独断と偏見で決定!クリント・イーストウッドの名セリフBEST5

俳優・映画人コラム

『クライ・マッチョ』(C)2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

2022年5月31日で92歳を迎える、“ハリウッドの生ける伝説”クリント・イーストウッド。現在、監督デビュー50周年を飾る最新作『クライ・マッチョ』が絶賛公開中だ。

しかも本作でイーストウッドは、ロデオ界の元スターで現在は調教師として生計を立てているマイク・マイロ役を熱演。さすがに2019年に日本公開された『運び屋』が最後の主演作と思っていたが、まさか卒寿になってもスクリーンにその勇姿を刻みつけてくれようとは!

「イーストウッドが歩いてる!」
「イーストウッドが笑ってる!」

長年彼の映画を観てきたオールドファンとしては、ただそこに佇んでいるだけで「ありがたや」状態。しかも御大は、追手にパンチを見舞わせたり、メキシコの女性レストラン・オーナーといいカンジになったり、現役バリバリであることをアピール。筆者としては、その一挙手一投足に感激が冷めやらない状態でありました。

という訳で今回は筆者の独断と偏見で、これまでのイーストウッド主演作の中から、珠玉の名セリフを「5つ」紹介したい。

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第5位「さあやれよ、できるものならな」(『ダーティハリー4』より)

クリント・イーストウッドの当たり役といえば、『ダーティハリー』(1971年)のハリー・キャラハン刑事。警察からは厄介者扱いされているが、誰よりも正義感の強いアウトローというキャラクターがウケて、その後5作まで製作される人気シリーズとなった。

第1作の『ダーティハリー』でも、悪者に対峙した時に次のような超絶カッコいいセリフを吐くのだ。

「お前が考えていることは分かるよ。俺がもう6発撃っちまったのか、まだ1発残っているのか。実を言うと、俺もよく分からないんだ。でもこいつはマグナム44という、世界一強力な拳銃なんだよ。お前の頭なんて一発で消し飛ぶぜ!」

今回は1983年に公開された『ダーティハリー4』からセレクト。アメリカン・フィルム・インスティチュートが2005年に発表した「映画の名台詞100」で、第6位にランクインするくらいに有名なセリフだ。

英語では「Go ahead, make my day」で、直訳すると「さあやれよ、サイコーな日にしてくれ」という意味。もしあなたが銃を向けられるような事態に陥ったら、威風堂々とこのセリフを相手に向かって突きつけてやろう。その自信満々な姿に相手はすっかり怯んで、そそくさとその場を去っていくだろう。

第4位「俺も今はただの男だ。そこらへんの奴らと何の変わりもない」(『許されざる者』より)

第65回アカデミー作品賞を受賞した、イーストウッドの代表作『許されざる者』(92)。舞台は西部開拓時代のワイオミングで、イーストウッドが演じるのは“伝説的な大悪党”と恐れられたウィリアム・”ビル”・マニー。今ではすっかり改心して、農業を営んでいる。

そんな彼のもとにスコフィールド・キッドと名乗る若い男が現れ、賞金稼ぎの話を持ちかける。かつて悪名を轟かせたマニーの変わり果てた姿にキッドは反発するが、それに対してマニーは静かにこんな言葉を語りかけるのである。

だが冷静に考えると、コレってカタギになったヤンキーみたいなモンで、「かつては俺はかなりヤバい奴だった」という自己告白でもある。ボンクラな輩がこのセリフを迂闊に使うとケガするので、使用は要注意だ。

第3位「怒らせたのが大間違いという奴がいる。それが俺だ」(『グラン・トリノ』より)

(C)2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

続いては、大傑作『グラン・トリノ』(08)からこのセリフ。当時78歳のイーストウッドが演じるのは、元フォードの自動車組立工で、今はデトロイトで悠々自適の隠居暮らしを続けている頑固老人コワルスキー。グラン・トリノとは、フォードが1968年から1976年にかけて製造していた自動車のことだが、要はコワルスキー自身も“ヴィンテージ”であることが示唆されている。

だが、彼は枯れ果てたヴィンテージ老人ではない。ギャングにちょっかいを出されていた少女を救おうと、彼は単身ギャングの前に身を乗り出して、このセリフを言い終えるやツバを吐く。

カッコいいっス、イーストウッド先輩!いくつになっても先輩は先輩っス!

–{第2位・第1位は……?}–

第2位「人は変化を恐れるが、こう思えばいい。変化するのが自然だってね」(『マディソン郡の橋』より)

世界的ベストセラーとなったロバート・ジェームズ・ウォラーの同名小説を、クリント・イーストウッドが監督・主演で映画化した『マディソン郡の橋』(95)。アイオワ州の片田舎に住んでいる平凡な主婦フランチェスカ(メリル・ストリープ)と、カメラマンのロバート(クリント・イーストウッド)との運命の恋が描かれる。

言ってしまえば“不倫モノ”なのだが、粘着質なドロドロ系にならず、不思議とサラッとした感触が残るのはイーストウッド映画ならでは。かつて「不倫は文化だ」と発言した有名人がいたが、イーストウッド的には「不倫は変化だ」ということなのだろうか。いやーさすがっス!(何がさすがなのかはよく分からない)。

第1位「家族が一番大切だ。俺は苦労してそれがわかったんだ」(『運び屋』より)

(C)2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

言っていることはとても当たり前というか、陳腐と言ってもいいくらいにありきたりなセリフなんだけれど、イーストウッドの口から出ると味わい深さがマシマシに。ポイントは、後半の「俺は苦労してそれがわかったんだ」。つまり、彼は最近になるまで「家族が一番大切であること」が分かっていなかったのだ。

かつてイーストウッドが演じてきたのは、徹底した個人主義者(リバタリアン)であり、アウトローだった。家族やコミュニティからは背を向けて、己の信ずる道を唯我独尊で突き進んできたのである。

だが老齢を迎えて、イーストウッドにも少しずつ心境の変化が見えるようになる。『クライ・マッチョ』にもそのテイストが濃厚なのだが、彼は愛する人と共に生きることの美しさ、素晴らしさを、臆面もなく語るようになった。

現在のイーストウッドの信条を、最も分かりやすく伝えているセリフということで、1位に選んだ。

何気ない一言のように見えて、ありがたい金言や名言のオンパレード。ぜひイーストウッド先輩の映画を観まくって、自分の心に響いた名セリフを見つけてみてほしい。

(文:竹島ルイ)

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