<徹底検証>ドラマ版「ミステリと言う勿れ」の期待と不安(※原作ネタバレあり)

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田村由美原作漫画「ミステリと言う勿れ」(小学館『月刊フラワーズ』)が、2022年1月期の月9ドラマとして映像化される。

土日にカレーを仕込むのが趣味な大学生・久能整が、ひょんなことから殺人事件の容疑をかけられてしまうトンデモ展開から始まる物語である。原作は2022年現在1〜10巻まで刊行中。訥々と持論を展開しまくる整の不思議な魅力から火がつき、大好評連載中だ。

主人公の整を演じる菅田将暉始め、おじさんがひしめく世界で一人頑張っている女性刑事・風呂光聖子を伊藤沙莉が、子供が生まれたばかりの新米パパ刑事・池本優人を尾上松也が、整が出会う神出鬼没な女性・ライカを門脇麦が、そして整の恩師・天達春生を鈴木浩介が演じるなど、錚々たる力量のメンバーが脇を固めまくっている。

原作ファンが多い本作において、ドラマ化の一報に一喜一憂された方々も多いだろう。筆者もその一人である。今一度、原作を読み返した上で、ドラマ「ミステリと言う勿れ」のキャストの魅力と見どころに迫りたい。

キャストの魅力①:特徴的な髪型が忘れられない主人公・久能整役の菅田将暉

本作のドラマ化が知らされるや否や、Twitter上には、とある文言が飛び交った。「整役は渡部豪太じゃないの!?」である。整といえば、忘れられないのがアフロのような特徴的なヘアスタイルだろう。実写化すると聞いて、すぐに彼の顔を思い浮かべた方々が、実に多かったと言うことだ。

何を隠そう、筆者もそうだった。筆者は過去に当メディアにおいて菅田将暉の俳優論を書いたことがあるほど彼のファンを自称している。しかし「整=菅田将暉」と聞いても、咄嗟にはピンとこなかった。むしろ、いくらカメレオン俳優と名高い彼でも、イメージに合わないのでは……と危惧していたほど。

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ところが、後日アップされた公式画像やティザー予告を見て、華麗なほど意見が180度回転することになる。思った以上に、整なのだ。特徴的なアフロ、常に物言いたげそうな独特な表情、訥々とした話し口……。さすが、役を丸ごと着るように表現する役者は違う。




この時点で期待値は爆上がりなのだが、極め付けは、公式サイトにアップされている菅田将暉の公式インタビューである。

なかなかあの髪型は仕事ではないですし、あっても役は限られてしまいますからね。ですので、今回は勢いよくパーマをかけました。天パー感を出すのに美容師さんと相談したり、髪だけでなく服選びとかも楽しかったです。


引用:https://www.fujitv.co.jp/mystery/interview/interview08.html

なんと、整のあの特徴的な髪型、地毛で臨んだというのだ! 役者としてのストイックな姿勢には感服する。さらには、原作を読み込んでいないと出てこないこんなエピソードも。

久能整という語感に僕はすごく馴染みがあって…。僕の本名は、ひらがな文字は“う”で終わるんですが、久能(くのう)、整(ととのう)と同じように音は“お”で終わるんですよ。語尾による性格分析が原作にも出てくるんですけど、自分にはとてもよくわかりました。

Wikipedia情報によると、菅田将暉の本名は「菅生大将(すごう・たいしょう)」である。原作に出てくる性格分析とは「Uで終わる名前は根暗なんだそうです」(コミックス4巻P110)といったものであり、これによると、彼もまた根暗だということになる。

ここまで原作を読み込み、原作愛の強い菅田将暉が主役・整を演じてくれるとわかれば、軒並み期待値が上がりまくってしまう。どんな整の姿を見せてくれるのか、放送を楽しみに見守りたい。

キャストの魅力②:おじさん業界に潰されそう!?踏ん張って立つ女性刑事・風呂光聖子役の伊藤沙莉

続いて、女性刑事・風呂光聖子役の伊藤沙莉に触れたい。本作の登場人物はほとんど全員が特徴的な名前だが、群を抜いて珍しい苗字なのが彼女だろう。「風呂光」なんて聞いたことがない(調べてみたら、日本国内には約40名ほどしかいないようだ)。

原作の風呂光は、最初こそ少し影が薄い。薮鑑造(遠藤憲一)や青砥成昭(筒井道隆)などドギツイおじさん刑事たちが、割と序盤から出張ってくるので、そのインパクトに追いやられてしまっている。しかし、決して無視はできない存在だ。

男性優位な社会で、どう生き抜いていくか。女性だからって軽く見られないためには、どんな心構えでいるべきか。殺人事件の容疑者として警察へ連行されてきた整と会話を交わすうちに、風呂光はその答えを自分で見つけ出していく。コミックス1巻の「猫の話」「自分の存在意義の話」などが、ドラマではどのように描き出されるのだろうか。

直近ではドラマ「モモウメ」(Hulu配信/2021)や「いいね!光源氏くん」(NHK/2020)などコミカルな作品はもちろんのこと、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2021)や『ちょっと思い出しただけ』(2022)など正統派ラブストーリーでヒロインを務めることも多い伊藤沙莉。今回のような月9ドラマでは、どんな存在感を示してくれるのか、楽しみである。

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–{まだまだある!メインキャストの魅力}–

キャストの魅力③:謎が謎を呼ぶ”謎の女”!?ライカ役の門脇麦

今作のキャスティングで最も驚いたのは、ライカ役の門脇麦かもしれない。

原作のライカは、とある一件から入院することになった整が突然出会う”謎の女”である。彼女の特徴は、流れるようなロングヘア、切長の目、高身長。まさにクールビューティを絵に描いたような美女なのだ。門脇麦は確かに可愛らしいが、なかなか意外な人選だと言わざるを得ない。

原作でライカが初登場するのは、コミックス4巻のラスト。特徴的な登場の仕方で、その後、物語の全編を通して整とやりとりを交わす存在となる。本作の大きな特徴のひとつとして「過去のこんな些細なことが、未来でこう繋がってくるのか!」と驚かされる、巧みな伏線術があるのだが、ライカはその伏線のキーパーソンとなる重要人物だ。

門脇麦といえば、直近では映画『あのこは貴族』(2021)や『浅草キッド』(2021)『あなたの番です 劇場版』(2021)での演技が記憶に新しい。特に『あなたの番です 劇場版』では、ドラマシリーズから引き続きの出演陣に混ざり、確かな存在感を示してみせた。

加えて、ドラマ界隈での活躍も見逃せない。Amazon Primeで配信予定の「失恋めし」(2022)では、1話のみの出演にも関わらず、美味しそうに食事をするシーンが根強く印象に残る。

「ミステリと言う勿れ」で彼女が演じるライカは、本来の門脇麦が持つオリエンタルでミステリアスな印象を存分に醸し出すことになるだろう。主演・菅田将暉とは映画『二重生活』(2016)でも共演している。次はどんなタッグを見せてくれるのか、要注目である。

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キャストの魅力④:またもや恩師役!信頼の安定感を誇る演技に期待・天達春生役の鈴木浩介

鈴木浩介が演じるのは天達春生。整が通う大学の恩師・天達先生である。

生徒と恩師同士で菅田将暉と鈴木浩介がタッグを組むのは、ドラマ「コントが始まる」(2021)と同じ構図だ。売れないお笑い芸人を続ける教え子たち(菅田将暉・神木隆之介・仲野太賀)を、最後まで熱く見守る真壁先生を演じた鈴木浩介。

この真壁先生と、本作の天達先生とは、また少し雰囲気が変わってくるだろう。

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原作で天達先生が初登場するのは、コミックス5巻の冒頭。初めてライカと出会った整が、今後も彼女と関わっていくべきかどうかを天達先生に相談するシーンが、実に微笑ましい。

整と天達先生は、単なる生徒と恩師に留まらない関係性でもある。そのためか「人に会い、人を知りなさい」と深い助言を整に与える場面もちらほら。「コントが始まる」の真壁先生は、愚直で、一見堅物そうに見えるが根は熱い人だった。一方「ミステリと言う勿れ」の天達先生は、常に人当たりがよく物静かで、ここぞという時に深い啓示を与えてくれるタイプ。

すっかり恩師役は板につきつつある鈴木浩介。どんなテイストで天達先生を見せてくれるのだろうか。

以上、メインキャストとなる魅力的な4名のキャスティングについて紹介した。

続いて、原作から推察できる本ドラマの見どころをピックアップしたい。極力、大きなネタバレには配慮しているが、原作未読の方はご注意頂きたい。

–{<少々ネタバレあり>原作から推察するドラマの見どころ}–

<少々ネタバレあり>原作から推察するドラマの見どころ

見どころ①:整・池本・風呂光のコミカルな掛け合い

物語序盤で整が相対することになる刑事に、池本刑事と風呂光刑事がいる。池本を尾上松也、風呂光を伊藤沙莉が演じることは公式サイトにて発表済み。おそらく最初はこの3名のコミカルな掛け合いが本作の魅力のひとつとなるだろう。

予告動画を見る限り、細かいところが気になって途中で話を挟んだり、空気を読まずに言いたいことを発言したりする整の特徴が、思う存分発揮されている。その様子に、一般人らしく戸惑ったり面白がったりするポジションにいるのが、池本と風呂光だ。

友達も恋人もおらず、自宅に人を呼んだことがないと公言する整に対し、哀れみの目を向ける池本と風呂光を早く見たい。

最初こそ、整に対し「コイツ変な奴だな」「面倒そう」とネガティブな印象を抱くであろう2人。しかし、新米パパになったばかりの池本や、おじさんがひしめく中で一人頑張る風呂光にとって、整の発する言葉はある種の薬のように効いていく。

きっと、原作ファンになった方々も、冒頭の1〜2話で繰り出される整の「心に優しく響くマシンガントーク」にやられてしまったのではないだろうか。

見どころ②:月9らしいラブロマンスに期待

月9ドラマに期待したいのは、やはりラブロマンス

原作にはあまりラブストーリー的展開は見られないが(ハグやキスといった表現も極端に少ない。家族で見ても気まずい空気になり得ないと保証できる)、やはりそこは月9。そして菅田将暉主演。いくらか脚本段階でテコ入れし、多少のラブ要素は入れ込んでいる可能性が高いと見ている。

だとすると、ヒロインは伊藤沙莉演じる風呂光か、それとも門脇麦演じるライカか?

原作で登場するのは風呂光の方が早いが、物語全編を通して「いないと話が進まないキャラクター」なのはライカである。

二人で出かけたり、ことあるごとに話をしたりするのもライカなので、これはやはりロマンスを期待するなら整&ライカの2人だろうか。

とは言いつつも、原作は恋愛要素に重きを置いていない。『二重生活』の菅田将暉&門脇麦を重い描きながら本ドラマを見ると、肩透かしを食らう可能性もあるため注意が必要だ。

見どころ③:あのキャラが出るってことは、あのエピソードも……?

ライカと同じくらいに重要人物である”例の人物”について、現時点では公式サイトにも記載がなく、キャスティングも発表されていない。

犬堂愛珠役=白石麻衣であることは公表されているため、原作にもある「バスジャック事件」のエピソードはドラマに組み込まれるはず。大いなるネタバレ要素であるため、ギリギリまでシークレットである可能性が高い。

また、別エピソードとして、天達先生が登場するということは……彼がメインの「アイビーハウス」のエピソードも描かれるだろう。整の出生や生育環境にも関連するため、外せない要素のはずである。

原作ファンの方はお気づきだろうが、この物語はとにかく骨太だ。

どのエピソードや登場人物も密接に絡みあっており、「あっちを抜いてこっちを入れる」のような、取捨選択ができない構成になっている。ドラマ放送を10話と仮定しても、全てのエピソードが入り切らないのは明白だ。果たして、製作陣はどのように結末を作り上げるつもりなのだろうか。

タイトル「ミステリと言う勿れ」とはとても言えない、ミステリアスな要素に包まれた本ドラマ。放送を楽しみに待ちたい。

(文・北村有)

–{「ミステリと言う勿れ」作品情報}–【作品情報】

出演:
菅田将暉
伊藤沙莉
尾上松也
門脇麦
白石麻衣
鈴木浩介
筒井道隆
遠藤憲一

脚本:
相沢友子
(『トレース~科捜研の男~』、『人は見た目が100パーセント』、『鍵のかかった部屋』)
 
音楽:
Ken Arai

プロデュース:
草ヶ谷大輔
(『トレース~科捜研の男~』、『コンフィデンスマンJP』、
『人は見た目が100パーセント』)
熊谷理恵
(大映テレビ)
 
演出:
松山博昭
(『トレース~科捜研の男~』、『信長協奏曲』、
『鍵のかかった部屋』、『LIAR GAME(ライアーゲーム)』シリーズ)
品田俊介
相沢秀幸

制作・著作:
フジテレビ 第一制作部

原作:
『ミステリと言う勿れ』
田村由美
(小学館『月刊フラワーズ』連載中)