俳優歴の長さ=高い演技力、とは限らない。
演技の良し悪しは年数ではなく、その人の経験やセンス、また、出演作の話題性や配役との相性など、様々な要因が絡み合って決まってくるものでもある。
2021年11月19日(金)公開『ずっと独身でいるつもり?』では、映画初主演を務める。
アナウンサーという壁を突破した、女優・田中みな実の姿
2014年にTBSからフリーに転身した田中みな実”アナウンサー”。
今となってはもはや”アナウンサー”という印象は皆無で、すっかり”演技派女優”への仲間入りを果たしている。
田中みな実のこれまでを思い返してみると、彼女は”ぶりっ子キャラ”と”闇落ちキャラ”を上手く使い分け、女優への変貌を遂げたように思う。
TBS在籍時代、「サンデージャポン」で「情報ライブみな実屋」という看板コーナーを持ち、当初のイメージである”ぶりっ子キャラ”が確立。
アナウンサーとして非の打ち所がないその姿に異性からは熱い視線が送られていたが、同性からはどうしても批判的な意見が多かったこの頃。「嫌いな女子アナランキング」上位の常連だったことは言うまでもない。
フリー転身後、なかなか思うようにいかず苦悩の日々が続き「局アナに戻りたい」とまで思っていた時期もあったそうだが、例の破局の一件から”ぶりっ子キャラ”だけでなく”闇落ちキャラ”も垣間見えてきた頃、世間の田中みな実へのイメージは変わっていった。
アナウンサーとして、タレントとして、女優として。
求められていることをすぐさま察知する適応力や、『BEAUTY THE BIBLE』で美のカリスマとしてMCを務めるほどの美容ヲタクっぷりを魅せるなど、様々な方面で垣間見えるプロ意識に、”あざとかわいい”キャラは定着したままに同性からの人気も上々に。
2019年頃から田中みな実フィーバーが巻き起こり、『グータンヌーボ2』や『あざとくて何が悪いの?』など、バラエティ番組のMCの代表格となった。
その飛躍ぶりはタレント業のみに留まらず、2020年4月より放送された『M 愛すべき人がいて』でマサに異常なまでに執着する姫野礼香として、その怪演っぷりが話題となったことは記憶に新しい。
が、『M 愛すべき人がいて』出演以降、突飛な役柄だけでなく『生きるとか死ぬとか父親とか』、『ボクの殺意が恋をした』で演技派女優のしての可能性を魅せつけてきた田中みな実。フラーム、これは先見の明があったとしか言いようがない。
そんな田中みな実の女優としての成長を辿るべく、彼女の3つの代表作に注目していきたい。
–{女優としての狂気を世に知らしめた『M 愛すべき人がいて』}–
女優としての狂気を世に知らしめた『M 愛すべき人がいて』
平成の歌姫・浜崎あゆみとエイベックス株式会社代表取締役会長CEO・松浦勝人の出会いから衝撃の大恋愛、そして別れまでを赤裸々に綴った、事実を基にしたフィクション小説『M 愛すべき人がいて』。
テレビ朝日とABEMAの共同制作で、2020年4月よりテレビドラマ化された。
第1話の放送直後より、安斉かれんの大根役者っぷりをも上書きする勢いで鮮烈な存在感を残したのが田中みな実演じる姫野礼香。
申し訳ないが、こればかりはテキストだと上手く伝えられない。役柄上片目しか見えていないにも関わらず凄みのある目力、迫力のある声の抑揚…現実にいたら”ヤバイやつ”すぎるあの姿を堂々と演じ上げるとは、田中みな実の底知れぬ可能性は計り知れない。
本作品を機に、女優・田中みな実の道が確実に拓けた。
演技派女優としての期待膨らむ『最愛』
2021年秋ドラマで世間からの注目度が最も高いドラマ、『最愛』。
田中みな実は、真田梨央(吉高由里子)が属する真田グループに執拗に固執するフリーライター・橘しおりを好演している。
『生きるとか死ぬとか父親とか』でのごくごく普遍的な女性という役柄においても、”アナウンサー役”と”結婚に悩むアラサー女子”という設定が相まって濃い共感を生んだ。
一転して『最愛』では、これまでのイメージとは全く異なる、ミステリアスで冷血な”いい意味で田中みな実らしさが一切ない”キャラクターに初挑戦している。
タレントとしても女優としても”少しネジの外れた”印象が強かったが、『最愛』で確実に演技派女優として開花しはじめた田中みな実。ドラマの今後の展開と彼女の躍進にますます期待だ。
等身大の姿を反映し、共感を生む『ずっと独身でいるつもり?』
2021年11月19日(金)公開『ずっと独身でいるつもり?』。本作品が田中みな実の初主演作となった。
田中みな実が演じるのは、”全独身女性の憧れ”の代表格として世間から注目され続けるライター・本田まみ(36)。10年前に執筆したエッセイの人気を引きずりながら、次のヒット作をなかなか書けない悶々とした日々を送る。
まみには、商社勤めの年下イケメン彼氏・公平(稲葉友)がいる。なんとプロポーズまでされるものの、待ち望んでいたはずの”結婚”に対してどこか浮かない顔のまみ。その違和感は確信に変わっていくーー
俗に言う”女性としての幸せ”を掴みかけているバリキャリ女子・まみを中心として、まみのエッセイの大ファンが故にすっかり落ち着いてしまったまみに対しての苛立ちを隠せない独身女子・由紀乃(市川実和子)、結婚し子供にも恵まれ、周囲から羨望の眼差しを受けるも理想と現実とのギャップに苦しめ続けられる”丁寧な暮らし系インスタグラマー”主婦・彩佳(徳永えり)、資格なし・就職経験なし・若さと媚しか取り柄のない賞味期限切れギリギリなパパ活女子・美穂(松村沙友理)、それぞれの異なる生きづらさを抱える女性4人。
本田まみは、田中みな実が演じるためにつくられたキャラクターと言っても過言ではない。これまでの女優としての経験を詰め込んだ集大成かのように思えた。
スクリーンの中にいる田中みな実は、紛れもなく”女優”だった。
–{女優・田中みな実の最大の魅力は”声”と”瞳”}–
女優・田中みな実の最大の魅力は”声”と”瞳”
3つの代表作に沿って女優・田中みな実を追ってみて、気付いたことがある。彼女の最大の魅力は”声”と”瞳”にあると。
アナウンサーとして積みに積んだであろうボイストレーニングの成果もあってか、滑舌、抑揚、息遣いなど、声の温度差を巧みに操っている。
そして、瞳。
役柄に合わせて、威圧感のある目力から死んだような眼差しまで、巧妙にコントロールしている。
どんなに芝居が上手くても万人受けしない声質だったり、どの役柄でもおんなじような瞳をしている俳優は正直、割といる。
“芝居が上手い”と感じる要素として重要な”声”と”瞳”が研ぎ澄まされていることは、確実に田中みな実の魅力を押し上げていると言えるだろう。
まだまだ飛躍するであろう女優としての田中みな実の姿を、今後も見逃すことなく追っていきたい。
(文・ 桐本 絵梨花)
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