『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はネタバレ厳禁映画なので、代わりにシリーズを復習してみた!

ニューシネマ・アナリティクス

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

2022年1月7日より、いよいよ『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が日本でも劇場公開されます!

最初に感想だけお伝えしておきますと、今までのスパイダーマン映画の中でベスト1! マーベル映画全体を見渡しても、かなりの上位にくる面白さです!

ただしこの作品、とてつもなく大きなネタバレ要素がドラマに大きく関わっている作品であり、さすがに公開前はこれ以上の言及が出来ません(というか、絶対にしてはいけない!)。

従って、ストーリーであるとか、海外からの情報などにも一切触れないことを強くおススメしておきます!

その代わりといってはアレですが、今は冬休みの真っ盛り、この機会に今までのスパイダーマン映画をおさらいしてみるほうが、むしろ楽しい作業かもしれません!
 
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前作のラストから始まる今回のスパイダーマン

これまでさまざまなスパイダーマン映画が作られてきましたが、本作はジョン・ワッツ監督&トム・ホランド主演によるシリーズの最新作で、前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)のラストから直結したお話でもありますので(一応、前作を未見の方でも、いったい何が起きてしまったのかは、見ていくうちにわかる作りになっていますが)、最低限これを見ておいたほうが世界観に入り込みやすいでしょう。

〈ジョン・ワッツ監督版の主要キャスト〉
●スパイダーマン(ピーター・パーカー)
…トム・ホランド
●MJ(ミシェル・ジョーンズ)
…ゼンデイヤ
●ネッド・リーズ(ピーターの親友)
…ジェイコブ・バタロン
●メイ・パーカー(ピーターの伯母)
…マリサ・トメイ
●アイアンマン(トニー・スターク)
…ロバート・ダウニー・Jr(第1作)
●ハロルド・”ハッピー”・ホーガン(トニーの親友でピーターのお目付け役)
…ジョン・ファブロー

〈主なヴィラン〉
●バルチャー(エイドリアン・トゥームス)
…マイケル・キートン(第1作)
●ミステリオ(クエンティン・ベック)
…ジェイク・ジレンホール(第2作)

またトム・ホランドがスパイダーマンを演じた、これまでの『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)『スパイダーマン:ホームカミング』(17)『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)といったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品群も一緒に見ておけば、今回ゲスト出演するドクター・ストレンジとの関係性などもわかりやすくなるはず。

そして、さらにお時間のある方は、せっかくですからスパイダーマンの歴史とか、これまで作られてきた映画やドラマ、アニメなどもチェックし直してみてはいかがでしょうか?

こと映画に関しては、21世紀に入ってからサム・ライミ監督&トビー・マグワイア主演版3部作(02・04・07)、マーク・ウェブ監督&アンドリュー・ガーフィールド主演版2部作(12・14)、ジョン・ワッツ監督&トム・ホランド主演版3部作(17・19・21)、さらにはアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)と、スパイダーマンそのものを主人公にした作品が続々と作られています。

それぞれ監督やキャストの個性が上手く醸し出されているとともに、それぞれの設定や人間関係、世界観の相違などもチェックしながらスパイダーマン・ワールドを極める……まではさすがに大変ですが、その最初の一歩くらいは踏み出せるかもしれません!
 
–{スパイダーマンは いかにして誕生したのか?}–

スパイダーマンはいかにして誕生したのか?

そもそもスパイダーマンは1962年8月、スタン・リー原作、スティーブ・ディッコ作画のマーベル・コミック「Amazing Fantasy」誌の最終刊(♯15)に初めてお目見えしたヒーローで、そのときの反響の大きさから1963年に「Amazing Spider-Man」を創刊し、以後の基本設定などを構築しつつ、さらなる人気を得ていきました。

当時は大人がヒーローになるのが当たり前だった時代、高校生のピーター・パーカーが特殊なクモに咬まれたことから超人的能力を身に着けた“スパイダーマン”となって悪と戦う活躍ぶりはもちろん、幼い頃に両親を亡くしているがゆえの孤独であったり、戦うことで取り返しのつかない代償を得てしまうなど、ティーンエイジャーとしての等身大の悩みを抱えたヒーロー像は、若者たちの熱い支持を得ることになったのです。

その後もスパイダーマンは設定や形式などを変えつつ、さまざまなマーベル・コミックに登場し続けていきます。

日本でも池上遼一・作画の翻案漫画「スパイダーマン」が、1970年1月号から1971年9月号までの「別冊少年マガジン」に連載されました。

21世紀に入ると2004年9月号~2005年11月号「コミックボンボン」に小学生がスパイダーマンになる「スパイダーマンJ」(山中あきら・作画)、2019年7月~2020年3月の「マガジンポケット」では日本人高校生がニューヨークを舞台にスパイダーマンに扮する「スパイダーマン/偽りの赤」(大沢祐輔:漫画)が発表。

そんなスパイダーマンの映像化ですが、テレビアニメーションとして1967年より1970年まで放送された「スパイダーマン」が最初です。
(日本でも「怪傑くも人間」の邦題、富山敬の吹替で1974年7月から1975年3月まで放送。80年代には「スパイダーマン」として田中秀幸の別吹替版も放送)

正直、その後もスパイダーマンのアニメ化は1981年版、1994年版、1999年版、2003年版、2008年版、2012年版、2017年版など多数あり、さらにはマーベル・ヒーロー集結番組やスピンオフへの出演、LEGOアニメ版(2019年)もあったりして、もはやこれだけでひとつの大きな論考が出来るほどなので、ここでは省略。

では実写は?となると、1977年から1979年にかけてニコラス・ハモンド主演のテレビドラマ“The Amazing Spider-Man”全15話が作られ、そのうちパイロット版を含む長尺エピソード3作はアメリカ以外の諸国で劇場公開されています(日本では最初の2本が劇場公開され、3本目はビデオ発売のみ)。

1978年には、何と日本でも実写ドラマ化! 東映がマーベルと契約して製作した日本版「スパイダーマン」です。

ここでのスパイダーマンは、父を悪の異星人に殺されて、自身はスパイダー星人からクモの力を与えられて超人と化したオートレーサー山城拓也(香山浩介/現・藤堂新二)と、かなり日本人好みの設定に変えられています(原案表記は八手三郎)。

何と巨大ロボット・レオパルドンに乗り込んで戦ったりもしますが、スタン・リーもこの造型などには好意的だったとか(またこのパターンが、後のスーパー戦隊シリーズに踏襲されていきます)。

1978年5月から1979年3月まで全41話が放送され、78年7月の《東映まんがまつり》では第10話と第11話に挟まるオリジナル・エピソードがワイド画面の劇場用映画として上映されています。

そして21世紀に入って、いよいよアメリカ本国での劇場用映画超大作としてのスパイダーマン映画の製作が開始されるのでした。

–{21世紀に本格始動する スパイダーマン映画}–

21世紀に本格始動するスパイダーマン映画

Spider-Man(R),Green Goblin(R),the Characters(R)&(C)2002 Marvel characters,Inc. All Rights Reserved.

1980年代以降、ハリウッドはコミック原作ヒーローものの映像化に消極的になっていました。

しかし、そんな中でも『スパイダーマン』映画化の企画は幾度も立ち上がっては消え、最終的にソニー・ピクチャーズが大のコミック・ファンであるサム・ライミを監督に迎えて、2002年『スパイダーマン』を発表。

その好評を得て、2004年に『スパイダーマン2』、2007年『スパイダーマン3』と連打し、それぞれ大ヒットを記録します。

サム・ライミ監督版3部作は、主人公ピーター・パーカーの高校から大学時代を描きながら、ヒーローが戦っていく上での光だけでなく、闇の要素にも大きくスポットを当てていきました。

またスパイダーマンが糸を使って空間をスピーディに移動していくシーンなど、さっそうとしているのと同時にどこかしら暴力的な恐怖感をも与えていくあたりも、やはり『死霊のはらわた』の監督ならではの個性の発露とも思えてなりません。

〈サム・ライミ監督版の主要キャスト〉
●スパイダーマン(ピーター・パーカー)
…トビー・マグワイア
●MJ(メリー・ジェーン・ワトソン)
…キルスティン・ダンスト
●メイ・パーカー(ピーターの伯母)
…ローズマリー・ハリス
●ベン・パーカー(ピーターの伯父)
…クリフ・ロバートソン
●ハリー・オズボーン(ピーターの友人)
…ジェームズ・フランコ

〈主なヴィラン〉
●グリーン・ゴブリン(ノーマン・オズボーン)
…ウィレム・デフォー(第1作)
●ドクター・オクトパス(オットー・オクタビアス)
…アルフレッド・モリーナ(第2作)
●サンドマン(フリント・マルコ)
…トーマス・ヘイデン・チャーチ(第3作)
●ヴェノム
…トファー・グレイス(第3作)

〈犠牲になる人〉
…(悲しくて書けません)

(C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

ソニー・ピクチャーズではこの3部作の後も新たに3部作を作り、全6部作を構想していましたが、ライミが4作目を降板したことから企画は白紙に戻り、代わってスタッフ&キャストを一新したリブートとしての『アメイジング・スパイダーマン』(2012)を製作することになりました。

こちらは『(500)日のサマー』(09)で注目されたマーク・ウェブを監督に迎え、サム・ライミ監督版よりも青春映画色を強く打ち出すとともに、両親の死の真相などにも言及しながら悲劇色も高めています。

ただしこのシリーズ、第2作『アメイジング・スパイダーマン2』(14)の北米興行が今ひとつだったことと、2015年にマーベル・コミック原作の実写映画を同一世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の中に今後はスパイダーマンもシェアしていくことを発表したことで、第3作の製作は中止となってしまいました。

〈マーク・ウェブ監督版の主要キャスト〉
●スパイダーマン(ピーター・パーカー)
…アンドリュー・ガーフィールド
●グウェン・ステイシー(ピーターの恋人)
…エマ・ストーン
●メイ・パーカー(ピーターの伯母)
…サリー・フィールド
●ベン(ピーターの伯父)
…マーティン・シーン

〈主なヴィラン〉
●リザード(カート・コナーズ博士)
…リス・エヴァンス(第1作)
●エレクトロ(電気技師マックス・ディロン)
…ジェイミー・フォックス(第2作)
●グリーン・ゴブリン(ハリー・オズボーン)
…デイン・デハーン(第2作)

〈犠牲になる人〉
…(あまりにも悲しすぎて書けません)

–{ジョン・ワッツ監督版は 明朗快活なハイスクール映画}–

ジョン・ワッツ監督版は明朗快活なハイスクール映画

(C)Marvel Studios 2017. (C)2017 CTMG. All Rights Reserved.

現在のトム・ホランドがスパイダーマンを演じる作品群は「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」に含まれますが、改めて記し直すと、その登場順は以下の通りです。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
(16/アイアンマンにスカウトされての初登場。ゲスト的な扱い)

→『スパイダーマン:ホームカミング』
(17/単独シリーズ第1作。アイアンマン陣営との関係性も、さらに濃厚に描出)

→『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)
→『アベンジャーズ/エンドゲーム』

(19/この2作でアイアンマンやドクター・ストレンジたちアベンジャーズと本格的に共闘)

→『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
(19/単独シリーズ第2作)

→『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
(21/単独シリーズ第3作)

この間にスパイダーマン・シリーズの人気ヴィランを主人公にしたスピンオフ映画『ヴェノム』(18)『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(21)や、さまざまな世界のさまざまなスパイダーマンたちが同一世界に集結する長編アニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)も作られました。(これらを見ると従来のMCUとは少しずらした、スパイダーマンに特化した独自のMCUも形成されていくかのようです)

ジョン・ワッツ監督版はトム・ホランドの陽の個性に合わせるかのように、マーク・ウェブ監督版とは裏腹の明朗快活な青春ハイスクール映画としての要素を際立たせつつ、時にティーンエイジャーゆえの未熟な点を先輩アベンジャーズに指摘されながら成長していきます。

しかし、これまでのスパイダーマン映画同様、ヒーローとしての孤独であったり、闘いの代償に対する苦悩などの描出も決しておろそかにはしていません。

その伝でも今回のピーター・パーカーの活躍と苦悩は、これまでと何が同じで何が違うのかをとくと復習しておくことを強くお勧めしておきたい次第なのでした。

(でも、繰り返しますが、今回は決して予習はしないように!マジにネタバレ厳禁です!)

(文:増當竜也)
 
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–{『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』作品情報}–

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』作品情報

ストーリー
ピーター(トム・ホランド)はミステリオ(ジェイク・ギレンホール)を倒したものの、デイリー・ビューグル紙がミステリオの遺した映像を世界に向け公開。ピーターがスパイダーマンであることが暴かれ、ミステリオ殺害の容疑をかけられてしまう。ピーターは大切な人に危険が及ぶことを危惧し、共にサノスと闘ったドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に自分がスパイダーマンだと知られていない世界にしてほしいと頼む。しかしドクター・ストレンジが呪文を唱えたところ、時空が歪み、マルチバースの扉が開かれてしまい……。

予告編

基本情報
出演:トム・ホランド/ゼンデイヤ/ベネディクト・カンバーバッチ/ジョン・ファヴロー/ジェイコブ・バタロン/マリサ・トメイ/アルフレッド・モリーナ

監督:ジョン・ワッツ

公開日:2022年1月7日(金)

製作国:アメリカ