先の読めないストーリーや胸に熱いものがこみ上げる演出、そして何より魅力的な登場人物の演技__
早くも今期No.1と推す人が多い、ドラマ「最愛」。
4年前に同枠で放送されたドラマ「リバース」と同じ制作陣ということは以前から話題に上がっている。同じスタッフのドラマもそうでないものも含め、ドラマ「最愛」を好きな人がきっと好きになり、もしかしたらより「最愛」を楽しむきっかけになるかもしれない、愛すべきドラマをご紹介したい。
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登場人物への愛おしさ、二人の関係に胸がふるえる「Nのために」2014年
「Nのために」は湊かなえの小説が原作で、「最愛」と同じプロデューサー新井順子・奥寺佐渡子脚本・塚原あゆ子演出のドラマだ。キャッチコピーは「その「秘密」を、知られてはならない──」だった。
高級マンションで夫婦、野口貴弘と妻の奈央子(徳井義実・小西真奈美)が殺害され、西崎真人(小出恵介)が殺人を自供し、後に10年服役。当時同じく現場にいた杉下希美(榮倉奈々)・成瀬慎司(窪田正孝)・安藤望(賀来賢人)も事情聴取を受けていた。10年後、西崎は服役を終えて出所したが、刑事の高野(三浦友和)は事件の真相を追っていた。
被害者夫婦も含め、事件当時その場に居合わせた6人は全員イニシャルに「N」がつく。それぞれがそれぞれの大切な「N」のために行動した結果、この事件は起こってしまったし、そのために隠された事実があるのかもしれない。
「現在と過去を交錯させながら、ある殺人事件の真相を軸に、各人物たちが抱える愛の物語を明らかにしていく「純愛ミステリー」である」と銘打たれたように、事件の真相だけでなく、それぞれの愛の形や真実が明らかになっていくストーリーに引き込まれ、回が進むごとに登場人物たちをより愛おしく感じるようになってしまう点が、放送から7年経っても好きなドラマとして挙げる人が多い理由かもしれない。筆者も歴代ドラマで3本の指に入るほど好きな作品だ。
主演陣それぞれ、素晴らしい演技だった。徳井義実のサイコパス演技は怖かったし、ストーリーに関わるため詳しくは言えないが、小西真奈美も新境地を切り開いた作品ではと思う。人妻でありながら西崎(小出恵介)と親しくなり、傷を舐めるシーンは生々しくてドキドキしてしまったし、彼女の本心にも驚いた。ちょっとひねくれた独自の愛を貫いた西崎を演じた小出恵介、その後、活動停止してしまい残念だったが2022年に舞台が決定し、また演技が見られそうでうれしい。賀来賢人のまっすぐな演技もよかった。明るいだけでない、強さも見せてくれた榮倉奈々、そしてそんな杉下を支えた成瀬を演じた窪田正孝の、自然な優しさもよかった。
「最愛」を好きな方におすすめしたいポイントは何と言っても「杉下と成瀬の関係性」である。青景島という四国の島で育った二人は、もともと高校の同級生だった。父が突然家に愛人を連れてきて、母・弟とともに家を追い出された杉下。とあるきっかけで仲良くなって以来、島である事件が起こるまではお互いが心の支えになるような存在だった。
深い男女関係にあるわけではないが、お互いがお互いを大切に思い、唯一無二の存在だった二人の空気感は、何ともいえず切なくて愛おしい。Nのために→最愛の順で観ている人は、「最愛」の梨央(吉高由里子)と大輝(松下洸平)の関係を見て、杉下と成瀬を思い出す方も多いのではないだろうか。
この作品きかっけに、成瀬を演じた窪田正孝を好きになってしまった方も多いと思う。筆者もその一人だ。これから観る方のお楽しみのために明記はしないが、物語終盤、9話で杉下に投げかけた言葉は本当にたまらなかった。未見の方はぜひぜひ観てほしい。実は筆者もとてもいいと勧められつつ、観たのは数年後だったのだが、素晴らしい作品で「なんでもっと早く観なかったのだろう」と後悔したくらいよかった。
ちなみにこの作品は、榮倉奈々と賀来賢人が結婚するきっかけにもなった作品でもある。めでたい。
このドラマの主題歌は、家入レオの「Silly」だ。プロデューサー新井順子の依頼を受け、原作を読んで書き下ろしたという楽曲だ。
–{明らかになるのは恐ろしい真実か、それとも……「リバース」2017年}–
明らかになるのは恐ろしい真実か、それとも……「リバース」2017年
「リバース」は言わずもがな、「最愛」と同じプロデューサー新井順子・奥寺佐渡子と清水友佳子脚本・塚原あゆ子演出だ。原作は「Nのために」と同じく湊かなえ。キャッチコピーは「僕の親友を殺したのは誰だ?」だ。
主人公は藤原竜也演じる深瀬。10年前に失踪し、半年後に遺体が発見された深瀬の親友・広沢(小池徹平)の死をめぐって物語が展開していく。広沢の失踪はさほど仲が良くないゼミ仲間と行った卒業旅行での出来事だったため、彼らの中に広沢を殺した犯人がいるのではと疑う。
話が進むと、それぞれの広沢を殺す動機・あやしい点が出てくる。途中、この中に恐ろしい犯人やとんでもない理由が出てくるのだろうと恐ろしい反面、それぞれの人物のいい面・意外な思い出が出てきて、ミステリーでありながら、いい意味で意外な印象が増えていく物語でもあった。最終的な結末はここには書かないが、かなり特殊で面白い展開・結末への流れが見事な作品だったと思うので、ぜひチェックしてほしい。
登場人物たちそれぞれの演技ももちろん素晴らしかったが、個人的にKis-My-Ft2玉森裕太の演技を推したい。普段の華やかなイケメンの顔を封印し、抑えた演技で真面目な教師・浅見を演じている。筆者はこのドラマを見て、玉森くんの演技のうまさを知った。
また深瀬の恋人・越智美穂子を演じる戸田恵梨香も非常によかった。詳しくは言えないが、とにかくすごい……。
ちなみに同じく湊かなえ原作映画をドラマ化した「夜行観覧車」から杉咲花、「Nのために」から窪田正孝がちょっとした役で出ていることも有名である。どこで出てくるかも楽しみに観てほしい。
このドラマの主題歌は、シェネルの「Destiny」。こちらもプロデューサー・新井順子のオファーで担当が決まった。ドラマティックな楽曲が毎回ドラマを盛り上げていた。
–{松下洸平が事件の被害者? 愛の形にせまる「向こうの果て」}–
松下洸平が事件の被害者? 愛の形にせまる「向こうの果て」
制作陣は全く違うものの、「最愛」好きな方にぜひ観ていただきたいのがWOWOWオリジナルドラマ「向こうの果て」だ。
「最愛」で大輝役の、松下洸平演じる君塚公平が放火殺人によって死亡するところから物語は始まる。冒頭で亡くなっているとはいえ、彼の出番は以降も結構ある。犯人として逮捕されたのは池松律子(松本まりか)。二人は幼なじみだった。
二人の過去に何があったのか、公平を殺したのは本当に律子なのか。事件を担当する検事・津田口(柿澤勇人)律子を知るさまざまな男たちに話を聞いてまわるが、驚くことにそれぞれが律子について語る「○○な女」は、どれもまったく違うのだった。
どれが本当の律子で、真実は何なのか……? スタッフ陣は違うものの、事件の真相とともに愛の真実が明らかにされていく面では、「最愛」を好きな人が楽しめる要素があると思う。また、タイプは違えど松下洸平が一途な愛を見せる役を演じており、そういった面も注目である。最後に分かる公平の律子への思いを、ぜひ見届けてほしい。
–{「最愛」「リバース」「Nのために」共通の“音楽の絶妙さ”}–
「最愛」「リバース」「Nのために」共通の“音楽の絶妙さ”
「最愛」「リバース」「Nのために」の3作品共通の特徴として、主題歌やBGMが入るタイミングの絶妙さがある。ここぞというタイミングで鳴る音楽に心をかきむしられる。「最愛」第5話で、大輝が「梨央!」と昔の呼び方で読んでしまうシーンはそれだけでもグッとくるのに、主題歌である宇多田ヒカル「君に夢中」が流れてより胸がいっぱいになってしまったのは記憶に新しい。
BGMは3作品共通で横山克が担当している。このBGMがまたどの作品もドラマティックだし、郷愁や登場人物たちへの愛おしさが増幅されるものになっている。これから観る方・観返す方には、ぜひ音楽にも注目(注耳?)しつつ観てほしい。
ドラマ「最愛」と並行でも観た後でも楽しめる作品たち
ドラマ「最愛」の結末がどうなるのか、さらに盛り上がっていくであろう後半の展開が楽しみでもあり、どうなってしまうのか不安でもある。今回ご紹介したドラマたちは「最愛」と並行して観ても、「最愛」の放送終了後に観ても、どちらでも楽しめる作品となっているので、ぜひじっくり楽しんでほしい。
観てくださるだけでもうれしいし、もしご紹介した作品が、あなたの「最愛」になったらいいなと思う。
(文:ぐみ)
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