小栗旬が主演を務めるTBS系日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」が2021年10月10日(日)スタート。
1973年の刊行以来、何度も映像化されてきた不朽の名作「日本沈没」(小松左京)を大きくアレンジした本作。2023年の東京を舞台に、日本沈没という前代未聞の危機の中で希望を見出す人々を描き出していく。大義のために手段を選ばない野心家の官僚・天海啓示を演じる小栗旬をはじめ、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、仲村トオル、香川照之ら豪華キャストが集結した。
本記事では、第9話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
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「日本沈没ー希望のひとー 」第9話レビュー
まさか最終回で、新型コロナウイルスが蔓延した現実世界とリンクする状況が描かれるとは思いもしなかった。
「日本沈没ー希望のひとー」第9話。最終回は実に2時間3分という放送の中で、怒涛の展開を見せていった。
まずは、東山総理(仲村トオル)を狙ったテロの発生で世良教授(國村隼)が犠牲に。研究職に復帰し、田所博士(香川照之)との最強タッグが実現するかと思われた矢先の出来事は私たちに大きな衝撃を与えた。しかし、世良の死には、キャスト・スタッフがこの物語を通じて伝えたかったある“願い”が込められていたように思う。
事件前、経済活動を後押しするために都合良く学問を使ったことへの後悔を東山に語った世良は、「自分のように間違えないでほしい」と日本の未来を天海(小栗旬)と常盤(松山ケンイチ)に託してこの世を去ったのだ。
一時はテロ発生のニュースが「日本の情勢が不安定」との印象を世界に与えたが、大怪我をした東山の職務を引き継いだ里城副総理(石橋蓮司)から世界へのメッセージにより移民計画には大きな影響を及ぼさなかった。
生島会長(風間杜夫)が移民担当特命大臣に就任し、国内では1億2千万人の移民先を決定する抽選が始まる。どこの国に、誰と移住するか。一人ひとりの国民が少しでも早く、希望の国に行けるよう心の底から願っていた。
もちろん、中には見知らぬ土地に赴くことへの不安から、たとえ沈没しても日本を離れたくないと願う人たちも。天海の母・佳恵(風吹ジュン)や地元の人たちもそうだった。どうすれば、彼らにも希望を持ってもらえるのか。天海をはじめとした日本未来推進会議は「地域単位での移民申請」を可能にし、ついに移民申請者が1億人を突破。移民枠も続々と獲得し、計画は順調に進んでいると思われた。
しかし、ここにきてルビー感染症の変異株が国内で蔓延。変異株にはこれまでルビー感染症に有効だった常盤医療の薬は効かず、患者が死亡する例が相次いだ。天海の元妻・香織(比嘉愛未)の新たな恋人も犠牲になってしまう。さらに、既に日本人が移民した国でも続々とルビー感染症が発生し、パンデミックを恐れた各国が日本人移民受け入れを停止する事態に。
なんとか閉ざされた世界の門をこじ開けたい……。絶体絶命のピンチでも前を向く天海が田所から聞かされたのは、温暖化によりグリーンランドの永久凍土から溶け出した病原菌がルビー感染症の元になっているかもしれないという見解だった。
そんな中、常盤医療とハタ製薬の薬を複合投与した感染者の容態が劇的に回復。東山は世界環境会議で二社の製造特許放棄を宣言した上で、日本沈没や人を死に至らしめるウイルス蔓延を引き起こした地球温暖化は、世界中が取り組むべき問題であることをアピールした。
「この決断に私たちが至ることができたのは、日本沈没という危機の中で命こそが本当に大切で、本当に尊いものであることに改めて気づかされたからです」
熱がこもった東山の訴えは、私たちがこの2年間で実感したことでもある。日本が誇る大企業や美術品、特許技術を譲渡しても守りたかったもの。それは誰かにとって宝物のような存在である人々の命だ。
本作は全話を通して「守るべきは経済か?人命か?」というテーマを貫いてきたが、それは日本沈没に限ったことではなく、私たちの経済活動が起因となってもたらされた環境問題にも向けられている。
結果として、関東を起点に始まった日本沈没は九州と青森でストップ。それは国土を失う日本人にとって唯一の希望とも思えたが、逆に我々が生きる地球はそんなギリギリの状況にあることを示唆していたのかもしれない。このまま悲鳴を上げる地球の声を無視し続けていたら、いつか「日本の一部が残っただけマシ」と思えてしまう状況が訪れる。田所はどんなに周囲から疎まれようとも日本の危機を訴え続け、その声に天海は真剣に耳を傾けた。それが何よりの希望だ。
「止められるのは今しかないぞ。それができなければ、間違いなく地球は終わる」(田所)
「その未来は僕ら一人ひとりの未来にかかっている」(天海)
二人から地球の未来は私たちに託された。これまで何度も映像化されてきた小松左京の同名小説を大胆にアレンジした令和版「日本沈没」。そのラストには、“ただのエンターテインメントとして消費させるものか”というキャスト・スタッフの覚悟が滲んでいた。
「日本沈没ー希望のひとー 」第9話ストーリー
東山総理(仲村トオル)を狙ったテロのニュースは、全世界に大きな衝撃を与えた。
国内の情勢が不安定と判断されて移民計画に影響することを恐れた日本政府は、早急に里城副総理(石橋蓮司)を総理代行にして世界へアピール。
しかし、移民計画が進行していた矢先に、さらに予期していなかった悲劇が起こってしまう…。
天海(小栗旬)、常盤(松山ケンイチ)ら未来推進会議が中心となって事態の打開に挑むが、状況は改善しない。そして、遂に全世界で日本人移民の受け入れ停止が発表される。
そんな中、追いうちをかけるように田所博士(香川照之)から、「日本沈没までもう時間がない」と警告される。それでも最後の一人を救うまで、天海は関東に残って立ち向かう決意をする。
そして、ついに恐れていた日本沈没が─
天海や常盤は、無事なのか…
日本人にとって希望のひととなれたのか!?
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(文:苫とり子)
–{「日本沈没ー希望のひとー 」作品情報}–
「日本沈没ー希望のひとー 」作品情報
小栗旬が11年ぶりに日曜劇場に戻ってくる!
環境省の官僚として、日本沈没という未曾有の危機に立ち向かう!
さらに、共に戦う共演者に松山ケンイチ、杏、仲村トオル、香川照之が決定!
– 信じられるリーダーはいるか。あきらめない。未来は絶対に消させない! –
盤石の布陣が日本の危機に挑む!
出演
小栗旬/松山ケンイチ/杏/ウエンツ瑛士/中村アン/与田祐希(乃木坂46)/國村隼/小林隆/伊集院光/風吹ジュン/比嘉愛未/宮崎美子/吉田鋼太郎(特別出演)/杉本哲太/風間杜夫/石橋蓮司/仲村トオル/香川照之
原作
小松左京「日本沈没」
脚本
橋本裕志
音楽
菅野祐悟
主題歌
菅田将暉「ラストシーン」(Sony Music Labels Inc.)
地震学監修
山岡耕春
篠原雅尚
記者監修
龍崎孝
演出
平野俊一
土井裕泰
宮崎陽平
プロデュース
東仲恵吾
製作著作
TBS
キャスト/スタッフコメント
小栗旬 コメント
「日本沈没」という未だかつてない困難に立ち向かっていく作品です。
ただでさえ苦しい環境の中、この題材は非常に難しいお話ですが、その中でも“希望”と“人間の強さ”を届けられるよう、自分を含め、キャスト・スタッフ全力で希望を持って真摯に作品に向かっていきます。
今を生きる皆さんへの賛歌になれるような作品にしていきたいと思っておりますので、ぜひご期待ください。
松山ケンイチ コメント
まだ全ての台本が手元に無いのでどんな話になるのか分かりませんが、想定外の国の危機に日本人はどう立ち振る舞っていくのか、どう助け合っていくのか、どんな答えが出るのか、楽しみです。
客観的に国のこととそこに生きている自分自身を見つめ直すきっかけになる作品になると思います。
杏 コメント
今回初めてTBS連続ドラマにレギュラー出演させていただくことになりました。
日本沈没というどうしようもない自然の脅威にどう立ち向かうかというキャラクターたちの姿は、今の混乱の世の中で戦っている皆様と近い気持ちで共鳴し合えるのかなと思っています。そして、演じる私たちもそのような不安や脅威を抱えつつ乗り切ることになります。これを映像として残せることは意味があるような気がしています。万全の体制で挑みつつ、全力でぶつかっていきたいと思います。
仲村トオル コメント
2007年の『華麗なる一族』以来の日曜劇場。はじめての総理大臣役に緊張しています。
僕が演じる東山首相は、物語のはじめは一国のリーダーとしてはやや弱く甘い男に見えますが、逆風の中、上り坂を登った足に力がつくように、最終回を観た人たちに、困難な状況の日々でも諦めず前を向いて歩き続けた人間の未来には少し強くなった新しい自分がいる、というような希望を感じていただけるように全力で頑張ります。
香川照之 コメント
政府側の海洋環境改革方針に対し、独自の理論で徹底的に異論を唱える頑固な博士の役です。ドラマの原作は何十年も前のものですが、環境破壊問題はいま別の形でこの地球を襲っています。その意味でも我々には、未来まで持続可能な環境への取り組みが不断に求められている。日本が沈没するという、かつては荒唐無稽と思われたテーマを通して、地球が現在抱えている多くの課題を、改めてこのドラマで訴えていきたいと思っています。
脚本家・橋本裕志 コメント
今へ、未来へと繋がる、新たな『日本沈没』を目指して、これまでに映像化されたものとは違った角度からのアプローチで取り組んでいます。
危機を前にした時にあぶり出される人間の様々な感情や、思いのぶつかり合い、極限状態だからこそ繰り広げられる人間ドラマが、そこにはあります。
明日が見えない中で、それでも希望を探して生きていく登場人物たちのエネルギーを通して、皆さんに勇気を与えられる作品をお届け出来ればと考えています。
プロデュース・東仲恵吾 コメント
今作のテーマは、未来への希望です。日本沈没が目前に迫ってくる中で、決して諦めずに今やるべきことを全力でやる人たちの人間ドラマを丁寧に描いていきたいと思っています。
そして「未曾有の危機でもこの人たちなら救ってくれるんじゃないか」そう思わせてくれる力強いキャラクターを、小栗旬さんをはじめ、松山ケンイチさん、杏さん、仲村トオルさん、香川照之さんと共に議論しながら、ドラマ版オリジナルキャラクターを作り上げました。
最後まで立ち向かった先にある“希望”を精一杯の熱量で作りたいと思います。