(C)映画「衝動」製作委員会
2021年も、眼福だった。余は満足である。
毎年同じことを言っている自覚はあるが、あえて吐息まじりに言わせてもらいたい。「今年ほど良い役者&良い作品に巡り会えた年はなかった……」と。12月も半ば、2022年の足音が聞こえてきそうなこの時期に、今年どんな役者や作品に出会えたかを振り返っておきたい。
若手から実力派、そして殿堂入りレジェンドまで。ともに魅力に酔いしれてもらえれば幸いである。
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【若手編】見上愛
(C)2021「プリテンダーズ」製作委員会
見上愛との出会いはNHKドラマ「きれいのくに」(2021)。演技が上手で、やたらと記憶に残る表情をしているのが印象的だった。言葉を選ばずに書いてしまうと「ビジュアルが爆発」していたのだ。
整形が「違法」とされる世の中で、裏整形に興味を持ち始める女子高生・凛。ありそうでなかったダークファンタジーな世界観で、これまでの生き方を見つめ直し、これからの人生に思いを馳せる彼女の揺れ動きを好演している。
その存在感にすっかり虜となった直後、映画『プリテンダーズ』(2021)との出会いが訪れる。ここぞとばかりに試写会場に足を運び、またもや釘付けとなった。アイドルオタクの方たちが言う「沼落ち」とはこのことか!と打ち震えたのが昨日のことのようである。
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好きが高じてインタビューにまで行かせてもらった。いつ見上愛ファンから「職権濫用じゃねえか!」と石を投げられるか戦々恐々としている。仕事に対する真摯な姿勢は21歳とは思えず、30超えの筆者は強く心にメモした言葉がたくさんあった。たとえば、以下のような言葉。
私はなぜか、生まれながらにして自己肯定感が高いんです。自分がやっていることすべてに「頑張ってるね!」って思ってあげられる。自分だけは自分の味方だと思ってるから、他人からの評価で気持ちが揺らぐこともないですね。自分でちゃんと「やり切った!」と思えるかどうかを大事にしているというか。
こちらの金言のおかげで、血眼でTwitterやインスタのいいねを欲する「いいねのバケモノ」の暴走が鎮まったのである。見上愛に対する想いはこちらの記事にも書かせてもらった。
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2021年12月10日には、映画『衝動』も公開されている。とあるトラウマから声が出せなくなってしまった少女・アイを演じるにあたり「初めて、泣いてNGを出してしまった」と語った彼女。撮影に込めた思いについて、またもや直接お話を伺えた。どうぞ石を投げる前に読んでいただきたい。
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【若手編】河合優実
(C)日本テレビ
『佐々木、イン、マイマイン』(2020)『サマーフィルムにのって』(2021)『由宇子の天秤』(2021)など、数々の話題作において鮮烈な印象を残す河合優実。
筆者が彼女を初めて見たのは『喜劇 愛妻物語』(2020)での「高速でうどんを打つ女子高生」役だった。白目を剥きながら、ひたすらうどんを打つ様子に、目が離せなくなったのを覚えている。彼女の出演シーンはこの1シーンだけであり、本編はほとんど濱田岳&水川あさみ演じる夫婦が織りなす「悲喜こもごも」に終始している。しかし、彼女のインパクトは絶大であった。
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『サマーフィルムにのって』で演じていた”ビート板”や『由宇子の天秤』の”萌”など、年齢柄、女子高生の役を演じることが多い河合優実。しかし、そのどれもが異色だ。作品ごとに色合いが違う彼女の演技に乗っている。河合優実と出会う作品やタイミングは人それぞれだが、女子高生役の彼女が記憶に刷り込まれる確率は共通して高い。
個人的には、WOWOWドラマ「さまよう刃」(2021)で見せてくれた表情も衝撃だった。本作で演じるのも学生役ではあるが、「少し影のある思春期の女子高生」といったイメージが綺麗に拭われる。ごくごく普通の父子家庭の娘が、とあるきっかけにより自力では脱せない事件に巻き込まれる展開。彼女はこういった演技もできるのか、と半ば恐怖さえ感じながら見守った。
『愛なのに』『ちょっと思い出しただけ』など、2022年以降も出演作が待機している河合優実。ぜひ、興味のある作品から彼女に出会ってほしい。
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【若手編】山田杏奈
(C)綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会
ドラマ「幸色のワンルーム」(2018)で主演を務めた山田杏奈。それ以降、ドラマでは「MIU404」(2020)で虚偽通報をする女子高生役を演じ、「書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜」(2021)では生田斗真演じる父の娘役を好演した。
ドラマ界の活躍に限らない。映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』(2020)『名も無き世界のエンドロール』(2021)『樹海村』(2021)『ひらいて』(2021)など、鮮やかに主演を飾った話題作が多数。あどけない少女役のイメージが付きつつあったところを、『樹海村』で華麗に裏切って見せ、『ひらいて』ではこれまでにないヒロイン像を体現してくれた。
好きな人の”好きな人”を奪うために執拗な行動を繰り返す愛という少女は、きっと彼女にしか演じられなかっただろう。監督を務めた首藤凛も、山田杏奈の役者としてのストイックさを絶賛している。
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映画『彼女が好きなものは』が公開中であることに加え、2022年は『HOMESTAY』が公開待機中。きっと来年も、彼女にしか出せない表情で私たちを注目させてくれるはずだ。
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【若手編】杉野遥亮
(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会
女性ばかりが続いたので、男性についても触れよう。今年出会えた若手の男性役者でパッと鮮烈に浮かび上がったのは、2021年秋クールの水曜ドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(日テレ)でオラオラのヤンキー・黒川森生を演じる杉野遥亮である。
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本ドラマにおいてヤンキー感が醸し出されていたのは第一話のみ。杉咲花演じるユキコと出会ってからの森生はただの素直な気の良い若者だ。杉野遥亮のフレッシュさが全面に表れた良質なラブコメである。
同事務所の先輩・菅田将暉に「トップコートのリーサル・ウェポン」と言わしめた実力派の片鱗は、ドラマ「スカム」(2019)や映画『東京リベンジャーズ』(2021)でも感じられる。ラブコメである「恋です!」とは作風も役柄も異なるため、比較しながら見ると、より彼の引き出しの数に驚くだろう。
Amazon Primeで配信中、2022年に地上波放送も予定されているドラマ「僕の姉ちゃん」で演じる弟キャラも必見だ。姉を演じる黒木華との掛け合いを見ていると、何度「こんな弟が欲しい」と思っても足りない。
ドラマ「僕の姉ちゃん」関連の企画記事は、ぜひ下のリンクからご覧いただきたい。
【若手編】細田佳央太
「ドラゴン桜」より ©TBS
杉野遥亮も出演したドラマ「恋です!」において、妄想全開の愉快なキャラ・青野くんを演じるのは細田佳央太である。全盲の役を違和感なくやり遂げる表現力に恐れ入る。しかし、彼の演技力の高さはすでに、映画『町田くんの世界』(2019)でオーディションを勝ち抜け主役の座を射止めたことからも窺い知れるだろう。
超弩級の素直さを誇る町田くんの姿が脳裏に刻まれるや否や、2021年放送の「ドラゴン桜」新シリーズで原健太役を熱演。発達障害があることから、東大を目指すなんて言語道断と思われていた健太が、阿部寛演じる桜木の指導により能力を発揮。健太の性格や成績傾向に合わせて指導方針を柔軟に変える鮮やかさもさることながら、健太自身の純真さに心打たれた方も多いだろう。
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来年2022年は「もしも、イケメンだけの高校があったら」(テレ朝)において、初の連ドラ主演も控えている。「恋です!」とはまた違ったラブコメの予感に、ワクワクしながら放送を待ちたい。
–{【中堅実力】伊藤沙莉&北村匠海}–
【中堅実力】伊藤沙莉
(C)2021 C&Iエンタテインメント
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2021)で、これまでの伊藤沙莉のイメージを塗り替える鮮烈な印象を残した彼女。多くは語らず、一見すると何を考えているかわかりにくいキャラクターを、存在感たっぷりに演じた。「理由はわからないけど、忘れられない大切な人」を演じるにあたり、彼女ほどの適任はいなかったと強く思える。
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「これは経費で落ちません!」(2019)や「いいね!光源氏くん」(2020)、そしてHuluで配信中の「モモウメ」(2021)などコメディでの印象が強い伊藤沙莉。しかし、ラブストーリーはもちろんのこと、Netflixで話題の「全裸監督」シリーズ(2019,2021)など、その活躍は作品ジャンルを問わないボーダーレスの様相を呈している。
坂元裕二脚本・松たか子主演ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021)でナレーションを務めたことで、より一層、その特徴的な”声”の魅力も際立った。
来年2022年は1月期・月9「ミステリと言う勿れ」でヒロイン役が決まっているほか、主演映画『ちょっと思い出しただけ』も公開待機予定。27歳でありながら実績・実力ともに申し分ない彼女が、今後見せてくれる表情に期待大である。
【中堅実力】北村匠海
(C)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (C)住野よる/双葉社
北村匠海といえば、最早その実力についてあえt明記する必要もないだろう。映画『君の膵臓をたべたい』(2017)で浜辺美波とともに主演抜擢されてからというもの、『君は月夜に光り輝く』(2019)『東京リベンジャーズ』(2021)そしてドラマ「にじいろカルテ」(2021)「ナイト・ドクター」(2021)など話題作に連続出演。俳優業と並行して、「DISH//」のボーカルとして音楽活動も続けている胆力の持ち主だ。
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しかし、彼は意外と”苦労の人”だ。小学生の頃にスカウトされたのが芸能界入りのきっかけだが、デビュー直後から順風満帆とはいかなかった。100回以上オーディションを受け続け、最初の頃はCMが数本決まる程度だったという。
『重力ピエロ』(2009)で主人公の幼少期を演じたり、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)でワルの少年を演じたりと、少しずつ頭角を表していたが、やはり爆発的に名を知らしめるきっかけになったのは『君の膵臓をたべたい』だ。
近年だと『砕け散るところを見せてあげる』(2021)で、実に贅沢な北村匠海の使い方をしている例が見られる。興味のある方はぜひご鑑賞をおすすめしたい。
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–{【レジェンド編】斎藤工&田中圭&菅田将暉}–
【レジェンド編】斎藤工
(C)2020映画「糸」製作委員会
ここから、言わずもがなのレジェンド編に突入する。お察しの通り、これから挙げる3名の役者と出会ったのは「今年」ではないのだが、どうか温かい目で見ていただきたい。
まず忘れてはいけないのが斎藤工。ドラマ「昼顔」(2014)で不動の地位を得た役者である。色気漂う演技の印象が強いが、直近の活動を追っていると、あえてパブリックイメージを塗り替えようとしているのでは……?と感じることが多い。
ドラマ「共演NG」(2020)「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021)「漂着者」(2021)そして、映画では『糸』(2020)『CUBE 一度入ったら、最後』(2021)『愛のまなざしを』(2021)など、これまでの斎藤工のイメージとは少し違う役どころばかりなのだ。
特に『愛のまなざしを』では、タイトルからして「昼顔」を連想させるが、彼が演じている役柄は作中で描かれる恋愛模様には一切関わらず、キスのひとつもしない。
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CM「Indeed」でのコミカルな印象も強く、また最近では各メディアにおいて「発酵にハマっている」と言及。「人生は腐敗しないように発酵していくゲーム」など、彼が言うからこそ重みも深みも出る発言が目立つ。今後も見逃したくない伝説的役者である。
【レジェンド編】田中圭
(C)2021 映画「そして、バトンは渡された」製作委員会
誰にも止められないうちに、個人的に「超絶多忙だったで賞」を送りたいのが田中圭である。今年2021年だけでも、ドラマ・映画・舞台合わせた出演作は12作に上る。
・「ナイト・ドクター」
・「らせんの迷宮〜DNA科学捜査〜」
・「真犯人フラグ」※ゲスト出演
・「ドクターX」※ゲスト出演
・「死神さん」
・『哀愁しんでれら』
・『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』
・『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』
・『総理の夫』
・『そして、バトンは渡された』
・『あなたの番です 劇場版』
・「もしも命が描けたら」
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これらに加え、毎週金曜の夜は音楽番組「MUSIC BLOOD」のMCまで務めているのだから脱帽だ(千葉雄大との共同MC)。はたして田中圭に休みはあるのだろうか。2021年に休みがあったとすれば、何日あったのだろうか。
ついつい忘れがちだが、彼は妻子がいるパパである。家族との時間がしっかり取れているのか、的外れな心配までしてしまう。2022年は少しでも心身休まる日を設けてほしい。
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【レジェンド編】菅田将暉
(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会
満を辞して、彼の話をしたい。小松菜奈というパートナーを得たことで全ての話題をかっさらっていったレジェンド的役者・菅田将暉。振り返れば彼との出会いは12年前(!!!)、「仮面ライダーW」(2009)でフィリップ役を演じていたのを見た瞬間だった。
それからの役者や歌手としての活動の遍歴は、あえて明記する必要もないだろう。2021年に限ると、土曜ドラマ「コントが始まる」(日テレ)や映画『花束みたいな恋をした』(有村架純とのW主演)がやはり目覚ましい。
【関連記事】『花束みたいな恋をした』ってタイトルそのものが、何よりもの名言説。
今年はドラマ出演が1本、映画出演が4本と、映画界隈での活動が目立ったようだ。しかし来年2022年はさっそく1月期月9「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ)での主演が決まっている。結婚を経たことでライフステージに変化があらわれるであろう菅田将暉の、今後の活動にも当たり前のように注目したい。
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(文・北村有)