お笑い好きライターが選ぶ「2021年熱かった芸人ベスト5」 お笑いは今年も最高だった…!

お笑い

今年もお笑い界は熱かった。

「有吉の壁」他のテレビ番組をはじめ、ラジオ、配信動画などで芸人たちのネタやトークに大いに笑った2021年。「キングオブコント」や「M-1グランプリ」の盛り上がりも素晴らしかった。

今回は、お笑い好きな筆者が選ぶ「2021年熱かった芸人ベスト5」を紹介。あくまでも一ファンが独断と偏見に基づいて選んだものなので、見ている方の感覚と異なる部分もあるかもしれないが、そこはなんともご容赦いただきたい。

第5位 KOUGU維新 武道館ライブと2章開幕に親方様・熱狂

まず第5位はいきなり掟破りのようで申し訳ないが、「有吉の壁」から誕生した芸人たちによる“2.7次元アイドル”「KOUGU維新」だ。

パリピ漫才で知られるきつねが始めたKOUGU維新は、いわゆる「工具」の擬人化。冷静沈着な王子系のプラスドライバ(きつね・大津)と荒くれ者の平やっとこ(きつね・淡路)が繰り広げる微妙な寸劇と演舞は、2.5次元ぽさを醸し出しつつもお笑いらしいちょいダサ感が残る。この絶妙なブレンド感が多くのファン=親方様たちをときめかせ、「有吉の壁」でも特に人気のコンテンツとなった。

最初はきつねの二人だけだったKOUGU維新。しかし、程なくしてさまざまな芸人たちが加入。最初に仲間入りしたのは、クールな妖狐・キリ(トム・ブラウン・布川)とカタコト口調の巨漢・鉄槌(トム・ブラウン・みちお)だが、キレッキレな強烈ネタで知られるトム・ブラウンのいつもとちょっと違う顔を見られたのが非常に新鮮だった。

続いて加わった青髪の知性派かつ泣き虫な巻尺(空気階段・かたまり)とピンク毛の無邪気な弟キャラ・紙やすり(四千頭身・石橋)は、ビジュアルのよさや仕草のかわいらしさも手伝って「キキララ」コンビとして人気者に。さらに、ワイルドな肉体派の砥石( ワタリ119)とサイコな不思議ちゃん・丸ノコ(パーパー・ほしの)の戦闘力が高そうな二人も加入した。

その後も、プラスドライバの兄で冷酷な美形キャラのマイナスドライバ(パンサー・向井)、奇妙な言葉を連発する南蛮の工具・ギア(三四郎・小宮)に威勢のよい江戸っ子のトロ舟(かが屋・賀屋)、マイナスドライバの部下のチェーンソー(宮下草薙・宮下)とインパクトドライバ(空気階段・もぐら)、プラスドライバの元師匠・ボックスドライバ(EXIT・りんたろー。)とその弟子のカッター(EXIT・兼近)などが登場。

2020年末には、舞台公演「最初で最後のミュージカル KOUGU維新±0 ~聖夜ヲ廻ル大工陣~」が配信で開催され、工具男子たちのわちゃわちゃする姿やドライバ兄弟の絆の物語で親方様たちを最高に楽しませてくれた。

筆者はKOUGU維新を見たとき、まずビジュアルと演舞がそこそこ「それらしく」仕上がっているのに感心。そして、2.5次元をリスペクトしつつもあくまで「お笑い」的なばかばかしさを貫くところに次第にひきこまれていった。「次はどんな工具が現れるのか?」「この工具とあの工具は普段こんな会話をしていそう」など工具たちのドラマにも思いを馳せるようになり、気づけば立派な親方様である。

ちなみに現在の推しは、丁寧な物腰で正体の人とのギャップが著しいキリと不器用っぷり・泣き虫っぷりが絶妙に母性本能をくすぐる巻尺の二人だ。

KOUGU維新がお笑い界に旋風を巻き起こしたのは2020年。2021年はさすがにその勢いが一段落したかな……と思えたのだが、11月に日本武道館で行われた『「有吉の壁」 Break Artist Live’21 BUDOKAN』で熱き瞬間が訪れた。

工具男子たち多数揃った大舞台で告げられたのは第2章開幕。この舞台には新たな工具男子も姿を現した。先行公開されたビジュアルのよさが話題を集めたメス(ニッポンの社長・辻)と、謎めいていてなんか強そうなダイヤモンドカッター(マヂカルラブリー・野田)。彼らがどのような活躍を繰り広げてくれるかが今から楽しみだ。

2021年の終わり間際に熱いライブとワクワクするニュースを届けてくれたKOUGU維新。「第2章〜南蛮編〜」のオープニングテーマだという新曲「夢幻ノ花」の配信も11月にスタートしたばかり。2022年も彼らの「いざ参らん!」の声が、きっと「有吉の壁」で鳴り響くことだろう。

–{第4位は…6.5または6.75世代?のあのコンビ!}–

第4位 鬼越トマホーク “喧嘩上等漫才”、ついに覚醒

ここ数年お笑い界で話題となったお笑い第7世代。もちろん第7世代には魅力的な芸人が多数いるが、一方第7世代に入らなかった6.5世代、6.75世代とも呼ばれる芸人たちの近年の活躍も素晴らしい。

6.5~6.75世代の中で特に筆者が注目しているのは吉本興業の養成所・NSC 東京校の15期生たち。一昨年、昨年と2年連続のM-1決勝進出を果たしたニューヨーク、女性芸人のおかずクラブや横澤夏子、ハーフ芸人が所属するコンビのデニスやマテンロウ、歌動画がバズったパーパー・ほしのディスコ(※パーパーの所属はマセキ芸能)など、猛者揃いの期だ。そして、この期で最近勢いを増してきているのが揃ってコワモテの坂井良多と金ちゃんのコンビ、鬼越トマホーク。筆者が今一番好きな芸人ということもあり、今回4位に入れさせていただいた。

鬼越トマホークといえば、その代名詞は喧嘩芸。激しく争う坂井と金ちゃんを止めに入った者が暴言を浴びせられるが、それが絶妙に的を射ている…という独自のスタイルで彼らは注目を集めた。よばれた番組で先輩芸人や俳優、文化人などに辛辣な毒舌を吐いて知名度を上げ、この2021年もテレビの露出がかなり多く躍進した年だったように思う。

ただ、今年の彼らが最も熱かった、少なくとも筆者がそう感じた場所はテレビではない。それはM-1グランプリ予選のステージだ。

YouTubeで「11年やってて(ネタが)4本しかないから」と語っていたこともあり、喧嘩芸に比べてネタが弱い印象の拭えなかった鬼越トマホーク。筆者も彼らの漫才ネタをいくつか見て、申し訳ないが喧嘩芸に比べて若干物足りなさを感じることがあった。

ところがである。2021年のM-1予選で目にした彼らの漫才は大きく進化していたのだ。

鬼越トマホークが今年のM-1でかけてきたのは、得意の喧嘩を本格的に盛り込んだネタ。マイクにたどりつく前から大声で争い、漫才中も罵り合って、挙句に街などまでディスりだす彼らを見たとき、「ついに自分たちにしかできない漫才を始めた……!」と鳥肌が立った。

喧嘩漫才にはまだ粗削りなところも感じられ、戦績は準々決勝敗退。とはいえ、2回戦で敗退した前年のリベンジはしっかり果たしたし、何より着実に一皮向けた姿を見られたのがファンとして本当に嬉しかった。

M-1グランプリの公式YOUTUBEに上がっているインタビューで、「できないことをタテにずっと漫才から逃げていたけど、今年は弱音を吐かずにガチで狙おうと」と語っていた鬼越トマホーク。ついに覚醒した喧嘩上等漫才はこの先まだまだ進化するはず。ぜひ今後もブレずに、“らしい”ファイティングスタイルでネタに立ち向かっていってほしい。

–{第3位は…大躍進したあの女性芸人!}–

3位 ぼる塾 愛すべき次世代のお笑い乙女たち

2021年は女性芸人の活躍も目立った。サバサバしたトークの光るヒコロヒーやヤサグレ感が魅力の納言・薄幸なども人気を集めたが、中でも大躍進を遂げたのが芸人カルテット・ぼる塾だ。

歯切れのよい毒舌が冴えわたるあんり、「まあね~」でおなじみ、独特のおっとり感が魅力の「田辺さん」こと田辺智加、空気を読まない天衣無縫さで周りを翻弄する「はるちゃん」こときりやはるか。この3人の織り成す絶妙なバランスが多くの視聴者を惹きつけたのか、ぼる塾は2021年テレビの露出が爆増。「ぼる部屋」「ぼる塾のいいじゃないキッチン」など冠番組がスタートし、田辺さんのスイーツ本、育休中のもう一人のメンバー「酒寄さん」こと酒寄希望のエッセイ本も発売され、まさに熱い活躍を繰り広げた一年だった。

ぼる塾のよさは、あんりのクレバーさ、田辺さんのスイーツ愛、はるちゃんの予測不能っぷりなどいろいろあるが、筆者がなにより推したい魅力は、等身大で仕事を楽しんでいる彼女たちの愛らしさ。テレビやYouTubeでごはんを美味しそうに食べたりかわいいものに目を輝かせたりしているぼる塾は、いつも本当に楽しそう。仲よしぶりや空気の温かさにほっこりして、「自分もこの女子会に混ざりたい……」と筆者は何度思ったかわからない。

ぼる塾は漫才の面白さも魅力。しっかりとしたツッコミで回すあんり、なんともいえないまったり感で落ち着ける田辺さん、スケールの大きな二人の間で小回りの利く緩和剤となるはるちゃんが繰り広げるネタは、男性芸人たちのガンガンしゃべくるそれとは一味違うよさがある。親しみやすくてかわいらしくて、いつまでも見ていたくなる。そんないい意味での微笑ましさがある漫才だ。

筆者はぼる塾の漫才を初めて見たとき、かつての漫才ブームを担った人気女性漫才師・今いくよ・くるよを思い出した。「私ピッチャーでエース。くるよちゃん、キャッチャーでロース」のつかみのセリフでおなじみのいくよ・くるよの漫才は、パワフルな中に女性らしいやわらかさと愛嬌があり、とてもチャーミングだった。この同じ事務所の大先輩にも通じるまろやかなプリティさを兼ね備えたぼる塾。まさに次世代の愛すべきお笑い乙女たちなのだ。

–{第2位は…圧巻のコントを見せてくれたあの二人!}–

第2位 空気階段 キングオブコント優勝!もぐらとかたまりが描く“サイコゥサイコゥサイコゥ!”な世界

2021年はお笑いの賞レースが非常に熱い年でもあった。

コントの日本一を決める「キングオブコント」。今年、即席ユニット解禁、松本人志以外の審査員を一新などいくつかの刷新が行われたこのコントの大舞台で栄えある14代目キングに輝いたのが、鈴木もぐらと水川かたまりのコンビ、空気階段だ。

今思い返しても、キングオブコントの空気階段は圧巻だった。1本目のSMクラブで出会った消防士と警察官の活躍するドラマは、本気なばかばかしさと目が離せないダイナミックさがあり、ただただ見入って笑ってしまった。

そして、2本目の「メガトンパンチマン」のコンセプトカフェを経営する店主と客のコントでは、夢あふれるコミカルな世界とそこはかとない哀愁が感じられるストーリーに魅せられた。この2本のコントで歴代最高得点を叩きだした空気階段。彼らにとって3度目となる決勝で見事優勝をかっさらった。

漫才がしゃべくり芸であるのに対し、コントはビジュアル芸だと筆者は勝手に考えている。設定や舞台装置、小道具、そして演技力を駆使するコントからは、物語的な面白さやお笑いらしいハチャメチャ感とともになんとも美しいビジュアルが生まれるときがある。それこそが漫才にはないコントの何よりの魅力ではないだろうか。

そして、空気階段は笑いとともに情緒あふれるビジュアルを描ける稀有なコンビだと筆者は思う。クズで知られるもぐらと大学を中退し引きこもっていた時期もあるかたまり。決まりきったレールからどこかはみ出てしまった感のある二人が描くコントは、おかしくてデコボコで、でも不思議と何かがきらきらしている。かたまりの言葉を借りるなら“サイコゥサイコゥサイコゥ!”な世界が存在している気がするのだ。

2022年、単独ライブ「fart」の全国ツアーも決定した空気階段。ちなみにもぐらの本名は翔太で、かたまりの本名は航太。とぶ(翔)力とわたる(航)知恵を携えた二人は、これからも笑いのビジュアルがきらめく空への階段を上っていくに違いない。

–{栄えある第1位は…やっぱりあのコンビ!}–

第1位 錦鯉 M-1優勝に涙!人間味ほとばしる中年ファンタジスタ

多くの芸人たちが目指すお笑い界の頂点の一つ「M-1グランプリ」。

2021年、この大舞台で50歳といういまだかつてない史上最年長のチャンピオンが誕生した。その名は錦鯉。彼らこそまさしく今年最も熱かった芸人といえるだろう。

錦鯉がM-1で初の決勝進出を果たしたのは昨年。「こーんに~ちは~!!」と元気よく挨拶し、「レーズンパンは、見た目で損してる!」など、おバカではっちゃけたギャグを連発して会場を沸かせた長谷川の姿は今も記憶に残っている(ちなみに筆者は「レーズンパン…」のフレーズがどうにも耳に残り、年明け早々レーズンパンを買いにいった)。このM-1決勝の爪痕のおかげか2021年はテレビ出演が急増。初の単独ライブを開催し、自叙伝「くすぶり中年の逆襲」も発売され、人気者街道まっしぐらの年となった。

そして迎えた2回目のM-1決勝。錦鯉の漫才は昨年よりはるかにパワーアップしていた。長谷川のおバカぶりが冴えわたるのはもちろんのこと、渡辺のツッコミもより鋭く熟練し、間の取り方も絶妙。長谷川がコンパに行こうとする1本目の漫才も長谷川が猿をつかまえようと2本目の漫才も筆者は笑いっぱなしだった。

錦鯉とともに最終戦に残ったオズワルドとインディアンスの漫才も見事で、正直今年のM-1はかなり拮抗した激戦だったと思う。そんな中で錦鯉は審査員5人の票を獲得して見事第17代目王者に輝いた。

勝敗を分けたものはなんだったのか。そこにはそれぞれの審査員の基準、思いなどがあるだろう。ただ、一つ筆者が強く感じたのは、錦鯉は決勝に出場したどのコンビよりも人間味あふれていたということ。長くお笑いの世界で戦ってきたベテランにしか出せないであろう旨味のある滑稽さが本当に素晴らしかったと思う。

長い下積みを経て、遅咲き過ぎる中年ファンタジスタがついに漫才の頂点にたどりついた。これを熱かったと言わずして何を熱いと言わんや……だ。50歳になっても歯を何本も失っても、それでも大輪の花を咲かせられる。こんなに夢のあることはない。まさに「ライフイズビューティフル」だ。

優勝が決まって号泣する長谷川の姿を見て、筆者も思わずもらい泣きしてしまった。M-1でチャンピオン誕生の瞬間にこれほどの感激がこみあげてきたのは、2007年に敗者復活戦から奇跡の優勝を遂げたサンドウィッチマン以来だ。

来年はきっと今年以上に忙しくなるに違いない錦鯉。彼らの年齢を思うと「身体を大事にしてね」という一抹の心配もあるのだが、それでも、ぜひ体力が許す限りはおバカな快進撃を続けてほしい。また、筆者は今年テレビで目にした渡辺への「刑事顔」だといういじりが非常にツボだった。なので、2022年は刑事ドラマで刑事役の彼をぜひ見てみたい。

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2021年、心を救ってくれた芸人たちに感謝!

2021年のお笑いは本当に楽しかった。コロナ禍が続いて気が滅入りそうなときに、面白おかしく笑わせてくれる芸人たちに何度心を救われたかわからない。本当に感謝している。

来年もお笑い芸人たちの活躍が楽しみだ。彼らがいてくれれば、2022年もその先もきっと笑って生きていける。

(文:田下愛)