「恋です!」鈴木伸之の魅力|ヤンキー役、全部違って全部スゴイ!『東京リベンジャーズ』『HiGH&LOW』……

俳優・映画人コラム

「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール」より©日本テレビ

今期(2021年10~12月)ドラマでは「恋です!」金沢獅子王役、「ラジエーションハウスII〜放射線科の診断レポート〜」辻村駿太郎役、「お茶にごす。」船橋雅矢役と、同時にトリプル出演を果たしている鈴木伸之。

彼は身長185cmの体格からか、ヤンキー役を演じることが多い。本人はそんなに不良っぽく見えるのかと落ち込むこともあるそうだが、同じヤンキーでも役によって演じ方が大きく異なり、そのバリエーションの多さに驚く。本記事では、いくつかの作品を挙げつつ、彼の魅力について語りたい。

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硬派な悪役「今日から俺は!!」片桐智司

「今日から俺は!!」より©日本テレビ

個人的にはじめて鈴木伸之を認識したのがこの作品だ。彼が演じる片桐は、千葉県最凶と恐れられる開久高校の頭。2メートル近くある大男という設定で、鈴木は185cmあるものの、さらに上半身に肉じゅばんを巻いて挑んだという(ちょっと面白い)。

片桐は敵役ながら硬派なところがあり、きちんと仁義を通す。後輩の策略で伊藤(伊藤健太郎)とタイマンを張った際は、策略に気づき和解し「こいつは一対一でやったんだ、俺とタイマンやったんだ!」と身を挺して伊藤を守った。

相棒の相良(磯村勇斗)がとことん卑怯なやつだったので、その対比によってより印象に残った。卑怯者&筋を通す人という組み合わせが主人公の三橋(賀来賢人)&伊藤と少しかぶり、また演じきった二人の魅力もあり、敵ながらこの二人が好きだった人は結構多いのではないだろうか。

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–{仲間想いの熱い男「HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜」ヤマト}–

仲間想いの熱い男「HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜」ヤマト

© 「HiGH&LOW」製作委員会

HiGH&LOWシリーズでは、物語の中心人物の一人・山王連合会No.2のヤマトを演じている。No.1のコブラ(岩田剛典)がクールな知性派なのに対し、ヤマトは仲間想いで面倒見のいい熱い男。ファイトスタイルは屈強な体格をいかした重いパンチを得意とする。

© 「HiGH&LOW」製作委員会

血の気が多い、いわゆる「熱血バカ」タイプで、人を心配するあまり窮地に陥ったり、仲間割れを引き起こしたりしてしまうこともあるが、仲間のためなら危険をも厭わないヤマトの姿に心動かされる人も多い。個人的にHiGH&LOWシリーズには少年漫画的な魅力があると思っているのだが、最も少年漫画の主人公感があるのがヤマトだと思う。

HiGH&LOWは特殊な設定なので、尻込みしてしまう人も多いのだが(筆者もなかなか手を出せないでいた一人だった)、そこを超えればさまざまな俳優の魅力を知れる素晴らしい作品なので、機会があればぜひ観てほしい。窪田正孝も山田裕貴も林遣都も最高にかっこいい。

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–{徹底的に嫌われ役を演じた『東京リベンジャーズ』清水将貴}–

徹底的に嫌われ役を演じた『東京リベンジャーズ』清水将貴


『東京リベンジャーズ』より(C)和久井健/講談社 (C)2020 「東京リベンジャーズ」製作委員会

通称キヨマサ。鈴木伸之がキヨマサ役をやると聞いたとき、少し驚いた。今まで観てきた彼が演じる不良役は、ヤンキーといえど正義感が強い役が多かったからだ。キヨマサは、トップに黙ってチームの下の者たちを戦わせ、お金を賭けるという趣味の悪い遊びをしたうえ、自業自得なのにチームをクビになったことを逆恨みして相手を刺すという、好きになれる部分が少ないキャラクターだ。

おそらく増量しているのではと思われる身体の大きさで、主人公武道(北村匠海)の前に立ちはだかる。鈴木伸之を憎らしいと思ったのはこの役が初めてだし。武道とのタイマンシーンは見ものだ。

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–{ギャグに振り切った「お茶にごす。」船橋雅矢}–

ギャグに振り切った「お茶にごす。」船橋雅矢

「お茶にごす。」より©テレビ東京

「今日から俺は!!」と同じく西森博之の漫画が原作のドラマ。中学時代に最強の不良・“悪魔(デビル)まークン”として恐れられていた船橋雅矢。その強さは、名前を聞いただけで震えだす不良が続出するほど。本人は高校入学を機に暴力を卒業しようとうするものの、道を歩いても学校にいても絡まれ、なかなか卒業できない。部活に入ろうとしても、恐れた部員たちに門前払いを食らってしまう。

そんな中、唯一「「仮にも茶道を志す人間が、人を見た目で判断してはいけませんよ」と言ってくれた部長・姉崎(久間田琳加)のいる茶道部に入部。だが部長以外の部員には嫌がられ、「絶対問題を起こさない」と約束するも暴力の連鎖から卒業できない……茶道部にい続けることはできるのか? というストーリー。

原作のギャグ要素をかなり忠実に再現しており、鈴木伸之自身は本来かわいい顔をしているのに何をしても怖く見えてしまうまークンの邪悪な表情を完璧に演じていた。また周りの人たちの「まークン怖い、こんなことを考えてるんじゃないか」という妄想シーンがかなり多い作品なのだが、そんなわけないだろとツッコみたくなる設定の妄想を振り切って演じている。心の声のシーンも面白い。

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–{愛すべき金獅子「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール」獅子王}–

愛すべき金獅子「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール」獅子王

「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール」より©日本テレビ

獅子王は主人公・ユキコ(杉咲花)の恋の相手・森生(杉野遥亮)の顔に傷をつけた因縁の相手として登場する。金髪で、見るからにいかつい。序盤は会うたびにケンカを吹っ掛けてくるヤバいやつだったが、実際は自分のせいで傷が残ってしまい、周囲から偏見の目で見られる森生に対してずっと申し訳ないと思って生きてきて、様子を見るためにケンカと称して森生に会いにきていたのだった。森生に会いたくてやみくもに遠出したユキコを見かけて車に乗せ、森生の家まで連れて行ってくれたりと、のちに森生がバイトをするビデオ屋の店長をしていたりと、見た目によらずまともないい人だ。ユキコの姉・イズミ(奈緒)が恋する相手にもなる。

だが、獅子王には秘密があった。彼の恋愛対象は男で、ずっと森生のことをそういう意味で好きだったのだ。視聴者もうすうす勘づいてはいたが、その思いを言葉にしたのが第7話。ユキコとイズミの家で行われたイズミの誕生日パーティー、彼女たちの父親(岸谷五朗)に毛嫌いされてしまった森生をフォローすべく、勧められるままお酒をたくさん飲んで酔った獅子王。「森生クイズ」をいきなり出しはじめ、さりげなく森生にボディータッチをしたり、普段絶対そんなことしないのに、森生のこと知ってるマウントを取ったりする姿がなんだか健気に思えてしまう。

さらには、森生に傷を負わせてしまったことをずっと後悔していたこと、それなのに森生はそんなこと全然気にしてないいいやつだということをぶちまける。「幸せになってくれ、森生」という言葉が切なくて愛おしい。

酔いつぶれた森生を家まで送り、寝ている森生を見ながら気持ちがあふれてしまうシーンが切なかった。もしかしてキスしてしまうのだろうかというタイミングで、ちょうどかかってきたイズミからの電話。忘れていた家の鍵を持って出てきてくれたイズミに告白され、「自分は普通じゃないんです。俺の想い人は……男なんです」と打ち明けた獅子王を見て、心が揺れた人は多いんじゃないだろうか。ずっと片思いなうえに、自分は普通じゃないと思い続けてきた、さらにその人に傷を負わせてしまったと罪悪感を抱いてきたのはどんなに苦しかっただろう。

さらに、打ち明けたことによってイズミにも嫌われただろうと落ち込んでいる様子がまたいとおしい。ジムでまた普通に話しかけてきたイズミは「推しだと思って見守っていいですか?」と言う。自分のことを「引かないんですか?」と聞いたのに対し、全く何でだかわからない様子で「獅子王さんを? どうしてですか?」と言われた後の獅子王の表情が何とも言えない。

驚いた表情の後、目を潤ませて笑顔になる。外からの光もあたって、すごく綺麗だった。この顔を見た瞬間、心から幸せになってほしいと思った。この瞬間の心の機微を表情だけで表現した、繊細なお芝居だった。

今回はヤンキー役ばかり取り上げたが、現在放送中の「ラジエーションハウスII〜放射線科の診断レポート〜」で演じる医師・辻村先生役もハマっている。鈴木伸之はさまざまな役をビジュアル面でも演技面でも表現できる人だと思う。そしてお顔がかわいい。今後も引き続き、ヤンキー役もそうでない役も楽しみにしていきたい。

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(文:ぐみ)