2021年12月24日に公開され、大ヒット上映中の『劇場版 呪術廻戦 0』。面白い映画であるだけでなく、もう一度観たくなる映画だと思う。筆者はアニメのみ観た状態で映画を観てさらにハマり、年末年始に最新刊まで原作を読み2度目を観てきたところだ。そしてまた観に行きたくなっている。
本記事では、『劇場版 呪術廻戦 0』を何度も観たくなるポイントについて語りたい。
※記事後半では本作の見所をネタバレ全開で語っています。未視聴の方はご注意ください。
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1:普通の人にも刺さる、共感ポイント
劇場版となった乙骨が主人公の物語『呪術廻戦 0』は、虎杖が主人公の「呪術廻戦」よりも、観る人が自分の人生に置き換えられる共感ポイントが多いと思う。もちろん「呪術廻戦」にも共感ポイントは多いのだが、メインの3人が規格外・エリート・勝気な性格のヒロインなので、特に序盤は共感よりもすごいものを見る感覚のほうが強かった。
「呪術廻戦 0」に共感できる理由は、メインの乙骨と真希さんにある気がする。乙骨もある意味規格外ではあるものの、冒頭では呪術に関することは一切知らず(この点は虎杖も同じではあるが)、周りの人を傷つけたくないから死のうと思ったがそれも阻まれ、五条に連れてこられた。
結果的に乙骨の呪術師としての初戦となった小学校での戦いの最中、ピンチのシーンで乙骨は真希にこう問われる。
「乙骨オマエ、マジで何しに来たんだ、呪術高専によ!!!」
「何がしたい!!何が欲しい!!何を叶えたい!!」
乙骨から出てきた答えは、
「誰かと関わりたい、誰かに必要とされて、生きてていいって自信が欲しいんだ」
だった。
そう答えた乙骨に
「じゃあ祓え、呪いを祓って祓って祓いまくれ!!」
「自信も他人もその後からついてくんだよ!!呪術高専(ここ)はそういう場所だ!!」
と答えた真希。
このシーンが乙骨が呪術師として戦うことを心に決めたシーンであると同時に、観る者の共感を呼ぶシーンだと個人的に思う。呪術は使えないけど、人に必要とされたい、自分に自信が欲しいと思ったことがある人はきっと多いのではないだろうか。筆者もその一人なので、乙骨の言葉に共感したし、真希さんの言葉に励まされた。「祓う」わけじゃないけど、自分にできることをやり続ければ、やってやってやりまくれば、自信も他人もついてくる。すごく刺さる言葉だった。
テレビアニメ「呪術廻戦」17話より (C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
少なくともアニメを観ていれば、アニメを観ていなくても映画を最後まで観れば、きっと真希さんもそう信じて続けてきたんだろうことがわかる。真希さんのエピソードはアニメにもあるのだが、そこではもっとかっこよく、余裕ある感じで語られていた。この乙骨とのシーンは非常時だったからか、乙骨を見ていてじれったさを感じていたからか、より真希さんの言葉に熱がこもっていて胸に響く。
そしてまた、覚悟を決めた乙骨の顔つきや動きがどんどん変わっていくのがたまらなくいい……。乙骨が同学年の3人のいいところをそれぞれ認め、尊敬し、3人もそれぞれの形で乙骨を心配したり気遣ったり奮い立たせ、お互いのために戦おうとするところが最高。この4人(3人と1匹)最高じゃん……ってなる。
2:音楽が良すぎる
この作品の魅力のひとつは、音楽の良さにあると思う。筆者は1回目を通常上映で、音楽がよかったため2回目を川崎チネチッタのLIVE ZOUNDで鑑賞した。
個人的に推したいのは冒頭、折骨が呪術高専に入学する朝のシーンで流れているBGM「Greatest Strength」だ。はじめは綺麗な曲だなと思うのだが、女性の歌声が入り、男性の歌声が入り、どんどん音数が増え力強くエモーショナルになっていく。これから折骨を待ち受けている運命を表現しているようで、心が震える。
1回目を観た後印象に残っていたのは戦闘シーンの重低音だったのだが、2回目を観に行き、ここの音楽が素晴らしかったことを改めて思い出した。この曲によって気持ちが高揚し、映画の物語にグッと引き込まれる感覚があった。ラストや山場が印象的な作品は多いが、冒頭がこんなに印象に残る作品は珍しい。この感覚を味わうために、また何度か映画館に足を運びたくなるくらいだ。
戦闘シーンや呪術説明シーンで流れるロックの重低音も、言うまでもなくかっこいい。特に折骨VS夏油戦では呪力がぶつかり合う戦闘シーンと相まって、この上なく臨場感があった。可能な方は、ぜひ一度は音質がよい映画館で鑑賞してほしい。
King Gnuによる2曲「逆夢」と「一途」も素晴らしい。それぞれ音楽も歌詞もいいし、乙骨と里香の関係性を歌っているように感じるのはもちろんなのだが、劇場版を観終わってあらためて歌詞とにらめっこすると、まずは「逆夢」に、さらに「一途」にも「ここは夏油のことではないか……」と思う要素があるところがさらにいい……。なんて大きな沼……。
–{もう一度観たくなる2つの真実/名言&名シーン}–
3:もう一度観たくなる2つの真実
※特にネタバレを多く含むので、まっさらな状態で映画を観たい方はページを閉じて先に映画を楽しんでください。
劇場版では終盤に、2つの真実が明かされる。
ひとつは乙骨と里香にまつわる真実、もうひとつは夏油にまつわる真実だ。
ひとつは、乙骨と里香にまつわる真実だ。
中盤ですでに乙骨本人が可能性として挙げていたが、里香が乙骨を呪ったのではなく、乙骨が里香を呪っていたのだった。里香の死を受け入れられなかった乙骨が「死んじゃ駄目だ」と願った結果そうなってしまったという。
もうひとつは、本作で敵となる最悪の呪詛師・夏油が五条と親友だったということ。
途中「傑」と下の名前で呼ぶシーンがあったから知り会いなんだろうとは思ったが、終盤明かされる「僕の親友だよ」という言葉、高専のクラスメイトだったとき、二人で並んで笑うカットがつらい。二人が(おそらく友だちとして)会話するシーンもつらい。つらいんだけど、その事実を知った瞬間にまた大きな沼が発生する。なぜ二人は道を分かつことになったのか、気になってしまう。
原作を読んでいる方は既知だと思うが、劇場版から観た人は少なからず驚き、知っている状態でもう一度はじめから観たくなるだろう。筆者がもう一度観たいと思った理由は、音楽以外にここにもあった。知っている状態で観ると、あらためていろんなシーンがぶっ刺さる……。「知らない状態」「知っている状態」両方楽しめたので、個人的に原作を読み逃していてよかったと思うくらいだ。
4:一度では消化しきれない名言・名シーン
※特にネタバレを多く含むので、まっさらな状態で映画を観たい方はページを閉じて先に映画を楽しんでください。
『呪術廻戦 0』は単純に「映画館の大画面でもう一度観たい!」と思う名ゼリフ名シーンが多すぎて困る(困らない)。
1.もう一度聞きたい(聴きたい)、乙骨のあのセリフ
乙骨の「失礼だな 純愛だよ」はもちろん「蝶よりも花よりも丁重に扱え」もかっこいい。2度目を観に来た理由の何割かはこの「失礼だな 純愛だよ」をもう一度観たかったからだ。かわいい声もかっこいい声も出せる乙骨くんなんなの……つまり緒方恵美さん、なんなの……?
ちなみにかわいい部門おすすめのセリフは、共同任務で乙骨が狗巻棘に対して言った「何買ったの?」です。あの言い方かわいすぎない??
また乙骨が真希に対して言った「禪院家、ぶっ壊そー!」もかわいい。
2.里香の最期のシーンも涙なしには観られない
「里香はこの6年が生きている時より幸せだったよ」
このセリフは泣いてしまった。里香ちゃんにとっては本心をそのまま言っただけだろうけど、なんという愛と許しと救いにあふれた言葉だろうか。この言葉がなかったら、乙骨は自分のせいで里香やたくさんの人を苦しめたと思ったままで、自分で自分を呪ってしまっていたかもしれない。
3.乙骨VS夏油戦が素晴らしい
音楽については既に語ったが、乙骨と夏油の戦いは視覚的にも聴覚的にも本当に一秒たりとも気が抜けない。動き・音楽・声と声、すべての要素が融合してたまらん。このシーンは先ほどお伝えした、音響に特化した劇場でもより楽しめると思うし、IMAXレーザーやRGBレーザーなど、映像に特化した劇場でも楽しめると思う。筆者、RGBレーザーで観たがとてもよかった。
4.乙骨・真希・棘・パンダの友情が尊い
共感ポイントでもお伝えしたが、この同学年4人(3人と1匹)の関係性と友情が素晴らしい。口は悪いが呪力が見えないながら一族を見返そうと頑張っている真希、おにぎりの具しか語彙がないため意思の疎通難しいが自身と少し境遇の似ている乙骨を気遣う棘、そんなみんなを理解し(人間じゃないのに)人間関係のハブとなるパンダ……。
ほのぼのとしてシーンもいいし、お互いを守ろうとする戦闘シーンもいい。
そして乙骨の「僕は真希さんみたいになりたい 強く、真っ直ぐ生きたいんだ」は泣く。
5.貴重なナナミンの黒閃が観られる!
テレビアニメ「呪術廻戦」11話より (C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
原作にはないが、劇場版オリジナル展開としてナナミンこと七海健人が登場する。しかも「呪術廻戦」の原作・アニメでは語られるだけだった「黒閃連続4回」が観られる。「劇場版はナナミン出ないだろうしなぁ」と思っているナナミンファンのみなさん、今すぐ映画館へ……!
ナナミンだけでなく、あの人やあの人も活躍するので一度では消化しきれないかっこよさの渋滞。
6.五条悟の「六眼」が美しすぎる
TVアニメでも凝っていたが、五条先生の瞳(六眼)の美しさ、劇場版でもさらに際立っており、制作陣の本気を感じた。両目が出た状態のシーンもあり、さらにその状態での戦闘シーンもある。あの美しい眼と最強・五条悟の戦いを大画面で見るたけでも映画館に行く価値があると思う。
また多くの人に「どこのリップを使ってるんだ?」と言われるほどぷるっぷるの唇。(絶対制作陣に強火の五条先生オタクがいると思う)
また戦闘シーンでの原作にはないセリフが、五条悟らしくてかっこいい。
結論、五条悟を浴びたい人は今すぐ映画館に行くべき。
7.櫻井孝宏・中村悠一も注目した真希さんの〇〇
ラジオでおふたりが触れていた、乙骨との鍛錬での真希さんの避け方・お尻からのアングルで見せているというのがエロかったというシーン、2回目できっちり確認してきた。ここも誰かの拘りなのだろうか。
8.五条と夏油の会話
もともとは高専のクラスメイトで、実は親友だった五条と夏油。
おそらくとても仲がよかったのに、何らかの理由により袂を分つことになり、本作では敵として対立している。作中基本的に敵として話しているのだが、このシーンは友だちとして話しているのかな? というシーンがある。そのシーンが愛おしくて切ない。
騙されたと思って映画館で観てほしい
観に行こうか悩んでいる人がいたら、悪いことは言わないから映画館で観られるうちに観に行くことをおすすめする。
もう原作で内容を知っているし……という方、原作がすごくいい形でアニメ化されていて色・音・動きつきで観る価値は絶対にあると思うし、劇場版オリジナルのシーンやセリフもなかなかにいい。特に百鬼夜行で戦闘中の五条先生の原作にないセリフ、これぞ五条悟という感じだし、まさかこのキャラのこんなかっこいいシーンが観られるの? というシーンが結構ある。
アニメや原作を途中で離脱してしまった方、劇場版はそんな方にこそおすすめしたい。おそらくアニメや原作よりもスッと入ってきやすい物語なので、騙されたと思って劇場版を観てほしい。
さて、次はいつ観に行こうかな!
(文:ぐみ)
–{『劇場版 呪術廻戦0』作品情報}–
『劇場版 呪術廻戦0』作品情報
ストーリー
辛酸・後悔・恥辱……人間が生む負の感情は呪いと化して日常に潜む。呪いは世にはびこる禍源であり、最悪の場合、人間を死へと導く。そして、呪いは呪いでしか祓えない……。
高校生の乙骨憂太は幼少の頃、結婚の約束を交わした幼馴染・祈本里香を交通事故によって目前で失い、呪いと化した彼女に憑かれて苦しんでいた。そんななか、乙骨は最強の呪術師・五条悟が教師を務める、「東京都立呪術高等専門学校」に転入、「生きてていいという自信が欲しい――」と、里香の呪いを解くことを決意する。
同級生の禪院真希、狗巻棘、パンダと共に呪術師として歩み出す。一方、かつて一般人を大量虐殺し、高専を追放された最悪の呪詛師・夏油傑が彼らの前に現れる。
「来たる12月24日、我々は百鬼夜行を行う」
果たして、乙骨は夏油を止められるのか、
そして、里香の解呪の行方は……。
予告編
基本情報
声の出演:緒方恵美/花澤香菜/小松未可子/内山昂輝/関智一/中村悠一/櫻井孝宏 ほか
監督:朴性厚
公開日:2021年12月24日(金)
製作国:日本