<新作レビュー>『ヴォイス・オブ・ラブ』セリーヌ・ディオンの成功は、周囲の愛に支えられてのものだった!

ニューシネマ・アナリティクス

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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

アルバムの総売り上げが2億5000万枚を超えるという世界的歌姫セリーヌ・ディオンの半生をフィクションも交えながら描いた音楽伝記映画。

フランスでテレビ・舞台・映画と活躍を続ける国民的エンタテイナーのヴァレリー・ルメルシエが監督・脚本・主演の3役を務めるという意気込みで、セリーヌの膨大な過去資料を調べ上げた上で制作に臨んだとのこと。

ヒロインの役名がセリーヌ・ディオンではなくアリーヌ・デューとなっていますが、これは「世界にひとりしかいない大スターに敬意を表するため」とのことでもありました。

《オール・バイ・セルフ》《アイム・アライヴ》など彼女の楽曲をはじめ(もちろん映画『タイタニック』のあの主題歌も!)、様々な名曲が全編に流れるのもお楽しみで、特にライヴ・シーンは圧巻です(ヴォーカルはヴィクトリア・シオが担当)。

伝記的な面では、何といっても14人兄弟の大家族の末っ子として生まれたという、それだけで『サウンド・オブ・ミュージック』以上の環境だった!?

また彼女は12歳で歌手デビューを果たしていますが、発掘したプロデューサーであるギィ(シルヴァン・マルセル)と26歳の年の差を乗り越えて結婚に至るというのも、何やら劇的ではあります。

ただし全体的には人生の波瀾万丈をことさら強調するのではなく、生来の彼女自身の信念の強さに加えて、時折不安や孤独にさいなまれたときの周囲の「愛」の力あってこその成功と栄光が成されたのだといったテイストがさりげなく強調されています(特にお母さんが良い味出していてナイス)。

そういった温かな多幸感によって、見ているこちら側も気持ちよくサクセス・ストーリーに身を委ねることが出来るのが、本作の最大の妙味といえるでしょう。

その歌声そのものが世界中のファンを魅了し、幸せにし続けるセリーヌ・ディオンさながら、映画もまた彼女と周囲の人々の「愛」をもって観客を幸せな気分にしてくれる……。

映画を見終えて真冬の外に出ても、心はどこかしらポカポカしていて心地よい、そんな映画です。

(文:増當竜也)

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–{『ヴォイス・オブ・ラブ』作品情報}–

『ヴォイス・オブ・ラブ』作品情報

ストーリー
1960年代カナダ。フランス語圏ケベック州の田舎で、音楽一家の14人きょうだいの末っ子として生まれたアリーヌ(ヴァレリー・ルメルシェ)は、幼い頃から歌の才能を発揮。12歳の時、母(ダニエル・フィショウ)が有名音楽プロデューサー、ギィ=クロード・カマラウ(シルヴァン・マルセル)にデモテープを送ったことをきっかけに、レコードデビューを果たす。ギィ=クロードの指導の下、コンサートツアーを重ね、着実に人気と実力を獲得していくアリーヌ。ギィ=クロードとの関係はやがて恋愛に発展。親子ほども歳の離れた関係は、一度は母に反対されたものの、最終的には家族全員の祝福を受け、2人は結婚する。ギィ=クロードの持病や不妊治療、心労を重ねたことで声帯を痛め、数ヶ月の休養を余儀なくされるなど、様々な困難に直面しながらも、それを乗り越えたアリーヌは、映画の主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」で大成功を収める。まもなく待望の第1子も生まれ、ラスベガスに新居を構える2人。やがて愛する父を失いながらも、精一杯歌い続け、世界のディーヴァの地位を不動のものにしたアリーヌは、3人の子どもに恵まれる。その一方で、最愛の夫ギイ=クロードに病魔が忍び寄っていた……。

予告編

基本情報
出演:ヴァレリー・ルメルシエ/シルヴァン・マルセル/ダニエル・フィショウ/ロック・ラフォーチュン/アントワーヌ・ヴェジナ ほか

監督:ヴァレリー・ルメルシエ

公開日:2021年12月24日(金)

製作国:フランス・カナダ