『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』原作の再現度がものすごかった「3つ」の理由

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2022年1月28日より『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が公開される。結論から申し上げれば、本作は「ゲームの『1』と『2』が好きならとにかく映画館に観に行け!」と『バイオハザード』のファンに大プッシュでおすすめできる内容だった。

なぜなら、その最大の魅力はゲームの要素を全てぶち込んだジャンクな味わいの夢小説映画(断言)なのだから。作り手の無邪気な愛情が伝わりまくる楽しい映画でありつつも、(おそらくは)観客の見方や姿勢によって評価がガラリと変わる内容となった理由を記していこう。

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1:ゲームに忠実な、ファンのための映画になった

『バイオハザード』はもはや説明の必要がないほどに有名なゲームシリーズだ。1996年に1作目がプレイステーション用ソフトとして発売され、それ以降も20年以上に渡りホラーゲームの代表であり続け、シリーズ累計の販売本数は全世界で1億1000万本を超えている。3DCGアニメやコミック版など多数のスピンオフ作品も世に出ており、特に2002年から計6作が作られたミラ・ジョヴォヴィッチ主演の実写映画シリーズの印象が強い方もいるだろう。

だが、その以前の実写映画シリーズは、ゲームの設定や一部のキャラクターが登場するものの、ストーリーは全くと言っていいほどに別物だった。『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』のプロデューサーのジェームズ・ハリスによると、今回の制作陣は最初から「ゲームのファンのために映画化する」ことを考えていたそうだ。

その上で、ジェームズ・ハリスは「舞台を最初のゲームの設定だった1998年にすること」「1作目と2作目を併せてゲームのプロットをかなり忠実に追っていくこと」「キャラクターたちも映画スクリーン上で初めてきちんと描くこと」を決め、それこそで「ファンが望んでいた今までにない『バイオハザード』映画になる」と確信をしたという。

つまりは、今回のコンセプトは「ゲームを忠実に実写映画化してリブート(やり直し)する」ことそのもの。そのアプローチおよび「再現度」は、公開された予告編を観たゲームのファンから熱狂的な支持を持って迎えられたようだ。ロックバンド「4 Non Blondes」の有名楽曲「WHAT’S UP」が絶妙にマッチしたこの予告編は掛け値なしに素晴らしい出来栄えなので、まずはぜひ観てみてほしい。

–{『1』と『2』の両方の要素を詰め込む大盤振る舞い}–

2:『1』と『2』の両方の要素を詰め込む大盤振る舞い

その予告編を観た時点で、個人的に疑問に思っていたことがある。それは「え?ゲームの『1』と『2』の両方を1本の映画でやるの?」と。その予感は的中していた。けっこうなボリュームがあったはずの『1』と『2』の要素を、わずか107分の映画の上映時間に詰め込んだ内容だったのだから。

メインプロットは『2』の再現であり、兄との再会を願う女性や新人警官がゾンビが出現する街で戦う様が描かれている。

それと同時進行で、警察チームが『1』の謎の洋館へと捜査に赴く様も追っており、その洋館の内装は(ややサイズは小さくも思えるが)忠実に再現され、その中で初めにゾンビに遭遇するシーンは見せ方が「ほぼそのまま」だったりもするのだ。

さらには映画ではやや不自然にも思える「謎解き」も忠実に再現され、2002年発売のリメイク版『1』の人気キャラも登場し、伝説的かつネタ的な言葉「かゆうま(かゆい うま)」も半ば無理やり提示されたりもする。

これらのゲームへの愛情とこだわりぶりは極限にまで達しており、そのおかげで物語が二の次……いや物語はゲームの再現のためだけに存在しているというレベルにまでなっている。おかげで「そこでそのキャラがそうするのはおかしくね?」「舞台の位置関係どうなってんの?」などのツッコミどころは無尽蔵、ゲームを全く知らない方にとってはその雑さが目に余ってしまうかもしれない。

それでも、新人警官の成長や兄妹愛など必要最低限のドラマはあるし、さまざまな伏線が複合的に積み重なっていく工夫もあるにはあるので、個人的には悪い印象はない。それよりも「ゲームの美味しい要素をたくさん再現してみたよ!」という作り手の無邪気さのほうがはるかに上回ったので、ずっとニヤニヤできたというわけなのだ。

ツッコミどころや無邪気なゲームの再現ぶりの大盤振る舞いは、後半ではもはやシュールなギャグの領域に達しており、クライマックスのとある「お約束」はもう完全に爆笑だった。原作ゲームファンにとっての『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、ホラー映画として怖いとか怖くないとか、もはやそういう次元ではないのである。実際にゲームとは関係のない悪意たっぷりのギャグシーンもあるので、コメディ映画だったと言っても過言ではない

そのコメディ要素に一役買っているのが、アヴァン・ジョーギア演じるレオン・S・ケネディである。原作におけるレオンの新人警官という設定が「ヘタレ」「イジられまくる」という要素をもって格段にパワーアップしており、その情けなさや愛らしさにはたまらないものがある。ゲームの『4』の皮肉混じりのジョークを言うクールなレオンとは似ても似つかないので賛否は分かれるかもしれないが、それも個人的には好きではある。他のクセの強い人気キャラの再現度もまた、ゲームファンには見逃せないポイントだろう。

–{B級ホラー映画の監督が「とことんやった」結果がこれだよ!}–

3:B級ホラー映画の監督が「とことんやった」結果がこれだよ!

本作『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の監督を任されたのが、ヨハネス・ロバーツであることも重要だ。イギリス映画『ストレージ24』(12)のアメリカでの興行収入がたったの72ドルであることが逆に話題となったり、サメ映画『海底47m』(17)がそれなりの支持を得て続編も作られたりするなど、はっきり言えば「B級」寄りのホラー映画を手がけている方なのだ。

そんなヨハネス・ロバーツ監督はゲーム『バイオハザード』の大ファン。『1』と『2』が流行っていた当時は他の人たちがプレイするのを横から観ていた程度だったものの、10年前からはすっかりゲーマーになってシリーズにハマりまくり。2019年の『2』のリメイクの発売も大きなターニングポイントになったそうだ。

そんなB級ホラー映画でそれなりの評価を得ている、そしてゲームの大ファンの監督が、プロデューサーから「ゲームにとにかく忠実に作ってね!」と、なかなかの予算と制作規模をもって提案されたのであれば……そりゃまあ要素を全部ぶち込んだ映画ができるわな!と大納得できるというわけである。

そんなヨハネス監督のこだわりぶりは、プロデューサーのジェームズ・ハリスが「やるんならとことんやるべきだ」と気付かされたほどだったという。ヨハネス監督は前述したようなゲームの要素を「ファンがより一層映画を楽しめるよう、できる限り盛り込まないといけない」という気概で制作に挑んでいたのだから。

さらに前の実写映画シリーズとは違ってアクションよりもホラー要素を重視したり、ゲームでは不遇な扱いまたは背景を持っていたキャラクターにもスポットを当てるサービス精神もみて取れる。警察ヘリコプターのナンバーがゲームの『1』が発売された日付けだったりするなど多数の小ネタも仕込んだという。それらの「全てを楽しんでいってね!」という気概は、ある意味で誠実だ。

それでいて「なんだそりゃ!」と思いたくもなる、ゲームにもなかった斬新なアイデアでの怖がらせ方(?)もある。他にも序盤に陰謀論を安易に信じてしまうことへの批判があるのは、現代に作られる映画らしいポイントだろう。

さらには警官クリス・レッドフィールドを演じたロビー・アメルも御多分に洩れずゲームの大ファンだったそうで、「風景があまりにそっくりで興奮した!」「本当にゲームのキャラクターになってゲームの中を歩いている気がした!」「ディテールへの気配りや目配りが素晴らしかった!」「特定の部屋に入るとカメラが(ゲームの)特定のアングルにシフトしているんだよ!」などと嬉しそうに話していたらしい。出演者がそこまで楽しんだのであれば何よりである。

とにかく、『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』はとにかくゲームへの愛情だけで要素が構成されていると言っても過言ではなく、それはゲームファンにとっての最高のご褒美になっているということをわかっていただけただろうか。

そのおかげで物語に多少(かなり)の無理が出ていたり、舞台をパッチワーク的に繋いだような雑な印象もあるものの、「整合性とかそういうのは別にいいっしょ!」「それよりもゲームをできる限り再現することだろ!」という気持ちで臨めばきっと楽しめると信じている。

そんなわけで、個人的には『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』はこれはこれで美味しくいただけた大好きな映画となった。ゲームのファンであれば、70点満点で65点を期待したら68点くらいになる満足度はあると思う。ゲームを全く知らない、またはマジメなホラー映画を期待して観た人にとっては40点くらいになってしまうかもしれないが、それでもいろんなイベントがテンポ良く起きるので飽きないだろうし、「映画館でちょうどいい感じの(そこそこお金のかかった)B級ゾンビ映画を観たからまあよかったかな」くらいには楽しめるとは思いたい。そんな希望を叶えたい人におすすめだ。

(文:ヒナタカ)

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–{『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』作品情報}–

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』作品情報

【あらすじ】
巨大複合企業アンブレラ社の拠点があるラクーンシティ。この街の孤児院で育ったクレア・レッドフィールド(カヤ・スコデラリオ)は、アンブレラ社が起こしたある事故が原因で街に異変が起きていると警告する不可解なメッセージを受け取り、帰郷する。ラクーン市警(=R.P.D)に勤める兄クリス・レッドフィールド(ロビー・アメル)は、クレアの話を“ありえない陰謀論”と一蹴。だが、やがて2人は街を彷徨う住民たちの変わり果てた姿を目の当たりにする。次々と襲い掛かってくる住民たち。そんな中、2人はアンブレラ社が秘密裏に人体実験を行ってきたことを知るが……。 

【予告編】

【基本情報】
出演:カヤ・スコデラーリオ/ハナ・ジョン=カーメン/ロビー・アメル/トム・ホッパー/アヴァン・ジョーギア/ドナル・ローグ/ニール・マクドノー

監督:ヨハネス・ロバーツ

脚本:ヨハネス・ロバーツ

製作国:アメリカ