2021年、結成から10年の節目を迎えた乃木坂46。12月15日には10周年を記念した初のベストアルバム『Time flies』が発売される。
本作は「ぐるぐるカーテン」から「君に叱られた」までのシングル表題曲と2021年12月31日をもって卒業する生田絵梨花がセンターを務めた新曲「最後のTight Hug」、西野七瀬や生駒里奈ら卒業生も参加した「世界中の隣人よ」など、新曲や未収録音源が収録されており、これまでのグループの歴史を追体験できるまさに集大成と言えるアルバムとなっている。
そこで、本稿ではアルバムに収録されている楽曲の中から、筆者の独断で10曲をピックアップさせていただき、それぞれについて(個人的な楽曲との思い出を交えながら)魅力をご紹介していきたい。
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1:「ぐるぐるカーテン」(2012)
ここからグループの歴史が始まった記念すべき乃木坂46のデビューシングル。当初はAKB48のライバルグループとしての位置づけがなされており、楽曲の雰囲気もそれに対抗するようにフレンチポップを取り入れ、MVも上品な私立女子校風のモダンな雰囲気で描かれている。
スカートの裾をひらひらと揺らしたり、両手を交互に上げ下げしたりと、決して派手ではないが、繊細で優雅な振り付けが印象的。「清楚」なイメージはこの楽曲からスタートした。今あらためてMVを見返して見ると、あどけないメンバーの姿に微笑ましい気持ちになると同時に、オリジナルメンバーのほとんどが卒業している現実に驚愕させられる。
他シングルと比べてもドラマティックな展開がない王道ポップスといった感じなので、印象として薄くなってしまうのは仕方ないが、ライブで披露されると当時の思い出と重なって胸が熱くなる楽曲だ。
2:「制服のマネキン」(2012)
1stシングルから3rdシングルまでの楽曲の雰囲気から大きく変わったのが4thシングルの同曲。
作曲に今では乃木坂46でお馴染みの杉山勝彦を迎え、90年代っぽいEDMサウンドを取り入れたことで、これまでとは全く異なるアプローチをしてみせたのがグループにとっては新しく映った。
「恋をするのはいけないことか?」という問いかけや「大人に邪魔をさせない」といった強烈なメッセージ性を持った歌詞に説得力をもたせるように、鋭い眼差しを見せるセンターの生駒里奈が尊い。ライブで披露されると会場の雰囲気をガラッと変えてしまうキラーソングだ。
3:「ガールズルール」(2013)
乃木坂46には素晴らしい夏曲がたくさんあるけれども、個人的に最も夏を感じるのはやっぱりこの曲。これを聴くと夏が来たなと思わずにはいられない。
センターが生駒里奈から白石麻衣へと変わり、グループが大きく舵を切ったタイミングで、これからどうなっていくのかワクワクしたことが思い出される。
白石がセンターになったことで明るく華やかな楽曲となっていて、サビを迎えると言うまでもなくボルテージは最高潮に。毎年のように開催されている「真夏の全国ツアー」で最高に盛り上がる楽曲といえばこれ!
–{「命は美しい」「サヨナラの意味」…}–
4:「命は美しい」(2015)
西野七瀬の3度目のセンター曲で、リリース当時に最高難度のダンスと称された乃木坂46初となるダンスナンバー「命は美しい」。
タイトルにもあるように命の尊さを歌った楽曲で、全編を通して重たく暗い、表題曲としてはかなり攻めたなという印象が当時はあった。ダンスナンバーということで、髪を振り上げたり、細かなステップだったりと、全身を使った激しいダンスは本楽曲の見どころ。センターの西野の儚げな表情も良い味を出していて、歌詞に説得力を持たせている。
アイドルの楽曲を敬遠している方がもしいらっしゃったら、真っ先にこの曲を聴いてくれとおすすめする。
5:「サヨナラの意味」(2016)
橋本奈々未初のセンター曲であり、最後のシングルとしてリリースされた「サヨナラの意味」。
グループの数ある楽曲のなかでもトップクラスに人気の高い楽曲で、2018年に放送された「乃木坂工事中」(テレビ東京系)で行われたベストソングを決める企画では見事1位の支持を得た。橋本の卒業&芸能界引退というアナウンスも相まってファンの間に深く刻まれている。
何が素晴らしいって、別れの切なさをじんわりと刺激する哀調を帯びたピアノの旋律とは対照的に「サヨナラに強くなれ」という歌詞から発せられるポジティブなメッセージ。楽曲単体で泣ける曲は少ないのだけれど、その他の環境やコンテクストを抜きにして、この曲だけは自然と涙が出てきてしまう。
橋本の最後のライブとなった「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」で同曲を披露した際に、可動式のステージ上で歌詞と合わせるように橋本が後ろを向いたままピースするシーンは、5年が立った今でも思い出してしまうくらい鮮烈な印象を残している。おそらくファンのみなさんもそうではないだろうか。
6:「きっかけ」(2017)
ベストアルバムに収録されている楽曲ということで、シングル外からも選ばせてもらった。もはや語るまでもない乃木坂46のアンセム的な曲といえばこの曲だろう。
杉山勝彦らしい流麗なピアノやストリングスはもちろん、メンバーの美しいハーモニーはとにかく絶品。乃木坂46にしか出せない雰囲気、表現が詰まっている。
最近でいえば4期生・遠藤さくらがYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で披露したのも話題となったが、「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」のファイナル公演のメンバーが歌詞を歌いつないでいく演出が集大成的でとても良かった。
7: 「逃げ水」(2017)
2016年に加入した3期生が初参加したシングルで与田祐希と大園桃子がWセンターに抜擢されたことで注目を集めた「逃げ水」。
乃木坂46の夏曲といえば、先に紹介した「ガールズルール」をはじめ、「裸足でSummer」や「ジコチューで行こう!」など夏の騒がしさを思わせる明るい曲調が多かった。同曲は明るい雰囲気を残しつつも、夏の爽やかさや切なさを強調しているのが特徴だ。
サビ前に挿入されている「月の光」の演出はやはり衝撃的……。大園の卒業コンサートのアンコールで披露された「逃げ水」は感動モノだった。もう2人のWセンターが見られないのは寂しいものがある。
–{「シンクロニシティ」「SIng Out!」…}–
8:「シンクロニシティ」(2018)
正直「インフルエンサー」と迷いに迷って苦心の末に選んだのが同曲。2曲の共通点としては「日本レコード大賞」で大賞を受賞していることで、どちらも世間的な認知度は高く、グループの代表曲でもある。
センターを務めた白石の圧倒的な透明感、本シングルで卒業した裏センターの生駒の存在感はさることながら、無駄なものを一切排した真っ白な衣装を身にまとい披露される統一感のあるダンスがとても美しい。洗練されたパフォーマンスに、乃木坂46がたどり着いたひとつの完成形を見た。
9:「Sing Out!」(2019)
齋藤飛鳥のセンター曲。齋藤といえば夏曲のイメージがあったのでとても新鮮に映ったと同時に、乃木坂46の未来像を垣間見られたのが本曲。
大声で歌うというタイトルの通りに、誰もが口ずさんで歌えるリズムとメロディとなっており、クラップやストンプといった要素が組み込まれている。
乃木坂46にはAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」のような老若男女が楽しめる大衆向けの楽曲が少なかったので、「Sing Out!」のように誰もが楽しめる楽曲というコンセプトはとても良かった。ファンとの一体感をより強く感じられるのがライブパフォーマンスで、会場全体が一丸となって行うクラップは圧巻。全編がダンスで構成された美しいMVもぜひ見てほしい。
10:「最後のTight Hug」(2021)
ベストアルバム『Time flies』の新規収録曲からは生田絵梨花のセンター曲「最後のTight Hug」を。2021年12月いっぱいをもってグループからの卒業を発表している生田。舞台での活動と並行しながらも、休むことなくグループに大きく貢献してきた彼女の姿を見てきたからこそ、最後にセンターとして花道を飾る姿が見られて本当に嬉しい。
生田の門出を心から祝福するような前向きな歌詞と、キャプテンの秋元真夏と生田の抱擁が組み込まれた振り付けには、ジンとこみ上げてくるものがある。この曲のパフォーマンスからは、生田という人物がどれだけ愛されていたのかが伝わってくる。12月中に歌番組やライブで披露される機会も多いと思うので、生田の最後の勇姿をその目でぜひ見てみてほしい。
乃木坂46の楽曲はどれをとっても名曲揃い
ベストアルバムに収録された楽曲は全部で40曲。この数字に乃木坂46がいかに長い歴史を積み重ねてきたのか、つくづく痛感させられる。今回はその中から悩みながらも個人的に思い入れのある楽曲を選ばせてもらった。10周年ということで本音を言えばカップリングも含めた全曲から選びたかったのだが、それはそれで選定に頭を悩ませることが想像できるので、この形で良かった気もしている。あらためて乃木坂46は名曲揃いだなと……。
みなさんはどの曲が思い出に残っているだろうか。この機会にそれぞれが楽曲を聴きながら乃木坂46の歴史に思いを馳せてみるというのも良いだろう。この先も素晴らしい楽曲を世に届けてくれることを楽しみにしたい。
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(文:川崎龍也 )