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試写室で見ているときから1人で小躍りしながら楽しんでしまいました。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の話です。
いや、もともと楽しみにしていたんですよ。
前作の『ヴェノム』でのアメコミ映画のお馴染みのエンドロールのおまけ映像でウディ・ハレルソンが出てきて“カーネイジ(=大殺戮)”という言葉を発した時に血が湧き、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の上映時間が97分と聞いた時、肉踊り。
本作を見終わった時、期待が確信に変わり、独り拍手をしてしまいました。
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“ヴェノム”VS“カーネイジ”二大ダークヒーローの全面衝突!
【予告編】
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』はタイトル通りヴェノムとカーネイジの対決しか描かれていないあまりにも潔い映画という印象でした。
ミシェル・ウィリアムズ演じるヒロインのアンと、ナオミ・ハリス演じる音波を操る力を持ち、カーネイジの宿主となるクレタス・キャサディの恋人、シュリークも登場しますが、分かりやすく脇役です。
もちろんこの2人が活躍するポイントもありますし、ほかの男性キャラクターに関してもはっきり言ってほんとに脇役で終わっているので、ある意味、最初からトム・ハーディとウディ・ハレルソンのW主演映画という形に割り切っていると言えます。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の監督は誰?
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』で思い切りの良さを見せた監督がアンディ・サーキス。
『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』、『モンスターバース』シリーズ、『猿の惑星』シリーズ、『スター・ウォーズ』新3部作などで“人ならざる者”にモーションキャプチャー俳優として、命を吹き込んだ人です。
モーションキャプチャー俳優として映画の裏と表の境界線に立っていたアンディ・サーキスは『ホビット』で第2班監督を務め、2017年にはアンドリュー・ガーフィルド主演の『ブレス しあわせの呼吸』で監督デビューを飾りました。
その後も、モーションキャプチャー俳優、顔出し俳優、製作者と何役もこなしています。ちなみに次回作品は顔出し俳優として、『THE BATMAN―ザ・バットマン―』で万能執事のアルフレッドを演じています。
モーションキャプチャー俳優としてのキャリアがあるので、トム・ハーディとCGのヴェノムとのやりとり、ウディ・ハレルソンとCGのカーネイジとのやり取りも見せ方がわかっているなという感じです。
ハマリ役同士の大激突
トム・ハーディは言わずと知れた2代目マッド・マックスであり、『ダークナイトライジング』では最強の敵ヴェインを演じた男。また、実在のギャングスタ―を演じた『レジェンド 狂気の美学』の1人2役も経験済みです。
アメコミキャラ、1つの体に2つの魂の宿るヴェノムを演じるのにこれ以上ないほどカリスマ性を持った役者です。
そして、“ヴェノムを上回る最悪”のカーネイジの宿主であるシリルキラーの死刑囚・クレタス・キャサディを演じるのがウディ・ハレルソン。賞レースの常連になりつつある超個性派俳優ですが、なんと父親は本当に“マフィアの雇われ殺し屋”で終身刑を受けたという“ガチな血筋”の持ち主。
本人も問題行動が多く、逮捕歴もあるトラブルメーカーですが、1994年のオリバー・ストーン監督作品『ナチュラル・ボーン・キラーズ』での熱演が評価されて、大きなブレイクポイントとなりましたが、彼のバックグラウンドを知っている人から見ると“演技を越えたもともと備わっていた何か”を見せられている気分になったという声も挙がりました。
そんな彼が、リミッターを外した凶悪殺人鬼を演じるということなので、もう、全く遠慮や躊躇がないほどの凶悪さです。
劇中にヴェノムが“赤はヤバイ!!”と言い放つセリフがありますが、クレタス・キャサディとしてカーネイジとして“極悪、ここに極まれり”といった存在感を放っています。
あえて心配事を述べるなら、“カーネイジ”が凶悪な方向に針を振り切ったキャラクターなので、ヴェノムの次回作以降これ以上凶悪なキャラクターは出せないだろうということぐらいでしょうか…。
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–{『スパイダーマン・ユニバースのこれまでとこれから}–
スパイダーマン・ユニバースのこれまでとこれから
(C)Marvel Studios 2017. (C)2017 CTMG. All Rights Reserved.
MCU=マーベル・シネマティック・ユニバースがすっかり定着しましたが、DCコミックスに比べるとマーベルコミック原作の映画というと実にフワフワし続けてきました。
これはDCコミックスが早々にワーナー・ブラザースグループの傘下に入ったことで、権利関係も自由自在だった件もあって、マーベルには経営難が常に付きまとい、コミックスの映像化権利などを切り売りした結果したことが原因です。
1998年の『ブレイド』、2000年の『X-MEN』あたりでやっと王手の映画会社がメジャーな俳優を使って映画にするようになりましたが、それまでははっきり言って“なかったことにしたい黒歴史”、“封印作品のオンパレード”状態でした。
『ヴェノム』難産の歴史
2000年代にブランドイメージの向上が軌道に乗り始めたマーベルですが、“最初の大成功例”となったのがサム・ライミ監督による『スパイダーマン』3部作でしょう。
1作目、2作目共にビジネス面でも批評面も非常に高い評価を受けたこのシリーズ。そして、待望の3作目の撮影に入る時に、映画会社側からサム・ライミ監督に「ヴェノムを出せ!!」というオーダーが入りました。
“ヴェノム”は今でこそ、単独主演映画シリーズを持つほど大きな顔をしていますが、実は長い長いスパイダーマンの歴史で見ると比較的“新参者”のヴィランなんですよね。
数万冊のコミックブックのコレクションを持っていると言われるサム・ライミですが、“クラシカルなスパイダーマン”にしか興味のなかったこともあって、この“新参者”の介入に露骨に嫌な顔をしました。
『スパイダーマン3』にヴェノムが出たことは出たのですが…、ほとんどの人が「出てたっけ?」と思う程度の印象しか残っていません。
断っておきますが、“ヴェノムの原作人気”はかなりのモノがあって、1988年に原作でデビューを飾ると5年後にはただのヴィランから、ダークヒーロー、アンチヒーロー的な立ち位置を核として、早々に主役のミニコミックシリーズが展開されました。
ちなみに、当時のタイトルは『リーサル・プロテクター』。『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の中で、エディ・ブロックとヴェノムが「自分たちはリーサル・プロテクター(=残虐な庇護者)だ!!」と名乗るシーンがありますが、これはコミックファン向けのオマージュですね。
しかし、思い入れのないサム・ライミと出会ってしまったがゆえに、ヴェノムは非常にぞんざいな扱いを受けてしまいました。こんなことがあっては『スパイダーマン3』の出来がそれまでの2作品と比べて見劣りがしてしまうのも仕方のないこと…。
パート4の予定もなくなり、仕切り直しになって『アメイジング・スパイダーマン』シリーズを再スタートすることになりました。
スパイダーマン自体が大混乱!?“3作目”はいつも鬼門
(C)Marvel Studios 2017. (C)2017 CTMG. All Rights Reserved.
この頃にはMCUがすっかり定着。MCUでもX-MENでもないマーベルの『アメイジング・スパイダーマン』は実に中途半端な立ち位置になり、そして実に中途半端な形でシリーズ終了。
『アメイジング…』の3作目からは“シニスター6”というマーベル版スーサイド・スクワッドのようなヴィランチームを動かす予定で、ここには仕切り直しのヴェノムの参加も構想にあったようですが、“3作目自体”がなくなってしまったので全ておじゃんとなりました。
サム・ライミ版は内側の軋轢がもろに出てとっ散らかったようになり、『アメイジング…』では予定はあったものの、俳優をトム・ホランドに変えてMCUに合流する方向に方針転換して製作中止。
つくづく”映画のスパイダーマンの3作目”は恵まれていない感じがあります。
『アベンジャーズ』をカウントしないで見ると全米年末、日本年始公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が3作目に当たるのですが、不吉なジンクスに終止符が打たれることを祈るばかりです。
と言いながらもサム・ライミ版と『アメイジング…』の新旧ヴィランが大挙して登場するマルチバース方式を採用した作品になっているようで、“とっ散らかってしまわないか?”という一抹の不安があります。
スパイダーマン・ユニバースにダークヒーローが続々登場
スパイダーマンとそれに関連するヴィランキャラクターの権利を継続して持ち続けているソニー・ピクチャーズは“SSU=ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース”構想をぶち挙げていて、『ヴェノム』シリーズを中心にスパイダーマンのヴィランを主役にした映画シリーズを続ける予定でいます。
すこし前まではソニー・ピクチャーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクターという名称を使っていましたが、長すぎて分かりにくいというどうしようもない理由で定着せず、しれっとソニーズ・スパイダーマン・ユニバースに切り替えました。
このユニバース、すでにジャレッド・レト主演の『モ―ビウス』はもう完成済みで、コロナ禍の延期の嵐に飲み込まれてしまっていますが、もう公開するだけの状態です。また『クレイヴン:ザ・ハンター』までは2023年に公開予定というところまでアナウンスがあります。
ユニバースの難点はヴィランしか主役にできないということでしょう。どんどんダークな作品が続くことになりまして、ちょっとファンとして付き合って行くのがしんどくなるかもしれないですね。
”業務提携”状態のMCUとの兼ね合いを考えると、やはり”スパイダーマン”を何とかして登場させたいというのが本音でしょうね…。
“スパイダーマン・ユニバース”と言っておいて、スパイダーマンがいつまでも登場しないのはやはり不自然ですよね。
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–{ネタバレ禁止令発令中、先々に不安と希望と}–
ネタバレ禁止令発令中、先々に不安と希望と
さて『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に話を戻そう。今回も好例の“エンドロールのおまけサプライズ”が仕込まれています(ここまでは言っていいでしょう)。
しかも、かなり“大掛かりな仕込み”があります、これを素直に真に受けていいのかは難しいところなのですが、本当にこのおまけを信じるとますます『ヴェノム』と“スパイダーマン・ユニバース”がすごいことになる予感がします。
『ヴェノム』シリーズの“痛快性”を確保した状態で、ユニバースを拡げ続けることができるのかどうかは微妙なところですが、何とか乗り切ってほしいですね。
エディ・ブロック&ヴェノム役のトム・ハーディは『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』では主演だけでなく、原案としても参加しているほどの入れ込みぶりなので、この主演のやる気を変に削ぐことなく、ユニバースの拡張が進むよう願っています。
スパイダーマンの参戦やトム・ハーディのモチベーションキープ、ヴィランだらけになりそうな世界観など不安要素もあるのですが、巧くやってのけたら、一大映画ユニバースになりそうなので期待したいところです。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は文句なしの痛快作品だった
先々に期待と不安がある『ヴェノム』シリーズではありますが、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は文句なしの痛快作品になっています。
Amazonプライムビデオなどのサブスクで前作の『ヴェノム』を見ることができるので、比較的気軽に予習も可能ですが、ぶっちゃけトム・ハーディ演じるエディ・ブロックの体にヴェノムというエイリアンが寄生していることだけ知ってれば『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は楽しめる作りになっているので、予習せずに映画化に向かっても全く問題ありません。
ヴェノムとカーネイジの97分に渡る大暴走に巧く乗っかれればあっという間にエンドロールです。
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–{余談:最近の映画って上映時間がすこし長くないですか?}–
余談:最近の映画って上映時間がすこし長くないですか?
映画の上映時間については原因がいろいろあって、それだけで1万字を超えてきそうな話になってしまうので、少しだけ触れておきますね・
それにしても最近の映画って上映時間がすこし長いと思いませんか?
最近の話題作・大作の上映時間
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』145分。
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』132分。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』164分。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』155分。
『エターナルズ』156分。
『DUNE/デューン砂の惑星』155分。
『最後の決闘裁判』153分。
『燃えよ剣』144分。
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』132分。
『ドライブ・マイ・カー』179分。
『ONODA一万夜を越えて』174分
ちなみに『アベンジャーズ/エンドゲーム』が181分、『TENETテネット』が151分。その他にも『るろうに剣心最終章』2部作がそれぞれ138分と137分、『そして、バトンは渡された』も137分、『罪の声』も142分ありました。
その一方で、現在スマッシュヒット中の『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』は65分です。
それぞれに理由があるのはわかるのです。『007』と『エンドゲーム』は主役(ダニエル・クレイグとロバート・ダウニー・ジュニア、クリス・エバンス)がこの作品をもってシリーズを離れるために全部語り切る必要がありました。『シン・エヴァンゲリオン』、『るろうに剣心最終章』、この2部作の完結編なので、映画の上映時間が長い理由は『007』と『エンドゲーム』と同じ理由ですね。
『燃えよ剣』と『決闘裁判』は歴史劇で、複数の視点や登場人物が錯綜する物語でしたので必然的に時間が必要になりました。
『エターナルズ』『シャン・チー』『DUNE』はまず物語の設定、キャラクターの設定を語り始めるところから話をスタートさせなくてはいけなかったので、自然と時間がかかりました。
『ドライブ・マイ・カー』や『ONODA』は娯楽性よりも芸術性、メッセージ性を重視した作品なので、娯楽性を意識してタイトな上映時間をそこまで意識する必要はありませんでした。『そして、バトンは渡された』や『罪の声』も人間ドラマなので丁寧に描く必要があります。
たとえば『ワイルド・スピード』や『スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』、『TENET』が2時間を余裕で越えてくるのは、ファンとしては嬉しいのですが、初めて観る方にとっては長いと感じる人がいるかもしれません。
ハリウッド映画は年々長くなっている感じがあって、2時間を切った大作は『ゴジラVSコング』と『フリー・ガイ』くらいでしょうか…。
ホラー映画だとジャンルの性質上2時間を越えることはあまりないのですが、ほかのジャンルは本当に長くなりました。
フィルムからデジタルへ移行したことも遠因としてあると言われていますが、やはり、純正娯楽作品で2時間を余裕で越えてくるとなると、すこし身構えてしまう人もいるのではないでしょうか?
短かければよい、長ければ悪いという極端な話にするつもりはありませんが、映画を2時間=120分の枠に納め切るというのも1つの才能だと思うんですよね。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の上映時間は?
上映時間が長い作品が連発する中で、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の上映時間は97分という絶妙さ加減。120分どころか100分を切ってきました、ちなみに前作『ヴェノム』は112分です。
この上映時間の程よさはヴィランにしてダークヒーローのヴェノムの誕生エピソードはもう前作で描いているので、省けたことで成り立ったのではないのでしょうか。
本作の上映時間を聞いた時、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は、凶悪な分身“カーネイジ”との対決だけにお話を絞り、無駄なものを徹底的に削り、ソリッドに研ぎ澄まされた作品になるだろうということを感じさせてくれました。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の97分間はあっという間に過ぎ去っていく。ヴェノムとカーネイジの97分に渡る大暴走をぜひ劇場でお楽しみください。
【関連記事】あの日本映画から特撮ヒーローまで!?『ヴェノム』と意外な繫がりがある作品5選
(文:村松健太郎)
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–{『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』作品情報}–
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』作品情報
【あらすじ】
圧倒的戦闘力と残虐性を持ち、ヴェノムの大敵となるカーネイジとの戦いを描く。「悪人以外を食べない」という条件でエディの体に寄生した地球外生命体シンビオートのヴェノムは、食欲制限を強いられ不満を抱えながらも、エディとの共同生活をそれなりに楽しんでいた。そんな中、ジャーナリストとして未解決事件の真相を追うエディは、刑務所で死刑囚クレタス・キャサディと再会する。クレタスは猟奇殺人を繰り返したシリアルキラーで、死刑執行が迫っていた。エディに対し異様な興味を示すクレタスは突如として彼の腕に噛み付き、その血液が人間とは異なることに気づく。そして死刑執行の時、クレタスはついにカーネイジへと覚醒する。
【予告編】
【基本情報】
キャスト:トム・ハーディ/ミシェル・ウィリアムズ/ウッディ・ハレルソン/ナオミ・ハリスetc…
原作:トム・ハーディ/ケリー・マーセル
監督:アンディ・サーキス
脚本:ケリー・マーセル
製作国:アメリカ