(C)2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (C)よしながふみ/講談社
2021年はもうすぐに暮れようとしている。ありがとうと来年もよろしくと言って、年末年始を家族や親しい人と迎える人も多いだろう。年の暮れは普段自分がつながっている人たちとの関係を再確認する時期でもある。
映画の世界でも変わった組み合わせのバディたちが、喧嘩したり友情を結んでいた。そこで2021年の月刊シネマズ企画として、ちょっと変わったバディたちが登場する映画をご紹介したい。定番の組み合わせとは違う、こんな関係もありなんだと思わせてくれるような作品ばかりだ。
ドラマ版の続きや、シリーズの続きものもあるが、さほど前知識がなくても楽しい作品を選んでみた。中には現在公開中の作品や、動画配信サービスで視聴できる作品もあるのでチェックしてみてほしい。
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1.「きのう何食べた?」:西島秀俊×内野聖陽
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2019年4月クールにテレビ東京系列の「ドラマ24」にて放送された、「きのう何食べた?」の劇場版。街の弁護士事務所で働く弁護士筧士郎(シロさん)と恋人の美容師矢吹賢二(ケンジ)の料理ドラマだ。とはいえ、映画だけでも十分楽しめる内容となっているので、どうかご安心いただきたい。(ドラマ版きのう何食べた?は、netflix、アマゾンプライム、huluで視聴可能)
シロさん演じる西島秀俊は「真犯人フラグ」「ドライブ・マイ・カー」など国内外で活躍。ケンジ演じる内野聖陽は2021年秋の紫綬褒章を受賞するなど、主役2人は揃って実力者だ。これにドラマ版のチームが再結集となると、おもしろくないわけがない。
シロさんとの京都旅行に乙女モード全開のケンジが可愛すぎて、「本当にごちそうさまです」としか言えなかった。この作品は現実の私たちと同じように年月と共に年齢を重ねる。シロさんは高齢の両親にケンジを直接紹介したのだが、そのことをきっかけに2人の間に溝ができてしまう。
またケンジたちを中心に小日向大策・井上航のゲイカップルや、ケンジの家族、シロさんが勤める上町弁護士事務所、ケンジが働く美容室「フォーム」の同僚といった人間模様が丁寧に描かれる。
絶品の料理があっても、生きる上での悩みや課題が消えてなくなるわけではない。けれど、折々に登場する美味しそうなメニューは、その場にいる人間をつないでくれる。そして誰かが繰り返し作ってくれた料理は、時間を超えて人と人を結びつけてくれる。その様が繊細に細やかに紡がれていく作品だ。
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2.「ラーヤと龍の王国」:ラーヤ×シスー
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本作は、3月に公開になったディズニーピクチャーズ作品だ。舞台は架空の世界クマンドラ。龍の石を守護する一族に生まれたラーヤは、石を巡る争いの中で家族や国を失い、ある出来事によって人を信じることができなくなってしまう。成長したラーヤはドルーンを倒し国を取り戻すため、最後の龍「シスー」を探す旅に出る。
主人公ラーヤはある事件をきっかけに人を信じることができない、疑ぐり深い性格に。彼女の服装は殻にこもれるようにと、誰かと出会ったときに自分をすぐ隠せるような襟の高いマントに、仏塔をイメージした帽子がデザインされたそう。そんな彼女と対照的に最後の龍シスーは人を全く疑わない性格。底抜けに明るくて、でもすごい力を秘めている。人を信じることに恐怖を覚えるラーヤと、簡単に信じすぎるシスー。そんな2人の掛け合いが楽しい物語だ。
ちなみに本作は東南アジアをモチーフにした映画で、スタッフはその世界を肌で感じるため、東南アジア中(ラオス、タイ、インドネシア、ベトナム、カンボジア、マレーシア、シンガポールを含む)に実際に足を運んだそうだ。龍と関わりの深い水の表現は圧倒的で、下から上に流れる水、意志をもったかのように動く水など表現方法が楽しい。また東南アジアで用いられるガムランの耳に心地よい音、そして巻物など紙の繊維まで透けて見えるような緻密な描写など目にも耳にも魅力的な作品となっている。
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3.「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」:エディ×ヴェノム
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地球外生命体シンビオートが、ジャーナリストの主人公エディに寄生して誕生したのがヴェノムだ。本作はヴェノムの第二作にあたるが、小難しい設定を知らないとついていけないわけでもない。エディにシンビオートが寄生してるんだくらいの知識で観ても十分に楽しめる。
本作の見どころは、連続殺人鬼クレタスがシンビオートに感染し、エディたちと対決する場面だ。アクションあり、ホラー要素ありだけど、そもそもプロダクションノートに”エディとヴェノムの結婚生活”とある通り、2人のやりとりがただの痴話喧嘩で実に痛快だった。
終始エディから離れないヴェノム(寄生してるから当たり前だけど)とのやりとりは、どうみても痴話喧嘩にしか見えない。お互いに喧嘩別れしても、シンビオートならどう行動するのか、エディに注目を浴びる姿を見てほしかったと考えたりしている。これはもはや恋愛関係にあるんじゃないのか?
お互いに相性がいいと思って一緒になったのに、倦怠期に入って相手の言動に腹が立ってしょうがない、みたいな諍いが続く。血やホラーが苦手な筆者は震え上がるはずなのに、エディとヴェノムの痴話喧嘩味が強すぎて、ちょっと違うタイプのラブコメディーを観ている気持ちになった。
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4.「シャン・チー/テン・リングスの伝説」:シム・リウ×オークナフィワ
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幼い頃に母を殺され、父より殺人術を徹底的に仕込まれたシャン・チー(シム・リウ)は、父の率いる犯罪組織テン・リングスから逃れ、ホテルのドアマンとして暮らす。そんな彼の元に再び父の手が迫る。マーベル・スタジオ作品の新しいシリーズとして公開された作品だが、前シリーズを知らなくとも楽しめる。
親友ケイティとの関係性が抜群にいい。彼女の行動基準は常に親友のためだ。複雑な過去を持つシャン・チーにいつも前向きな言葉をかけ、一緒に壮大な戦いを乗り越える。ケイティ演じるオークナフィワは、ラーヤと龍の王国ではシスーの声を演じている。明るく力強い役柄がとても似合う。
2人は一緒に困難を乗り越えるがずっと親友のままだ。恋愛に寄せるだけがすべてじゃないので、その関係がなんとも心地よい。嫌なことがあったらカラオケで一晩中歌おうなのだ。こんな親友がいたら最高だと思わせてくれる、そんな2人にご注目。
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本当に風変わりな選出だった
風変わりだなと思いつつ選んでみたら、本当になにひとつ男女の恋愛ものがなかった。いろんな信頼関係があるからいいのだ。来年もまた魅力的なバディたちの活躍を観られることだろう。今年は大きく行動が制限されることが多かったけど、来たる2022年がみなさまにとって自由に人と語らい笑いあえる年でありますように。
(文:ささのは)
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