカ(門脇麦)に導かれて、久能整(菅田将暉)は奇妙な放火殺人事件を調べ始めた。すると、放火された住居の家族は、親が死亡し子供だけが助かっている。また、風呂光聖子(伊藤沙莉)たち警察などの情報から、整は虐待された子供が親の殺害を依頼するという“炎の天使”に関する都市伝説サイトがあることを確認。そして、整は下戸陸太(岡山天音)も放火による火災で両親を亡くした事を知った。しかし、クリスマスイブの夜、大隣総合病院で行われるイベントの手伝いをして欲しいと陸太に呼ばれて倉庫に向かった整は襲われてしまう。倉庫には、入院している虐待疑いがある子供の両親も拘束されていた。
それより二日前。放火殺人事件を捜査する青砥成昭(筒井道隆)たち大隣警察署強行犯一係は、現場に残された炎のマークから、3年前に起きた同様の事件で証拠不十分で逮捕出来なかった井原香音人(早乙女太一)を洗うことになった。香音人は結局ボヤ程度の放火で逮捕され、医療少年院に服役後、半年前に釈放されたのだが、その後の足取りがつかめない。だが、イブの夜、青砥たちは放火犯“炎の天使”を扱う都市伝説サイトの管理人、鷲見翼(今井悠貴)も放火殺人事件で生き残った子供だった事を突き止めて事情を聞きに向かう。
その頃、整は陸太の弱点をついて形勢逆転に成功。“炎の天使”ではないかと問う整に、陸太は自分ではなく先輩だと答えた。整が先輩に会わせて欲しいと頼むと、陸太はとあるビルの一室へと連れて行き、香音人に引き合わせた。整は陸太と香音人の関係、放火殺人事件の真相を聞くことになる。
第7話のレビュー
「炎の天使をやめる」……自身も虐待サバイバーである香音人(早乙女太一)は、虐待され苦しんでいる子どもを救うため、放火連続殺人を繰り返していた。しかし、自分が救った子どもたちが必ずしも幸せになっているわけではない事実を知り、絶望する。
自分がやってきたことは、間違っていたのか。
子どもたちに「自身の親を殺すこと」を選ばせる行為は、残酷なのか。
もう、炎の天使はやめたほうがいいのではないか。
香音人に救われた一人、陸太(岡山天音)は、そうは考えなかった。自分は生きるか死ぬかの瀬戸際から救い出してもらった。自分は香音人のおかげで幸せになれた。まだ助けを求めている可哀想な子どもたちはたくさんいる。
だから、炎の天使をやめてはいけない……。
前回の終盤で、倉庫に連れ込まれた整(菅田将暉)。自身の子どもに虐待を繰り返す両親とともに火をつけられそうになるが、ライカ(門脇麦)から贈られたツリーのオーナメントのおかげで逃げ出すことに成功する。
オーナメントの色は、赤。自分で「親を殺してほしい」と望み、炎の天使を呼んだ陸太にとって、赤色は自身を責め苛む色だった。まともに赤色を直視できない彼は、常にサングラスをかけなければ外に出られない体である。
整は気になった。陸太の言う「炎の天使=先輩」がどういう人物なのか、その目で確かめたくてたまらなかった。だから、その場で通報はせず、風呂光(伊藤沙莉)に電話を繋ぎながら陸太の後をついていく決心をする。噂の「炎の天使」に会わせてもらうために……。
しかし、香音人は実在しなかった。
炎の天使をやめると決意した香音人。その直後、陸太とともに暮らす自宅に”リンゴ”を持ち込んだ。真っ赤なリンゴ。美味しいアップルパイを作って、陸太に振る舞おうとしたからだった。
その様子を目撃した陸太は勘違いをした。赤いものを見られない陸太を気遣い、これまで自宅に赤いものを持ち込むことはなかった香音人。炎の天使をやめるから、もう”助手”である自分は要らなくなる……そう勘違いした陸太は、錯乱した末に香音人を刺し殺してしまう。
整は、ずっと不思議に思っていた。一人二役で話し続ける陸太に対し、その理由を知りたいと思っていた。陸太は、ずっと香音人の幻影を見ていたのだ。
その答え合わせの鮮やかさ、整を演じる菅田将暉の間の取り方。すべてのセンスが結集されたシーンと言えるだろう。
自身で香音人を殺してしまった事実がフラッシュバックした陸太。訥々と、自身の過去について語り出す。兄ばかり可愛がられていた。自分は「カエルみたいな顔」と実の親に罵られ続けた。風邪であっけなく兄が死んでしまってから、さらに虐待はヒートアップした。
親に石段から突き落とされ、両足を骨折した。車椅子で学校に通った。同級生たちはそんな自分を担ぎ上げ、滑り台の上から勢いよく落とす遊びを繰り返した。その様子を見かけた担任は「カエルくんと遊んであげてえらいね」と相好を崩した。
将来は教師になることを夢見る整。「自分をいじめた奴よりも、担任への恨みが強く残ってる。教師なんてそんなもんだ」と口にする陸太に対し、食い気味でこう告げる。
「その先生は、他のみんなと一緒になってあなたを”カエル”と呼んだ時点でダメです」
「僕は、いろんなことに気づきたいと思っています」
整の名言はこれまでも数知れず、しかし、今回は特筆に値するだろう。
彼が、どんな些細なことも見逃さず、小さなことにもこだわってしつこく言葉にしようとする習性は、おそらく彼の過去に起因している。
ハッキリとは明かされていないが、とある女性から「身の回りに当たり前にあるもの、言葉について、考えて考えて、わかったことを話そう」と教えられている描写があった。
香音人を殺してしまった事実を認め「死刑になるのかな、それはいいけど、それまでどうしたらいいんだろう」と途方に暮れる陸太に対し「考えてください」と伝える整。「考えて考えて考えて、誰かに話してください」。
児童虐待。とても一言では語れない社会問題だ。親が子どもに危害を加える。言葉にすると単純な現象に思えてしまうけれど、実態は複雑であり、第三者が介入するのは難しい。
虐待する親を消したからといって、問題はすべて解決するのか。
本作は全編を通して、あまりに語られてこなかった「児童虐待に向き合う姿勢」を描き出そうとしている。
終盤にて、ライカ自身も虐待サバイバーであり、炎の天使に救ってもらった顔があることがわかる。彼女はお決まりの「自省録」を使った暗号で、香音人に祈りを捧げていた。自分は救われた、と。
それがせめてもの、炎の天使に対する弔いとなるのではないか。
今回はとくに、感想を記すのが難しい回だった。しかし、無理やりに「答え」や「オチ」をつける必要はない。曖昧なまま、結論を保留し、この件については”考えている途中”であることを示して論を閉じようと思う。
何事においても、救われる人もいれば、救われなかった人もいる。その事実があるだけなのだから。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第8話ストーリー&レビュー}–
第8話ストーリー&レビュー
第8話のストーリー
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久能整(菅田将暉)は美吉喜和(水川あさみ)の墓参りに行く。すると、そこには天達春生(鈴木浩介)がいて、かつて天達のパートナーだった喜和の命日を忘れないでいてくれたと整に礼を言う。そんな天達は、整に高校時代の同級生とゲストを呼んで、別荘でミステリー会を開くので来て欲しいと頼む。また、自分の講演会に風呂光聖子(伊藤沙莉)が来たことを話し、そこで風呂光から、整が警察に協力をしていることを聞いたので、ミステリー会で謎解きの腕前を披露して欲しいと言うのだ。整が答えに困っていると、天達はただ荷物運びや食事の片付けの手伝いのアルバイトだと安心させる。そして、ひとつだけ頼みがあるとある事を付け加えた。
約束の朝、整が待ち合わせ場所に行くと天達が車で迎えに来た。車に乗っている風呂光を見て整は驚く。風呂光が勉強熱心だったので誘ったと言う天達は、彼女が刑事だということは会に集まる人には教えないようにしようと二人に話した。
雪の中を走る天達の車は、蔦に覆われた山荘にたどり着く。天達曰く“アイビーハウスと”呼ばれているそうだ。天達や整たちを玄関で迎えたのは橘高勝(佐々木蔵之介)。他にも山荘内には、主人の蔦薫平(池内万作)が待っていた。天達と橘高、蔦は高校の同級生だ。蔦はミステリー会のゲストだとデラ(田口浩正)、パン(渋谷謙人)も招いている。
部屋割り振りなどを済ませ、夜になるとミステリー会が始まる。蔦は別荘の以前のオーナー夫人がバルコニーから転落して亡くなったことを話し始めた。
第8話のレビュー
今話からアイビーハウス編へ突入。
整(菅田将暉)の通う大学の教授である天達(鈴木浩介)が、高校の同級生と集まってミステリー会を開くという。友人の一人が所有する別荘=アイビーハウスにて、謎解き会をするついでに親睦を深めているらしい。
バイトとして手伝いに来てほしい、と天達から依頼された整。天達と整は、単なる教授と教え子の関係性を越え、天達の妻・喜和(水川あさみ)を介して交流してきた仲だ。承諾した整に対し、天達はとなる課題を出す。
「集まった人の中で、一人だけ嘘をつく人がいるだろうから、見ていてほしい」
このミステリー会には風呂光(伊藤沙莉)も参加することになるが、彼女に対しても天達は似たような課題を出していた。「一人だけ嘘をつかない人を見抜いてほしい」……果たして、天達が二人に課題を出した真意とは?
ミステリー会が催される別荘・アイビーハウスには、天達の友人である橘高(佐々木蔵之介)と蔦(池内万作)、そして蔦の知り合いだというデラさん(田口浩正)&パンさん(渋谷謙人)コンビが。参加者は、天達・整・風呂光を加えた計7人になる。
さっそく開始されるミステリー会。蔦(通称・アイビー)から出された問題を、以下に要約する。
・5年前、この別荘のバルコニーから一人の女性が転落死した
・その女性は前オーナーの妻である
・二人は常に一緒に行動し、仲睦まじい夫婦だった
・妻が自殺する理由は思い当たらず、遺書もなかったため事故死として処理された
アイビーは、別荘内にあるヒントを自由に探し、妻を殺害した真犯人を見つけてほしいと告げる。当初、この事件は本当にあった出来事であると見られていた。地下書庫に置かれていた手紙や新聞記事の類から、整と風呂光がそう推理したのだ。
しかし、これは作り話であることが判明。あくまでもミステリー会の謎解き問題として、蔦が考えたもの。部屋中に散りばめたヒントも、彼によるものだという。
いったんは和みかけた場の空気を制するように、待ったをかけたのが橘高だ。
5年前にこのアイビーハウスで女性が亡くなったこと自体は真実であるという。そして、その女性こそが天達の妻・喜和だった。
心理カウンセラーだった彼女は、とある患者に執拗につきまとわれ、身の危険を感じていた。アイビーハウスに匿っていたところ、なぜかストーカー自身に居場所が知られてしまい、悲しい事件が起こってしまう。
喜和、そしてストーカーも一緒に暖炉の前で息絶えていた。火に夾竹桃がくべられており、その煙が充満していたとみられる。夾竹桃には毒性があり、煙突は”たまたま”詰まっていたらしい。
慕っていた喜和が亡くなったのが、このアイビーハウスだと知ったことで、打ちのめされる整。ストーカーにつけまわされ、殺されてしまったなんて……なかなか受け止められないだろう。
どこかで止めることはできなかったのか。彼女を救うことはできなかったのか。
さて、筆者は原作を読んでいるため、この事件の真犯人を知っている。知っている上で見ても、このドラマは格段に面白い。絶妙に伏線が隠されている。種明かしのステップに向けて、華麗なる準備はもうすでに終わっている。
真犯人が判明するのは次回に持ち越しだ。あなたの推理は当たっているだろうか?
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第9話ストーリー&レビュー}–
第9話ストーリー&レビュー
第9話のストーリー
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整は、天達春生(鈴木浩介)に招かれ参加したミステリー会が行われている山荘で、かつて美吉喜和(水川あさみ)がストーカーに殺害されたという事実を知る。喜和だけでなく、ストーカーも暖炉にくべられた夾竹桃(きょうちくとう)の毒性の煙で死んでいる。
最近、都内でもストーカーによる連続殺人が発生していると言う風呂光に、整は山荘に来る前、天達から「参加者の中に一人だけ嘘をつく人物がいるので見ていて欲しい」と頼まれたことを話す。
すると、風呂光は天達から逆に「嘘をつかない人を見ていて欲しい」と言われたと言うではないか。整と風呂光は喜和の事件に何か裏があるのではないかと考え始める。
翌朝、目覚めた参加者たちは雪かきをする。整が天達に、喜和の事件に関して尋ねると、天達は第三者の進入の形跡はなかったが、ずっと事件について違和感があったと答えた。
そして天達は整に、「とにかく会の状況を先入観なしに見て欲しい」と頼む。そんな時、風呂光は夾竹桃の枝が数本折れている事に気づいた。
雪かきを終え、整と風呂光がガレージで道具を片付けていると停電が発生し、電動シャッターが開かなくなり閉じ込められてしまう。整は橘高勝(佐々木蔵之介)がガレージに張ったテントの中から懐中電灯を持ち出す。整たちは山荘につながるドアを天達に開けてもらい解放される。
停電の原因は送電線が雪の重みで切れてしまったためだった。復旧は夕方までかかりそうとのことでとりあえず昼飯を食べることになり、整はカレー作りを頼まれてしまう。参加者を観察する整は、ある事に気がついた。
第9話のレビュー
ミステリー会を開催するため、天達(鈴木浩介)の友人である蔦(池内万作)の別荘=通称アイビーハウスに集まった整(菅田将暉)と風呂光(伊藤沙莉)たち。
整には、ずっと気になっていることがあった。ゲームは前日のうちに終わっているはずなのに、どうも、それとは別のゲームが進行しているように思えてならないのだ。デラさん(田口浩正)&パンさん(渋谷謙人)も含め、まだみんながお芝居を続けているように見える。
ただ、ある一人を除いて。
天達は、この会が開催される前に、整に告げていた。「一人だけ嘘をつく人間がいるだろうから、よく観察していてほしい」と。どうやら天達は、妻・喜和(水川あさみ)の死には、ストーカー以外の第三者が関与していると考えているらしい。
そんな人間が本当にいるのだとしたら、一体誰のことなのか?
そして、その人物はなんのために嘘をつくのか?
おそらく「たった一人嘘をついている人間」と「嘘をつかない人間」そして「お芝居をしていない人間」は同一人物である。これまでの行動や言動を振りかえって、最も怪しいと考えられるのは……。
天達の友人である橘高(佐々木蔵之介)は、こう言っていた。「冬の間、この別荘に来たことはなかった」ーー玄関先にマットが置かれているのを見て不思議がり、鼻先に触れながらふと漏らした言葉だった。それをたまたま聞いていた整は一瞬だけ流しそうになるが、違和感をつかまえる。
冬以外=春夏秋に別荘へ来たことがあるのなら、玄関先にマットが置いてある光景を見ているはず。冬に別荘へ来たことがないのなら、どちらかといえば「マットが置いてある光景」のほうが見慣れているはずだ。
橘高は、いつどこで、冬時期の別荘には玄関マットが置かれていると知ったのだろうか?
整がつかまえた違和感は、これだけではない。
橘高がこの別荘へやって来る際、蔦の運転する車の後部座席にて、毛布にくるまった状態でずっと寝ていたという。別荘で過ごす間はマイスリッパやマイボトル、マイ食器の類を欠かさず、就寝時もガレージにテントを張る徹底ぶり。まるで透明人間になろうとしているかのようだった。
そう。橘高は透明人間になろうとしていた。
それは、5年前、喜和が亡くなった事件に関与しているのが彼だったからだ。
例の日の朝、市役所に勤める橘高の元へ、喜和から電話があった。「これから別荘へ行く。若宮と名乗る若い子から電話があったら、自分の居場所を伝えてほしい」ーー心理カウンセラーをしていた喜和。電波が通じにくくなる別荘へ赴く前に、橘高を頼ったのだ。
言われた通り、橘高は”若宮”へ別荘の住所を伝えた。それが、ボタンの掛け違えの始まりだった。
このとき電話をしてきたのは、喜和の言っていた”若宮”ではなく、ずっと彼女を悩ませていたストーカー本人だったのだ。取り返しのつかないミスをしたのでは、と不吉な予感に震え上がった橘高は、急いで別荘へ車を走らせる。
しかし、喜和を救うことはできなかった。予想し得る最悪の状態で横たわっている喜和とストーカーが目に入った。この瞬間、橘高はミスにミスを重ねることとなる。
「ストーカーに、喜和の住所を伝えてしまった」。故意ではないにしろ、重大なミスをしたことに代わりはない。どんなに弁明し、詫びたとしても、失った命は返ってこないのだ。友人である天達に何と言えばいいのか。お前が殺した、お前がミスをしなければ、と責められはしないか。
慌てた橘高は、自分が別荘に来た証拠=雪面についた足跡を消すために雪かきをする。そして、自分のしてしまったミスについては隠し通すことを決意した。正直にミスだと言えなかったことが、橘高の最大のミスだったのだ。
掛け違えられたボタンは、どんどん歪みを、綻びを大きくしていく。
友人から「別荘で行うミステリー会」に誘われた橘高は、整の指摘した通り、恐怖で動けなくなった。喜和の夫である天達は、すべてを知っているのではないか。全員で自分を陥れ、復讐するために自分を呼び出すのではないか?
殺されるのか?
殺すしかないのか?
悩んだ末、橘高は透明人間になることにした。自分が別荘にいた形跡を残さずに、庭に生えている夾竹桃を使って集まった全員を皆殺しにする。帰りは暗渠排水路を通れば、証拠は一切残らない。わざと忘れてきたスマホに着信履歴を残すように仕向けて、アリバイも完璧だ。
しかし、橘高の反抗計画は実現しなかった。
またもや整の観察力が存分に発揮されたことも理由のひとつだが、それ以前に、天達が勘付いていたのだ。何らかの形で、橘高が絡んでいる可能性について。
風呂光も口にしていた。このところ、似たような手口のストーカー殺人事件が頻発している、と。
犯人は口を揃えてこう言っている。「ある日、突然、非通知で電話がかかってきた。被害者の居場所を告げる電話が」ーー自分のミスを受け入れられず、悔やみ、悔やみ、悔やみ切って疲れた橘高が、ストレス発散のためにしたことだった。市役所勤めの彼にとって、被害者の情報を得ることは難しいことではない。
実は刑事だったデラさん&パンさんがその情報をキャッチし、喜和の夫である天達へ協力を依頼。ミステリー会と称して疑わしい人物=橘高を誘き寄せ、情報を得ようとしたのである。
橘高が戻れるタイミングは、たくさん用意されていたように思える。
ストーカーに住所を伝えてしまった可能性を、別荘に向かう前に友人たちへ共有することもできた。別荘に到着した時点で、警察に通報することもできた。ストレスを蓄積させる前に助けを求めることも、ミステリー会の前に正直に謝罪することもできたかもしれない。
彼にはたくさんの道が用意されていた。
しかし「自分のミスを、ミスだと言えなかった」こと自体が、橘高の最大のミスとなった。
彼が正直になれなかった理由は、プライドの高さか、成功している友人に対する嫉妬心か。いずれにしても、些細なきっかけが喪失へと繋がってしまった。
もはや、この友情は元に戻らないだろうと誰もが考えるだろうが……警察に連行される橘高を見て、天達はこう伝える。「介護が必要なお母さんのことなら、何とかするから心配要らない」。橘高はこう返す。「お前は変わらないな、天達」。
ずっと変わらないことが、優しくあり続けることが、恐ろしく人を卑屈にさせることもある。この”掛け違えられたボタン”について考えるたび、何とも言葉にできない、人間の心の機微について悩まされる。
私たちにできることは、誰でも等しく過ちを犯す可能性があることを、心に留めておくことくらいだろうか。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第10話ストーリー&レビュー}–
第10話ストーリー&レビュー
第10話のストーリー
久能整(菅田将暉)とライカ(門脇麦)が大隣総合病院の温室で足湯を楽しんでいると、梅津真波(阿南敦子)が来て正月の過ごし方の話になる。病院に来る途中、神社を見かけた整が初詣に行かないかとライカを誘うと、真波も二人で行ってみたら良いと勧めた。ライカも承諾したので、整は元日午前3時に行こうと約束する。
二人きりの小イベントに整は大晦日からソワソワしながら過ごし、約束の時間に神社でライカと合流。お互いに初めての初詣に戸惑いながらもお参りをして、おみくじを引き、屋台のたこ焼きを頬張って楽しむ整とライカ。そんな二人を風呂光聖子(伊藤沙莉)と池本優人(尾上松也)が見かける。二人は年始のパトロールに駆り出されていたのだ。ライカを見た池本は何かに気がつくが、風呂光に二人の邪魔をしてはいけないと促されパトロールに戻る。
神社から出ると、ライカは焼肉を食べようと整を誘う。元日のこんな時間に空いている店はないと整は言うのだが、すでにライカが灯りの点いている焼肉店を見つけていた。整が店内をのぞくと、店主らしき浦部沢邦夫(堀部圭亮)と店員の沙也加(志田未来)がいる。整がまだ営業中か尋ねると、邦夫は閉めようとしていたと言う。ところが、沙也加は年明け早々の客を返してはダメだと邦夫をたしなめて、整とライカを迎え入れた。沙也加の言葉から、邦夫とは父娘の関係らしい。席に着くとライカが数字の暗号で整に何かを伝える。めんどくさがりながら『自省録』で確認する整。焼肉を食べ始めると、ライカは整に妹の千夜子の話をする。
第10話のレビュー
一緒に初詣に出かけた整(菅田将暉)とライカ(門脇麦)。帰りに焼肉屋へ寄る展開になるのだが、ここで起こる一幕が今回のメインを飾る。
一見、なんの変哲もないと言える、ごく一般的な焼肉屋だ。しかし、店主と思しき男性・邦夫(堀部圭亮)と、その娘・沙也加(志田未来)の様子が少しおかしい。とくに沙也加はひどく緊張しているようで、ライカと整もその点に違和感をもった。
何はともあれ、焼肉屋に来ること自体が初めて同士のふたり。沙也加におすすめを聞きながら、焼肉を堪能することに。落とした覚えのない小銭(5円と10円)を示されたり、お通しサービスが「ゴーヤトーフ(フヤフヤの)」だったりと、ちょっとした違和感は降り積もるばかりだ。
ともに焼肉の美味しさに舌鼓を打ちながら、整はあることに気づく。ライカの左手首にある傷跡だ。この点を皮切りにして「ライカさんはどこが悪いんですか」と問いかける整に対し、ライカは「頭のほうだ」と答える。手首の傷に関しても、自分でやったんじゃない、と。
ライカの口から整に明かされる事実。
ライカ(千夜子)は「性同一性乖離障害」であり、ライカは千夜子が作り出した人格のひとつなのだという。
千夜子の父親はひどく暴力を振るう人間で、性的虐待まで手を染めていた。母親は見て見ぬふりで、千夜子はただひとり苦痛に耐えるだけ。ある日、耐えかねたように千夜子は自身の奥底へと潜り込んでしまい、代わりに引っ張り出された”人格”がライカだったのだ。
「私は、千夜子の痛みを受け止めるためだけに生まれてきた」
両親の元から引き離され、病院で適切な治療を受けるごとに、千夜子は少しずつ回復していく。それに伴って、ライカと同じように生み出された人格も、少しずつ統合されていった。残るはライカ、ただひとり……。
千夜子は十分回復し、もうライカが代わりに痛みを引き受ける必要もなくなった。「春まで生きていられない」と彼女が口にしていたのは、こういった背景ゆえのことだったのである。
千夜子が回復することが、幸せに生きていくことが、ライカにとっての願い。だとしたら、ライカが消えてしまうことは千夜子の幸せとイコールで結ばれることになる。ライカと会えなくなることの寂しさを乗り越えつつ「よかった、それならよかった」と繰り返し口にする整の気持ちを思うと、胸がつまる。
壮絶な告白を聞く傍ら、焼肉屋では看過できない事態が起こっていた。
ライカと整が密かに拾い集めていた、小さな小さな違和感……。その正体は、焼肉屋の店主だと思われていた男・邦夫にあった。実は彼は隣町で強盗殺人を起こした人物で、逃げ隠れるため当の焼肉屋に籠城しようとしていたのである。
示された小銭の5円と10円。
サービスとして出されたゴーヤトーフ。
おすすめとして提示した「タン塩」「酢もつ」「ケジャン」「テールスープ」の頭文字。
自省録を使った暗号で会話をしていた整とライカを見るなり、数字や語呂合わせを使った暗号で助けを求めれば気づいてくれるのでは、と起点を利かせた沙也加。警察に通報した整に対し「気づいてくれていたんですね」と感謝を述べた。
最後の最後で、少々スリリングな思い出を体験した整とライカ。
ライカ自身、この世界との別れが近づいていることを自覚していた。彼女のなかで、もう整に会うことはないだろうと想定していたからこそ、初詣後にふと目についた焼肉屋に入ることを提案したのだ。
すべて事が丸く収まった後も、どこか楽しそうな様子を崩さないライカ。整と知り合い、友達になり、交流を深めていく過程で生まれた「この世への未練」さえも、彼女にとっては”料理の隠し味”のようなものだったのかもしれない。
整とライカの別れのシーンは、ここ最近のドラマではとても珍しく、丁寧な描き方がされていたように思う。菅田将暉の”泣くのを我慢する演技”も、こちらの涙を誘うには十分すぎるほどだった。
ライカの人格は消えてしまった。この先の人生を千夜子として生きる彼女と、整の間に接点はない。どこか呆けたような、体から気が抜けたような顔でいる整に対し、見かねた天達(鈴木浩介)はこう声をかけた。
「人と会い、人を知りなさい」
「それは、自分を知る旅だよ」
私たちはとにかく、知った気になるのが上手い。インターネットやSNSのおかげで、簡単に情報に触れられるようになった副作用だろうか。きっと、自分が知っているつもりでいるその何倍も、この世には”不可思議”が詰まっているに違いないのだ。
次回。しばらくベールに包まれたまま静観されていた、ガロ(永山瑛太)と羽喰玄斗(千原ジュニア)のエピソードに決着が? この物語にどういった結末がつけられるのか、心して待ちたい。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第11話ストーリー&レビュー}–
第11話ストーリー&レビュー
第11話のストーリー
久能整(菅田将暉)が、犬堂我路(永山瑛太)から教わった大阪で開催される美術展に行くことを考えていた頃、大隣警察署には新たに発生した連続殺人事件の応援要請が来ていた。青砥成昭(筒井道隆)に指名された風呂光聖子(伊藤沙莉)は捜査本部へと向かう。
すでに三人の犠牲者を出していたこの犯罪は、遺体を交差点の真ん中に磔のように遺棄する猟奇的な事件だ。さらに、三人目の遺体の傷口から被害者本人のものではない血液が検出される。
血液はDNA鑑定で22年前に殺害された被害者と一致。羽喰玄斗による連続婦女暴行殺人事件の17人目の被害者、辻十岐子だ。18件目の殺人を犯して以来、姿を消していた羽喰がまた殺害を始めたのかと捜査本部はいろめき立つ。
だが、備前島操警部(船越英一郎)は羽喰の犯行ではないと言う。部下の猫田十朱(松本若菜)も羽喰の事件とは様相が違うと賛同。会話を聞いていた風呂光は猫田とバディを組むよう備前島に指示された。
一方、我路は愛珠(白石麻衣)の死の真相を求めて、ジュートという人物を追っていた。すると、愛珠が生前、タクシーで頻繁に倉庫街に通っていたことを知る。そこでは、不定期で闇カジノが開かれていた。カジノに潜入した我路は横田留美(夏子)と知り合い、愛珠がカジノで働いていた事を知らされる。
捜査本部では遺体が一時的に折り畳まれて運ばれた可能性が上がった。風呂光と聞き込みをしていた猫田は遺棄現場付近でスーツケースを押しながら歩く少女が目撃されていると報告。そんな時、風呂光に匿名の人物から事件のタレ込み電話が入った。
第11話のレビュー
港区の路上で女性の遺体が発見された。十字架にかけられたような特徴的な姿勢で、交差点に寝かせられていた遺体。ここ数日、連続で発見されている遺体の特徴と酷似していることがわかる。
遺体の傷口からは、被害者とは別人のものと思われる、古い血液が検出された。同じ凶器を使って、過去に別の人間が殺害された可能性が高い。それは、22年間消息を絶っている連続殺人犯・羽喰(千原ジュニア)によって殺された17人目の被害者・辻土岐子の血液だと判明。
彼女を殺害したときに使われた凶器は、未だ発見されていない。
この事件を解決するため、風呂光(伊藤沙莉)はヘルプ要員として現場の捜査に加わることに。そこには凄腕刑事と評判の備前島(船越英一郎)と、同じくエース刑事と名高い猫田(松本若菜)がいた。
猫田は広い人脈を持っており、街中にいるホームレスたちにも顔が効くようだ。事情聴取をしたところ、スーツケースを引いた若い女性の目撃情報を掴む。夜中だったことから、その場にいた者たちの記憶に残ったようだ。
時を同じくして、姿を眩ませていた犬堂我路(永山瑛太)たちが、妹・愛珠(白石麻衣)が亡くなった真相を解き明かすために行動を起こしていた。
行き着いたのは、闇カジノ。アルバイトの女性・留美(夏子)に話を聞いたところ、なんと愛珠は「カウンセラーに勧められて」闇カジノで働いていたことがあるのだという。
愛珠=闇カジノがすぐには結びつかない我路。なぜ彼女は、そんな場所で働いていたのか。漂流郵便局で見つけた愛珠直筆のハガキに書かれていた「ジュート」とは、何者なのか?
手がかりを得るため、我路たちはジュートなる人物を捜すことにする。
……と、ここまで主人公・整(菅田将暉)がいっさい物語に絡んでこないのが新鮮に思えてならない。彼は同時期に大阪へ印象派展を見に出掛けている。所々でその様子が描かれるものの、今話においては存在が脇に置かれている。
猫田&風呂光ペアと、我路たちの動向。不可思議な連続殺人犯を追う警察に対して、我路たちは妹の死の真相に迫ろうとしている。交わりそうもない線が、とある人物によって交差させられた。
愛珠のハガキに書かれていた、謎の「ジュート」である。
連続殺人の犯人は、長年動きを見せなかった羽喰の可能性もあると見られていたが、新たな被害者となってしまった闇カジノのアルバイト店員・留美の遺体横に「羽喰十斗」と文字が残されているのが発見された。
羽喰の仕業と思われていた連続殺人の被害者は、全員が闇カジノでのアルバイト経験者であることが数珠繋ぎに判明。警察側は、羽喰の模倣犯であることも視野に入れ、捜査を進める。
我路たちは、愛珠のハガキにあった「ジュート」=「十斗」であるかもしれない不穏な符号に導かれるように、引き続きジュートを捜索することに。
風呂光たちは、寄木細工ミュージアムからの通報を受け、学芸員である辻浩増(北村匠海)に事情を聞く。寄木細工を集めていた愛珠のコレクションの中から、どうしても開かない箱が発見された。その鍵の仕組みを知るため、我路たちはミュージアムを訪れていたのだ。
連続殺人。
闇カジノのアルバイト。
羽喰玄斗と十斗。
犬堂我路。
スーツケースを引いた少女。
交わりそうで交わらない線が、やはり「ジュート」を介して結びつく。
我路から闇カジノにまつわる匿名の通報を受けた風呂光は、カジノ関係者から「スーツケースを引いた少女」についての情報を得ることに成功。少女は、カジノに出入りしていた通称・占い師であり、実は20代ほどの男性であるという。
やがて、彼女は連続殺人事件の被害者の共通点に思い至った。名前だ。被害者の名前には、すべて「十」が入っているのだ。
その条件に当てはまる猫田は、寄木細工ミュージアムの学芸員・辻から呼び出しを受け、現地に向かっている。辻。辻といえば、羽喰によって殺された17人目の被害者である「辻土岐子」と苗字が一致する。これは偶然だろうか?
辻浩増。職場では、名前をもじって「コーマちゃん」と呼ばれていた。コーマ。黄麻は別名・ジュートと呼ばれる植物だ。
辻浩増こそがジュートであり、闇カジノに出入りしていた占い師であり、スーツケースを引いた女装の男性であり、連続殺人の犯人だったのだ。
占い師相手には易々と本名を教えてしまっていたアルバイト店員たちは「条件に当てはまる」それだけの理由で殺害され、交差点に放置されていたに違いない。
真相を知った風呂光が、急いで寄木細工ミュージアムに出向き、目にしたものは……。すでにジュートの手によって腹を刺された猫田の姿だった。
咄嗟に、一人でなんとかしなければと思案を巡らせる風呂光。しかし、猫田に教えられた「お客様体質の教え」が脳裏に蘇る。
お客様体質とは、いつまでもゲスト気分でいるな、自分から積極的に動け! といった教えとは違う。お客様ではなく、チームの一員であることを肝に銘じ、自分の手に負えないと思ったら周りに助けを求めろ、という教えなのだ。
教えに従い、助けを求めるため連絡を試みる風呂光。しかし、何者かによって眠らされてしまう。
ジュートを追い、その結果、殺されかける猫田。すんでのところで眠らされる風呂光。
ついにジュートの正体を暴き、本人の元へ駆けつけた我路。
大阪で印象派展を楽しむ整。
ついに、次回が最終回。バラバラの線は、どのように結びついて終わるのか?
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{第12話ストーリー&レビュー}–
第12話ストーリー&レビュー
第12話のストーリー
美術展を見終わった久能整(菅田将暉)は東京へ帰る新幹線に乗車。弁当を食べようとした時、隣席に美樹谷紘子(関めぐみ)が座った。何となく気恥ずかしい整は、早々に弁当を食べて寝てしまう。
うたた寝から目覚めた整がふと隣席を見ると紘子が手紙を読んでいた。便箋を見た整は思わず“な、ご、や、に、は、く、る、な”と口にする。驚く紘子に整は謝罪。だが、手紙にそんなことは書いていないので、紘子には意味がわからない。整は文章ではなく、イラストの頭文字を並び替えたのだと教える。すると、紘子は他の手紙も整に見せた。
紘子は整に手紙は父からのものだと話す。両親を幼い頃に亡くした紘子は、亡き母の親友が引き取って育ててくれた。しかし、最近になり紘子は育ててくれた母のクローゼットに古い手紙が隠してあるのを見つける。それが、今読んでいた手紙で父が今の母に宛てたもの。今の母から両親は亡くなったと聞いていたが、父の手紙は紘子を返して欲しいと訴えていた。手紙に書いてあった住所に、紘子が手紙を出してみると返事が来た。結婚を控えた紘子は、父にバージンロードを一緒に歩いて欲しいと頼むため、そこに向かうところだと言う。
しかし、手紙のイラストは解くほどに危ういメッセージが連なる。そんな二人の様子を見ながら徐々に席を移り近づいて来る人物がいた。ついに後ろの席まで来た時、整が声をかける。それはサキ(高畑淳子)という女性だった。
その頃、犬堂我路(永山瑛太)たちは風呂光聖子(伊藤沙莉)らを助け、辻浩増(北村匠海)から愛珠(白石麻衣)の死の真相を聞いていた。だが、そこには新たな謎が…。
第12話のレビュー
ここまで本作を見守ってきた視聴者にとっては、前回の続きである「我路(永山瑛太)と辻浩増(北村匠海)の接触」そして「愛珠(白石麻衣)の死の真相」が気になるところだろう。なんて言ったって、今回が最終回だ。
しかし、いったん物語は(いまに限っては)本筋とは関連のない整のパートへと移っていく。
新幹線内で、ひとりの女性・紘子(関めぐみ)と知り合う整。彼女は、離れて暮らす父親に会いに名古屋へと向かう途中だった。彼女が手にしていた手紙の”暗号”に気づいた整は、持ち前の観察力(と少しのお節介)を発揮し、抱いた違和感を伝える。
その手紙には、文章のほか、イラストが描いてあった。文章だけを読むと、娘との再会を楽しみにする父親の姿が浮かび上がってくる。しかし、イラストの”頭文字”に注目すると……。
「なごやには くるな」
「だまされるな」
「うそだ」
「あぶない」
と、なんとも穏やかではないメッセージが導き出されるのだ。
ただごとではないかもしれない、と心配する紘子は、整に身の上話を打ち明ける。幼少期から実の両親とは離れて暮らしており、育ててくれたのは”母の親友”にあたる女性・サキ(高畑淳子)だった。
育ての親からは「両親は亡くなった」と聞かされていた紘子。しかし、自身の結婚を目前に控えたタイミングで、自宅から古い手紙の束を発見する。それは、実の父親からサキに宛てたものだった。
父親が生きている可能性を知った紘子は、結婚式のバージンロードを共に歩いてもらうため、実の父親へ会いに行くことを決める。整が鉢合わせたのは、その道中だったのだ。
昔、実の父親からサキに宛てられた手紙と、現在、実の父親から紘子自身に送られた手紙ーー双方にイラストの暗号があることに気づいた紘子と整は、力を合わせて暗号を解くことに。
すると、導き出されたメッセージは……。
「しんじるな」
「あばれてる」
「ぼうりょく」
先行きに暗雲が垂れ込め始めた頃、整は、すぐ後ろの座席に紘子の育ての母・サキがいることに気づく。バツが悪そうな顔をして、サキは「心配でついてきてしまった」と打ち明けた。
紘子の母とサキは、親友同士。幼少期から絵手紙をやりとりしていたこともあり、紘子の父親から送られた手紙を目にしたサキは、すぐさまイラストが持つ意味に気づいたという。
そう、文章のまわりに散りばめられたイラストを描いたのは、父親ではなく母親のほうだった。
父親の暴力と支配を受けていた母親は、どうにかして秘密のメッセージを手紙に忍ばせようと、イラストを使ってサキに思いを伝えようとしたのだ。
暴力夫の支配から、身を呈して守った娘・紘子を、親友に託した母親。どうか、紘子を守ってほしいーー自身も一緒に逃げるようなことをすれば、余計に夫の逆鱗に触れることになると案じ、自ら犠牲になったのである。
しかし、サキは言った。
実は、父親はすでに心不全で他界している。心を病んだ実の母親は、いまでも夫が生きていると信じ込み、自分の手で「文章」と「イラスト」を用意しているのだ。
すべての真相を知った紘子。父親はやはり他界しており、母親とも満足に話せそうにない状況を突きつけられ、憔悴する。しかし、その様子を見ても整はいつも通りだ。「バージンロードって、どうして父親と歩くと決まってるんだろう?」と疑問を呈す。
父親に限らず、大切な人と歩いたっていいじゃないか。そんな整の話を聞いて、紘子は言う。産んでくれた母と、育ててくれた母。三人で一緒に、バージンロードを歩きたいと。
何ともハートフルな結末を迎えそうになった、新幹線内での顛末だが……。綺麗な後味では終わらないのが、このドラマだ。
整は気づいていた。「紘子、幸せで」と読み取ったイラストの暗号の意味が、本来は違うであろう可能性に。ひとつひとつ、イラストの解釈を変えてみると、そこには……。
「ふたりで ころした」
止まない暴力に疲弊した、産みの母と育ての母が、共に結託し”ひとつの殺人”を犯したのではないか。その真相は、はっきりと明かされないまま終わってしまう。
さて、物語はいよいよ「愛珠の死の真相」の解明へと突入する。
辻浩増=ジュートと対面した我路。妹の死の真相を突き止めるため、彼と話すことに。ジュートは、自分が連続殺人犯・羽喰玄斗(千原ジュニア)の息子であること、たまに遊びにくる父親と”隠れ家”で過ごした思い出などを、訥々と語り始めた。
羽喰が、名前に「十」が入る女性を狙っていた理由。連続殺人犯として世に名を知らしめた父親が、消息不明になった途端に忘れ去られた現実。すでに22年前に他界していた父のことを、世間にもう一度思い出してほしいがために、自ら「ジュート」と名乗り連続殺人を行なっていたこと……。
羽喰は、過去に登場した刑事・牛田(小日向文世)の相棒刑事である霜鳥(相島一之)によって殺されていた。霜鳥が持つ別荘の花壇に埋められているのを、ジュート自身が発見している。
羽喰が自宅にやって来なくなると、ジュートの母・辻土岐子は半狂乱になり「殺してくれ」とせがむようになった。羽喰による17人目の被害者と推定されていた土岐子は、ジュートの実の母親である。そして、彼女を殺したのは羽喰ではなく、息子のジュートであることも判明した。
ジュートは言う。「この話を愛珠さんにもした」とーー。寄木細工の職人・月岡(森岡龍)に心惹かれはじめていた愛珠は、同時にメンタルも不安定になりやすくなっていた。月岡から勧められたカウンセリングに通ううち、自死願望が芽生えたのかもしれない。
あの日、愛珠は「ジュートに殺してもらうため」にバスに乗った。漂流郵便局で見つけた愛珠のハガキに書かれていた一言「ジュートに頼もう」は、そういう意味だったのだ。
結局、彼女はバスジャック事件の顛末の通り、バスの運転手に生き埋めにされて亡くなった。やるせないが、どちらにしても命を落とす運命は変えられなかったのかもしれない。
濃く切ない物語が、いったんの結末を迎えようとしている。
すべての謎が解けたように思えるが、愛珠を自死に導いた可能性のある「カウンセラー」とやらは明らかになっていない。星座のマークがついたアクセサリーについても、明確な説明はないままだ。
我路と整が再会したところで終焉となったが、実に続編または劇場版が期待できる終わり方と言えるだろう。
※この記事は「ミステリと言う勿れ」の各話を1つにまとめたものです。
–{「ミステリと言う勿れ」作品情報}–
「ミステリと言う勿れ」作品情報
出演:
菅田将暉
伊藤沙莉
尾上松也
門脇麦
白石麻衣
鈴木浩介
筒井道隆
遠藤憲一
脚本:
相沢友子
(『トレース~科捜研の男~』、『人は見た目が100パーセント』、『鍵のかかった部屋』)
音楽:
Ken Arai
プロデュース:
草ヶ谷大輔
(『トレース~科捜研の男~』、『コンフィデンスマンJP』、
『人は見た目が100パーセント』)
熊谷理恵
(大映テレビ)
演出:
松山博昭
(『トレース~科捜研の男~』、『信長協奏曲』、
『鍵のかかった部屋』、『LIAR GAME(ライアーゲーム)』シリーズ)
品田俊介
相沢秀幸
制作・著作:
フジテレビ 第一制作部
原作:
『ミステリと言う勿れ』
田村由美
(小学館『月刊フラワーズ』連載中)